評価 ★☆☆☆☆(15点) 全12話
あらすじ 特別な能力を1つ授かることができる世界。そこで史上最高の冒険者を目指す少年・ライトが手に入れたのは、戦闘能力皆無、木の実栽培に特化した外れスキル《木の実マスター》だった……引用- Wikipedia
いいから!木の実を食えよ!
原作は小説家になろうで連載している作品
監督は木村隆一、制作は旭プロダクション
後ろ姿
TVアニメにおける1話のAパートというのは非常に重要だ。
毎クール50本以上のアニメが放送する時代において
1話のAパートは「つかみ」だ。
そこで興味を惹かないと1話切りされてしまうことも多い。
多くのアニメが1話に気合を入れていることは間違いがない。
しかし、この作品の1話冒頭からは一切のやる気を感じない。
異様に線の細いキャラクターデザインの違和感は凄まじく、
そんな主人公とヒロインの会話のなかで
あえて「後ろ姿」だけを映すシーンが目立つ。
別に後ろ姿のシーンなど一切必要がない。
同じような歩くアニメーションを繰り返し、
微妙に動くだけのアニメーションは非常に厳しく、
明らかに低予算であることを感じさせる。
配信がAbema先行や独占の作品の場合、低予算な作品が多いが
この作品はまさにそれだ。
この世界においてスキルは特別な木の実であるものの、
毒があるゆえに1個しか食べることはできない。
ワンピースの悪魔の実丸パクリな恥ずかしい設定ではあるが、
そんな重要な木の実は食べるまで何のスキルを手に入れられるかわからない。
主人公は冒険者を目指していたものの、
手に入れたスキルは「木の実マスター」というハズレスキルであり、
木の実関連に於いて有利になるだけのスキルだ。
冒険者全盛期の世界においてスキルで人生が左右される。
幼馴染なヒロインは特別なスキルを手に入れた結果離れ離れになり、
主人公は木の実を育てる日々を送っている。
そんな中で唐突に訳アリの少女を預かって暮らしており、
それを主人公も当たり前のように受け入れている。
どこからともなく訳アリの少女がでてくる展開は驚くしか無い。
何個でも食えるぜ!
そんな訳アリの少女が主人公が育てていたスキルの実を
料理に使ってしまい、主人公は2個目のスキルの実を食べてしまう。
本来なら死ぬはずが、スキルの実の毒が主人公には効かないどころか、
新たなスキルに目覚めることになる。わかりやすいチート展開だ。
木の実マスターは木の実の毒が効かず、当然、
スキルの実の毒も効かず、どんどんスキルを手に入れられる。
スキルの実を食べれば食べれば強くなる。
ワンピースの世界ならありえないほどのチート性能だ。
そんなチートスキルを手に入れて冒険者になった主人公ではあるものの、
当然、ギルドで「やから」にからまれる(苦笑)
お手本のようななろう展開には笑うしか無い。
2個目のスキルである剣神を使えば、強くない主人公でさえ
あっさりとモンスターを倒すことができる。
この戦闘シーンの手抜き感も凄まじく、
行き当たりばったりでスキルだよりな主人公に
なんの好感も抱けず、戦闘シーンの面白みもない。
剣神というスキルのはずなのだが、そんなスキルの剣神の
スキルである裂鬼斬というスキルを使い凶悪なモンスターを倒して
1話が終わる。ダサい文字演出もそうだが、
スキルのスキルという意味不明な設定で頭がおかしくなりそうだ(苦笑)
「突進」など明らかに1つの技しか使えないようなスキル持ちも入れば、
木の実マスターや剣聖などスキルと言うよりは職業の名前みたいな
スキルもあり、もはや意味不明だ。
幼馴染
離れ離れになった幼馴染とあっさり再会するものの、
聖女によって集められたSランクのパーティーメンバーは
当たりスキルであることをかさにして傲慢な態度を取っている。
そんなパーティーに幼馴染は不満を持ちつつも逆らいきれず、
絶望する中で主人公は救おうとする。
こうやって話を抜き出すと悪くない感じなのだが、
Sランクパーティーメンバーのわかりやすい小悪党っぷりや、
そんな相手に対して特に努力もせずに手に入れたスキルで
イキりまくる主人公の痛々しさが際立っており、
かなり厳しい作品だ。
全てにおいて安っぽく、全てにおいて浅い。
ペラペラの作画でペラペラのストーリーを展開しており、
幼馴染を賭けてSランクパーティーのメンバーと決闘するものの、
止め絵まみれの戦闘シーンに面白みはない。
常に感情的に考える前に行動や言葉が出るような
主人公であり、話自体もいきあたりばったりだ。
食えよ!
そもそもヒロインが手に入れたのは剣聖というスキルだが、
主人公が手に入れた2個目のスキルである剣神と
どう違うのか一切わからない。
しかも、木の実の毒が効かないのに
一向に剣神以外のスキルを手に入れようと木の実を食べない。
剣神のスキル以外では苦戦する場面もあるのにもかかわらず、
一向に3つ目の木の実を食べないのは謎すぎる。
これでスキルを手に入れる実が悪魔の実のように
レアならばわかるが、普通に主人公が育てている。
売るほどあるのになかなか食べない。意味不明だ。
タイトルでは「無限に食べられるようになった件について」と
ついているが、無限どころか3つ目をなかなか食わない。
木の実食えよ!というツッコミをリス以外にするとは
思ってもみなかった(苦笑)
一応はスキルごとの相性などを気にしてるようだが、
事前に色々なスキルをゲットしておけばいいのに、
戦闘中にピンチになってようやく木の実を食べてくれるのだが、
木の実を食べると死にはしないものの頭痛などは起こるがゆえに
本来は戦闘中に呑気にパクパクするようなものではない。
邪竜というやばい存在を相まみえる中、
呑気に木の実をパクパクし、使えないスキルを手に入れる中で
「相手を眠らせる睡魔」というのを手に入れて
邪竜を眠らせて逃げて終わりだ。
なんとも盛り上がらない戦闘シーンである。
何個も一気に食べると何日も寝込んでしまううえに、
どんなスキルが手に入るのかは食べてみないとわからない。
それなのに彼は事前に1日1個食べるなどはしない。
そこまで考えが及ばないのだろう。
スキルのスキルや木の実をなかなか食べない主人公など
設定の細かい部分でツッコミどころが多すぎる。
使いこなせよ!
主人公は剣神のスキルに頼り切っており、
サポート的に睡魔などのスキルも使うものの、
基本はずーっと剣神のスキルだ。剣神依存と言っても過言ではない。
それだけ剣神というスキルが強いということでもあるのだが、
中盤になるとよくわからなくなってくる。
敵に雷のスキルを持つ相手が現れ、
そのスキルの使いこなし方の熟練度が高いゆえに
剣神のスキルが通じつ近づくことすらできない。
いざ近づくと雷の剣を使って戦い出すのだが、
剣神はかなりの苦戦を強いられてしまう。
色々なスキルを持っていようとも
1つのスキルを使いこなすことの大切さを
主人公が学ぶいい機会ともいえるのだが、
そういう場面で学ばないのがこの作品の主人公だ。
邪竜でピンチになったのに、その後でスキルの実を
1個も食べておらず、戦況がやばくなってからしか食べない。
雷を使う相手に勝てたのも新しいスキルのおかげというよりは
新しい武器のお陰であり、結局は剣神だよりだ。
そんな剣神だけでは倒せない相手のために
仲間が武器を作ってくれるのだが、
素材を手に入れて武器を作ってとかなりの時間がかかってそうなのに
主人公と敵は仲間が離れたときとほぼ状況が変わっていない。
どういう時間経過なのか、時系列すらおかしい。
戦闘シーンのダサさもどんどんやばくなっていき、
炎を灯すスキルを手に入れたら剣と自分自身に火をはなち、
特に意味がない炎の獣を召喚し、
獅子炎斬というダサい文字テロップもでてくる。
物語の中で主人公が学ばず、常にいきあたりばったりだ。
いざというときに木の実を食べてスキルをゲットして逆転する、
しかし、木の実を日常的に食べないのは今持ってるスキルと
相性の悪いスキルを手に入れるリスクがあるからこそなのに、
戦闘中のやばい状況であえて木の実を食べる。
もし相性の悪いスキルを手に入れたらどうするんだろうか。
その可能性を考えるなら普段から食べることで
手に入れたスキルを練習したり、相性の悪いスキルを
手に入れても対策ができそうなのに一切しない。
本当に後先というものを考えていない。
1つのスキルを極めて使っている敵のほうが魅力的だ。
ヒロイン
中盤から幼なじみなヒロインとは別行動をしており、
終盤になると主人公が呑気に筋トレしてる間に
ヒロインが色々と活躍してたりもする。
もはやヒロインが主人公と言っていいほどキャラとしての魅力も
主人公が負けてしまっている。
聖女が裏で色々としていたり、魔族が動いていたりと、
色々とストーリーが展開しているものの、
主人公そっちのけでヒロインが主人公として活躍しているため、
どんどんと主人公の存在感と価値が薄くなる。
終盤の9話、10話、11話とほぼヒロインを
主軸に話を展開しており主人公はチラッとしかでてこない(苦笑)
ヒロインのピンチに駆けつけるという展開もなく、
主人公はずっと自分の剣が完成するのを呑気に待ってるだけの3話だ。
とんでもないストーリー構成だ。
これが2クールや4クールの話ならともかく、
1クールの4分の1、主人公が殆ど出てこないというのは
意味不明でしか無い。
そんな中での最終話だ。
最終話
11話でヒロインが特別な力に目覚め強敵を倒し、
妖精王などがでてきて色々と説明してくれる。
ヒロインたちが踊りを捧げ、色々と説明が終わりAパートが終わる(笑)
Bパートが始まると聖女のスキルが未来予知であることが明らかになり、
今までの事件が聖女の未来予知からのものであることも明らかになる。
主人公はまだでてこない。
残りの尺は10分もないところでようやく主人公がでてきて、
ヒロインと連絡を取り合い、主人公の8話から作り続けていた
主人公の武器がようやく完成させて、
俺達の戦いはこれからだで終わる(笑)
実質最終話も主人公の出番がほとんどなく、
1クール全12話のうち8話しか主人公がメインの出番がないという
とんでもない作品だった。
総評:前代未聞の主人公不在アニメ
全体的に見て「やばい」という言葉を思わず使いたくなる作品だ。
作画のクォリティ自体もかなり低く、BGMやSEなど
音周りの安っぽさも凄まじく、戦闘シーンではダサい文字演出や
エフェクトなどを駆使しつつ1枚絵をごまかした戦闘シーンになっており
盛り上がりなんてものはあったもんじゃない。
しかし、その部分はもはやどうでもいい。
問題は破綻しているストーリーとストーリー構成だ。
原作の本自体も2巻しかでていないせいなのかもしれないが、
ろくに話が進まずにダラダラとした展開が多い。
それだけならまだしも「スキルの実」という生涯に
1つしか食べられない実をいくらでも食べられるチートな
主人公なはずなのに全然食べず、ピンチになってから
どんなスキルが手に入るかもわからないのに食べまくる展開は
意味不明でしか無い。
結局は剣神だよりのままであり、その剣神の強さもいまいちわからず、
そこに依存してイキりまくる主人公の姿は痛々しく、
そんな痛々しい主人公が終盤はろくにでてこないまま、
俺達の戦いはこれからだで物語が終ってしまう。
とんでもないストーリー構成と内容だ。
終盤はただただ主人公は剣が完成するのを待ってるだけという
前代未聞なストーリー展開には度肝を抜かれる部分があるものの、
特に2期が決まっているわけでもないのに歯切れの悪いラストは
強烈な消化不良を生んでいる作品だ。
主人公もヒロインもいきあたりばったりで
感情的な行動も多く、それに振り回されっぱなしな
1クールであり、基本的な設定を使いこなせず、
タイトルすら回収できない作品の衝撃は凄まじいものがある。
チートでも良い、いいからスキルの実をもっと食べてくれ。
主人公よ、木の実を食べろと思うような作品は
この作品が最初で最後かもしれない。
個人的な感想:いつもの
なろう系作品の場合は「いつものやつ」という言葉をよく使う。
転生してチートを手に入れて男の欲望の限りを尽くす、
そんな作品を何十作品も見てきたがゆえにだ。
しかし、この作品はそんないつものヤツとは違う。
チート能力を手に入れたのにそれを活かさず、
男の欲望の限りを尽くすわけでもなく、
だらだらとしたストーリーを展開する。
いつものやつが恋しくなるほどひどい作品だったものの、
ありとあらゆる部分での突っ込みどころが
逆に楽しくもなってくる作品だった。