評価 ★★☆☆☆(21点) 全約45分
あらすじ1年前に東京で起こった謎の大災害。これにより東京は無政府状態となり、同時にリンクスという謎の能力者も生み出した 引用- Wikipedia
え!?7日間で日本円が紙くずに!?
本作品はソーシャルゲームである「モンスターストライク」の
Webアニメ作品。モンスターストライク自体もアニメになっているが、
この作品はまた別のアニメ化となる。
監督は亀井幹太、制作は横浜アニメーションラボ。
なお、本作は「インタラクティブアニメ」となっており、
物語の結末を視聴者が選択できる仕組みになっている。
Webアニメだからこそのやり方といえるかもしれない。
大停電
画像引用元:モンストアニメ『ハレルヤ - 運命の選択 -より
(C)XFLAG
この作品は「モンスターストライク」でありながら
「モンスターストライク」とは世界観が違う。
東京が謎の7日間の大停電に陥り、
パニックになり、世界から孤立化したらしい
そんな状況で「リンクス」という能力に目覚める若者が居た。
リンクスはスマホを用いて「グッジョブ!」を集めることで強くなる。
これを長々と説明する。
物語の結末の選択まで30分しか尺がなく、
とっとと世界観を説明したいのは分かるが、色々と突っ込みどころが多い。
そもそも7日間くらいの大停電で世界から孤立する意味もわからず、
埼玉や千葉、神奈川の人たちや公務員は何をしていたんだと
思わず突っ込みたくなる。東京ではなく日本中で大停電になった
という設定なら分かるが、なぜか東京一極集中だ。
そんなパニックの中で活躍したのがいきなり目覚めた謎の力リンクス。
そもそも大停電なのにスマホは使えたのか、グッジョブ=いいね!を
集める意味とは?と思わず色々と突っ込みたくなる所、
「それが神の力なのか、悪魔の力なのか、未だにわからない」
と突き放されてしまう。
とにかく主人公と、幼馴染なキャラにはその力が宿ったらしい。
世界観自体は面白そうだが、それを全部説明してしまうのは悪手だ。
ちなみにたった7日間の停電で円は紙切れになったらしい。
1年、せめて一ヶ月くらいなら状況も理解できるが、
7日間でそうなるとは思えず、
色々と突っ込みどころが多い。
バトルの時間だぜ!
画像引用元:モンストアニメ『ハレルヤ - 運命の選択 -より
(C)XFLAG
冒頭でそんなよくわからない力、リンクスによるバトルが描かれる。
リンクスやグッジョブを集めるなど色々と設定を積み重ねているが、
結局は能力バトルだ。
この設定ならば「グッジョブ」=「強さ」のはずだが、
彼らがどれだけの「グッジョブ」を集めているのかは教えてくれない。
一応、彼らのバトルは「中継」されているようで、
その間に恐らくはグッジョブの数も変化しているのだろう。
だが、数字は教えてくれない。
「スカウター」はあるのに戦闘力を教えてくれないようなものだ。
グッジョブ=いいねの数が力になるという設定は面白いのに
それを活かしきれていない。
彼らが使う力は「神」とも言える存在の力であり、
グッジョブはある種の信仰だ。
掘り下げていけば面白そうな設定なのに掘り下げてくれない。
主人公たちの過去なども回想シーンで
一気にナレーションベースで明かされるが、もうとにかく尺がない。
これが尺が決まってるTVアニメや劇場アニメなら理解できるが、
Webアニメならばいくらでも尺に縛られずに作れる。
予算の都合もあるのかもしれないが、とても結末まで30分の尺で
描けるほどの設定ではなく、設定自体は面白そうなのに
それを短い尺に収めるために、溢れ出てしまっており、
結果的に説明台詞にまみれている。
リンクス
画像引用元:モンストアニメ『ハレルヤ - 運命の選択 -より
(C)XFLAG
この能力は25歳くらいまでしか使えず、どんどん弱まる。
若者だけの能力だ。そんな若者だけの能力であるがゆえに
悪用するものもいれば正義を行うものもおり、
能力者同士の中でもいざこざが生まれる。
「大人」は彼らを管理しようと考えるものもおり、
若者の持つリンクス能力、異次元とつながることで
強大なエネルギーを得る手法を利用しようとしているものもいる。
それぞれが自分が持ち得た特別な力で何をなすのか。
ある種の思想のぶつかり合いだ。
それぞれに「正義」があり、それを守ろうとする。
そんな中、終盤の5分位で急に話が動き出す。
主人公たちのリーダー格の一人である「修羅」と
主人公の幼馴染である「暁」は政府の陰謀に抗おうとする。
そんな彼らを主人公は止めに来る。
そもそも政府の企みである「高次元」からのエネルギー抽出も、
別に悪というわけではない。
7日間の大停電で東京は大混乱であり、廃墟になってる部分も多い。
円の価値が0になるほど経済的にも痛手を負っている。
そんな中で「新しい無尽蔵のエネルギー」を
大人は利用としようとしてるだけだ。
修羅と暁がなぜそこまで大人の目的に逆らおうとするのか
いまいちピンとこない。
彼らの仲間が修羅に対して言うことは正論だ。
「大停電で被害を被った日本全体が助かるの」
そんな彼女に対して
「1番被害をかぶった奴らが1番我慢しなければならないんだ」
と修羅はのたまう。
そんな彼に対し彼女は
「クラウン(彼らのチーム)を政府と対等の立場にし
交渉できるようにしよう。弱い人達もいる、軽はずみな選択をするな」
正論だ。彼らは「試されてる」「時間がない」とあせるが、
もう少し冷静になれと突っ込みたくなる。
修羅と暁が大暴れする中で主人公に選択の時が来る。
暁の手を取るか、暁を止めるか。
止める選択
画像引用元:モンストアニメ『ハレルヤ - 運命の選択 -より
(C)XFLAG
止める選択をすれば戦闘が続く。
そんな中で「修羅」に時間制限が着てしまう。
自分の力が無くなるからこそ彼は焦っていた。
そんな彼の思想に影響されてしまったのが暁だ。
もちろん彼らの行動は中継されており、
「修羅」が力尽きると「暁」にグッジョブが大量に入りパワーアップし、
大暴走だ。だが、そもそも彼らは何のために
戦ってるんだっけ?と思ってしまう。
主人公もグッジョブを得てパワーアップするものの大人は蚊帳の外だ。
争いの後、主人公は大人に約束させる。
「この先、不公平のない良い社会を作るために」
約束を守るかどうか主人公たちは監視する役目になる。
一方で大人たちの計画は無事成功する(笑)
じゃあ、そもそも修羅と暁はなんのために装置を壊そうとしたのか。
物語自体がしっくりと来ない。
手を取る選択
画像引用元:モンストアニメ『ハレルヤ - 運命の選択 -より
(C)XFLAG
手を取る選択をしても修羅は結局力尽きる(笑)
修羅さんが力尽きないルートと言うのは絶対に存在しないのは
ある意味で面白い。
主人公や暁にとっては東京の人たちは騙され搾取されており、
大人や政治家たちは不正を行っており、許せないらしい。
だが、少なくとも大停電から1年、リンクスという未知の能力者か居る中で
食料の配給などは行っているようで、
大人が「不正」をしているというシーンがまるで無い。
彼らを止めるキャラクターはこんな事を言う。
「いっときの熱狂、自分の言葉に酔ってるだけということを分かりなさい」
正論である。どちらの選択をしても彼女は正論だ。
こちらの選択を取れば日本はさらなる混乱に巻き込まれる。
高次元のエネルギーで復興と日本の再建を目指すはずだったのに
彼らのせいで台無しだ。
亡くなる方も多く現れるだろう。彼らの選択が正しいとは思えない。
不正
画像引用元:モンストアニメ『ハレルヤ - 運命の選択 -より
(C)XFLAG
彼らも、彼らを見ている「大衆」も不正がある、不正があると
言いまくるのだが、その「不正」とはなんなのか、
それが結局いまいちわからない。
本編を見終わった後にもう1度見直してみたが、
大人が「不正」をしているというシーンがほぼない。
なんか悪そうな顔の描かれない政治家や企んでいそうなキャラは居るが、
彼らも一応、建前上は「日本のため」に
高次元のエネルギーを取り出そうとしてるだけだ。
もしかしたら、利権や海外との裏取引なんかしてる人もいるかも知れないが
そういうことは明確には描かれない。
装置の詳細については国民には知らせていないものの、
別に装置が稼働したところで東京の人の命が犠牲になるわけでもない。
大人はリンクス能力者たちを支配、管理しようとしており、
それに対しても不満はあるようだが、
リンクスたちも政府と協力しつつ、
リンクスの技術を使ったエネルギーで日本を活性化すればいいだけだ。
そもそもリンクス能力を使って悪いことをしている若者も居るわけで
ある程度の管理は必要だろう。
7日間の大混乱で政府は東京を「見放した」らしいが、
肝心の大停電の中での出来事がほとんど描かれていないため、
具体的にどう見放し、どうリンクス能力者が活躍したかがわからない。
管理されたくない、東京で俺たちは俺達の国を作ると言い放つが、
身勝手の極みもいいところだ。
政治家や大人が弱者や子供を「搾取」し「不正」をしている。
と彼らは何度も言うが、見ている側に具体的にそれが伝わってこない。
なんか悪そうな政治家がなんか企んでる。
しかし、実際は別に悪事ではない。
災害はあったものの高次元のエネルギーを発見し、
それを利用し、日本を復興させようとする。
これのどこか不正で悪なのだろうか。
結局、彼らが戦ってる理由に
最後までいまいちピンとこないまま終わってしまった
総評:尺不足
画像引用元:モンストアニメ『ハレルヤ - 運命の選択 -より
(C)XFLAG
全体的に尺不足だ。
世界観、設定、キャラクター数、どれも選択後の尺とあわせて
45分という尺では足りないくらいに詰め込まれてしまっており、
前半は説明台詞ばかりで構成されており、
終盤で話が一気に進むものの、根本の大人の不正がいまいちわからない。
やりたいことは分かる、描きたいことは分かる。
だが、尺が足りないせいで細かい部分の描写がほぼできておらず、
キャラクターもほとんど居ても
居なくもいいようなキャラも多く、使いこなせていない。
世界観や設定、キャラクター、ストーリーは決して悪くないだけに
きちんと「大停電の日」から1クールないし2クールくらいで
しっかりとアニメ化された面白い作品だったかもしれないだけに、
中途半端に45分くらいの尺でWebアニメになってるのが
もったいない作品だった。
個人的な感想:インタラクティブの意味
画像引用元:モンストアニメ『ハレルヤ - 運命の選択 -より
(C)XFLAG
物語の結末を選択させるというのは面白いものの、
2パターン見ても結局、どっちもどっちな感じだ。
いっそ2クールくらい描かれた後に最後の結末を
視聴者に選ばせるなら面白かったかもしれないが、
色々な要素を短い尺の中で使いこなせていない作品だった。
個人的には「鬼滅の刃」な主人公の声で
「水の龍」を出された瞬間、ちょっと笑ってしまった。
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