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濃厚で濃縮な総集編映画「ハイキュー!! 終わりと始まり 勝者と敗者」レビュー

ハイキュー!! 終わりと始まり 勝者と敗者 映画
(C)古舘春一/集英社・「ハイキュー!!」製作委員会・MBS
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評価 ★★★★☆(65点)

映画「ハイキュー!! “終わりと始まり”」予告編

あらすじ 2014年にテレビ放送された「ハイキュー!!」の劇場版。テレビアニメ全25話を再編集し、新規カットも加えて製作された2部作引用- Wikipedia

濃厚で濃縮な総集編映画

本作品はハイキュー1期の総集編。
2部作で制作されており、2部作をまとめたレビューとなる。

終わりと始まり

総集編というのは難しい。
2クールないし4クールほどある作品を1時間半や3時間位でどうまとめるか。
かつて総集編映画ブームが有り、ある程度以上ヒットした作品は
総集編映画が制作される流れがあったが、
中には適当な編集で済まされるものがあった。

この作品の序盤はかなり見やすく仕上がっている。
主人公がテレビでバレーボール選手を見かけバレーを始める。
そこから一気に時系列が高校へと移り変わる。

本来なら「中学生」のときからストーリーが始まっており、
そこで後の相棒ともいえる「烏丸」と出会い、戦うも負けるという
ストーリーの始まりが描かれているのだが、
この部分はばっさりカットしつつ、回想でサクッと振り返っている。

個人的にはこの中学生編の1話のエピソードから
ハイキューという作品に取り憑かれた印象があるため
がっつりとカットされたことは残念ではあるものの、
カットしつつも回想で振り返りつつ、自然にストーリーを繋いでいる。

クセ強

TVアニメ本編でも感じたことだが総集編で
ぎゅっと圧縮されると余計にハイキューのキャラの濃さを感じることが出来る。
孤高の王子様である影山、主人公である日向元気いっぱいな少年ぷり、
性格の悪い月島etc….とTVアニメ本編よりも短い尺なのに、
きちんとキャラクターの印象が残るのはハイキューのキャラの魅力があってこそだ。

同時に「ヒロイン」たるマネージャである清水 潔子の
可愛さと可憐さも際立つ。台詞は少ないものの、
ちらっと映るだけで華があり、数少ない女性キャラだからこそ、
尺が短い総集編の中で可憐さが光る印象だ。

ハイキューはもともとテンポのいい作品だ。
スポーツアニメにありがちな回想シーンもちょこちょことあるのだが、
それがくどくないのもハイキューの良さでもある。
それが総集編になるとより際立つ。

サクサクとしたテンポで描かれるハイキュー、
だからこそキャラの魅力もストーリーの面白さも、
密度が濃ゆくなって伝わる。

決して適当な編集ではない、もし、TVアニメ本編を見ていない人が
この総集編を見てもストーリーとキャラクターを理解し、
きちんとハイキューの魅力を感じられる。

試合

ハイキューといえば試合だ。
履いている靴が床を蹴る音、ボールを弾き、防ぎ、叩く、
その音の臨場感は本来は劇場で味わえば
TVアニメで味わうよりも素晴らしいものだったろう。
私は残念ながら本作品をNetflixで見てしまってるがゆえにそれは味わえない。

スピード感のある試合の模様をきちんと描きつつ、
それが同時にキャラクターの掘り下げと印象付けにつながっている。
試合が描かれば描かれるほどキャラの印象が強くなり、
一人ひとりに思い入れが生まれる。
同時に試合のたびにキャラも成長している。

主人公である日向はバレーボール選手としては致命的な
背の小さな少年だ。自分よりも高い壁が常に彼の前には存在する。
なら、そんな「壁」をよければいい。
自分にはない他人の才覚を妬むより、自分にできることをなす。
まっすぐに成長していくキャラクターたちが眩しいほどだ。

憧れの10番、そんな背番号を背負った日向という主人公とともに
クセの強いキャラクターたちが成長していく。
丁寧に描かれるストーリーがハイキュー!の面白さを
呼び起こされる。

ゴミ捨て場の決戦

主人公のチームメイトはまだ互いのすべてを知っているわけではない。
新入生が入ってきてようやく形になったチームだ。
そんな彼らの相手は「音駒高校」だ。

かつて主人公たちが所属する烏野高校と戦った高校であり、
長年のライバルだ、まるでゴミ捨て場で戦うカラスと猫のような
ゴミ捨て場の決戦を繰り広げてきた。

スポーツアニメにおいて戦うべき敵は重要だ。
最近は1クールのスポーツアニメも多いが、
スポーツアニメはどの作品も「スポーツ」という多人数が
出てくるスポーツを扱っているからこそ1クールという尺では
掘り下げ不足になってしまって、敵の描写も適当になることが多い。

しかし、この作品は違う。2クールという尺もあるが、
2部作の前半たる「終わりと始まり」の部分、
本編における1クール目の部分できちんと敵でありライバルである
「音駒高校」のキャラもきちんと掘り下げている。

敵にとって予想外な動きをする日向、
だが、敵もそんな予想外な動きに慣れていく。
背が小さいからこそ、誰よりも早く、誰よりも高く飛ぼうとする彼が
止められてしまう。

そこでくじける主人公ではない。日向という主人公は真っ直ぐだ。
眼の前に立ちはだかる壁を嫌っていた彼が、眼の前の壁にワクワクしていく。
乗り越えられる壁を彼自身が目を見開いて越えようとしている。

「烏丸」に任せっきりだったボール運びを、
彼が目を見開いて自分自身で狙った場所に打つ。
丁寧な試合の描写が、キャラクターの成長を感じさせてくれる。

マッチポイントを繰り返す試合、ボールを落としたほうが負ける、
そんなバレーボールの面白さを
アニメと言う媒体でしっかりと感じることが出来る。
それが総集編でも変わらない。

勝者と敗者

2部作の後編たる「勝者と敗者」では1期の2クール目からの
ストーリーが1時間半ほどでまとめられている。
3年生にとっては高校生活、最後のインターハイだ。
3年生達は複雑な思いを抱えている。

そんなインターハイでの試合はかつて負けた伊達工業高校だ。
主人公である日向たちが入る前の3月の試合、
彼らにとっては因縁の相手だ。

スピーディーな試合運びが総集編ということで
よりスピーディーにテンポよく展開していく。
もともとテンポがいい作品なだけに、総集編で細かくシーンを
カットしながら編集しているからこそ、そのスピーディーさが
より2部作の後編たる「勝者と敗者」で極まっている。

カット

特にこの後編のほうはカットが多い。
本編を見て、覚えている人だと、そのカットされたシーンの多さは
気になるところかもしれないが、初めてハイキューという
作品を見る人でもストーリーが自然につながって楽しめると感じるほど、
かなり自然なカットだ。

前半は他校との試合シーンは1試合のみだったが、
後半は2試合もある、その試合を見せるためのカットであるがゆえに
仕方なくはあるが「常波戦」がまるまるカットされているところは
個人的にはかなり気になるところではあった。

そんなカットされたシーンはあるものの、映画だからこその新規カットもある。
3分に満たない新規カットではあるものの、
原作にはあるがアニメにはないシーンを総集編だからこそ
いれるファンサービスもきちんとある。

伊達工業高校

TVアニメ本編で1度見た作品ではあるが、
5年ほど前に見たきりなので記憶も薄れてる。
だからこそ、もう1度ハイキュー1期の面白さをこの
総集編映画で楽しめる印象だ。

伊達工業高校は1度負けた相手との戦いだ。
主人公たちが居なかった時代に戦った相手、3年の先輩たちは
このインターハイが最後だ。負けることは許されない。

烏野高校はこの数ヶ月で変わった。
王子と小さな巨人が烏野高校に入ったことで確実に強くなっている。
「高校生活」はわずか3年しか無い。
他の学生スポーツも同じだが、3年しか無いからこそ入れ替わりが早い。
1年前に弱かったチームが1年後には強豪校になる可能性すらあるのが
学生スポーツの面白さでもある。

高身長な選手の居る「鉄壁」の伊達工業高校、
主人公である日向にとっては苦手な相手だ。
烏野高校で強いのは影山と日向だけではない、
「エース」と呼ばれる先輩もいる。

たとえコートに日向がいなくとも、先輩たちがボールにしがみつく。
手だけではない、足も、体全体を使ってボールを自身のコートに落とさせない。
前半では掘り下げ不足だった先輩たちが、この後半で一気に掘り下げられる。
卒業が迫ってる先輩たちだからこその試合模様が熱く、涙腺を刺激する。

敵である「伊達工業高校」も同じだ。
彼らの中にも3年が居る、彼らにとっては最後のインターハイだ。
そんな伊達工業高校のエピソードもしっかりと描かれることで、
この作品はより深みが出ている。
試合後に伊達工業高校の3年は後輩たちに涙を見せず、隠れて悔しさをこぼす。

「もっとやりたかったな、引退したくねぇな…」

彼らは決して強い選手ではない、強い後輩がいたからこそ
ここまで勝ち上がってきた。だからこそ悔しさがある。
もっと強ければ、もっと時間があれば、
過ぎ去った時間を巻き戻すことは出来ない。

高校生スポーツにおける「引退」の歯がゆさが
見る側にも痛いほど伝わってくる。
総集編で尺が短くなってるからこそ、巻き戻せ無い時間がより
刹那なものになっており、よりキャラの心情が伝わる。

青葉城西

ラストに描かれるのは青葉城西戦だ。
イケメンでナルシストなセッター「及川徹」が存在するチームだ。
かつて影山と同じ中学に所属しバレーボールをやっていた先輩だ。
そんな大王様な先輩は優秀な目と耳を持っている。

主人公である日向と影山、そんなコンビが試合中に交わす「合図」を
あっさりと見破いてしまう。勝ってコートに残る、それが
影山の焦りにもつながっていく。
だが、そんな焦りを払うのは相棒でありライバルである日向だ。

更に光るのはは先輩だ。
新入生である「影山」ほど優秀ではない、だが、3年間、
烏野高校のバレーボールに所属し、セッターを務めてきた菅原が流れを変える。
この後編は「3年生」にもフィーチャーしたストーリーだ。

彼らのキャラを立て、掘り下げ、引退が迫る3年生を描いている。
才能という意味では日向や影山ほどではない3年生たちだ、
だが、彼らは努力で、友情で、才能を補っている。

バレーはチームスポーツだ、個が強くても勝ちには繋がらない。
中学生時代、個の強さはあってもチームを勝利に導くことが出来なかった
日向と影山だからこそ、それをよくわかっている。
彼らも先輩たちに影響されて成長していく、
それが試合の中でしっかりと感じられる。

だが、負けてしまう。
3年生達にとって最後の試合が終わってしまう。
決して誰かのせいではない、ミスしたわけではない、
シンプルなほんのわずかな実力差だ。

TVアニメ本編では何度も繰り返すデュースが
この試合の面白みでもあったが、総集編はサクッとした展開になっている。
TVアニメと総集編、どちらも面白いものの、
やはり総集編であるがゆえにサクッとした部分はある。

特に試合後の「食事」のシーンは個人的にはハイキュー1期の中でも
涙腺を刺激されて涙を流したシーンだっただけに、
それがエンドロールの最中にセリフ無しでサクッと
流されてしまったところはやや残念なところだ。

そのあたりは総集編であるがゆえの欠点ではあるものの、
総集編だからこその密度の濃ゆさと
サクッと1期を振り返られる作品になっていた

総評:密度が濃ゆい!

全体的に、前後編の3時間ほどでハイキュー1期の2クールの
ストーリーを振り返りつつ、きちんとキャラクターの印象が残るようになっており、
もし、この作品でハイキューという作品を初めて見る!という人でも
問題なく楽しめる素晴らしい総集編映画になっている。

前編では物語の始まりである中学生編をカットしつつも、
回想シーンでわかりやすくストーリーを自然につなげており、
癖のあるキャラクターを出しつつハイキューの、
バレーボールの魅力をきちんと描いている。

後編では試合を中心としたストーリー構成になっており、
「常波戦」がまるまるカットされているところは残念ではあるものの、
伊達工業高校と青葉城西の試合はきちんと描きつつも、
細かくカットしながら綺麗に1時間半でまとめている。

特に後編は3年生、そして引退をフィーチャーしたものになっており、
主人公たちが戦うべき敵もきちんと印象がつく、
そこもまさにハイキューの魅力であるがゆえに、
総集編でもそれをきちんと感じることが出来る部分だ。

ただ、やはり本編をきちんと見ているとカットしている部分は気になる。
特に後編での「常波戦」のカットや、青葉城西の試合のあとの
食事のシーンがエンドロール中にさくっと流されてしまうのは
本編を見ていると「もったいない」と感じてしまうところだ。

このあたりは総集編の欠点でもある。
この作品でハイキューを初めて見るという人も楽しめるものになっており、
かつてハイキューを見たけど記憶が薄いという人も、
記憶を呼び起こすための復習としての見るならばいいのだが、
TVアニメ本編の2クールかけて描いた魅力を100%味わい切ることは出来ない。

繰り返されるデュース、そして試合後の涙を流しながらの食事、
ハイキューの魅力を最大限に味わうならTVアニメ本編を見るしか無い。
そういった総集編だからこその欠点はあるものの、
前後編3時間でTVアニメ1期の内容がしっかりとまとまっており、
新規カットもあるため、1期の記憶が薄まってる人には
おすすめしたい作品だった。

個人的な感想:振り返り

今から4年前に1期をみて、2期以降は見ておらず、
現在公開中の映画を見るために1期の復習がてらに
この作品を見ることにしたのだが、
改めて見返すとハイキューの面白さを素晴らしさを感じられた。

ただ見てる最中にカットされてる部分の記憶も呼び起こされてしまったために、
特にラストの食事のシーンダイジェストは残念な部分ではあるものの、
いい感じに忘れていたハイキュー1期の記憶が蘇る作品だった。

よく総集編だけ見て2期や映画を見る人がいるが、
やはり総集編だけではその作品の魅力を味わいきれないと
痛感できてしまう部分もあった。
この作品は総集編としてはうまくできているものの、
やはりカットされた部分があってこそのハイキューだ。

あくまでもTVアニメ本編を見た人が補完や、記憶を呼び起こすため、
もしくは新規カットを目的にしたり、
劇場という場所で作品を見ることを目的としたものが
総集編なんだなと実感できてしまう、そんな作品だった。

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