ファンタジー

世にも奇妙なグリム童話「グリム組曲」レビュー

グリム組曲 ファンタジー
Netflixより
スポンサーリンク
この記事を書いた人
笠希々

オタク歴25年、アニメレビュー歴13年、
YouTube登録者11万人な私の個人的アニメ批評。
Xもやってます

投げ銭で支援する

評価 ★★☆☆☆(36点) 全6話

『グリム組曲』 予告編 – Netflix

あらすじ 国中から収集したメルヘンを編纂しているヤコブとヴィルヘルム兄弟と、妹のシャルロッテ。兄弟が集めたメルヘンに対して、シャルロッテは疑問を投げかける。引用- Wikipedia

世にも奇妙なグリム童話

本作品はNetflixオリジナルアニメ作品。
監督は久保雄太郎、米谷聡美、金森陽子、赤松康裕
橋口淳一郎、鎌倉由実、竹内雅人、仲澤慎太郎と
全6話で監督が毎回違う形式になっている。
制作はWIT STUDIO、キャラクターデザインはCLAMP

CLAMPらしさ

見出して感じるのは「あーCLAMP」だなという美麗なキャラデザだ。
コードギアスやカードキャプターさくら、
CLAMPを代表するような作品のキャラクターたちを彷彿と
させるようなデザインは毎話、出てくるキャラクターが違うのだが、
印象に残りやすいデザインになっている。

特に中盤になると「小狼」のようなキャラデザまででてくる(笑)
そんなCLAMPなキャラクターデザインと、
ゴシック感全開の音楽が奏でられる中で描かれるのは
「グリム童話」の世界だ。

シンデレラ、赤ずきん、ヘンゼルとグレーテルetc….
誰もが知ってる有名な話、グリム童話集とよばれるものは
グリム兄弟が集めたものだ。
彼らが集めた世界中のお話、そんなお話を読みながら
彼らの妹である「シャルロッテ」は疑問に思う。

本当にシンデレラはいじめられていたのか
赤ずきんが普通の少女ではなかったのではないのか。
小人の力を借りることが、
必ずしも幸せに繋がるとは限らないのではないか。

この作品はそんな彼女の妄想、ifなグリム童話ともいえる。

シンデレラ

1話で描かれるのはシンデレラをモチーフにした物語だ。
といっても舞台は海外ではなく、日本だ。
本来のシンデレラでは継母とその連れ子である
姉たちに日々いじめられていたシンデレラが
ある日、晩餐会に参加して…というストーリーだ。

この作品でもそこは変わらない。だが、シンデレラが違う。
姉たちにいじめられているわけではない、
だが、なぜか彼女はまるで姉たちに
いじめられているかのように振る舞う。

自らの立場を落とし、
姉たちからいじめられているように振る舞う。
姉たちの評判はどんどんどん悪くなっていく。
姉たちはそんな彼女に不気味さを感じ、逃げ出したくなってくる。

だが、彼女は逃さない。
継母を毒で弱らせ、実の父を殺し、姉たちが苦しむ姿を楽しんでいる。
彼女にとってはお人形遊びと同じだ。

パーティーに参加し、そこで見初められる。
そんな展開自体は変わらないものの、
もし「シンデレラ」が悪女だったらというifのストーリーが
どこか不気味に展開していくさまがたまらない。

原作や、よく知られているグリム童話とはまるで違う。
キャラクターの名前も、舞台も、時代背景も、立場も、設定も。
だが、下地にあるのはグリム童話だ。

奇妙な雰囲気、どこか恐怖を煽る作画や演出、
ゴシックなBGMが、まるで上質な
短編小説でも読んでいるかのような感覚に浸らせてくれる。

赤ずきんとヘンゼルとグレーテル

ただ2話以降はかなり突飛な話になっている。
2話では赤ずきんが描かれるのだが、舞台は近未来だ。
仮想世界で偽りの世界で生きている人が多いという世界観の中で、
「現実」という生きている実感を味わうために、
リアルで人を殺す狼がいる。

そんなサイコパスな狼が赤ずきんを狙うものの、
実は赤ずきんも狼だったという話だ。
あまりにもぶっとんだ世界観と過激なストーリーは
元の話から逸脱した部分も多く、ちょっと首を傾げてしまう。

3話のヘンゼルとグレーテルもかなりぶっ飛んでいる。
序盤は「約束のネバーランド」のごとく、
子どもたちが管理され育てられている。
だが、ある日、この世界の真実にヘンゼルとグレーテルは気づく。

彼らは地球が住めなくなった人類が子孫を生き残そうとしたものであり、
外の世界で生きていくために教育し、育てている。
育てられた子どもたちは未開の惑星で生きていくことになる。
約束のネバーランドからDr.Stoneがはじまるようなエピソードは
面白いものの、2話と同じくぶっ飛んでいる。

1話こそ大元になった話を感じさせる部分があるのだが、
2話と3話はそんな大本の話が薄まった2次創作でも
見ているかのような気分になってしまう。

1話1話監督が違うからこそ、
そんな監督ごとの味付けが違う作画や雰囲気は面白いのだが、
脚本自体は当たり外れが大きい。

小人の靴屋

4話の小人の靴屋は個人的には好きなエピソードだ。
もともとのストーリーは貧乏な靴屋が働き詰めで寝てしまい
目覚めると小人たちが勝手に靴を作ってくれたという話だ。

そんなストーリーをこの作品では日本に舞台を移し、
靴屋ではなく「小説家」の話になっている。
20年前にヒット作を出した彼ではあるものの、
最近はスランプで売れない。

だが、ある日、酒を飲んで目が覚めると
自分が書いた覚えのない小説が目の前にはある。
書いた覚えはないのに自分の字と瓜二つで、
自分が使うような言い回しを含んだ作品だ。

読んでみても面白いとは思えない、だが、
そんな小説を試しに出版社に送ってみると、
出版社はその小説に目をつけ、ヒット作となる。
自分が書いた覚えがないのに、
お金に困っていた彼はそんな作品を世に出してしまう。

自分が書いたものは評価されず、
自分が書いたかどうかもわからないものは評価される。
小説家、クリエイターとしての苦悩だ。
書きたいものが売れるものとは限らない。

そんな悩みの中でまた泥酔して眠りこけると
自分が書いたおぼえのない作品が目の前にはある。
金のために自分の作家性を売るのか、
金を諦めて自分の作家性を貫き通すのか。

元のグリム童話の話とは違うものの、
このエピソードはどこか世にも奇妙な物語を
思い出す面白さを感じさせるエピソードだ。

ブレーメンの音楽隊

ブレーメンの音楽隊は動物たちが音楽隊にはいるために
旅をし、その中で泥棒の家にたどりつき、
食べ物にありつくというような話だが、
この作品では色々と変わっている。

なにせ動物ではない(苦笑)
名前こそ犬やロバという名前なのだが、
西部劇のような世界観で用済みとなった者たちが
ブレーメンという場所を目指すという話になっている。

これ1本だけで最遊記のようなストーリーを
作れそうな感じではあり、キャラクターデザインもいいのだが、
1話完結のストーリーとしてはやや微妙であり、ぱっとしない。
居場所を失った女性たちがとある街のならず者を倒し、
その中で生きていた少女が仲間になり、その街にいつく。

2クールくらいのアニメならば面白そうな1話ではあり、
WIT STUDIOらしい戦闘シーンなど見どころはあるものの、
1話完結のはなしとしては6話の中で1番微妙な印象を受けた。

ハーメルンの笛吹き

ハーメルンの笛吹きは元のエピソード自体も
記憶が薄い人も多いだろう。
ねずみの大発生で困っている街に、1人の男が現れ、
男は笛の音でねずみを退治したものの、町長たちは約束の報酬を支払わず、
男は別の笛を吹き、街中の子どもを岩山へ連れ去ってしまう話だ。

この作品ではロリコンおじさんの話になる(苦笑)
ロリコンおじさんは一人の聡明な少女に惚れている、
そんな少女に愛が描かれた本を彼は見せる。
どこぞの男にとつぐ予定のある少女は愛を知らない。

誰が誰と結婚するかは村長が決める、そんな村で愛や
音楽を教えるハーメルンが現れる。
まるで知恵の実をてにしたアダムとイブのように堕落する。
自由を手にした少女、それは人としての罪を抱えることでもある。

そういうようなエピソードを描きたいのはわかるが、
元のエピソードからあまりにもかけ離れており、
最後はジブリみたいになる(苦笑)

ラストの2話のエピソードは色々と疑問に残る部分もあり、
釈然としない感じの作品になってしまった。

総評:グリム童話の二次創作

全体的に見てグリム童話の二次創作のような作品だ。
全6話のエピソードを違う監督が違う物語を1話完結で
グリム童話を下地に描く、その試み自体は面白かったものの、
全6話のエピソードで当たり外れが多く、
あたりのエピソードは楽しめるものの、
ハズレのエピソードは首を傾げてしまう。

題材自体は面白いのだが、その題材をうまく扱えていない。
1話のシンデレラや4話の小人の靴屋は題材をうまく扱えていたものの、
2話や3話の世界観のぶっ飛び具合、5話や
6話の話自体が洗練されていない感じも含めて疑問が残るところがある。

全6話、見る人によって好みもあるだろう。
作画のクォリティは素晴らしく、キャラクターデザインも優秀だ。
毎話、グリム兄弟がゲスト出演的に色々なキャラに扮しており、
そういう細かい部分を探す面白さもある。

アニメーションのクォリティは高いものの、
監督によってクォリティや話の違いが大きく、
1クール全12話くらいでやれば印象は違ったかもしれない。
特に最終話など監督がジブリ作品に多く関わっており、
それを如実に感じさせるクセの強さもある。

かつて「日本アニメーター見本市」という短編企画があったが、
ノリとしてはアレに近いものがある。
日本アニメーター見本市も面白い企画だっただけに、
この作品もセカンドシーズンなどが制作されて、
もっと多くの作品が手掛ける突拍子もないグリム童話を
見てみたいと感じさせる部分もある作品だった。

個人的な感想:掴みどころ

1話の段階で「あーこういう感じの作品なのか」と
噛みしめる感じだったのだが、2話と3話で突き放された感じがあり、
4話でそれがもとに戻るものの、5話と6話でまた突き放されてしまった。

試み自体はすごく面白いものの、それが作品として
完成度の高いものになっておらず、全6話ではなく
全12話くらいでみてみたかった作品だった。

人によって好みが分かれるエピソードが多いだけに、
全6話試しに見てみると意外に楽しめるエピソードが
あるかもしれない。

「グリム組曲」に似てるアニメレビュー

「グリム組曲」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください