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これぞ連邦の白い悪魔「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」レビュー

3.0
機動戦士ガンダム復讐のレクイエム SF
©SOTSU・SUNRISE
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評価 ★★★☆☆(57点) 全6話

『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』本予告

あらすじ 宇宙世紀0079年、ジオン公国は地球連邦政府からの独立を宣言し戦争状態に突入した。新兵器モビルスーツの活躍により序盤こそ優位を保ったジオン軍だったが、地球の全面制圧を行う戦力はなく戦況は膠着する。引用- Wikipedia

これぞ連邦の白い悪魔

本作品はNteflixオリジナルアニメとして制作された作品。
監督はギャビン・ハイナイト、制作はサンライズ、SAFEHOUSE

フルCG

この作品はフルCGで制作されている。
映画冒頭からハイクォリティなCGで描かれる
機動戦士ガンダムの世界は重苦しく、どんよりしている。
ジオンと連邦による戦争、そんな戦争も激しさを増している中で、
ヨーロッパ戦線のジオン軍の視点で物語は描かれる。

はっきりいって人物のCGに関してはいまいちだ。
海外で制作されたことがわかるような実写的な
キャラクターデザインはガンダムといよりは、
海外ドラマでも見ているような感覚になる。

CG特有のゆらーっとした体の動きもあり、
そこにこの作品ならではの「カメラワーク」がくわわることで、
画面全体がどことなくPS5あたりのゲームでも
プレイしているような感覚になる。

特に主観視点に切り替わったときは、
今トーラーを握ればそのまま自分で動かせるのでは?と
感じるほどのゲーム感が出ている。

カメラの横の動きなど、かなり激しいカメラワークと
カットが頻繁にあり、そのせいで画面を集中してみていると
「酔う」感覚が生まれる。
FPSのゲームなどで酔いやすい人はいると思うが、
そんな人が見ると画面酔いを起こすだろう。

特に歩兵の視点だと酔いやすい。
ゆらゆらとした画面の動きは無駄にも感じる部分が多く、
血液表現などもかなり過激だ。

そんなデメリットはあるもののMSの表現に関しては
素晴らしいものがある。

白い悪魔

1話では空中からレッド・ウルフ隊が降下し、
とうとつにおそわれたジオン軍の援護をする。
フルCGの欠点といえば「軽さ」だ。
手書きの作画にはある重みがCGになると弱くなり、
こういったロボットが出てくる作品だと欠点が目立ちやすい。

しかし、この作品はきちんと重さを意識している。
MSが動いた際の粉塵、土ぼこり、カメラを意図的に
動かすことでMSという巨大な物質の重さをきちんと
感じさせる演出がある。

MS自体のディティールにもこだわりを感じる。
決して作り立ての工場から出火したてのようなピカピカした
ボディではなく、何度も戦いを繰り広げてきた傷や
汚れがしっかりとあり、一体一体のザクにきちんと特徴があり、
見ほれるような完成されたディティールで描かれている。

主人公はレッド・ウルフ隊の隊長であり女性だ。
サイドを刈り上げたキャラクターデザインの女性は
最近ゲームなどでよく見かける気がするが、
軽口をたたく隊員など「いかにも」なB級アメリカ的な
キャラクターがどんどん出てくる。

こいつ死ぬんだろうなと思うようなキャラが死ぬ(笑)
そういったキャラクター描写の表面的なわかりやすさは、
全6話という短い尺だからこそなのかもしれない。

そんな彼らの前に「白い悪魔」がやってくる。

ガンダム

ガンダムの描写は圧倒的だ、深夜にやってきた白い悪魔は
多勢に無勢だろうと関係ない。ビームライフルを遠距離から放ち、
超高性能な機体を捉えることが出来ず、銃弾があたったところで
その装甲には無意味だ。

あっさりと機体を破壊され、あっさりと舞台は壊滅する。
この「圧倒感」の描写は凄まじく、
ジオンがガンダムのことを白い悪魔と言っていたことも
納得できるほどの「恐怖感」を感じさせるものになっている。

CGだからこそのスピード感のある動きが
余計に白い悪魔の圧倒感を演出しており、
モビルスーツを徹底的に破壊し、
とどめを刺してくるのはシンプルに怖い。

序盤で気になる状況をきちんと作り上げている。
圧倒的な存在であるガンダムEXの描写は
どこか「怪獣映画」すら彷彿とさせるものがある。

とくにモビルスーツを失った兵士の目線で描かれる
白い悪魔の存在は強大な力をもつ巨大な存在だ。
これがゴジラでも話が成り立つのでは?と一瞬考えてしまうほど
本作におけるガンダムは怪獣のような立ち位置になっている。

圧倒的な破壊力、何も受け付けない装甲、目にも止まらぬ機動力、
あまりにも逸脱したガンダムという存在に
主人公たちが対応していくさまは、本当に怪獣映画でも観ているようだ。

ガンダムではあるものの、本作品に出てくるのはガンダムEXという
オリジナルの機体だ。のっているのも当然「アムロレイ」ではない。
一体誰が操縦しているのか、モビルスーツも部隊の大半を失った
主人公は敗走してどうするのか。
多くの名もなき兵士の命があっさり散りゆく戦場で、
生き残ることはできるのか。

逃げても逃げても「ガンダム」は追ってくる(笑)
どことなくゾンビ映画的なニュアンスすら感じる作品だ。

ザク2

そんなガンダムではあるものの、時折違和感のある行動をする。
モビルスーツや戦車に対しては容赦がないものの、
生身の歩兵や明らかに人が乗っている車などは襲わない。
連邦にとってジオンは侵略者だ。
だからこその報復、復讐行為であることは変わらない。

それはジオンにとっても同じだ。
多くの仲間を、家族を連邦に殺された。
戦争というものが生み出す「憎しみの連鎖」は複雑に絡み合っている。
主人公には小さな子供がいるものの、夫はこの戦争でなくなっている。
もうこれ以上、失いたくない。その思いで戦っている。

そんな彼女が逃げた先で、人材も素材も足りない中で、
信頼するメカニックとともに「ザク」を組み立てていく。
多くのものが戦い、散っていった。
その残骸をもって2機のザクを作り上げる。
命を守るために、散っていった命の欠片をつなぎ合わたものだ。

そんな2機でガンダムとジムに相対する。
必死にもがきながら、残された兵器やつなぎ合わせたモビルスーツを使い
主人公たちは勝利する。
基地守る、それが彼女の任務だ。
決して私情にかられて復讐することが目的ではない。

戦う力を奪えば勝利だ。兵士を殺すことが目的ではない。
戦争の目的は相手を殲滅することではない、
たとえ戦う力を失っても生きていればいい。
戦争に負けても敗者になっても命があることが重要だ。

命があれば理解し合うことも可能かもしれない。
宇宙に進出したものが新たな能力に目覚め、
戦争という手段を用いなくても人類がわかり得る日が来るかもしれない。

戦争映画的なニュアンスを強くはらんだテイストは
常に重苦しい雰囲気がまとわりついている。

子ども

終盤になるとガンダムのパイロットと相対することになる。
ジムを盗むために敵基地に潜入した主人公たち、
そこで出会うのは少年兵だ。
主人公と同じくニュータイプに目覚めた彼のバックボーンは
作中では一切語られない。

一児の母である主人公が子どもがいる場所に変えるために、
戦場で敵軍の少年兵と戦い、殺し合う。
たった一人の少年が多くの命を奪う、それもまた戦争だ。
男も女も、子どもも大人も関係ない。
兵士になった以上、役割をこなし殺し合わなければならない。

多くの人が死ぬことで戦争が終わる。
物資がへり、兵士が消耗され、戦争の痛みを
戦争に巻き込まれた者たちが国全体が味わうことで、戦争は終わる。

ガンダムなどのロボットアニメにおいて
なぜ「人型」なのかという論争がかわされることがある。
効率だけ見れば二足歩行の兵器よりも車の形をしていたほうが良い、
今の時代ならAIが進歩したおかげで人が乗る必要性もないだろう。

だが、人型の兵器は「人間同士」の戦いであることを実感させる。
血が流れることで戦争の無慈悲さを人間は学び、実感することができる。
ガンダムの世界ではMSにのりパイロットたちの血が流れることで、
兵士たちが消耗され、戦争の悲惨さが伝わる。

殺したくて戦争をするものなどいない。ガンダムに乗る少年も同じだ。
もしかしたらわかりあえるかもしれない。
だが、それでも人は戦争をやめることはできない。

死んでいったものたちの屍を踏みしめながら、
その屍のために戦ってはいけない。
主人公は復讐ではなく生き残ることを、守ることを目的として
戦っている。

それが最初から最後までブレない。
彼女が復讐ではなく、復讐をしようとするものの心を鎮めようとする。
バイオリニストだった彼女が戦場でザクに乗り、鎮魂歌を歌う。
死んでいった兵士の魂が救われるように、
死んでいった兵士のため復讐を誓うものが現れないように。

総評:ガンダムであり、戦争映画であり、怪獣映画だ。

全体的に観て実に海外っぽい作品だ。
ガンダムという題材、ガンダムというロボットや世界観を用いて
この作品は序盤は「怪獣映画」のように作りつつ、
最後は「戦争映画」のように物語を締めくくっている。

とくに序盤の怪獣映画っぷりは凄まじく、
まるでガンダムがゴジラにでもなったかのような
圧倒的な描写と存在感は素晴らしく、
白い悪魔は伊達じゃないと言いたくなるようなインパクトが有る。

地上戦がメインだからこそ泥臭い戦闘シーンが多く、
リアルな世界観だからこそ夜間の戦闘シーンも多い。
そのなかでフルCGではあるものの、しっかりと重厚感のある
戦闘シーンを描いており、見ごたえのある映像が生まれている。

その反面で人物の描写に関してはCGの描写としても
ストーリーとしても弱い部分がある。
特にCGでの人間の描写に関してはCG特有の
ゆらゆらとした動きもさることながら、そもそものデザインが
アニメというよりは洋ゲーっぽさ全開だ。

主観視点などのカメラワークなどもあるせいで
余計にゲームっぽさが強い画面構成もあり、
このあたりは強烈に好みが分かれるところだろう。

主人公以外のキャラの掘り下げも甘く、
敵のガンダムパイロットの掘り下げもほとんど無い。
全6話ということで仕方ない部分はあるものの、
結局、ガンダムがしたいのか、戦争映画がしたいのか、
怪獣映画がしたいのか、方向性が散漫になってしまった感がある。

これが全6話ではなく1クールくらいの尺があれば
違ったかもしれないが、惜しいという感覚が残る作品だ。
ただ欠点はあるもののガンダムの白い悪魔ぶりは
ガンダムが好きな方ならば必見なシーンだ。

Netflixに入ってる方はそこだけでもチェックしていただきたい。

個人的な感想:ゴジラ

令和のMS IGLOO的なことがやりたかったのかなーという感じは
中盤以降で伝わってきたものの、序盤は完全に怪獣映画だ(笑)
ようやく逃げれた!と思った瞬間にガンダムが現れるシーンなど
怪獣映画やパニック映画ではお約束的なシーンも多く、
そういうお約束的なシーンのせいでB級感もでている。

個人的には好きでもないが嫌いでもないという
なんとも微妙な感じの評価になってしまう作品だった

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