評価 ★★★★★(85点) 全82分
あらすじ 宇宙に浮かぶスペース・コロニーで平穏に暮らしていた女子高生アマテ・ユズリハは、戦争難民の少女ニャアンと出会ったことで、非合法なモビルスーツ決闘競技「クランバトル」に巻き込まれる。引用- Wikipedia
これは壮大な公式◯◯◯◯
本作品はガンダムシリーズの最新作の
劇場先行上映版。
監督は鶴巻和哉、制作はサンライズ、スタジオカラー。
なお本レビューにはネタバレが多文に含まれますので、
ネタバレを気にする方はご注意ください。
ロゴ
スタジオカラーがガンダムを手掛ける。
それだけで去年、大盛り上がりした話題だ。
どんなガンダムになるのか、どんな作品になるのか。
庵野秀明監督はどれくらい口を出してくるのか(笑)
オタクならば好き嫌い問わずにいろいろと気になってしまうだろう。
そんな劇場先行上映版の本作品、
まず冒頭の時点でもうニヤニヤだ。
バンダイナムコのロゴ、そして「スタジオカラー」のロゴがうつり、
最後にサンライズのロゴに切り替わる。
この3つのロゴが同じ作品の中で見れる日が来るとは夢にも思わなかった。
20年前のオタクになったばかりの自分に
「将来、庵野秀明監督がガイナックスを抜けて、
スタジオカラーって制作会社を作って、
エヴァを完結させた後に、ウルトラマンとか仮面ライダーとか
作った後にスタジオカラーがガンダムを作るよ」
なんていっても絶対に信じないだろう。
そんな「夢」が本編が始まる前から詰まってる。
これほど期待してしまうロゴの羅列はなかなかないだろう。
if
この作品において監督は鶴巻監督だ。
庵野監督は脚本の二番手にしかおらず、
「シンガンダムだ!」なんて騒ごうものなら、
鶴巻監督の作品だからと言っている人も多くいた。
だが、この作品を見た後にシンガンダムという
言葉が出てこない人はいないだろう(笑)
冒頭から宇宙世紀であることを隠さず、
宇宙世紀0079年であることも明らかになる。
そう、ファーストガンダムの1年戦争の時代だ。
ジオンと地球連邦の戦いが始まった時代、
そんな時代をナレーションとともにお届けされ、
BGMやSEなどの音もそのまま機動戦士ガンダムのものを
持ってきている(笑)
PVの段階では一切そんなことを明らかにしておらず、
一切の情報を入れずに見た人たちの驚きは計り知れないだろう。
きいたことのあるBGM、きいたことのある設定、
きいたことのあるSE、そして見たことがあるキャラが
まるで主人公のようにそこには存在している。
シャア・アズナブルだ(笑)
声優自体は後退しているものの、姿かたちはまるで変わらず、
シャアアズナブルが存在している。
そんな彼が「ガンダム」に乗り込む。
もはや笑ってしまう展開だ。
この作品は一言でいえば「if」な世界観だ。
もし、あのときガンダムにアムロレイが乗っていなかったら、
もし、シャアアズナブルがガンダムに
乗っていたらどうなっていたのか。
そんなifなストーリーを描いている。
どこか同人誌的なノリ、二次創作的な部分はあるものの、
「機動戦士ガンダム」の作画に似せながらも、
モビルスーツ戦の描き方はスタジオカラーらしい、
CGを用いりつつも、きちんと重力を感じさせる重みが
そこに存在している。
シャアがガンダムのり、頭部のバルカンを試す。
それだけでもうニヤニヤしてしまう。
そんなシャアが乗るガンダムに相対するのは
ガンキャノンだ(笑)
ガンダムの初戦の相手がザクではなく、ガンキャノン。
ガンダムがジオンのものに、シャアのものになってしまったからこその
初戦の相手にはニヤニヤさせられてしまう。
ガンキャノンの攻撃も「これでもか!」と迫力満載に描いており、
気合の入った演出、計算された構図で見せられる
シャアのガンダムの戦闘シーンはもう笑ってしまうほどだ。
音へのこだわりも素晴らしい。
映画館で見るからこその「重低音」の聞いた兵器の音、
MSの足音は破壊音までこだわった音で
大迫力の戦闘シーンを味わうことができる。まさに映画体験だ。
もちろん今後、配信や地上波での放送もあるが、
配信や地上波では味わえない劇場だからこその
映像美と音の迫力を浴びることができる作品に仕上がっている。
ちなみにシャアはホワイトベースこと木馬も奪っている(笑)
地球連邦としては泣きっ面に蜂だ、
あの場所にアムロがいなかっただけでここまで
歴史が変わるのかと思うほどであり、
アムロがいないからこそ歴史も変わっている。
ピグザムが量産されていたり、
「シャリアブル」がアムロがいないおかげで生き残っており、
なおかつシャアの友として彼とともに戦場に立っており、
「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」におけるメインキャラになっている。
これは予想しなかった要素だ。
ニュータイプ
シャアによって拿捕されたガンダムは真っ赤に染め上げられ、
なおかつ「サイコミュ」まで装備している(笑)
もはや圧倒敵どころではない、一騎当千で
シャリアブルとともに戦場をかける姿は脅威でしかなく、
その圧倒的な戦闘シーンにただただ圧巻されてしまう。
特に宇宙空間の中で「頭部」だけを回転させ、
バルカンをうちながら、体の部分も後から回転させるという
姿勢の替え方には思わず笑ってしまった。
これからどうなってしまうのか、
そもそもこれは何を見せられているんだろうか。
あまりの異常事態に脳が混乱しながらも、
シャアが「ガンダム」で出撃する姿に目が離せない。
アムロがあの時、あの場所にいなかっただけで
正史との歴史が変わり、ifの世界観が描かれていく。
地球連邦が負け、ジオンが勝利する。
そんな結末の瀬戸際で地球連邦は
「ソロモン落とし」を決行する(笑)
それを防ごうとするシャアたちではあるものの、
作戦の中でシャアは「ニュータイプ」の向こう側を見てしまう。
なぞの「シャロンのバラ」という要素はよくわからないものの、
何かに呼応しサイコミュが暴走し、シャアは刻を見る。
正史ではララァがアムロに行った言葉だ。
何かを見たシャア、サイコミュの暴走で爆発が起き、
ソロモンは破壊され、シャアとガンダムは行方不明になる。
これが前日譚だ(笑)
まだ、ジークアクスの本編は始まってすらおらず、
ジークアクスというMSすらでてきていない。
映画が始まっておそらく、40分ほどは
機動戦士ガンダムのifの物語が描かれており、
そのifを前提とした世界観がジークアクスだ。
この部分を40分ではなく、丸まる一本の
映画で見たかったと感じるほど濃厚な
「シンガンダム」であり、「新解釈ガンダム」だ。
ちなみにこのあたりの脚本は庵野秀明さんが手がけており、
色々口に出したそうだ(笑)
それほど濃い前日譚が描かれており、
そこから「ジークアクス」が始まる
重力
1年戦争終結から約5年後に舞台が移り変わる。
謎の赤いガンダムがときおりあらわれ、
それを「シャリアブル」率いる舞台は追いかけているものの、
パイロットが誰なのかすら判明していない。
一方でコロニー生まれの少女「マチュ」は憂いている。
コロニーに存在する重力、空、海、どれも偽物だ。
作り物、まがい物のニセモノで地球の環境に
似せているだけに過ぎない。
どこかそんな環境に「自分自身」に彼女は違和感を感じている。
そんな少女が出会うのが移民の少女だ。
ガールミーツガール、女の子が女の子と出会うことで物語が始まる。
映画の前半と後半でまるで雰囲気が変わるストーリー構成は
頭が混乱する部分はあるものの、もう見ていてたまらない。
そんな少女の前に2体の「ガンダム」が落ちてくる(笑)
なにかが変わるかもしれない、自分をつかめるかもしれない、
一歩進めば今とは違う何かがあるかもしれない。
そんな少女の衝動はとまらない。
とっさに乗った「ジークアクス」、そんな少女の想いに
誰にも反応しなかった特殊な「サイコミュ」が答える。
今までガンダムにもMSにも乗ったことがなかった少女が、
ガンダムジークアクスにのり、そして立ち上がらせる
「たっちゃった」
なんかわからないけどわかった!
あっけらかんとした一言からの戦闘シーンはもう圧巻の一言だ。
これぞスタジオカラー、鶴巻監督の戦闘シーンの描き方だ。
自由なカメラアングル、自由な動き、CGをゴリゴリに用いりながらも
決して軽さは感じさせない戦闘シーンはただただ見ほれてしまう。
初めての戦闘からの宇宙空間での戦闘。
なにもかもわからない、だが、彼女の才能が、
「ニュータイプ」としての素質が開花する。
かつてシャアアズナブルが見た景色、ニュータイプにしか見えない景色、
「刻」を彼女は見てしまう。
まるでジェットコースターのごとく物語が展開していき、
急上昇したかと思えば急降下するようなストーリーと
戦闘シーンがたまらない。
もっと見せてくれ、もっと味わせてくれ、
見れば見るほどこの作品を求めてしまう。
ただ前半以上に後半はダイジェスト感がかなり強く、
本来は間にあるであろうエピソードが
尺の関係であえて省かれている感もあるような
ややあわただしいストーリー構成になっている。
ガールミーツガール、二人の少女の出会いから
ジークアクスの主人公であるマチュの物語が始まり、
二体のガンダムが現れ、そしてボーイミーツガールでさらに物語が動き出す。
どことなく百合的な要素も匂わせつつも、
ハイスピードに物語が展開していく。
本来は3話くらいかけて描く話を1話分の尺で描いているような感覚だ。
まるでGガンダムを思わせるようなガンダム同士の
「非合法」なバトルにマチュが出会った少年とともに挑む。
このラストバトルのワクワク感、
宇宙空間だからこその浮遊感とニュータイプだからこその
戦闘シーンはたまらないものがある。
物語的には始まったばかりだ。
シャアはどこへいったのか、果たしてアムロは出てくるのか。
本編がいつ放送されるのか、本当に待ち遠しい作品だ
総評:なんちゅうもん見せてくれたんや…
全体的に見て素晴らしい前日譚であり、劇場アニメだ。
もはやシンガンダムとしかいいようがない、
新解釈のファーストガンダム、もし、あの時あの場所に
アムロがいなかったらという状況から起こる
ストーリーはたった40分ほどではあるものの非常に濃い40分だ。
シャアが赤いガンダムにのり、戦場をかける。
二次創作的な領域のifエピソードではあるものの、
それを本気でスタジオカラーとサンライズが描くからこそ面白い。
これだけ大きな風呂敷を広げた世界観の上に成り立つ
「機動戦士ガンダムジークアクス」の物語がどうなるのか、
シンプルに気になってしまう。
機動戦士ガンダムのファンも、新規のファンも
楽しめる土壌がきちんとあり、
この劇場先行版はその両者を納得させるだけの力がある。
後は本編がどうなるかだ。
この大きな風呂敷をきれいにたためるのか、
刮目したい。
個人的な感想:笑った
もう映画が始まって1分も立たないうちに笑ってしまい、
シャアの行動にいちいち「お前が乗るんかい!」
「赤くしちゃうんかい!」「サイコミュものせちゃうのかい!」
と突っ込みまくりながら楽しんでしまった作品だった(笑)
前半にしろ後半にしろ、ダイジェストチックな部分があり、
本来はもっと長く描けるものを前半40分、後半40分に
ぎゅううっと押し込めているような感覚だ。
可能であれば押し込めずに見せてほしいと
贅沢な感情すら生まれてしまう。
後半の40分に関してはTVアニメでもう少し長い尺で
やるかもしれないが、問題は前半の40分だ。
果たしてここをTVでもやるんだろうか(笑)
もう本当にTVアニメの放送が待ち遠しくて仕方ない。
おそらく今年の夏くらいだとは思うが、
もう早く見たい、早く見せてくれと懇願してしまう作品だった。