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量産型悪役令嬢「悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。」レビュー

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評価 ★★☆☆☆(27点) 全12話

TVアニメ『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。』第1弾PV|2023年7月放送開始

あらすじ 乙女ゲームの世界に転生していることに気づいたプライド第一王女。ゲームの通りなら、十年後には悲劇を引き起こす最強外道ラスボスへと成り果ててしまうはず。引用- Wikipedia

量産型悪役令嬢

原作は小説家になろうで連載していた作品。
監督は新田典生、制作はOLM Team Yoshioka

テンプレ

1話冒頭からテンプレの塊だ。
主人公はなろうではおなじみの「血を吸うトラック」により殺され、
異世界へと転生する。
そんな異世界は主人公がやっていた乙女ゲームの世界であり、
しかも、ゲーム通りの内容なら外道ラスボスになる存在だ。

いわゆる「悪役令嬢」ものだ。
なろう原作アニメでも多く存在する「悪役令嬢」ものであり、新鮮味は0だ。
ゲーム通りならば主人公たちに殺される存在であり、
このままでは自分の命がやばい、だからこそ、
ゲーム通りにならないようにゲームをやっていた時の情報を元に運命をかえる。
ベタすぎる内容に一切、心を動かされず、作画のクォリティも普通だ。

ゲームの本来の主人公は彼女の妹だ。
そんな中で主人公は「予知能力」をもっている。
1話冒頭はもう誰に説明してるんだといいたくなるほど、
説明セリフのオンパレードであり、
ゲームの舞台設定からその先のストーリーまで1から100まで
アホらしく説明してくれる。

これが「小説」という媒体ならそこまで気にならないが、
この作品はアニメだ。
原作の文字による表現をバカのひとつ覚えにアニメという媒体にも
落とし込んでおり、そのせいで画面を見なくとも、
聴いてるだけでも話を理解できてしまうほどの台詞になってしまっている。

フラグ回避

やってることは
「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」
と同じだ。
ゲームのシナリオ通りの展開が訪れても、
ゲーム内の悪役令嬢としての行動を知ってるからこそ、
そんな正規ルートと違う行動を取ればいい。

「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」は
コミカルかつ前向きに、カタリナという主人公のキャラクターが
よかったからこそ、破滅フラグを回避する面白さがあったが、
この作品にはそれがない。

そもそもカタリナはゲームの細かい部分を忘れてしまっていたり、
プレイしていないルートがあるからこそのトラブルや
ストーリー展開があったが、
この作品の主人公は細かい部分を忘れている部分があったりするが、
そういう予想外のトラブルがほぼない。

根本的なキャラクターの魅力の違いが、
やってることは同じでも雲泥の差の面白さになっている。

将来、本来はゲームの中で彼女自身がやってしまう外道な行為を、
まるで自分がやったことのように悲しみ涙するのだが、
別に転生した彼女が破滅フラグを回避できずにやってしまったわけでも、
これから必ずしもしないといけないわけでもない。

それなのに、悪役令嬢が巻き込す将来の出来事を頭の中に思い浮かべ
「ごめんなさいごめんなさい!」と涙を流す主人公に
見ている側としてはなんの感情も巻きおこらない。

これでゲームの悪役令嬢として転生してしまい、
何度も何度もループしてる世界観ならば、
彼女自身がそれを体験しているからこその涙であることは
納得できるのだが、別にそういうわけでもない。
意味の分からない主人公の悪役令嬢への感情移入のせいで話についていけない。

過去回想とモノローグ

主人公はひたすら悪役令嬢にならないために、
ゲームでは外道な好意をしていたキャラクターに優しくする。
基本的に各キャラクターには悲しい過去があり、
それをいちいち長い回想で描いたあとに
主人公の行動によって救われる。

その後に長いモノローグが描かれる。
これは1話冒頭の説明セリフの多さでも感じたことだが、
原作の文章をそのままアニメという媒体に落とし込んでおり、
異様なまでに各キャラクターのモノローグが多い。

アニメとは「見せて」表現するものだ。
それなのにまるでサウンドノベルのような脚本になってしまっており、
アニメとしてあまりにもつまらないものになっている。

その反動か、各キャラクターが泣くシーンもちょこちょこあるのだが、
泣いている涙の表現が過剰であり、
特に感情移入もしてなければ涙腺を一ミリも刺激されないのに、
感動をゴリ押ししてくるため不快感のほうが勝ってしまう。

改変

ゲームで起こったような出来事やイベントは起るものの、
結果自体はゲームとは違う方向に変えることに主人公は成功している。
ゲームだからこそのストーリーという運命に逆らえることに
主人公は序盤の時点で自覚しているはずだ。
しかし、それなのに彼女は不安がる。

これでゲームだからこその強制力が働いているならばわかる、
ゲーム内でのセリフを勝手にいってしまう呪いがあったり、
主人公の魂とゲームにおける外道ラスボスの魂が
交代で現れてしまうなどの展開があればわかるのだが、
そういうことでもないのに不安がる理由が意味不明でしか無い。

外道ラスボスにならないように、周囲の人間に優しく接し、
ゲームでは見殺しにしてしまった存在も救い出しており、
序盤をすぎればゲームの中の外道ラスボスと
主人公はほぼ別キャラであり、別の人生を送っている。

それなのにまだ起こっても居ないゲームで起るストーリーを
主人公が毎回毎回頭の中で想像して不安がるのだが、
ゲームでは奴隷契約した弟との関係性も違い、
死ぬはずだったものも死んでいない状況で、
なぜそこまで不安がるのかが本当に意味不明だ。

運命を改変した結果、美男子が主人公に惚れていく。
本来、ゲームの中の主人公の相手であるキャラクターが
主人公に惚れてしまう展開はこの手の作品ではお約束だが、
そもそもの本来のゲームの主人公は彼女の妹なのだが、
居ても居なくてもいいと感じるほど存在感がなさすぎる。

「大罪を犯すはずの私」「将来断罪されるかもしれない」と
主人公は自分を評するのだが、そうならないために色々なことをして、
ゲームとは違う展開になっているのにもかかわらず、
自らが外道ラスボスになってしまうかもしれないという
不安がいつまでたっても彼女につきまとっている。

そういう展開にしたいならゲームだからこその強制力のような
要素をいれればいいのに、この作品はそういうことをしていない。
主人公の心理描写に対する説得力の有るストーリーを
作れておらず、見ている側と主人公で考えの違いが生まれてしまっている。

「その時が来たら私を殺してね」と色々なキャラに
彼女は言うのだが、その時が来ないように色々としているのに、
なにをしても、そうなってしまう運命であることのように彼女は認識している。

やたらめったらサブキャラたちの過去回想や
心理描写はしっかりやる割には、
このあたりの主人公の心理描写がひどく雑であり、
彼女が外道ラスボスになってしまうのでは?という不安を
抱えている理由が見ている側には一切納得できない。

少し調べたところ、前世の記憶が戻った時点で
未来予知の能力も発動しており、
10年後になぜか外道ラスボスとして国を裏切っている未来を予知している。
だからこその心理描写になっているようだが、
アニメではそういった描写がないために意味不明なものになっている。

そもそも原作でも第一部の終盤の方のようで、
第一部は全669話あり、アニメでは127話までの部分が描かれている。
原作がそうだから仕方ない部分もあるのかもしれないが、
最後までこの設定が明らかになっていないがゆえの違和感がつきまとってしまう。

それ以外にも前世の主人公がプレイしたのは
ゲームのシリーズ2作目で1作目はプレイしていないから
細かいところを知らない、覚えていないという設定もあるようなのだが、
アニメではカットされてしまっている。

余計な部分をカットし、描いてほしい部分をアニメでは描いていない。
アニメとしての見せ方がモノローグの多さも含めて
あまりにも下手くそだ。

ガバガバ能力

この世界のキャラクターは特殊な能力を持っており、
主人公ならば予知能力、主人公の弟ならばテレポートの能力を持っている。
だが、この能力自体も使えと思うときに使ってくれない。
家臣がピンチで死にそうという最中で、
主人公の弟がテレポートの能力を使う。

直前の戦闘のさなかで爆弾をテレポートして
敵の頭上に落とす作戦が出てきたのだが、
それをしなかったがゆえに家臣がピンチになった挙げ句、
主人公自身がテレポートして無双して解決してしまう。

この能力に関してもガバガバだ。
色々な能力者がいる世界で、中盤になると
とあるキャラが国民に自分の能力を自己申告させる法律を作ろうとしている。
しかし、主人公はその法律に「国民を管理している感じがするから」と
反対している。

だが、ファンタジーな世界で他国との戦闘や野盗なども存在し、
何が起るかわからない世界だ。
そんな世界だからこそ国民の能力を国が把握することは
当たり前なのだが、そんな法律すらこの国にはない。

このあたりも主人公が未来予知で外道ラスボスになってしまうことを
予知しているからこそ、彼女が反対している理由にもなっているのだが、
前述した通り、アニメではそのあたりが描かれてないせいで、
彼女がなぜ反対しているのか?というのが
イマイチ納得できないものになってしまっている。

終盤

終盤も驚くほど長い過去回想が描かれたりする。
落下中という命の猶予がいくばくもない状況で
走馬灯のように長い回想を描き、
結果的にテレポートの能力者によって助かる。

国の危機を脅かすものや、主人公たちに爆弾投下を仕掛けた
人物は誰なのか?など伏線を張りつつも、
1クールが終わってしまっており、ストーリー的には序章だ。

原作の主人公が未来予知で外道ラスボスになってしまう未来が
訪れるわけでもなく、未来予知でそういう未来を見てしまったということも
アニメを見ている人達に伝えるわけでもなく、
1クールが終わってしまっており、
最初から最後までアニメとしての見せ方が悪いと感じてしまう作品だった。

総評:アニメとしての見せ方が下手すぎる

全体的に見てテンプレ悪役令嬢ものの域を出ない作品になってしまっている。
この手の悪役令嬢ものはなろうにも多く存在し、アニメ化もされている。
そんな中でベタな始まりでベタな展開をひたすら見せられており、
原作通りの台詞回しのせいで異様なまでにモノローグが多く、
回想シーンも多く、テンポも悪くなってしまっている。

アニメにする上での脚本ができておらず、
そのせいで見せるべき部分を見せておらず、
見せないといけない部分をカットしてしまっているせいで、
主人公の心理描写がよくわからなくなってしまっている。

原作の第一部の終盤で明かされる
「未来予知で外道ラスボスになってしまう未来を
 1話の時点で見ていた」という事実をアニメで描かないのは
原作通りだとしても、主人公が前世でシリーズ物のゲームの
一作目をプレイしていなかったという事実をカットしてしまったのは
意味不明でしか無い。

2期を匂わせている部分もあり、2期があれば
「未来予知」していたという事実がわかるところまで
描かれるのかもしれないが、
1期の時点ではわざわざ調べないとその事実がわからないのは
視聴者に優しくなく、違和感を感じるアニメになってしまっていた。

個人的な感想: 叙述トリック

原作ではある種の叙述トリック的に第一部の終盤で
「実は前世の記憶が戻った時点で未来予知をしていた」という
真実が明らかになるようだが、
流石に全669話もある作品の終盤で明かされるのは
そのトリックが効果的に作用されているとはいい難い。

そのあたりをうまくアニメにする上での脚本として
改変していれば作品全体の印象も変わったかもしれないが、
地の文をそのままアニメの脚本にしている時点で
そういった配慮ができるわけがない。

原作の情報を知ると、うまく作れば面白くなりそうな作品だが、
アニメとしての見せ方が下手すぎると言わざるえない作品だった。

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