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これぞ完全空気アニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ」レビュー

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エスタブライフ グレイトエスケープ SF
(C)SSF/エスタブライフ製作委員会
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評価 ★★☆☆☆(27点) 全12話

TVアニメ『エスタブライフ』ティザーPV<キャラボイス初公開!>

あらすじ 生まれ住むクラスタに馴染めない者を別のクラスタへと移動させる「逃がし屋エクストラクターズ」を描く。引用- Wikipedia

これぞ完全空気アニメ

本作品はTVアニメオリジナル作品。
監督は橋本裕之、原案は谷口悟朗、シリーズ構成は賀東招二。
制作はポリゴン・ピクチュアズ。

フルCG

この作品はポリゴン・ピクチュアズらしくフルCGで制作されている。
1話冒頭は葬儀のシーンからはじまり、そこから
「依頼人」を逃がすメインキャラクターを描いている。

銃弾飛び交う中で、そんな銃弾があたっても平気な体を持つ
メインキャラクターの一人だったり、癖のある衣装や
喋るロボットなど、独特の世界観が描かれている。

フルCGのクォリティ自体はそれなりに高いものの、
キャラクターデザインがやや洗練しきれておらず、
セルルックなCGに時折違和感を感じるものの、
全体的に見ればクォリティは安定しているものの、
CGが苦手という方は苦手に感じやすいゆらーとした描写が多い。
良くも悪くもCGのクセというものが出ている。

世界観

そんなメインキャラクターたちの仕事は「逃がし屋」だ。
この作品の未来は遠い地球を舞台にしており、AIによって管理されている。
人類はクラスタと呼ばれる地域ごとに住んでおり、
そのクラスタごとに文化や常識も価値観も違う。

AIによって人が管理されてる世界だ。
別のクラスタに行くことを望んでも、それを望まない管理者も多い。
決められた毎日、決められた役割、そこか抜け出すために彼女たちがいる。
そんな1話を見せてはいるものの、あまりキャッチーさというものもなく、
CGのクセもあるがゆえに、あまり掴みも良くない。

1話で逃がすのは教師というのも地味だったのだろう、
2話になると「新宿クラスタ」のヤクザを逃がすという話になるのだが、
この新宿クラスタのほうが話としてもキャラとしても面白い。

魔法少女にあこがれて

新宿クラスタはまるで天気予報のごとく「抗争予報」が
TVで放送されるほどヤクザの街だ。

AIがどういう思考をすればこういう街にするようになったのかなどは
気になるものの、ヤクザの親分という役割から解放されたい、
彼は別のクラスタに行って「魔法少女」になりたい。
唐突なギャグ展開に驚きつつも、ある意味でこの作品は
価値観からの脱却を描いてると言ってもいい。

ある程度、大人になると仕事があり、社会での役割、
立ち位置が決まってくる。
そんな大人が本来の自分のやりたいことをやるために、
今までの自分の生き方から逃げ出し、新しい自分になる。

ありのままの自分になる物語を1話1話描こうとしてるのかもしれない。
どこのディズニーだという感じではあり、
ギャグに関しては好みがわかれるものの、独特の下ネタや
台詞回しなど笑えそうで笑えない感覚が個人的には強い。

ギャグとシリアスのバランスが悪く、
基本1話完結でいろいろな事情を抱える依頼人を
メインキャラが逃がすという過程が描かれるものの、
逃がした後にどうなかったが描かれないてモヤモヤする部分もある。

AIによって管理されて違う地区に行けない世界、
そういった重苦しい世界観なのに逃げる理由が
魔法少女になりたいだの、くだらない事が多く、
そのせいでいまいちハマりきれな感じだ。

各クラスタの世界観も、ヤクザのクラスタだったり、
資本主義と共産主義が別れてるクラスタだったり、
下着が禁止されてるクラスタだったり、
AIがなんのためにそんなクラスタを作っているのかという
理由がよくわからないためぼやける感じだ。

そもそも主人公たちはどうして逃がし屋をしているのか、
この世界観そのものの説明、物語の起承転結における
起の部分を描かずに物語を始めてしまってるせいで、
メインキャラにも世界観にも入り込めず、掴み所がない。

ロボットだったりスライムだったりペンギンだったり、
魔法や未来予知の能力など、色々な設定や要素が
とにかくごちゃまぜに盛り込まれており、
基本的な設定もあまり説明しないため、話についていけない。

無機質

特に気になるのは主人公の無機質さだ。
底抜けに明るく、いつでも笑顔で逃がしたい人の
逃げたい意思を尊重し、何が何でも逃がそうとしてくれる。
そういうキャラ設定なのはわかるものの、
同じような表情、同じような台詞回しで無機質さが際立っている。

依頼の過程で色々と調べられるものの、
遺伝子を調べれば17歳とも数万歳ともいえるような謎が多い
遺伝子を持つ、人間なのかどうかすらわからず、
それを彼女自身もよくわかっていない。
彼女自身もよくわかっていないからこそみてる側もよくわからない。

主人公のバックボーンの謎だけばらまいて、
それを一切回収しない。厄介だ。
最終話まで見れば回収されるかとも思ったが、
最終話まで見ても回収されない、完全放置だ。

7話で主人公が金庫に自身の経営する「喫茶店」の
説明と今の心情を動画に残しているのだが、
わざわざ金庫にしまい込んでいた理由もよくわからない。

仲間

そんな主人公に他の二人は好意をいだいているようで、
百合的な要素も匂わせているものの、
特にそこが深堀りされるわけでもなく、
ずーっと上っ面だけのメインキャラクターによって、
1話完結で色々な世界観のクラスタと逃げたい
人のバックボーンを描いている。

この作品がなぜ話題にならなかったのか、見れば見るほどわかる。
あまりにも掴み所がない、うなぎのようなアニメだ。
ぬるぬるぬると掴もうとすれば抜け出し、もういいと
見るのをやめてしまう人も多かっただろう。

アクションシーンに関してもスロー演出を多用しており、
あまり見応えがなく流血NGな逃がし屋のルールが
あるからこそ仕方ないのだが、
硬いCGと同様に硬いアクションシーンで
逃げるシーンが盛り上がりどころになっていない。

クラスタ

1話1話の夜逃げ話もぱっとせず、
かといってメインキャラに魅力があるわけでもない。
終盤になると唐突に「クラスタ」が消滅するという事件が起こる、
住民の中に「モデレーター」が存在し、
クラスタの人口が増えず減ってしまえばクラスタはいずれ消滅される。

モデレーターの上位存在である「マネージャー」によって
クラスタをどうするかを決めているらしく、
モデレーターの中にはそんなマネージャーに
反旗を翻そうとするものもいる。

終盤になると逃がし屋が指名手配されるという流れになり、
終盤らしい盛り上がりどころを作ろうとしているのはわかるが、
序盤から中盤までの段階で盛り上がりどころがないため、
終盤の盛り上がりにうまく乗れない感じだ。

マネージャー

逃がし屋に依頼を届けているのは「マネージャー」であり、
あくまでマネージャーはクラスタの管理をし、
そのクラスタに合わないもの、異分子を逃がし屋をつかうことで
別のクラスタに移動させることでクラスタ同士の均衡を保っている。

そんなマネージャー自身がマネージャーという
役割から逃げたがっている。この世界の神知言える存在だ。
遠い昔に「ユートピア」を建設することを目的としたAIだ。

そんなAIがユートピアを作るために奮闘したものの、
多様性の限界、姿形の多様性を求めペンギンやスライムなどの
種族も生まれ、人それぞれの生き方にあわせてヤクザだらけのクラスタや
資本主義や共産主義のクラスタも生まれた。

だが、全人類にとってのユートピアなど実現不可能だ。
理想のクラスタを作り上げても不満が生まれ、
その不満をもつものを別のクラスタに逃がしても限界が生まれる。
模索し、あがき、AIとして思考を重ねたものの、限界を迎えた。

そういう役割を持つ人でも逃げて良い、
逃げることをひたすら肯定し続けている作品ではあるものの、
逃げたことへの責任や逃げたあとのことはふわっとしているため、
そのメッセージ性も伝わりづらい。

この最終話の段階でようやくこの世界観の掴めた部分はあるのだが、
最後も世界の神といえる存在が役割から逃げ出した割には
あっさりとしたラストであり、結局、色々な設定を
匂わせるだけで終わってしまっている作品だった。

総評:アニメは空気、映画は爆死、ゲームは開発中止「

全体的に見て放送中に一切話題にならなかったのも納得できる作品だ。
CG自体のクォリティはそれなりに高く安定しているものの、
特別すごいといえる部分はなく、CG特有のクセは人を選ぶ部分がある。
それだけでも人を選ぶのだが、1話はとにかく掴み所がない。

その時点で多くの人が1話で切っただろうなと感じる部分があり、
その後見続けたとしても、メインキャラクターの掘り下げもなく、
かといってメインキャラクターたちに魅力があるわけでもなく、
主人公の無機質さ、明かされない謎のせいで不気味さのほうが際立ち、
それが1クールできちんと描かれるわけでもない。

毎話の1話完結のエピソードも基本的に明るいノリで
描かれてはいるものの、その1話完結のエピソードも
微妙な話も多く、そんな話をやってるならば、
もう少しキャラの掘り下げや世界観の掘り下げにつかってほしいと
感じるほど冗長なストーリー展開だ。

終盤、とくに最終話ではこの作品の世界観の根幹の設定が明かされ、
ようやく腑に落ちる部分はあるものの、
結局なんだったんだ?という部分も多く、
最後はさらっと物語が終わってしまう。

配信がFOD限定だったのも要因としては大きいものの、
空気アニメになってしまったのも納得な作品だ。

この作品、メディアミックスとして制作されており、
TVアニメな本作品と、更に映画も制作されて公開された。
ただでさえ知名度もなく、話題にもならなかった作品の
映画の興行収入が伸びるわけもなく、悲惨な結果で終わっている。

予定されていたゲーム企画だけは逃げ出せたようで、
開発中止になっているが、
このメディアミックス企画自体が本当に悲惨な結果だ。

TVアニメは空気、映画は爆死、ゲームは開発中止と
企画から出資した大人が逃げ出すさまが見えるような
皮肉な作品だった。

個人的感想:逃げちゃ駄目だ

逃げることを肯定的に描くという趣旨自体は面白かったものの、
それが作品の中でうまいこと機能しておらず、
色々とがっつり掘り下げるところからも逃げてしまっているような作品だ。

もう1歩踏み込めば面白くなりそうなのに、踏み込んでくれず
背を向けて逃げ去ってしまった。
なんとも悲しい作品だった。

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