ファンタジー

「Engage Kiss」レビュー

4.0
ファンタジー
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評価 ★★★★☆(62点) 全13話

オリジナルTVアニメーション「Engage Kiss」第1弾PV/2022年7月2日(土)より放送開始!

あらすじ 「ベイロンシティ」――どこの国にも属さない、太平洋に浮かぶメガフロート型の都市。新エネルギー資源「オルゴニウム」を採掘し、世界でもっとも注目されるこの都市では、「D災害」と呼ばれる、「悪魔」の引き起こす特殊な事件が多発していた。引用- Wikipedia

正妻戦争

本作品はメディアミックスプロジェクトの一環として制作された
アニメオリジナル作品。
監督は田中智也、制作はA-1 Pictures

クズ

1話冒頭から主人公はモテモテだ。
「元彼女」のヒロインにおごられ、家では違う女が手料理を作っており、
彼に無条件の愛情を向けられている。
いわゆるクズでヒモな主人公だ。
どうしてこんなやつがモテるのか?などと考えてはいけない。

そういうものなのである(苦笑)
古今東西、古くはエロゲからライトノベルからこういった主人公は多い。
どこか懐かしさを感じる主人公像は、クズではあるものの、
ヒロインの無条件な愛情という名のツンデレやヤンデレ具合が
いわゆるアニメ的な萌ヒロインではあるものの、可愛らしさがある。

そんな主人公ではあるものの、この世界に存在する
「悪魔」を倒す仕事についており、
彼は契約した悪魔と「キス」することで悪魔をパワーアップさせ
戦うことができる。

この設定自体もどこかでみたことのある既視感だらけの設定ではあるものの、
「濃厚なディープキス」の描写には気合が入っており、
そんなパワーアップしたことを実感させる戦闘シーンの描写と演出をみせることで、
ベタな設定を「王道な面白さ」としてこの作品は見せている。

悪魔そっちのけで三角関係と痴話喧嘩を描くことで
コミカルな面白さも生まれており、
1話の段階で設定を見せ、主人公とヒロインを見せ、
きちんと「落ち」のついたラストを見せており、つかみはバッチリだ。

悪魔

この世界に悪魔が存在することは一般市民には知られていない。
警察などの公的組織や悪魔を狩るものぐらいにしか知られておらず、
彼らは一般市民に知られないようにひそかに、
悪魔や悪魔憑きが起こす事件を解決し、ときに倒している。

序盤はそういった世界観や主人公の過去を見せつつ、
二人のヒロインとのドタバタラブコメを見せている。
シリアスな要素は匂わせつつもシリアスにはなりきらず、
あくまでも明るく可愛く爽快感のある1話1話は心地よく、
何処か懐かしい深夜アニメのノリがある。

それでも主人公が契約しているのは「悪魔」だ。
キスで奪われるのは魔力ではなく「記憶」だ。
彼は復讐という名の目的のために自らの記憶を悪魔に差し出し、
悪魔と立ち向かっている。

何かをなすために大切な何かを差し出す。
最低な主人公には「最低」にならざるえない理由がある。
力を求めれば求めるほど「なんのために」戦っているのかわからなくなる。
愛するものを助けるために忘れてはいけない愛するものとの記憶捧げる。

強さを求め、その代償を支払いながらも本当に欲しい物を求める主人公と、
そんなすべてを犠牲にする覚悟の主人公のそばにいる二人のヒロイン、
この三角関係が儚くも美しく描かれている。

序盤こそ「キス」はある種のセクシーシーンだが、
キス以上の決定的な行為も直接的ではないものの描かれており、
「記憶がなくなる」ことをいかしたシチュエーションと
関係の描き方が非常にうまい。

痴話喧嘩

ただ、感覚的にはずーっと痴話喧嘩が続く印象だ(笑)
中盤くらいになると悪魔なヒロインと元恋人なヒロイン以外にも、
かつて目的のために関係を持った元恋人的な立ち位置のシスターも出てくる。
主人公を奪い合う女の戦いが拳でも言葉でも行われており、
メインストーリーがなかなか進まない。

主人公と家族が巻き込まれた事件を起こした悪魔はなんなのか、
人間を意図的に悪魔憑きにしている人物は誰なのか、
主人公に情報提供しているのは誰なのか。
痴話喧嘩の裏でゆっくりとストーリーが進んでいくような印象だ。

ただ、終盤になると意外な人物の真実が明らかかになっていき、
自然とストーリーが気になってくる。
最初はただのギャグキャラだと思った人物が、
最初は主人公の味方だと思った人物が、
それぞれの「真実」が明らかになるのは読めず衝撃だ。

記憶

愛するものを救うために愛するものを殺し、
愛するものを助けるために愛する者の記憶を失う。
たとえ自分が自分でなくなっても、すべての記憶を失っても
彼には助けたいものがある。

序盤のクズな主人公というイメージから中盤、
そして終盤に至るまでのイメージの変化が素晴らしく、
1クールというストーリー構成を見事に使いこなしている。

序盤こそ、こんな主人公になんで二人のヒロインがべた褒めなのか?と
違和感が凄まじいが、中盤、そして、終盤になると
主人公の魅力をきちんと見る側にも感じさせ、
最低だった主人公が物語の主人公としての魅力を
1クールかけて築き上げている。

終盤はある種の「正妻戦争」だ。
主人公すらも知らない彼の記憶を悪魔と悪魔が奪い合う、
抱いた女の記憶すらない主人公のために、
なんのために戦っていたのかすらわからない男のために。

「記憶」が人を作り、人が記憶を作る。
愛した男のために、全てを奪ったはずの女は
愛ゆえに「全て」を捧げる。
終盤のある種の逆転の発想が素晴らしいストーリーを生んでいる。

悪い虫

ただ終盤の痴話喧嘩感は凄まじい。
なにせラスボスたる妹の目的は「クズな女たらしの兄」につく
悪い虫という名の女を排除したいだけだ(笑)
身内のゴタゴタ、彼氏彼女のゴタゴタが世界を巻き込まない騒動になる。
この作品はセカイ系とも言えるのかもしれない。

悪魔は完全に滅んだわけでもなく、今後も闘いは続くのだろう。
同時に「主人公」を巡る女性たちの争いも続くのだろう。
ソーシャルゲームも出るようなので、続きはそちらでという感じだが、
1クールでスッキリとした物語を展開している。

「未解決で大団円」という最終話のタイトルの通り、
解決されていない問題は多いが大団円で幸せかつ笑顔で終わる
ストーリーは1本の作品としての満足感を感じられる作品だった。

総評:最低で最高な主人公

全体的にみてよくまとまっている作品だ。
序盤こそ女癖がわるくクズで最低な主人公と
ベタベタなハーレムラブコメは懐かしさを感じつつもベタさを感じてたが、
中盤くらいからキャラクターの掘り下げと真実が明らかになることで、
物語が盛り上がり、主人公の魅力にもつながっている。

一歩間違えばスクールデイズな展開になりそうなクズっぷりだが、
「妹を救う」という目的を果たすために手段を選ばずに、
自分の記憶も顧みずに戦う主人公が徐々にかっこよくみえ、
そこに魅力的なヒロインが絡むことでラブコメとしての
面白さをしっかりと感じることのできる作品だ。

戦闘シーンのクォリティもたかくい、キスシーンにおける
セクシーな描写や、性的関係を匂わすダイレクトな描写もありつつ、
キスすらろくにしないラブコメ主人公が多い中で、
やりまくりな主人公というのは変にごまかさず、ストレートな
人間的な魅力が生まれてると言って良いかもしれない。

1クールですっきりと物語にも区切りがついており、
2022年夏アニメのダークホースと言える作品だった。

個人的な感想:ソシャゲ

最近はこの手のソシャゲのサービス開始前の前日譚的な
アニメ作品がちらほら増えてきたが、
前日譚だからこそキャラクター数を抑えた上で、
一人ひとりの魅力を掘り下げつつストーリーと世界観を見せ、
うまくゲームにつなげている作品が多い。

ソーシャルゲーム自体の運営はある種の運もあり、
へたしたら半年くらいでサービス終了する作品も少なくないが、
アニメが良作だっただけに、ソーシャルゲームも
良作になることを期待したいところだ。

「Engage Kiss」は面白い?つまらない?

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