評価 ★★★★☆(69点) 全99分
あらすじ かつて孫悟空によって壊滅させられた悪の組織「レッドリボン軍」の意志を継ぐ者たちが現れ、新たに最強の人造人間ガンマ1号、2号を生み出す引用- Wikipedia
悟飯がやらねば誰がやる
本作品はドラゴンボールの劇場アニメ作品。
ドラゴンボールとしては21作品目となる。
監督は児玉徹郎、制作は東映アニメーション
セルルック
この作品はいわゆるセルルック3dcgで描かれている。
ドラゴンボールの映画では神と神でラストの戦闘シーンでCGが使われ、
賛否両論だったが、この作品は戦闘シーン以外の日常パートでも
CGが使わているフルCGの作品だ。
ただ、CGはCGでもいわゆるセルルックCGだ。
ピクサーやディズニーのようなCGではなく、
日本風のアニメ調のCGになっており、
そのおかげでいわゆるCGっぽさは薄い。
しかしながら、車などの機械はやはりCGっぽさが強く出ており、
そういったところでの違和感は感じてしまうものの、
人間の描写に関しては違和感がない。
むしろ自然にアニメ調のCGであるセルルックで描かれており、
ドラゴンボールという40年近く続く作品をフルCGで描くというのも
もしかしたら、この作品のコンセプトの1つだったのかもしれない。
ある意味で「東映アニメーション」が技術力を見せつけるような
そんなシーンを作品全体から感じる部分が多い。
あえてCGにしたからこそ手書きではやりづらいシーンを
描いているシーンも多い。
例えば中盤での戦闘のシーンでの雨の描写だ。
雨というのは作画カロリーが高くなる、雨に当たる人物ひとりひとりの
細かい描写をしていたらとんでもない作画カロリーだ。
しかし、CGだからこそ手軽という言い方をしたら失礼かもしれないが、
手書きだと作画カロリーが高くなる部分を、
CGで見せつけているような印象だ。
ストーリー
今作のストーリーは非常にシンプルだ。
かつて孫悟空が倒したレッドリボン軍が復活し、
世界征服を再び目論む。
シンプルなストーリーはドラゴンボールという作品らしく、
シンプルなストーリーだからこそ「キャラクター描写」が光る作品といってもいい。
今作では本来は主役と言える孫悟空とベジータが不在だ。
彼らはピルス様たちと、そして「ブロリー」ととともに
遠い惑星で修行をしており連絡がつかない。
地球に居るのはピッコロ、孫悟飯、悟天、トランクス、クリリン、18号くらいだ。
魔人ブウは休眠中であり、天津飯などはそもそも出てこない(笑)
はっきりいって戦力不足だ。
そんな戦力不足の中で復活したレッドリボン軍とどう戦うのか。
ドラゴンボールという作品らしいわかりやすいストーリーが
シンプルにワクワクと期待感をつのらせてくれる。
パン
今作のヒロインと言えるのが「パン」だ。
孫悟飯とビーデルの娘である彼女はまだ幼稚園に通う3歳の子供だ。
しかし、3歳でありながらサイヤ人の血を引く彼女は
まだ空を飛べないもののピッコロと修行をしていたりもする。
その光景があまりにも微笑ましい、いや、尊いといったほうがいいかもしれない。
かつての父のように、ピッコロから戦い方を教わり、
ときには幼稚園の送り迎えだってしてもらう(笑)
ピッコロさんは彼女にとってもう一人のお父さん、おじいちゃんのような
存在であり、ピッコロさんも彼女には優しい。
送り迎えだってしてくれる、グータッチだってしてくれる、
ピッコロとパンの関係性があまりにも微笑ましく、
そんな2人の関係性がほっこりとさせられると同時にギャグにもなっている。
今作は全体的にかなりコミカルな作りになっている。
シリアスなシーンでもギャグは多く、敵の親玉のキャラクターデザインなどを含め、
ドラゴンボール超やドラゴンボールZではなく、
本当に初期の子供時代の孫悟空のころのドラゴンボールのような雰囲気があり、
コミカルな描写や表情、ギャグにクスクスとさせられる。
ただ、そういった日常描写が多いせいか
序盤から中盤までややシーンとして間延びしている部分があり、
作品全体としてのテンポ感はやや悪いのは気になるところだ。
ピッコロ
今作におけるピッコロはもうひとりの主人公といってもいい。
作品全体を通して7割くらいはピッコロが出て話を展開させている。
彼が最初にレッドリボン軍が作り上げた人造人間に襲われたことで
物語が動き出し、そんなレッドリボン軍に潜入捜査し、
あくせくと働くさまはギャグにもなっている。
レッドリボン軍と戦ったり、潜入捜査好をしたり、仙豆をとりにいったり、
シェンロンにお願いをしたり、
かつての子供時代の孫悟空が辿ってきた道を彼もたどるように
レッドリボン軍対策を彼が一人で頑張るさまが微笑ましく、
スマホを使うピッコロさんに愛くるしささえ感じてしまう。
彼はかつての弟子である孫悟飯のことを信じている。
今は学者として修行もせず、腑抜けてしまっていると言ってもいい。
そんな彼への、師だからこそのいらだちはありつつも、
「孫悟飯」に対する思いは変わっていない。
本気を出せばあいつが世界で1番強い。
ピッコロは本気でそう信じており、信じているからこそ、
パンにも彼の強さを説く。
お前の父親はヒーローなんだ、強いんだ。そう投げかけるように
パンと接し、悟飯にやきもきする姿にニヤニヤしてしまう。
そんなピッコロさんも今作では謎の覚醒を遂げており、
ポケモンのような色違い形態、そして
懐かしの「あの姿」まで出てくるのはちょっとしたファンサービスだ。
孫悟空
本来の主人公である悟空たちの出番は少ない。
しかしながら、そんな少ないシーンの中でのファンサービスがたっぷりだ。
前作の映画で久しぶりにブロリーが復活し、
それまでのブロリー映画とは違うラストを迎えたことで
新たなる可能性を迎えていた。
そんな可能性をこの作品では見せている。
なにせ、ブロリーと悟空、そしてベジータが共に修行をしている。
前作があったからこそ、前作と今作をつなげたからこその
ブロリーの再登場とその姿に涙腺を刺激されてしまった。
孫悟空とベジータ、そしてブロリーの戦闘シーンは少ないものの
修行と言うかたちで描かれている。
CGを使った戦闘シーンは高速で動かしているものが多いものの、
今作におけるCGの戦闘シーンは
「ドラゴンボール」らしい戦闘シーンだ。
1発1発の重みを感じる戦闘シーンといえばわかりやすいだろうか。
悟空がなぐりかかり、それをベジータが受け止める。
この一連の動作をしっかりと見せ、演出で重さを出すことで、
まるで「筋肉」の動きそのものを感じるような
戦闘シーンに仕上がっており、超サイヤ人にもならず、かめはめ波も使わないのに
孫悟空とベジータの戦闘シーンに見応えを感じさせてくれる。
この2人の戦闘シーンもファンサービスであると同時に、
東映アニメーションの技術を見せつけているシーンでもある。
CGでも悟空の戦闘シーンが描けるんだ、すごいだろ!
そんな制作側の自信とアニメへの愛を感じるような
2人の戦闘シーンにニヤニヤしてしまう。
人造人間
今作における人造人間は悪ではない。
かつてはドクター・ゲロが作り出した存在だが、
孫であるドクター・ヘドは悪ではない。
むしろ彼はヒーローへのあこがれがある。
そんな彼はレッドリボン軍の企みをわかっていながらも、
孫悟空たちが「悪の組織」で「宇宙人」だと嘘を教えられ騙されてしまう。
まあ半分は正解なのだが(笑)
そんな彼が作り出した人造人間はヒーローだ。
まるでアメコミのごとく技を使えば文字が飛び出し、ポージングする。
どこかふざけた奴らではあるものの、
「孫悟空」なみに強く、そして正義の心も持っている。
どこか憎めない彼らの印象もさりげない会話や描写でつき、
愛着を持ってしまう。
更に彼はセルよりも強い「セルマックス」まで作り上げてしまう。
ブロリーに、セルマックス、もはやお祭り状態だ(笑)
この作品はさりげないファンサービスが非常に多く、
みているとドラゴンボールファンならばニヤニヤしてしまうシーンが多い。
孫悟飯
本気を出せば世界で誰よりも強い悟飯ではあるものの、
そんな本気を出す必要性が彼にはない。
なにせ父は常に最強を求めており、そんな父のライバルも同じくらいに強い。
なにか大変なことがおきて強敵が現れても2人がなんとかしてくれる。
そんな「安心感」と「平和」が彼をだらけさせている。
しかも子育てすら「ピッコロ」さんに頼っている部分があり、
父としても、戦士としても、どこかだらしなさを感じる序盤だ。
だが、本気を出せば彼は強い。
娘がレッドリボン軍にさらわれたときけばブチギレ、
娘が傷つけられそうに慣れば更にブチ切れる(笑)
本来の彼は優しい性格だ。父のように戦いたくて戦いたいわけでもない。
いつだって彼は「誰かを守る」ために戦ってきた。
だからこそ、今作でも誰かを守るために彼は戦う。
それはパンであり、仲間であり、ピッコロさんだ。
誰かを守るためにだらけた自分から戦士へと変わる。
その姿にニヤニヤしてしまう(笑)
超サイヤ人になり、アルティメット悟飯になり、戦う姿は
あの頃、子供の頃にテレビでドラゴンボールをみていた私の気持ちを蘇らせてくれた。
そして、そんな彼がさらなる「覚醒」へと至る。
セル
ただ、残念なのはセルの復活だ。
前前作ではフリーザが復活し、前作ではブロリーが復活した。
順番的にセルが復活するのでは?とドラゴンボールファンならば
予想していた出来事ではある。
今作が人造人間とレッドリボン軍が出るという事前情報が出た時点で
多くのファンは「だろうな」と思っていたはずだ。
しかし、その復活の形が私個人としては残念ではあった。
復活といってもブロリーならばバイオブロリーのようなものだ。
誰かを吸収することもなければ、形態変化することもなく、
「意思」と呼べるようなものもない。
演じているのは「若本規夫」さんではあり、
若本規夫さんらしい叫び声だけの台詞の数々を聞ける
嬉しさはあるものの、やや中途半端なセルの復活に関しては
余り納得がいっておらず、この作品の不満点でもある。
やはり「あのセル」が見たかったと感じてしまう点でもあった。
セル自体の技というのも薄く、
まるでエレクトリカルパレードのごとく光線を出していたり、
強いのはわかるものの、やや大味な感じの戦闘シーンになってしまっている。
それでも、そんな復活した巨大なセルを倒すために、
孫悟天やトランクス、クリリンや17号も集まって戦う姿は
「ドラゴンボール映画」らしい展開であり、
そんな戦闘シーンの中でも「ファンサービス」たっぷりだ。
個人的には「クリリン」の太陽拳が見れたことは
1ドラゴンボールファンとしてちょっと感動すらしてしまった。
ヒーロー
この作品は「ヒーロー」を1つのテーマにしている。
パンにとってピッコロや悟飯はヒーローだ。
ピッコロにとってかつての敵でありライバルである悟空の息子であり、
自分の弟子である悟飯はヒーローだ。
そして悟飯にとってのヒーローは間違いなくピッコロだ。
自分を信じてくれる、父以上に父と呼べるような存在。
そんなピッコロさんが自分を信じ戦ってくれる。
そんなピッコロさんが死ぬかもしれない。
だからこそ、彼は覚醒する。
最近のドラゴンボール超では悟空が青い髪になったりと
色々と新しい形態もあるが、そんな父の形態とは違う形態だ。
まるで少年の頃の超サイヤ人2のときのような髪型ではあるものの、
少し違う。
そんな姿のインパクトと最後の「技」に私はちょっと泣いてしまった。
彼にとっての最強の技だ。
それは「師」の技であり、1度も使ったことがないとっておきだ。
そんなとっておきを最後の最後で見せてくれる。
もう、ニヤニヤが止まらないドラゴンボール映画だった。
総評:誰だってヒーロー
全体的にみていい意味でドラゴンボール映画らしい作品だった。
あえて悟空とベジータを不在にしたことで、
ピッコロと悟飯を主軸の話を展開し、
そこにレッドリボン軍、人造人間、セルの復活を混ぜ、
わかりやすいストーリーを展開している。
フルCGにしたことの違和感は多少はあるものの、
東映アニメーションの技術を感じさせてくれる部分が多く、
CGだからこその雨の中での戦闘やキャラクターを立体的に
舐め回すようなカメラワークで見せたりと、
フルCGだからこその戦闘シーンをたっぷりと見せてくれている。
キャラクター描写に関してもファンサービス的なシーンが非常に多い。
主役級のピッコロさんの活躍と日常、悟飯の覚醒、
終盤では「ゴテンクス」や「クリリン」の活躍もしっかりと描かれ、
セルの復活というドラゴンボールファンならばたまらない展開も描かれている。
ただ作品全体としてやや間延びしているシーンが多く、
テンポが悪くなってしまっているのは欠点でもある。
ギャグが多めなのはいいが、戦闘シーンでもギャグが多く、
特に終盤のシリアスな状況でもギャグが挟まれるため、
やや雰囲気が壊れてしまう場面がいくつかあるのは気になるところだ。
さらに言えばセルの扱い。
コレに関しては見る人の価値観や受け取り方によるかも知れないが、
私個人としてはやはり「あのセル」がみたかったという思いが強く、
ピッコロの覚醒もややご都合主義を感じてしまい、
面白い作品ではあるものの引っかかる点も多い。
ただ「ラスト」のあの技で全部ひっくり返…いや、貫かれてしまった(笑)
気になる点はあるものの、ドラゴンボール映画らしい
ドラゴンボール映画だったと言える作品かもしれない
個人的な感想:パンちゃん
個人的にはパンちゃんが非常に可愛らしかった。
ピッコロと修行をしているシーンやお迎えに来てもらうシーン、
最後の「舞空術」に至るまで、本当に可愛らしく描かれており、
ピッコロさんとの関係性にニヤニヤしてしまった。
個人的には孫悟飯の声も孫悟天の声も孫悟空の声も
全くもって違和感のない「野沢雅子」さんの凄さに
ただただ驚愕してしまった。
御年85歳とのことだが、声の劣化を一切感じない。
さすがはレジェンド声優だ…
もし次回作があるならば魔人ブウ(悪)あたりが復活するかもしれないが
できれば意思を持って登場してほしいところだ(苦笑)
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とくにピッコロの、新形態は、衝撃!あと最後の魔慣光殺砲
先代の総帥と参謀より性格がマシになっている感じがしたのが先ず良かった
マゼンタは参謀に対して自身の低身長のコンプレックスをネガティブな感情で表に出すことは一度もなかったし
カーマインは総帥に対する忠義を見せたし
まぁ気になることは他所で言わてるようにいくらでもありますけど
ま、今のドラゴンボールは作風が軽くて明るいので批判したくなるほど気になるということはないですが
でもまぁ、謎の液体掛けて神龍アップグレードしましたっていう展開は「軽?!」と笑いました
笠さん、今度はドラゴンボール映画を全作レビューしてほしいです。
笠さんの感想が聞きたいです。