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これぞ本当のドラ泣き「映画ドラえもん のび太の絵世界物語」レビュー

5.0
映画ドラえもん のび太の絵世界物語 映画
画像引用元:(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2025
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評価 ★★★★★(90点) 全105分

【本編映像】『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』本編映像一部公開!<期間限定>

あらすじ 数十億円の価値がある絵画が発見されたというニュースを横目に、夏休みの宿題である絵に取り組んでいるのび太。そんな彼の前に、突然絵の切れ端が落ちてくる。ひ引用- Wikipedia

これぞ本当のドラ泣き

本作品はドラえもんの劇場アニメ作品。
ドラえもんとしては44作品目の作品となる。
監督はひみつ道具博物館と同じ寺本幸代が手掛けている。

王道

近年のドラえもん映画は異色といえる作品が多かった。
去年はマクロス7のような作品をやったり、
一昨年はエヴァのようなセカイ系をやったり。
ドラえもんという国民的アニメ映画というプラットフォームをいかし、
挑戦作を数多く生み出しており、どれも迷作だ。

しかし、挑戦作というのは王道から外れる部分がある。
特に去年はそれを顕著に感じた部分もあったものの、
散々王道をやり尽くし、本作品で44作品目の映画ともなれば
ネタも限られてくる(苦笑)
だからこその挑戦作なんだろうという印象だった。

だが、今作は違う。一言で言えば「王道」だ。
私達が子供の頃のに見ていたドラえもん映画、
あのとき両親に連れて行ってもらったドラえもん映画、
声がちょっと違ったドラえもん映画の、
あの空気感と雰囲気、これぞドラえもん映画というのを
本作品では見せている。

この時点で少しでも琴線に触れたら
ぜひ映画館に足を運んでほしい。それくらいの名作だ。
ここから先はがっつりとネタバレを含むレビューとなるので
ご注意ください

さぁ、冒険だ

本作では珍しく少し違った日常から映画が始まる。
ドラえもん映画といえば、のび太たちの日常が描かれ
そこからなにかがおこり冒険が始まることが多いが、
この作品は冒頭から「はいりこみライト」を使って
絵の中の世界をのび太たちが楽しんでいる。

絵の中の世界を楽しめる「はいりこみライト」、
このドラえもんの未来の道具がきっかけで
この作品のストーリーは始まる。

ある日、のび太の頭上に唐突に穴があき、
そこから1枚の絵が落ちてくる。
絵の中に描かれている女の子のことが気になったのび太たちは
絵の中に入り込むものの、逆に絵の中の女の子が
こちらの世界に出てきてしまう。

そこから巻き起こるコミカルな日常は本当に愉快だ。
シンプルに「アニメーション」として見ていて面白い、
動きによる面白さ、ドラえもんというギャグ漫画原作だからこその、
ギャグシーンの連続は思わず大人でもクスクスと笑ってしまうほどの
ドタバタしたギャグシーンになっている。

そんな絵から出てきた女の子である
「クレア」は自分の国に帰りたがっており、
彼女を自分の国に戻すための冒険が始まり、
絵の中から過去の時代にタイムスリップするという
展開はこれまでのドラえもん映画にはなかった展開だ。

タイムマシンを使わずにタイムスリップするという
斬新な設定から中世ヨーロッパのとある国にたどり着く、
歴史に名前が残っていない、そんな不思議な国。
そこからの冒険がワクワクの連続だ。

道具

本作品の特徴は未来の道具を使いかたのうまさだ。
次から次へと道具が飛び出してきて、
懐かしい道具からおなじみの道具、新しい道具まで
様々なものが飛び出してくる。

今作の重要なアイテムでもある「はいりこみライト」は
ただ絵の中に入り込む道具で終わらせず、
この作品のテーマを描くうえで必要な道具にもなっている。

次から次へとでてくる道具が本当に楽しく、
そんな道具をキャラクターがうまく使いこなす、
「この場面ならこの道具を使えばいいのに」
そういういらだちが一切なく、キャラクターが
未来の道具を使いこなす姿にシンプルにワクワクしてしまう。

水から物をつくりだす道具を出したかといえば小さな城を築き上げ、
そこを拠点にして物語が転回していく。
この水でできた小さな城でさえ、この作品における伏線の1つだ。
序盤はそんな伏線を丁寧に、丁寧に仕込んでいる。

大人ならばそれが伏線であり、
後に回収される展開なのは察することができる。
だが、それが心地良いのだ。
まるで伏線という名のパズルのピースが綺麗にハマっていくような
そんな快感を味わせてくれる作品と言っても過言ではない。

絵の中から出てきた少女であるクレアが
元の時代の元の場所に帰えれたのはいいのだが、
すでに「4年」の月日が経っており周りも変化している。

クレアにはマイロという画家の幼馴染がいる、
4年の月日が立ち大きくなった彼は4年経っても
「クレア」の独特な瞳の色を描くために四苦八苦している。

この作品のテーマの1つが絵だ。
マイロと出会い、のび太も絵を描くのだが決してうまいとはいえない。
のび太の絵はジャイアンやスネ夫にバカにされるほど下手だ、
しかし、「良い絵」と「上手い下手」は関係ないとマイロは
のび太に言ってくれる。

なぜ人は絵を描くのか。
ここ最近、クリエイターもののの映画が妙に続いており、
ルックバックや数分間のエールをなどの作品では
なぜ作るのか、どうして作るのかというテーマを
それぞれの作品で描いていた。

この作品も同じようなテーマではあるのだが、
そこにドラえもんらしい答えが描かれている。
うまいか下手ではない、自分の好きなものを好きだという
気持ちを込めて描くととが大事であり、それが楽しいから人は絵をかき、
そんな気持ちのこもった「絵」は良い絵だ。

子供向けのアニメという側面も強いドラえもんだからこその
「なぜ絵を描くのか」というテーマに対して
丁寧な答えを要しており、その答えに、思いが
終盤、応えてくれる。

のび太が描いた決してうまいとは言えない下手なドラえもんの絵。
これがのび太のピンチを救ってくれる。
ドラえもんが大好きだという気持ちがいっぱいに詰まった絵だからこそ、
その絵には力がある。

下手くそな絵のドラえもんが拙い言葉で
のび太を精一杯応援し、助けてくれる姿に
大人でも涙腺を刺激されてしまうはずだ。

はいりこみライト

中盤をすぎるとタイムマシンを使った犯罪者や
それを追うタイムパトロールもでてくる。
絵画を盗んでいる未来人は誰なのか、
そんな捜査の中で透明マントや転ばせ屋など
懐かしい道具もさらっとでてくる。

この作品は本当に道具の使い方が上手い。
いくつもの道具を出しながら、それが相互的に作用し、
ときに未来人が犯罪として未来の道具を使っていたりもする。
犯罪にもし未来の道具が使われたらどうなるのかという
恐怖をきちんと描いている作品だ。

そんな未来人のせいで絵の中に描かれていたイゼールという
伝説の悪魔が「はいりこみライト」によって出てきてしまう。
はいりこみライトで遊んでいたのび太たちが、
はいりこみライトで出てきた絵の女の子を助け
はいりこみライトで女の子の国の伝説の悪魔が蘇ってしまう。

きちんとキーアイテムを物語の転換点で使うことで、
物語にもメリハリが生まれると同時に
終盤に差し掛かるなかで怒涛の伏線回収も始まる。

なぜのび太のところに半分だけの絵が落ちたのか。
なぜクレアは行方不明になったのか、
きれいに回収される心地よさはたまらない。
本当に丁寧にストーリーが練り込まれている作品だ。

バトル

終盤になると伝説の悪魔とのバトルが始まる。
この悪魔が色を奪う悪魔であり、奪われたものはまるで
石化したような状態になってしまう。

空気砲やひらりマントなどのおなじみのアイテムを駆使しながら、
ドラえもんたちがコミカルに戦う姿はシンプルに盛りあがる展開であり、
どんどんと道具がでてきて戦うというだけなのに面白い。

絵から出てきた悪魔の弱点が「水」であることがわかると
一気に形成が逆転する展開も素晴らしい。
だが、悪魔はどんどんと巨大化し、少しの水では効かなくなってしまう。
次々と仲間たちが石化する中で、世界の色が失われる。

この絶望感の演出は本当に素晴らしく、
アニメーションも最近のアクションアニメ映画に負けてないと
言えるほどのカメラワークと演出で見せている。
ドラえもん映画はどこか大人でも怖いと感じさせるシーンがあったが、
それを彷彿とさせる要素がこの作品にもきちんとある。

これぞドラえもん映画

そんな絶望からのラストは夢に溢れている。
のび太が描いた下手くそなドラえもんの絵、
そして序盤に出来上がったものが悪魔を倒すきっかけになる。
このドラえもんの絵の世界の表現は本当に素晴らしく、
あえて下手くそに描いたドラえもんの姿が愛おしくてたまらない。

はいりこみライトで始まった物語が
はいりこみライトが壊れることで終わる。
ドラえもん映画特有の「別れ」の要素もあり、
1夏の冒険が終わったことを感じさせるラストは本当に素晴らしく、
どこか郷愁感にすら駆られてしまうほどだ。

自然と涙が溢れ出てくる終盤の展開の数々、
これこそが本当のドラ泣きだ。
泣きを強制されているわけではない、自然に溢れ出る涙、
考え抜かれたストーリーとドラえもんらしさが詰まったこの作品に
スタンディングオベーションしたくなったほどだった。

ぜひ、この作品を劇場で味わってほしい。
あの頃と変わらないドラえもん映画の面白さを感じられるはずだ。

総評:王道、そして原点回帰

全体的に見て、まさしく王道のドラえもん映画という作品だ。
ある種の原点回帰ともいえるかもしれない、
ドラえもん映画も40作を超える作品が生まれ、
奇抜な作品や面白さの当たりはずれも当然生まれている。
そんな中でこの作品はドストレートなドラえもん映画を作り上げている。

数々の未来の道具が出てくるワクワク感は本当に素晴らしく、
1つ1つの道具の使い方、見せ方がシンプルにうまい。
「はいりこみライト」という本作品の主軸である
道具は常に物語の転換の中で使われており、
そこからぶれない。

はいりこみライトで物語が始まる、
はいりこみライトを使って冒険が始まり、
はいりこみライトを使ってトラブルが発生し、
はいりこみライトを使ってトラブルを解決し、
はいりこみライトを使って物語が終わる。

このプロット、起承転結の中がはっきりしており、
そこに肉付けされたストーリーの盛り上げ方がシンプルに素晴らしい。
特に終盤の盛り上がりは尋常じゃなく、
怪獣映画のようなバトルシーンから思わず涙してしまう展開の
ラストまで本当にシンプルに面白い物語が積み上げられている。

ドラえもん映画が好き。
そんな人は多いだろう、そんな人がまさしく求めていたような作品だ。
今、ドラえもんを楽しんでる人も、かつてドラえもんを楽しんでいた人も、
等しく楽しめる、そんな夢が詰まった作品だった。

個人的な感想:44作品

44作品もあるドラえもん映画なのに、
44作品違った魅力と面白さがある。
いつまでも色あせないドラえもん映画の魅力、
自分が子供時代に楽しんだドラえもん映画が変わらぬ
面白さを作り続けていることに感服してしまう。

もちろん、微妙な作品もある。
だが、ここ数年は素晴らしい作品ばかりだ。
これだけ名作を連発するというのは奇跡に近い。
クレヨンしんちゃん、名探偵コナン、長期TVアニメシリーズの映画も
試行錯誤しながらも名作がたまに生まれるというのが現状だ。

しかし、今のところドラえもんは個人的に言えば
6作ほど当たりが続いている。
来年がどうなるかはわからないが、これからもドラえもん映画を
見続けたいと思わせる原点回帰な作品だった。

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