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竿を!金◯を!取り戻せ!「ダンダダン」レビュー

ダンダダン SF
©龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会
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評価 ★★★★★(83点) 全12話

TVアニメ「ダンダダン」第3弾PV|24.10.3放送開始

あらすじ 霊媒師を祖母に持つ女子高生、綾瀬桃は、宇宙人の存在は信じていないが幽霊は信じている。オカルトマニアの男子高校生、高倉健は、幽霊の存在は信じていないが宇宙人は信じている。引用- Wikipedia

竿を!金◯を!取り戻せ!

原作は少年ジャンプ+で連載中の漫画作品。
監督は山代風我、制作はサイエンスSARU

OP

この作品、最近では珍しく1話冒頭OPから始まる。
最近は1話切りが当たり前の時代であり、
1話冒頭から盛り上がりどころを持ってきて、
OPを1話の最後に流す、そんなパターンが多い印象だ。

しかし、この作品はあえてOPを流している。
Creepy NutsによるOP、そしてサイエンスSARUらしい独創的な
OP映像が印象に残り、このOPで一気にダンダダンという
作品の世界観に引き込まれる。

そこからの1話だ。
本作の主人公の1人である「綾瀬 桃」が
彼氏と揉めているところから始まる。
「高倉健」のような硬派な男が好き、そんな彼女が彼氏と揉め、振られる。

ストーリーとしてはシンプルなのだが、アニメーションがとにかくみていて面白い。
綾瀬 桃という主人公が落ち込み、だらーっと腕を垂らしながら歩く、
そんなシーンですら思わず見入ってしまうほどの
アニメーションとしての妙がある。

サイエンスSARUといえば湯浅監督作品を多く手掛けている。
その影響を根強く感じてしまうような、
「ぬるぅー」っとしたキャラクターの動き。
湯浅監督は関わっていないのに、湯浅監督イズムが
サイエンスSARUという制作会社には根付いているんだと感じさせるような
みていて面白いアニメーションがある。

基本的なキャラクターデザインをあえて崩し、
豊かな表情の描写、キャラクターの心理描写というものを
体全体で行うような、どこかミュージカル的な
身体的心理表現がこの作品には詰まっている。

そんな綾瀬 桃がいじめられていた少年、
「高倉健」に声をかけたところから物語が始まる(笑)
オカルトが大好きな少年、そんな少年は自分に声をかけてくれた
ギャルな綾瀬 桃の気持ちを勘違いし、舞い上がる。

彼の手に握られているのは「月間ムー」だ。
オカルトが大好きで、オカルトを信じる。
そんな高倉健は逆に幽霊は信じない(笑)
逆に綾瀬 桃は陰謀論のようなオカルトは信じないものの、
霊媒師の祖母をもつ綾瀬 桃は幽霊は信じている。

宇宙人やオカルトを信じる高倉健、幽霊を信じる綾瀬 桃。
そんな二人は口論の末にいわくつきの場所を訪れることになる。
UFOの聖地に訪れる綾瀬 桃、心霊スポットに訪れる高倉健。
二人は自らが信じない領域に足を踏みいれる。

信じる

二人の主人公は出会ってしまう、世にも奇妙な幽霊の、オカルトの世界に。
高倉健が出会ったのは「ターボばばあ」だ、
ターボばばあに追い抜かれると呪わられる、その一方で綾瀬 桃も
怪しげなサラリーマンのような宇宙人「セルポ星人」に出会い、
生殖行動を行われそうになる。

ターボばばあに呪われ体を奪われた高倉健、
そんなターボばばあと宇宙人によるバトルは思わず笑ってしまう。
怪しげな色で彩られる宇宙人と幽霊の世界、
その色合いがどこか懐かしい深夜アニメの世界観を感じ、
ほどよい「エロス」が深夜アニメらしさを全開にする。

高倉健という少年は孤独だ。
友達がおらず、それどころか人間にいじめられる。
宇宙人なら友だちになってくれるかもしれない、
そんな純粋な思いが彼をオカルトの世界に走らせた。

そんな思いを守ってくれたのが綾瀬 桃だ。
いじめられてる自分をかばってくれた、自分の世界に足を踏み込んでくれた、
そんな思いが彼を「主人公」たらしめる。
たとえ呪われようとも、たとえ化け物になろうとも、
彼は「男」として彼女を守ろうとする。

しかし、綾瀬 桃は旧世代的な守られるヒロインではない。
彼女もまた「主人公」だ。
絶体絶命のピンチの中で彼女の中に眠る「超能力」が目を覚ます。

宇宙人を信じる少年が呪われ、怪異の力を手に入れ、
幽霊を信じる少女が隠された超能力を目覚めさせる。
この相対する要素が二人の主人公を1話で一気に際立たせる。

ダイナミックな構図で描かれるアニメーション、
どこか80年代を彷彿とさせる色使い、
セル画ではないものの、あの頃のアニメーションの雰囲気を
あえて現代でやっているような感覚だ。
そこに更に「押井守」さんのような写実的なニュアンスも感じる。

この1話を見てこの作品に取り込まれない人は少ないだろう。

ボーイミーツガール

この作品はわかりやすいボーイミーツガールだ。
それまで知り合いでもなかった二人、別の世界に居た二人が
出会うことで始まる、それがボーイミーツガールだ。

幽霊を信じず宇宙人を信じる少年、宇宙人を信じず幽霊を信じる少女。
別々の価値観と世界観を持つ二人が出会うことで
二人の価値観、世界観が一気に変わる。

そして、ボーイミーツガールには「恋」がつきものだ。
高倉健は綾瀬 桃にほれ、男になり、
綾瀬 桃は「高倉健」という彼の名前を知り、
同時に「自分、不器用なんで」という彼の言葉に
綾瀬 桃という少女は胸を躍らせ、同一同名な彼に惚れてしまう(笑)

1話冒頭の綾瀬 桃という少女の冗談のような男の趣味を
1話の終盤で一気に回収することで
強烈なインパクトと面白さが生まれている。

宇宙人も幽霊も、何でも存在する世界。
オカルト全開、月刊ムー的な世界観もどこか懐かしくたまらない。
「世紀末オカルト学院」

ターボばばあに「一物」を奪われた高倉健と
宇宙人に狙われる綾瀬 桃の物語の幕があがる。

勢い

とにかくこの作品には勢いがある。
1話の展開も怒涛の勢いで物語が進んでいくが、
2話になってもその勢いは止まらない。

綾瀬 桃の家に入ろうとすると、結界によって
燃え上がる高倉健ことオカルン、
まるで昭和アニメのように燃え上がったオカルンの髪の毛は
チリチリ爆発頭だ(笑)

そうかとおもえばオカルンはターボばばあに一物を奪われており、
その事実に気づくというシーンを描く。
勢いのあるギャグをいれつつ、日常を描き、ストーリーを盛り上げていく、
2倍速で再生していないのに、2倍速で描かれるような
セリフ量と情報量を詰め込んでいる。

オカルンと綾瀬桃、この二人の関係性も素晴らしい。
友達がおらず人付き合いが下手なオカルンと、そんな彼に優しい綾瀬桃。
同時に悪口も言い合う関係性が微笑ましく、
二人の会話を聞いているだけで心地良いリズム感がある。

頻繁なカット、止め絵をカメラで切り取るような音でつなげる演出、
そこにストーリーが乗っかることで怒涛の勢いで
話が紡がれていく。

1話は宇宙人と妖怪との戦いだが、2話ではまた新たな宇宙人が出てくる。
1話の色合いはどこか80年代チックな色合いだったが、
2話になると「白黒」の世界で彩られる、
そこに映えるのはオカルンの変身した姿だ。
呪われた体の「頭」だけを綾瀬桃の超能力で抑えてもらう。

その姿が白黒の世界で赤色の血の色が映え、
制御しきれず、目覚めたばかりの力を二人で使いこなし、
勝利を掴む。努力、友情、勝利、ジャンプらしい三原則が
詰まっていることを序盤でしっかりと感じさせる。

「テメーはうちを怒らせたぜ、雑魚宇宙人」

オカルンも主人公だが、綾瀬桃も主人公だ。
守られるヒロインではない、二人の主人公がいるからこそ、
この作品の魅力も倍になる。

最強ばばあ

綾瀬 桃の祖母は霊媒師だ、
テレビにはエセ霊媒師として出ているものの、「ホンモノ」だ。
そんな祖母が二人の前に現れる、
祖母とは思えないほどの若さ、圧倒的な「実力」、
最強ばばあの存在感は素晴らしく、一気にキャラクターが際立つ。

そんな祖母がターボばばあの倒し仕方を教えてくれる。
いわゆる師匠的なポジションだ。
ターボばばあを倒すためには追いかけっこをするしかない、
命をかけた追いかけっこだ。

全身全例、すべてを掛けた追いかけっこ。
主観視点なども織り交ぜながらのスピード感あふれる
アニメーションがたまらない、真っ赤に染まる画面、
たった2回しか使えない本気を使いながらの逃走劇。
その間に流れるのは優雅なクラシックだ。

もう思わずにやけてしまう、アレンジされたクラシックが流れる中で
本気で逃げ回る二人、サイエンスSARUの本気、センスが大爆発している。
原作の漫画という媒体から、アニメーションという媒体に変化させる、
その変化でアニメーションだからできる表現を
これでもかと見せつけられているような感覚だ。

台詞回しもたまらない。

「てめぇは乗っちまったんだぜ、負けのレールによ」

ギャルでどこかヤンキーっぽい口調の
綾瀬桃という主人公の口上にニヤニヤしてしまう。

なぜ怪異は現れるのか、その因果と結果、
この世とあの世のルールの解釈も素晴らしく、
ターボばばあという敵な存在ではあるものの、
その存在意義がきちんとある。

1話から4話までで丁寧に二人の主人公と物語の始まりを描き、
5話からは「新キャラ」を出すことで物語に深みが生まれていく。

ゴールデンボール

ターボばばあを倒したことで竿を取り戻したはずなのだが、
金玉だけは取り戻せていない(笑)
竿だけでも、玉だけでもだめだ。2つ揃ってこそ男のシンボルである。
そんな彼の金玉を同級生の美少女が拾ってしまう。

ターボばばあの魔力で包まれた金の玉は
美少女に特別な存在であることを自覚させてしまう。
日常の中で「金玉」という言葉を連呼する登場人物たちの
日常会話がもうたまらず、金玉のせいで美少女が能力に目覚め、
その金玉のせいで幽霊に狙われるようになってしまう。

1話からそうだが、幽霊などが現れた際は
画面の色が一気にエフェクトによって独特な配色に
切り替わる演出が素晴らしく、その異質さ、
別の世界に足を踏み入れていることが画面で一瞬でわかる。

序盤は竿を取り戻すために、中盤は玉を取り戻すため。
あまりにもくだらないのだが、そのくだらなさと
おしゃれなアニメーション、怪異とオカルト入り交じる世界観と、
ストーリーを綴るキャラクターの魅力がしっかりとある。

序盤では敵だった「ターボばばあ」も憎まれ口を叩きながらも、
招き猫の姿で仲間になっている。
努力、友情、勝利、ジャンプらしい流れもきちんとある。

アクロバティックさらさら

中盤の敵として現れるのはアクロバティックさらさらだ。
金玉を拾った美少女「愛羅」を娘として認識し、
自分のことを母と呼べと迫ってくる。

ターボばばあの力を再び使えるようになったオカルンによる
戦闘シーンは圧巻であり、外連味を感じさせるアクションシーンで
中盤でもきちんとした盛り上がりが生まれる。
だが、そんな中で「愛羅」が死んでしまう。

アクロバティックさらさらにとって「愛羅」は娘のような存在だ。
自らの体を壊し、みずからのオーラを彼女に捧げようとする。
「愛羅」とアクロバティックさらさらがつながったことで見えるのは
彼女の「過去」だ。

アクロバティックさらさらになる前、生前の彼女の生き様。
昼も、夜も、自分のすべてを捧げ彼女は娘を育てていた。
貧しいながらも母1人で必死に娘を育てるものの、
借金取りに娘を奪われてしまう。

そんな未練が彼女を幽霊にし、
そんな彼女を母を失った「愛羅」が母と呼んだ。
子供を失った母と、母を失った子、そのつながりが今につながっている。
序盤のターボばばあと同じく、「幽霊」というものの存在の
因果を描く、それがダンダダンだ。

未練のある幽霊、そんな幽霊が未練を残したまま消滅すれば無になる。
心を「成仏」させることで、始めて幽霊は次の人生へと歩める。
娘を助けた母、今度は娘が母を助けてくれる。
その因果の描き方もまたこの作品の美しさだ。

ラブコメ

「愛羅」もまた能力に目覚め、
同時にオカルンに対しての好意にも目覚める。
加速度的にストーリーが盛り上がっていき、
ラブコメ的な盛り上がりも生まれてくる。

中盤で金玉を1つ取り戻したものの、玉は2つあることは
男子諸君ならご存知のはずだ。もう1つの玉はどこにあるのか。
そんなことよりもラブコメが盛り上がりまくる(笑)

オカルンにキスしようと迫る「愛羅」と、
それを拒否するオカルンの攻防、それだけで面白い。
そんな攻防に決定的なところを綾瀬桃にみられるという
これまたラブコメ全開なベタなシーンで更に盛り上がりが生まれ、
そうかと思えば、また事件が起こる。

性器を狙う宇宙人、1話の宇宙人がまた再来する。
彼らも目的は「性器」だ。
中盤になっても話のテンポが落ちるどころかあがっていく、
一切ダレることなく刺激的なストーリーとアニメーションが
常に描かれる印象だ。

覚醒した「愛羅」による戦闘方法はまるで踊るようだ。
くるくると回転しながら長い髪をたなびかせ戦う姿の
アクションシーンも素晴らしい一方でオカルンは真っ裸である(笑)

真っ裸で竿と片玉を隠しながら戦う、
真面目なんだかふざけてるんだかぐちゃぐちゃな状態の
ストーリーがこの作品らしい面白さを醸しだしている。

敵もまたふざけており、サラリーマンのような宇宙人の中身は
ウルトラマンに出てくるようなダダの姿をしており、
そんな彼らの部下もどこぞの「バルタン星人」のような姿だ。
このあたりは意識的にオマージュしているのだろう。

そうかとおもえば「ネッシー」も出てくる。
幽霊、怪異、宇宙人、ネッシー、もうなんでもありだ。
それと同時にラブコメもギャグも展開している。
ハイスピードなストーリー展開と情報量の多さを
1話の中に詰め込んでいる。

そんな情報量の多さと展開の速さはあるものの、
基本は友情・努力・勝利の流れがあるため、
散漫にならず話が1エピソードずつうまくまとまっている。
流れるようなアニメーションとストーリー展開、
そして「オチ」に至るまであまりにも心地良い。

呪の家

終盤になると綾瀬桃の幼馴染があらわれ、
彼が抱えている呪いの家の問題を解決しに行くという流れになる。
幽霊がでてきたかとおもえば宇宙人がでてきて、
宇宙人がでてきたかとおもえば幽霊がでる、
交互にえがかれながらものがたりが進んでいく。

そうかと思えば「走る人体模型」が出てくる(笑)
序盤のターボばばあを思い出すような追いかけっこを
再び終盤で描き、そんな人体模型の恋愛を描くことで
オカルンが自分の思いを自覚する。

ふざけてるのにストーリーが進む、これぞダンダダンだ。
ただ、残念なのはこの作品は実質分割2クールで作られていることだ。
1クール目のストーリーの区切り自体があまり良いとはいえず、
物凄い中途半端というか、先が気になるところで終わっている。

そのあたりは残念ではあるものの、
来年の夏の2期が楽しみなところだ。

総評:究極のボーイミーツガール

全体的に見て素晴らしい作品だ。
オカルトを信じる少年と幽霊を信じる少女、
そんな二人が出会うことで世界が変わり、恋が始まる。
ボーイミーツガールとしての要素をまっすぐに描きつつ、
それと同時に主人公の「男のシンボル」が物語の中心になる(笑)

序盤は竿が、中盤は玉が。
最初から最後までそんな男のシンボルが物語の中心にあり、
怪異が竿や玉を狙う一方で、宇宙人もバナナを狙いつつ、
女性である綾瀬桃も狙っている。

そんなどこかふざけたような基本設定があるのにもかかわらず、
きちんと「因果」が描かれている。
怪異が現れる因果、その人間の未来を描くことで
物語の深みが生まれており、7話など思わず涙腺を刺激されるほどだ。

アニメーションのクォリティも本当に素晴らしく、
写実的な演出やカメラワークが合ったかと思えば、
サイエンスSARUらしい自由な、作画崩壊とも言えそうな
キャラクターの表情や人体をあえて崩すことによるアニメーションが
本当に心地良い。

1話1話の情報量も非常に多く、それと怒涛のテンポで見せている。
実質分割2クールで中途半端なところで物語が終わったことは残念だが、
このクォリティが2期でも維持されることを期待したい。

個人的な感想:ムーが出る作品にはずれなし

オカルトブームはすでに過ぎ去り、
TV番組でも超能力者や霊能者というものが出なくなった時代だ。
しかし、そんな時代に逆行するようにアニメではオカルトが描かれている。
嘘とはわかりつつも、そんなオカルトから人は目が離せない。

この作品はそんなオカルトが詰め込まれている。
夢も希望も友情も恋愛も下ネタもエロスもたっぷりだ、
非常に濃い内容であり、そんな作品を1クールぎゅっと
詰め込んだ作品だった。

今から2期が放送されるのが楽しみで仕方ない作品の1つになった。

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