評価 ★★★★★(82点) 全110分
あらすじ ある日、江戸川コナンら少年探偵団は、阿笠博士が新たに開発した高性能ドローンの飛行テストに付き合っていた。引用- Wikipedia
これはコナン映画の原点回帰にして進化だ
本作品は名探偵コナンの劇場映画作品。
名探偵コナンとしては22作目にあたる。
脚本家は相棒の脚本家でお馴染みであり「名探偵コナン 絶海の探偵」でも
脚本を手がけた櫻井武晴。監督はモブサイコ100の監督でもある立川譲。
なおネタバレも軽く含みますので嫌な方は視聴後に御覧ください。
期待感
冒頭から期待させてくれる。
なにせ映画の冒頭で統合型リゾート施設が作中のテレビで紹介され、
爆破してくださいと言わんばかりの建物が映し出される。
わざわざ紹介したのは「爆破するため」であることを感じさせてくれる。
そして爆破される(笑)
もはや全コナン映画ファンが冒頭わずか5分ほどで
「キタァァー!」と叫びたくなるほどの華麗な爆破であり、
製作者側からコナン映画といえばこれでしょ?コナンと言えば爆破だろ?
と囁かれてるような感覚になるほどだ。
ちなみに余談ではあるのだが私にとって「名探偵コナン」とは、
いかにとんでもない作品になるかを期待してみている。
日本では絶対ありえないような大規模爆破、とんでもない犯人の動機、
ありえなさすぎるコナンのスケボー技術、
お決まりのセリフがあるかどうかに注目してみている。
まれにとんでもない駄作や逆に意外な名作もあり、
そしてよくわからん迷作もあるのがコナン映画の面白さもであり、
大人も子供も楽しめるエンターテイメントあふれる内容を
毎年見せてくれるシリーズだ。
そんな従来のコナン映画ファンの期待感にしっかりとこの作品は
冒頭から答えてくれている。
小五郎の逮捕
今回、毛利小五郎が逮捕される。なかなかに斬新だ(笑)
一時的に警察に捕まったりすることはかつての映画の中でもあったが、
「爆破」容疑できちんと逮捕される展開は初めてであり、
この先のストーリーが一体どうなるのか?という期待感が強い。
そして、入れ替わるように今回のもうひとりの主人公と言っても過言ではない
「安室透」がすっと現れる。
私が彼の大ファンならば、あのさり気ない登場の仕方に
「キャァァー!」と大絶叫だったに違いない。
そう感じさせるほどキャラクターの登場のさせ方に粋すら感じる。
コナンは無実の小五郎を何とかするために爆破事件の真相を明かしていく。
劇場版だとやや強引なストーリーやとんでもない状況になることも多いコナンだが、
今回は珍しくまともなストーリー展開になっており、
「ミステリーサスペンス」というコナン本来のジャンルに原点回帰している。
コナン映画の場合、本筋のミステリーがガバガバでアクションに重きを
置きすぎている作品は少なくはないが、
この作品はある意味「昔ながら」のコナン映画の雰囲気をしっかり感じさせる。
公安
今作のもうひとりの主人公である安室透、彼はコナンファンならばご存知の通り
「公安」の人間だ。
今回は爆破事件に絡んだ公安の動きが綿密に描かれ、
毛利小五郎を助けたいコナンと公安側が敵対するような形になっている。
盗聴しあったり遠隔操作アプリを仕込んだりと公安と探偵の情報合戦が面白く、
探偵という立場のコナンと、公安という立場の安室透。
この2つの立場がきちんと強調されて描かれており、
安室透をもうひとりの主人公に据えたこの作品だからこそのシーンばかりだ。
最近のコナンは黒の組織に対して「FBI」や「公安」が多く登場し、
映画の中でも登場することが多くなった。
そのせいか本来はコナンがやっていた部分をFBIや公安のキャラクターが
やってしまう部分も多かったのだが、今回は対立する形式にすることで、
役割がきっちりと分かれている。
キャラクターの少なさ
今回のコナン映画は映画オリジナルキャラクターが極端に少ない。
コナン映画の場合、映画オリジナルキャラクターが映画オリジナルキャラクターに
何らかの動機を持っていろいろな方法で殺害したり爆破したりしている。
それゆえに多くの映画オリジナルキャラクターが登場する。
しかし、この作品の場合、メインで出てくる映画オリジナルキャラクターは
たった4人しか居ない。この4人の中に明らかに爆破事件を起こした犯人が居る。
その少ないキャラクターに対して既存のコナンのキャラクターが
動き回ることで事件解決に進んでいく。
コナンという作品は元々キャラ数の多い作品だ。
だからこそ映画オリジナルキャラクターを少なくして、
色々なキャラクターをまんべんなく登場させることで「コナンファン」が
きっちりと楽しめるキャラクター描写になっている。
スケボーアクション
私がコナン映画で最も楽しみにしてるのはスケボーアクションだ。
かつては雪崩を起こし、トンネル内を縦横無尽に駆け回り、
ビルの突起に伸縮ベルト仕掛けて遠心力を利用して超跳躍したりと、
ハリウッドもびっくりなアクションを毎度見せてくれる。
今作もそれは忘れていない。
遠隔操作された車が暴走しコナンに向かって突撃ぶっ飛んでくる中で、
車体の下をすり抜け、車体の上、車体の横、ガードレールの上で滑りまくる。
どんな運動神経してるんだと言わんばかりのアクションだ(笑)
ただ今作では「安室透」が出てるがゆえにカーアクションも追加されている。
安室透という人物が出ていなければスケボーでやっていたと
思われるシーンも有あるものの、
やや「狂気に満ちた」顔で行われる安室透のカーアクションは
スケボーアクションなみの無茶をやっており大爆笑である(笑)
雪崩さえ起こしたコナンに「死ぬかと思った」と
言わせるほどのアクションは一見の価値ありだ。
大事
今回のコナン、大事(おおごと)である。過去にも色々な事件は起きた。
スケールで言えば飛行船をハイジャックしバイオテロを起こす事件もあったが、
今回はそんなレベルではない。
「機動戦士ガンダム」という作品では「コロニー落とし」と呼ばれるものがある。
宇宙に存在する人工の居住地を地球に落とすという攻撃方法であり、
作中でも様々な問題のある非道な攻撃方法だ。
今作のコナンはそれに近い(笑)
サスペンス作品でSFロボットアニメで用いるような攻撃を
今作の犯人は復讐のために使用する。あまりにもスケールがでかい、でかすぎる。
コロニーほど大きな物体ではないにしろ、
犯人は「宇宙」から「衛生」を落下させようとしている。
この事実が判明したときの安室透のセリフは名台詞と言えるかもしれない
「まさか空からとは!」
このときの彼は安室透ではなくアムロ・レイに見えてしまった
ガンダムファンも多いだろう(笑)
もう犯人側からすれば絶対普通に爆破物仕掛けたほうが早いと思うのだが、
わざわざ警察庁を破壊するために「衛星」を落とすという
やりたいことに対する手法のでかさがさすがはコナン映画と言わざる得ない。
この現実感を無視したアニメならではのとんでもなさが、
コナン映画の楽しい所だ。
伏線と犯人
冒頭の爆破事件からテレビのさりげないニュース、そして博士の発明。
そういった細かい要素がこの作品では「伏線」になっている。
ストーリーの細かい部分でも無駄がなく、
驚くほど細かい伏線をストーリーの中にさり気なく仕込んでいる。
「アレが伏線だったのか!」と思わず驚いてしまうほどだ。
そしてミステリーとしても素晴らしい。
明らかに「犯人」っぽい人間をミスリードさせている。
見てる大人でもついつい騙されるストーリー展開になっており、
このあたりはさすが「相棒」の脚本家だなと感じさせる内容だ。
火をまとうシュート
コナンといえば「キック力増強シューズ」だ。
作中でも何度も登場し、犯人の頭蓋骨が陥没するんじゃないかと
毎回不安になるアイテムではあるのだが、
今作はコロニー落としに対してキックで対抗する。
もはや見てない人には何を言ってるかわからないだろう。
私も見てるうちに「え?!それで対処しちゃうの!?」と
思わずツッコミたくなったが、荒唐無稽すぎるアクションと
現実感無視のコナン映画らしい展開は清々しさ感じ、
見終わった後に不思議な爽快感すら生まれる作品だった。
総評:これは素晴らしいコナン映画
全体的に見て驚くほど完成度の高いコナン映画だった。
コナン映画のお約束である爆破から始まり、
きちんとしたストーリー展開とミステリーを兼ね備え、
コナン映画を何本を見てきた人でも予想の使いないストーリー展開は素直に面白く、
終盤のとんでもアクションは大爆笑の連続だ。
犯人の動機ややりたいことに対して色々とスケールが大きすぎる部分はあるものの、
ドローンやtor、IoTを使用したテロなど、
色々と最新技術を使った事件は非常に面白く、
アクション部分での荒唐無稽さに対してストーリーはきっちりと面白い。
非常に完成度が高くバランスの取れたコナン映画だったと言えるだろう。
従来のコナンファンも楽しめて、キャラクターのファンもしっかり楽しめてる。
私のようにコナン映画をギャグ映画のように楽しん出る人も、
納得のアクションと「コロニー落とし」は爆笑不可避だ。
少なくともここ10年位のコナン映画の中ではまちがいなく1番面白い。
コナンという作品が嫌いでない限り間違いなく楽しめる作品だ。
個人的な感想:安室の女
最後には誰しも「安室の女」になる。
私は当初、このフレーズの意味がよくわからなかったのだが、
終盤の台詞を見て私も安室の女になることが出来た(笑)
上映中はこの言葉が先行してしまい、
「あ~女性向けに割り切った作品なのかなー。」と思ってしまい、
近年のコナン映画がその傾向が強かったことも相まって
私は劇場に足を運ばなかった。
今、めちゃくちゃ後悔している。
あの爆発を、あのスケボーアクションを、あの炎のシュートを
なぜ劇場で見なかったのか。
10年に1度かもしれない名作コナン映画を劇場で見れなかったことだけが
本当に残念でしか無い。
次回のコナン映画はなんと京極さんが出るようだ。
となると「蘭」のブルース・リーもびっくりなアクションもあるだろう。
そこに強く期待したい(笑)
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