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過剰もっこり「劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)」レビュー

2.5
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評価 ★★☆☆☆(24点) 全94分

「劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)」本予告90秒 | 9月8日(金)公開

あらすじ 新宿を拠点にさまざまな依頼を解決する凄腕の始末屋「シティーハンター」の冴羽リョウとパートナーの槇村香のもとに、動画制作者の女性アンジーから、逃げた猫を捜して欲しいとの依頼が入る。引用- Wikipedia

過剰もっこり

本作品はシティーハンターの劇場アニメ作品。
シティーハンターとしては5作品目の劇場作品であり、
前作は20年ぶりの劇場アニメだったが、
今作はそこから4年の月日を経ての劇場アニメとなる。
総監督はこだま兼嗣、制作はサンライズ、アンサー・スタジオ

キャッツアイ

映画の冒頭からキャッツアイのご登場だ。
前作ではゲストキャラとして出演しており、
今作でも同じくゲスト出演しており、
彼女たちの仕事を手伝う形で冴羽獠と海坊主が同じ場所にいる。

シティーハンターの映画なのに最初に出てくるのが
「キャッツアイ」というのはかなり違和感があり、
前作はあくまでお祭り作品だからこそ、
同じ作者のキャラクターが出ることにそこまで違和感がなかったが、
この作品でも出てしまうのはやや違和感がある。

そんな彼女たちがある場所から盗み出したものを
謎の仮面を付けた人物に奪われてしまう、
その人物は冴羽獠と同じく「コルトパイソン」を使用していた…
というところから物語が始まる。

いつもの

序盤から中盤まではいい意味で「いつもの」シティーハンターだ。
新宿駅の掲示板にXYZの文字が書き記され、
もっこり美女がシティーハンターに依頼してくる、
そんな美女の事情を描きつつ、ストーリーが進んでいく。

展開としてはシティーハンターとしてはベタ中のベタであり、
ある意味で安心感が在り、そんな中で「いつもの」冴羽獠のノリ全開だ。
前作もそうだったが、令和の時代ではTVアニメとしては
コンプライアンス的に厳しいセクハラの数々は清々しいほどだ。

お風呂を覗こうとするのは当たり前、おしりを触るのも当たり前、
前作と変わらず、4年の月日が経っても変わらない冴羽獠と、
そんな彼に振り回されながらも彼に好意を抱いている
「香」の関係性は変わらない。

ただ、そういった定番ネタがかなりくどく描かれている。
香のハンマーも何度も登場し、
「もっこり」というキーワードも何度も出てくるため、
やや胸焼けしてしまう。

お約束ネタではあるものの、
そんなお約束ネタを使いすぎてる印象だ。
いつものノリではあるものの、そんないつものノリばかりで
流石に飽きてしまう部分があり、しかも、テンポも悪い。

ユニオン・テオーペ

今作ではユニオン・テオーペが出てくる、
原作を読んでる方ならばお馴染みの組織であり、
冴羽獠の父がトップに存在する組織だ。
冴羽獠、そして香の兄にとって因縁の相手であり、
タイトルにもなっている「エンジェルダスト」は
シティーハンターの本筋のストーリーにおける重要な要素になっている。

TVアニメではエンジェルダストという「麻薬」が出てくる関係上、
自主規制されており、TVアニメでは未登場だ。
原作ファンにとって「原作の最後までアニメ化されるのでは!?」という
期待感を感じさせるタイトルや要素がふんだんに出てくるものの、
あくまでオリジナルストーリーで勧めている。

このあたりがやや意味不明だ。
きちんとした原作が在り、すでに完結している作品だ。
エンジェルダストや冴羽獠の育ての親を出すならば、
原作通りにアニメを作ればいいのにオリジナルキャラと
オリジナルの展開によるストーリーを作り上げている。

そんなオリジナルキャラの掘り下げも長い。
本作のヒロインである「アンジー」の掘り下げに関しては納得できる。
冴羽獠の父の元で子供の頃から育ち、彼を本当の父のように慕っているものの、
彼は最高傑作である「冴羽獠」に執着している。

そんな父の愛を勝ち取るためにも冴羽獠を殺そうとしている。
この流れ自体はわかりやすく、「アンジー」というキャラクター自体も悪くない。
しかし、問題はそれ以外のキャラクターだ。

無駄なシーン

ピラルクーとエスパーダというキャラクターが
組織から抜け出したアンジーを追ってやってくるのだが、
彼らの掘り下げが無駄に長い。

別に実は良い人でしたみたいなキャラクターでもないのに、
謎に好印象を付けるような食事のシーンまでたっぷりと
尺を使って描かれており、別に必要性を感じないシーンになってしまっている。
特に思入れもない敵キャラがカップラーメンを美味しそうに食べるシーンなど
必要だろうか?
そういった「このシーンいる?」というようなシーンが多い

無駄にギャグを散りばめてばかりでダラダラとしたテンポで
本筋のストーリーがなかなか進まず、
映画の尺てきには90分ほどの映画なのに
体感としては2時間半くらいに感じるほどのグダグダっぷりだ。

特に顕著なのは「ルパン三世」だ。
本作ではルパン三世がゲスト出演することが発表され、
以前、ルパン三世とキャッツアイがコラボした作品も存在しており、
このあたりで何か出番があるのか…?と思いきや、
一瞬しか出番がない。

終盤で冴羽獠と香が敵を追いかける中で、
ルパン三世と次元大介が乗った車とすれ違い、
ルパン三世がこんなことをいう。

「香ちゃん、仕事見つかったんだ」

意味がわからないセリフだ。
シティーハンターとルパン三世がコラボした作品は存在せず、
色々とインターネットの海を漂って調べてみても、
香とルパン三世が接点を持つようなノベライズなども存在しない。

ルパン三世と香がどこかで知り合っていることは
セリフから察することはできるが、
見てる側としては一切接点不明なルパン三世がいきなり出てきても
本当に意味不明だ。

終盤の盛り上がってる最中にそんな無駄なゲスト出演シーンが
はさみこまれてしまい、盛り下がってる気持ちもだだ下がりだ。
こういった無駄なシーンがあまりにも多いのが本作の特徴だ。

無駄なシーンが多いのにテンポも悪い、
終盤のシリアスなシーンでも唐突に現れたナンパ男が
アンジーをナンパするシーンなど絶対に必要のないシーンなどもあり、
結果的に作品全体がグダグダの極みのような作品になっている。

強敵?

終盤ではアンジーと冴羽獠の戦いが描かれる。
ちなみに散々掘り下げるシーンがあった
ピラルクーとエスパーダはあっさりと死ぬ、
あれだけ掘り下げたのにあっけなさすぎる死に様は意味不明でしか無い。

アンジーはかなりの実力者であることはわかる。
冴羽獠と戦う前にエンジェルダストを使用したエスパーダと戦い、
香の手助けこそあったものの勝利している。

そんなアンジーと冴羽獠が戦う前に海坊主たちが
「手加減できる相手ではない」と断言し、
冴羽獠も死ぬ危険性が有ることを噛み締めて、
香に最後の言葉を残そうとしてるくらいだ。
どれほどの強敵なのか、期待感を感じさせてくれる。

だが弱い。
あれだけ強敵フラグを出しておいて、
冴羽獠が負ける可能性も示唆しておきながら、もうボロ負けだ。
強敵フラグが出ているのに強敵ではないという展開は
盛り下がる展開にしかなってない。

はよ、決着つけろや!

このアンジー戦があまりにも長い。
最初はあっけなくアンジーが負けて和解するような展開になるのだが、
冴羽獠の父である海原がアンジーに改良型のエンジェルダストを打ち込み
暴走状態になる。

この暴走状態のアンジーに対しては冴羽獠も流石に苦戦するのだが、
この苦戦するシーンが本当に長い。
何度も何度も銃を撃っては再生され、ボロボロに殴られ撃たれまくる。
そういった展開を何度も何度も繰り返してしまう。

改良型エンジェルダストを撃たれたアンジーを止めるには、
アンジーを殺すしかない。
それを「香」もわかっており、冴羽獠に彼女を止めることを懇願するのだが、何回も懇願する。

ラストのとどめを刺すシーンは非常にかっこよく
冴羽獠という主人公の魅力も感じることができるのだが、
そこに至るまでの展開が異様に長く、
10分で描ける戦闘シーンを20分で描いているような
グダグダさが最後の最後まで残ってしまう。

見てる最中に「もうわかったから早く決着付けてくれ」と思いながら、
あまりのテンポの悪さに辟易してしまう。
ラストは冴羽獠と海原が再開して終わり、
明らかに続編を匂わせるラストシーンのさなかでGetWildを流れる。

本来ならそこでキレイにまとまるのがシティーハンターという作品だが、
前作はちょこちょこと気になるところがあれど、
GetWildで丸く収まった感じがあったものの、
今作はGetWildでは丸く収まりきれておらず、
もやもやした気持ちが残ってしまう作品だった。

総評:GetWildでごまかされない

全体的に見て、前作も作品全体でギャグが多いことが気になったが、
今作はそれ以上にギャグをてんこ盛りにしており、
それがかなり「くどい」感じになってしまっており、
どうでもいいシーンや意味のないゲスト出演キャラも多すぎる作品だ。

キャッツアイにルパン三世、うちのタマ知りませんか、
そしてガンダムUCと色々なキャラクターがゲスト主演しているが、
そのゲスト出演が物語に効果的に作用しておらず、
無駄な尺稼ぎにしかなっていない。
もっとも唐突なユニコーンガンダムに関しては個人的には笑えたが(笑)

アニメーションに関してもところどころ作画が気になるところが多く、
戦闘シーンはよく動いているものの、特に終盤の戦闘シーンは
長すぎて戦闘シーンの緊張感というものが亡くなってしまっている。

話的にも「アンジー」やピラルクーとエスパーダなどの
行動やセリフが支離滅裂になってる部分もあり、
そんなキャラの掘り下げもキャラクターの魅力に繋がっておらず、
必要性のないシーンがあまりにも多い。

海原との決着もつかないままモヤモヤとしたラストで終わってしまってるせいで、
GetWildを流されても締まるものも締まらなくなっており、
中途半端に原作の要素を出してるだけで全く使いこなせていない。

これならばシティーハンター最終章として
「ミック」を出して原作のストーリーをやればよかったものの、
8割オリジナル2割原作のような中途半端なミックスが
作品全体を崩壊させていた作品だった。

個人的な感想:どうしてこうなった…

前作は20年ぶりのお祭りとしてある程度許容できる部分もあったが、
今作は流石に許容できるものではない。

これでTVシリーズの4話分としてやっているのであれば、
このあとの展開も期待できて楽しみにできるが、
映画として作品が成立しておらず、モヤモヤした気持ちのまま
劇場をあとにしてしまった。

シティーハンターにはそれなりに思い入れのある作品だけに、
こんな作品になってしまったことは残念でならない。
ラストの展開を見るに制作側も続編を狙っているのはわかる、
続編ではこの作品の不満を解消できるような作品になっていることを
期待したいところだ…

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