評価 92点 全25話
あらすじ ある春の日、アイドル養成所に通う島村卯月は、以前に落選した346プロダクションの「シンデレラプロジェクト(CP)」オーディションに欠員が生じたため、繰り上げ合格が決定したことをプロデューサーから告げられる引用- Wikipedia
シンデレラの本番は魔法が解けてから
原作はモバゲーで提供されてるソーシャルゲーム。
監督は高雄統子、製作はA-1 Pictures
シンデレラ
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 1話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
1話早々に「お願いシンデレラ」を歌うアイドルの姿が映し出される。
一人一人をきちんと映し出し、歌詞をきちんと出すことで、
この作品の物語の方向性を1話の冒頭できちんと感じさせる。
まさに「シンデレラストーリー」だ。
普通の少女がアイドルという名のシンデレラレになる。
アイドルアニメにおける王道のサクセスストーリーを予期させ、
そんなOPから、まだ「シンデレラ」ではない少女の物語になる。
アイドル養成所に通う「島村卯月」、彼女の同期はやめていってしまい、
彼女しか居ない。そんな中でも彼女はまっすぐアイドルを目指している。
そんな彼女のもとに魔法使いという名のプロデューサーが現れる。
見た目は怖く、でかい。ある意味でアイドルたちよりも
インパクトのある彼の存在感は凄まじい。
「シンデレラプロジェクト」に3名の欠員が出たために、
彼は3人の少女をアイドルとしてデビューさせる。
キラキラした何かを見つけられるかもしれない、
自分の知らない別の世界が待ってるかもしれない、
そんな少女の希望に魔法をかける。
彼女たちのシンデレラストーリーの始まりを強く意識させる1話だ。
3人
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 2話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
ソシャゲ原作アニメの場合、1話からたくさんのキャラを出すことが多いが、
この作品の序盤は「3人」のアイドルになったばかりの
少女にスポットを当ててている。
他のキャラクターとは通りがけに道すがらにすれ違ったり、
エステルームで出会ったりする。彼女たちにとっての
「憧れのアイドル」と新人の彼女たちとの対比と憧れを描き、
彼女たちが目指す先、立つ舞台へのあこがれを強める。
彼女たちも近い将来、同じような場所に立つ。
そんな彼女たちの「目標」を見ている側にもしっかりと意識させつつ、
原作のキャラクターをさり気なく出すことでファンサービスにもなっている。
ソシャゲ原作アニメの多くがやらかした失敗を、
この作品はうまく回避し、キャラクターをきちんと魅せ印象づけている。
彼女たちはシンデレラプロジェクトの一員だ。
14人のアイドルグループである彼女たち。
3人以外のキャラクターはどこか癖が強く、出た瞬間に強烈な印象がつく。
中二病だったり、ニートだったり、ロシア人だったり(笑)
序盤のメインである3人がある意味で王道のキャラだ。
そんな王道の3人と癖のある11人だからこそ
「14人」のアイドルたちの印象がきっちりと見てる側に残る。
ステージ
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 3話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
欠員補充の3人だからこそ他の11人から色々と遅れている。
しかし、そんな3人にチャンスが来る。他の11人よりも先に
バックダンサーではあるものの先輩アイドルと同じ舞台に立つチャンスだ。
まだアイドルとして自覚があるとは言えない。
先輩から指導を受けるも、先輩は息1つ上がらないのに
彼女たちは肩で息をするほどだ。必死に練習し、必死に喰らいつく。
遅れてスタートした3人だからこそ頑張る姿、
本番当日に緊張する姿はこちらにも緊張が伝わってくるほどだ。
右も左も分からない、何もわからないからこそ怖い。
たくさん練習をして自信もあったはずなのに、
本番のステージを前にして、初めてだらけのステージに彼女たちは戸惑う。
不安と緊張、食事も喉を通らない。
いつも明るく元気な「本田 未央」さえも暗い表情を浮かべている。
そんな中で迎える本番。幕は時間になれば否が応でも上がる。
「大丈夫、本番はうまくいく」
その言葉通りに彼女たちは「プロ」としてステージを迎える。
ステージ裏での直前での緊張や不安をファンには感じさせない。
笑顔で踊る3人の姿、見てる側の心配をよそに
「アイドル」になった3人がそこには存在する。
「ありがとうございました」
彼女の感謝の言葉は自分たちの力だけではなし得なかったからこそだ。
仲間の応援、先輩の指導、そして自分たちの努力だけではまだシンデレラではない
彼女たちをシンデレラに仕上げてくれた。
まだ背伸びをしているだけだ。ここから彼女たちのシンデレラストーリーが始まる。
そんな3話までのストーリーに涙腺を刺激される。
選ばれるものと選ばれないもの
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 5話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
14人のアイドルは新人だ。まだ正式にデビューしているわけではない。
そんな中で2人と3人がユニットを組み、CDデビューをする。
デビューに伴い彼女たちだけのライブも行われる。
5人が選ばれて9人は選ばれていない、だからこそ不満も生まれる。
なぜ自分たちより後から着た子が選ばれるのか、
なぜ自分ではないのか。みんながみんなアイドルに掛ける思いがある。
レッスンを頑張れば、小さい仕事をやっていけば、自分もデビューできると。
だけど、それがなかなか敵わないジレンマ、先を越される不満と不安。
そんな不安を抱えながらも彼女たちはアイドルとして成長していく。
人気
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 6話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
選ばれた彼女たちがデビューしても最初から人気とは限らない。当たり前だ。
彼女たちは先輩アイドルたちと違ってまだ新人デビューしたばかりだ。
しかし、彼女は夢を見すぎてしまっている。
1度出た先輩のステージと同じように自分たちのステージも
たくさんのお客さんがいるはずだと。
そんな期待とは違い自分たちのデビューライブのお客さんはまばらだ。
決して0ではない、デビューライブとしては成功と言える人数が集まっている。
しかし、「本田 未央」はそんな結果に納得できない。
自分たちの人気を、今の自分自身の結果を受け止めきれない。
まだ少女な彼女だからこその期待と現実のギャップだ。
プロデューサーは彼女にストレートに言葉を投げかける
「今日の結果は当然のものです」
大人として事実を告げるが、そんな事実は少女の心を傷つけてしまう。
ガラスの靴はもろく、壊れやすく、脱げやすい。
儚げなものだからこそアイドルというものは美しい。
そんな比喩すら感じさせるガラスの靴の表現はこの作品ならではのものだ。
プロデューサー
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 7話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
序盤の彼はどこか存在感がなかった。
確かに見た目のインパクトはあったものの、
彼が「プロデューサー」として仕事をした、活躍した感じは薄い。
無表情でなにを考えているかわからない、
決定事項でなければアイドルに先のことを話すこともなかった。
だからこそ信頼をされていない。ガラスの靴を脱いで彼の元から去る少女たち。
選ばれた彼女たちではあるが、彼女たちにも選ぶ権利はある。
彼は不器用な人間だ。言葉が少なく、感情を表に出すことも少ない。
それは彼の過去がそうさせる。
過去にアイドルが何人か彼の元を去った。
そんな過去が彼を臆病にし、今はただのかぼちゃの馬車になっている。
失敗を恐れるからこそ自らの意思や感情を押し殺し、
少女たちに接してきた。だが、それではダメだ。
それが分かったからこそプロデューサー自身がかぼちゃの馬車から
魔法使いへと変わる。
ただの少女を、1度はガラスの靴を脱いで諦めてしまった少女を、
もう1度シンデレラにする魔法使いになる決意をする。
もう2度と失いたくない、失いたくないからこそ彼女たちとまっすぐに向き合う。
アイドルだけの物語じゃない、プロデューサーの物語もあってこその
アイドルマスターだ。アイドルたちとプロデューサーが一緒に進む。
そんな7話の物語はじんわりと染み渡る。
彼が彼なりに「敬語」をやめてアイドルに接する姿は可愛らしさすら感じる(笑)
だが彼がまっすぐと接するようになったからこそ、
アイドルたちも彼の言葉を信じて待つ。
7話以降、信頼関係の構築がしっかりと描かれている。
続々デビュー
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 9話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
どんどんとユニットとしてアイドルがデビューしていく、
それぞれのユニットを1話完結でしっかりと描きつつ、
そこに「プロデューサー」の存在をしっかりと絡めることで、
彼と彼女たちの成長と変化の物語がしっかりと描かれている。
ユニットの組み合わせも面白く、中二病がソロデビューしたり、
ロリ組と長身アイドルがユニットを組んだり、
ロックを愛するものと猫耳アイドルがユニットを組んだりする(笑)
一見、凸凹に見えるユニットが話の中で絆を深め仲良くなり、
1つのユニットとして魅力のあるものになるエピソードは秀逸だ。
最初は仲が悪い、相性が悪いと思える二人が一緒に住み互いを理解することで
正反対とも言えるキャラクターなのに見事なユニットになる。
1つ1つのユニット、一人一人のキャラにしっかりと愛着を持てる中盤だ。
1つ1つのユニットと一人一人のキャラを描いたからこそ全体曲へと繋がる。
グループとして
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 13話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
ユニットと違う、グループとしての1曲は彼女たちにとって初めてのことだ。
だからこそ不安もある。しかし、彼女たちは1段階段を登る。
もう1段、アイドルとして輝くために。
責任感と緊張感から倒れてしまう子もいる。リーダーだからこその重圧だ。
倒れてしまったことの後悔、頑張りすぎてしまったことの後悔、
ステージに立てない後悔は彼女に深くのしかかる。
そんな彼女を支えようと人とのコミュニケーションが
上手くできない子が1段階段を上る。
天候が荒れることもある。本番はなにがあるかわからない。
そんな中で彼女たちは最大限に今できるパフォーマンスを見せてくれる。
1話の時点では彼女たちはアイドルではなかった。
だが13話で間違いなく、
彼女たちはガラスの靴を履いたシンデレラという名のアイドルだ。
大勢のファンの前で彼女たちは自分たちの今できる最大限のパフォーマンスを
アイドルとして見せてくれる。そこには結果がある。
ファンの歓声とたくさんのファンレターがその証だ。
「アイドルをやめなくてよかった」「楽しかった。…と思う」
ガラスの靴を脱いだ彼女たちが自分たちがシンデレラであると、
アイドルであると噛みしめるシーンに涙を誘われてしまう。
1クールかけて積み重ねてきた彼女たちの努力と成長の結果が、
夢見た景色の中で13話でしっかりと描写されている。
若干作画が不安定な部分があるのは残念ではあるものの
ファーストシーズンはシンデレラストーリーというなの
王道のアイドルの物語を完璧に近い形で見せてくれている。
時計の針は0時に
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 14話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
セカンドシーズンになると出てくるキャラクターも多くなる。
さりげなく彼女たちの先輩アイドルをギャグちっくに出すことで印象づけ、
あくまでもファンサービスとしてのキャラ登場ではあるものの、
話の中で自然に出しており無理やり出している感じはない。
それと同時に時計の針は0時に近づく。シンデレラの魔法が解ける時間だ。
プロジェクトの解体だ。彼女たちが所属する会社の都合により
プロジェクトが一時解散してしまう。
彼女たちの事務所「346プロ」は立派な会社だ。
1話から事務所の豪華さをしっかりと感じさせつつ、
14話ではそんな事務所からの待遇が一気に悪くなる。
寮からも追い出され、仕事も白紙になってしまう。
せっかくここまできたのに、まるで魔法が解けてしまったかのように、
あの時のライブが夢だったかのように消えてしまう。
そんな中で魔法の効果が切れたシンデレラたちが
自分たちの力でシンデレラになる物語がセカンドシーズンで描かれる。
事務所の力はほとんど借りられない。しかし、成果を挙げなければならない。
アイドルとプロデューサーが魔法の力を使わずにシンデレラになり
再び舞踏会を目指す。かぼちゃの馬車はもうない。ドレスもない。
ガラスの靴もない。自らの力だけで自らの輝きでシンデレラになる。
シンデレラの物語は魔法が解けてからが本番だ。
会社とアイドル
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 17話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
魔法が解けてしまったからこそ先輩のアイドルたちも戸惑う。
自身のキャラを否定され、自身の居場所を奪われてしまうアイドルも居る。
そんな中で後輩の気持ちが彼女たちの背中を押す。
彼女たちの背中を追いかけ、彼女たちに憧れ、アイドルになったからこそ
1アイドルでありながらファンでもある彼女たちが先輩の背中を押す。
会社に言われても、彼女たちは自身のアイドルを貫く。
自分を曲げず、自身の魅力を最大限に活かす方法を自分なりに模索した結果の
「キャラ付け」だ。そんな彼女たちだからこそファンは応援してきた。
そんなファンの声と気持ちがあるからこそ、彼女たちもまた
自身のアイドルを貫ける。
会社に言われて今までやってきたことと違うことをやらないといけない事もある。
アイドルは遊びじゃない、仕事だ、プロだ、年上だからと自分に言い聞かせる。
自分自身に憧れてくれるファンや妹がいるからこそ我慢しようとする。
しかし、我慢すればするほど自分らしくないという抑圧が生まれ溜め込んでしまう。
姉だからこそ彼女「城ヶ崎 美嘉」は我慢してしまう。
そんなときに頼りになるのは同じアイドルだ。
自分よりずっと年下で、でも同じアイドルで同じ姉の「赤城 みりあ」が
彼女を受け止める。自分一人で抱え込んでいたものを打ち明けて、
それを受け止め理解してくれる「仲間」がいるからこそ乗り越えていける。
「お姉ちゃんって辛いよね」
そんな愚痴を言い合える。弱さを見せられる相手がいるからこそ救われる。
一人では潰れてしまう。でも、みんながいる。
だからこそ自分らしく居られる。
会社からの支援がなくとも彼女たちは彼女なりに
舞踏会に向けて「私らしさ」を磨いていく。
セカンドシーズンの物語はアイデンティティの喪失と再確立、
そして処世術を描いてると言っても良いかもしれない。
無理
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 18話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
自分を変えようと無理をすることもある。
今の自分のままじゃだめだ、もっと魅力的に、もっとアイドルとして立派に。
だからもっと頑張らないとと焦る子もいる。
自分に求められてることが分かりつつも空回りしてしまう。
一人一人のキャラクターに「人間味」を感じてしまう。
最初は癖が強くて、その印象の強いキャラクターが多かった。
しかし、話が進み一人一人がしっかりと掘り下げられると
そんな癖の強さの先にあるのは彼女たち一人一人の人間らしさだ。
一人一人の内面をえぐるような状況だ。
結果を出さなければアイドルで居られなくなってしまう。
だからこそ追い詰められた中で無理をし空回りをしてしまうこともある。
実に人間臭い。
無理をすることもたまには必要だ。
だけどアイドルだからこそ自然な笑顔を忘れてはいけない。
周りをちゃんと見て前を向いて進む。
彼女たち一人一人の「成長」に涙を誘われる。
一人一人が好きになれる、そんな物語が1話1話紡がれている。
もう一歩先へ
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 20話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
今の立場では敵わないこともある。一歩踏み出して、外に飛び出て知ることもある。
ユニットを組みアイドルとして成長し仲間と絆を紡いできた。
そんな彼女たちの中には新しいユニットの提案が来る子もいる。
新しい仲間と新しいユニットを組む不安、知らない人の所でやる不安。
現状維持も大切だ、だが、それだけでは変われない。
人として、アイドルとして、もう一段上に登るために彼女たちは外に出る。
仲間を信頼しているからこそ新しい道にもすすめる。
今の状況、環境が変わることの怖さは誰もが知っている。
だけど、わからないからこそ確かめたいこともある。
今の自分の立ち位置じゃつかめない何かを掴むために
彼女たちは飛び出していく。
別々に活動し、一人で立つステージだからこそ見える景色がある。
その景色はユニットの新しい景色にもつながっていく。
しかし、その変化を受け入れられない子もいる。
今までやってきたこと積み重ねてきたこととは違うことをしようとする仲間に
戸惑う彼女「島村 卯月」の感情は複雑だ。
変わっていく二人と変われない自分、新しい場所で「笑顔」になれない彼女の姿、
1話から彼女はずっと笑顔だった。そんな彼女の笑顔に影が差す。
時計の針は0時をさし、魔法が完全に解けてしまう。
原点
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 23話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
彼女はあえて原点に立ち戻る。アイドルではなかった、シンデレラでなかった
1話のあの頃の自分の居場所である養成所に。
だが一人で自分を追い詰めれば追い詰めるほど、
今の自分を見せることができず、自身を失ってしまう。
何度同じダンスを踊り繰り返す、そこから抜け出すことができない。
そんな彼女と仲間は真っ直ぐにぶつかり合う。
同じ仲間に本音でぶつかりあうことで今まで抱えきたものを吐き出す。
自分をごまかし「頑張る」と言い放ち、嘘の笑顔を浮かべてきた。
それは彼女自身の心を守るためのものでもある。
笑うなんて誰にでもできる。自分にはなにもないと彼女は気持ちを吐き出す。
キラキラと輝いているアイドルたちに囲まれているからこそ、
「島村 卯月」という少女は自信がなくなってしまう。
自分は必要なのか、自分はアイドルとしてふさわしいのか。
自分自身にはなにもないと子供のように泣き出す彼女に涙を誘われる。
どんな時も頑張れる子は居ない、どんな時も笑顔でいれる子は居ない。
当たり前だ。人間だ。常に頑張り常に笑顔のままで入れるわけがない。
終盤で描かれる「島村 卯月」の物語はあまりにも人間臭い、
だが、その人間臭さがたまらない。
時計の針は0時のまま進まない。
あのときのように誰かが魔法をかけてくれるわけじゃない。
島村 卯月
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 24話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
プロデューサーは彼女に語りかける。
彼女を選んだ理由を改めて彼女に告げる。
「笑顔です」
彼はいつもそう言っていた、その言葉に彼女は不安だった。
笑うことは誰にでもできる、それが自分を選んでくれた理由なのかと。
そんな不安を分かっているからこそ、プロデューサーは言葉を付け足す。
「あなただけの笑顔」
他の誰でもない「島村 卯月」という少女の笑顔に多くの人が救われた。
アイドルに興味すらなかった「渋谷凛」も彼女の笑顔でアイドルになり
新しい世界を知り、楽しさを知ることができた。
最後に決めるのは彼女自身だ。
仲間もプロデューサーも彼女に想いを全て投げかけた。
あとは彼女自身だ。
「探していたのは12時過ぎの魔法、自分の靴で今進んでいける勇気」
セカンドシーズンで流れるOPの歌詞が突き刺さる。
一歩を踏み出し、自分自身を信じる。
シンデレラのガラスの靴でもない、10cmのハイヒールでもない。
ありのままのローファーを履いたいつもの彼女がアイドルとしてステージに立つ。
誰に言われたからでもない、自分が決めて自分でステージに上る。
彼女だけの笑顔を浮かべ、歌う姿に泣かない人は居ないだろう。
眩しいほどに輝く彼女の笑顔に見ているファンもアイドルも
視聴者も涙を浮かべる。
間違いなく彼女はアイドルだ。
魔法が解けてもシンデレラのままの彼女がそこにいる。
舞踏会
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 25話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
一人一人が手に入れた12時過ぎの魔法。
1度解けた魔法だからこそ、自分たちの靴で進み、もう1度シンデレラになった
彼女たちの舞踏会。色々な出来事を乗り越えて成長した彼女たちのライブ。
紛れもないアイドルのステージだ。
一人一人の内面をきっちりあぶり出し、それぞれの人間臭さを描いたからこそ、
一人一人にしっかりと感情移入している。そんな彼女たちのライブ、
汗をかき精一杯の笑顔のライブは眩しい。
そして、それぞれの道へ進む。もう時計の針は関係ない。
総評:これぞシンデレラストーリー!
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 13話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
全体的に見て素晴らしい作品だ。
普通の少女がシンデレラという名のアイドルになるまでの物語を描き、
そこから魔法が解けて普通の少女に戻り、
自分の力でアイドルになるまでのそれぞれの物語をしっかりと描いている。
ファーストシーズンは明るく重くなりすぎずアイドルというものを
綺羅びやかに描いている。
その反面でセカンドシーズンはシリアスになることも多い。
14人のキャラクターをしっかり掘り下げて内面をあぶり出すストーリーは重い。
だが、そんな人間臭さを感じさせるようなキャラ描写がより、
彼女たちに感情移入させ愛着を湧かせてくれる。
それぞれの物語があり、それぞれのシンデレラストーリーがある。
14人の物語を、14人のアイドルのストーリーを2クールでたっぷりと
味あわせてくれる作品だ。
惜しむべきは序盤の作画の不安定さだろう。
作画崩壊とまではいかないものの、やや危ない時もあったのは
少し気になってしまうポイントだ。
それ以外は完璧とも言えるアイドルのストーリーを見せてくれる。
きちんと「曲の歌詞」が作品にあっており、それが物語の伏線にもなっている。
「時計の針」「靴」といった「シンデレラ」という要素をしっかりと生かした
演出と脚にこだわった作画は秀逸だ(笑)
ぜひ、彼女たちのシンデレラストーリーを味わっていただきたい。
きっと貴方も涙を流すはずだ。
個人的な感想:やられた
画像引用元:アイドルマスター シンデレラガールズ 25話より
©BNEI/PROJECT CINDERELLA
寝かせに寝かせてしまった本作品だが、本当に素晴らしい作品だった。
序盤は3人のアイドルにスポットを当て、そこから徐々に14人のアイドル
全体にスポットを当て、それと同時に先輩アイドルたちにもスポットを当てる。
キャラクターの使い方が非常に上手く、余り出番のない先輩アイドルたちの
印象もきっちりとつくのがその証拠だろう。
総勢60名を超えるキャラが出ている。だが、キャラでパンクしていない。
メインに据えるキャラクターをしっかりと見定めてサブで出すキャラ、
ファンサービス的に出すキャラのバランスをしっかりとわきまえたからこそ、
60名を超えるアイドルたち一人一人の印象がしっかりとつく。
制作側の「アイドルマスター シンデレラガールズ」という作品に対する
愛を感じる作品だ。作画の不安定さだけは本当に残念ではあるものの、
そこを除けば個人的には完璧な作品だった。
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