評価 ★☆☆☆☆(18点) 全12話
あらすじ 高校生の灯荒仁は、初彼女ゲットを夢見ていた。しかし、転校した先は不良だらけの威血頭高校であった引用- Wikipedia
MAPPAの無駄遣い
本作品はMAPPAによるTVアニメオリジナル作品。
監督は内海紘子、制作はMAPPA
本気人
この作品の世界、舞台自体は現代の日本なのだが、
本気人というものの伝説が残っている。
戦国時代に刀や兜を脱いで己の身のみで鉄拳を振るっていたもの、
それを本気人というらしい。
この設定に関してはかなりわかりにくい。
そういう伝説が一般の高校生にも知れ渡ってるほどなのだが、
概念自体がふわっとしており、伝説ならともかく、
この世界では本気人を目指して修行している現代人も居る。
見終わったあともよくわからない感じだ。
そんなよくわからない設定をいきなり説明されたかと思えば
「ヤンキー」要素全開になる。
主人公が転校した学校ではヤンキーがチームを組んで争っている。
だが、肝心の主人公はそんなヤンキーの抗争よりも
「女の子」のことが気になってない思春期の男子だ。
そんな主人公が転校初日に一目惚れした少女「神 まほろ」。
彼女に話しかけられれば一度、主人公のハートは矢で撃ち抜かれ
「ズッキュゥゥウン!」なんてもはや死語のような言葉が飛び出てくる。
ヒロインのデザイン自体はどこか現代的なのだが、
ヤンキーが抗争していたりと昭和な雰囲気もありつつ、
現代的なファッションのキャラも多い。このあたりの世界観がよくわからず、
アニメの演出自体もあえて昭和なアニメの雰囲気を持ち込んでる感がある。
1話から色々なキャラがドバドバ出てきて、
バタバタと昭和なドタバタコメディな雰囲気を繰り広げているが、
かなりごちゃごちゃした感じが強く、なにがやりたいのかよくわからない。
掴みどころのなさが凄まじい作品だ。
因縁
そんな世界で主人公はゲームセンターで因縁をつけられる。
逃げる中で主人公はとある「拳銃」をひろい、撃った結果、
跳弾し自らのこめかみに銃弾が食い込んでしまう。
すると彼の前には「本気人(マジン)」が現れる。
いわゆるアラジンのジーニーな存在だ。
めちゃくちゃなヤンキーアニメが始まったかと思えば、
急にファンタジーな展開になるのは意味がわからず、
主人公が「本気人(マジン)」に願ったのも「童貞を捨てる」ことだ。
そんな「本気人(マジン)」が現れても物語が一気に進む感じもなく、
彼に取り憑かれたまま、彼とのドタバタ漫才という名の
会話を繰り広げている。
主人公にとってはヤンキーの抗争も、親友の再会も、
謎の「本気人(マジン)」もどうでもいい。
とにかくかわいい子と交流し、童貞を捨てたいだけだ。
そんな主人公に好感も感情移入もしづらく、
話の展開もついていきづらさ全開だ。
独特なコメディのノリがある。
そのノリが勢い任せでハチャメチャな感じでついていけない。
例えば主人公が一目惚れした女の子と
いきなりデートをする展開になったかと思えば、
告白寸前でいきなりお腹を崩し、また告白しようと思って
石にほった名前のはんこを渡したら、ヤンキーが邪魔してくる、
そのヤンキーは主人公が惚れたヒロインの兄であり、
主人公はボコボコにされてしまう。
彼が惚れたヒロインは兄ラブなブラコンであり、
兄が自分のために戦ってくれる姿を見たいがために、
男を誘惑する悪女だ。
そんなヒロインの正体が明らかになったかと思えば、
ボコボコにされる中で主人公は童貞を捨てるためにマヂ切れし、
「本気人(マジン)」と合体し、「本気人(マジン)」の力を借り受ける。
色々とメチャクチャな展開がハチャメチャに進んでいる感じが強く、
その情報の処理に追われてしまう感じだ。
この作品全体の独特なノリについていけるかどうかで
この作品を楽しめるかどうかが決まるのはわかるのだが、
個人的にはかなり合わないタイプのノリだ。
ヤンキー
基本的なストーリーとしてはヤンキーアニメそのものだ。
色々なチームがあって抗争をしている。
なんのために抗争をしているのかよくわからないが、
キャラクターの中には本気人になるために戦ってるものも居る。
そもそもの本気人がよくわからないため、
本気人を目指してる!と言われても理解できず、
主人公自体もそんな本気人とは関係なく、ひたすら
兄の気を引くために利用されたヒロインに夢中だ。
1話も2話もほぼオチが同じであり、
童貞を捨てるために「本気人(マジン)」と合体し、
自分の強さを証明するために強敵と戦う。
1話も2話も同じオチという「天丼」なオチではあるのだが、
それが笑いに一切つながっていないのに、
制作側としてはそれが面白いシーンとして描いているため、
見ている側とのズレが生まれてしまう。
主人公の緊張したり、いざという場面になると
「お腹が痛くなる」のも何度も何度も繰り返す。
それが面白いわけでもないのに繰り返されるのは苦痛でしかない。
戦闘シーン自体は制作がMAPPAであることが
見ててわかるほど、グリグリなアニメーションを
キビキビと描いており、拳のみでの殴り合いな戦闘シーンを
これでもか!と盛り上げる演出と作画のクォリティは流石だ。
だが、そんな作画のクォリティにストーリーがついていかない。
主人公は色々あって、幼馴染のいるチームではなく、
ヒロインの兄がいるチームにはいることになる。
「本気人(マジン)」と合体することで
一瞬ではあるものの強者を倒す力を手に入れてしまった主人公は
様々な強者に目をつけられ、バトルすることになる。
そういうストーリーを描きたいのはわかるものの、
そもそもの戦ってる理由がヤンキーの抗争という
感情移入のし辛いものでしかなく、
キャラクター自体も厳しいものがある。
キャラクター
主人公はヒロインに夢中で、特に修行などもすることはない。
戦闘になれば「本気人(マジン)」だよりであり、
彼自身が強くなっていくわけでもなく、
あくまでも「本気人(マジン)」との融合率を上げるために
一緒にリコーダーを吹いたりしてるくらいだ。
そんなふざけた主人公に対してヒロインはブラコンをこじらせており、
ストレートに可愛いと言えないような性格の悪さがある、
その他のキャラはヤンキーまみれで特に好感の持てるキャラはいない、
なんのために彼らが争っているのか、チームを組んでいるのか、
まるで理解できないため、彼らがチーム同士で争っても特に感情が
動かされない。
序盤は主人公の幼馴染が所属するチームと、ヒロインの兄のチームの
争いが始まりそうになるのだが、その原因はもう1つのチームが
介入しているせいで…というどうでもいいストーリーが展開する。
そんなストーリーを進行しながら、主人公はヒロインの気を引くために必死だ。
ヒロインは主人公に好感を一切持っていないのに、
ただの一目惚れなだけの主人公が彼女に
固執しつづけるのも余り納得できない。
主人公の恋愛愛情、ヤンキーの抗争、親友との過去、
「本気人(マジン)」の問題といろいろなストーリーが同時に
侵攻しているものの、どれもこれも微妙だ。
毎話毎話、主人公の担任が「怪しげな店」に通うシーンが挟まれるのだが、
それ自体も何の意味があるかわからず、面白さにもなっていない。
色々な要素をとにかく詰め込んで怒涛のテンポとコメディで
勢い任せにやっている感じが強い。
挫折
中盤になると主人公の過去が明らかになる。
かつては幼馴染とともに「本気人(ホンキビト)」を目指していたものの、
彼は挫折し逃げ出してしまっている。
それ以来、いざというときや緊張するとお腹が痛くなってしまうようになり、
女にうつつを抜かすようになっている。
これで彼女がヒロイン一筋ならまだ好感が持てるのだが、
別に一筋というわけでもなく、他の女性にも平気で目を奪われるため
好感が持てないクズのような印象を受けてしまう。
主人公の過去が明らかになると、他のキャラの過去も明らかになるのだが、
ヤンキーの過去など心底どうでもよく、思い入れのないキャラばかりなため
無味無臭な展開が続いてしまう。
ヤンキー同士の抗争に主人公が興味もないのも逆に感情移入できてしまうほど、
彼らの戦い自体がすごくどうでもいい。
特に目的も利益もないのに争っている、バカでしかない。
主人公自身、そんなヤンキー同士の抗争に興味を示さないものの、
ヒロインに関しては興味津々だ。
一目惚れとはいえ、好きな女を守るためなら彼は本気を出す。
そんな真面目なシーンですら「童貞すててぇ!」と叫ぶような主人公なだけに
どうにも締まらないものの、バカな主人公として
ある程度筋は通ってる部分がある。
だが、好きな女を守る力は借り物の力だ。彼自身の力ではない。
中盤からはそんな借り物の力である「本気人(マジン)」の話になっていく。
幼馴染
主人公の力は借り物だ、しかし、幼馴染はそれを知らない。
幼馴染にとって「本気人」は憧れの存在であり、
兄の影響もであり、強さを追い求めている、
久しぶりに再会した主人公は強くなっているものの、
その強さの大本は「本気人(マジン)」のものだ。
幼馴染はそんな真実を知り、少年院に入っている兄は刺されてしまい、
彼のメンタルは落ち込んでしまう。
そこに別の「本気人(マジン)」がつけこんでくる。
中盤を過ぎるとヤンキーアニメとしての要素もかなり薄くなり、
ファンタジーな「本気人(マジン)」の物語になってしまう。
幼馴染はそそのかされ、自らの弱さを克服するためにも
主人公に挑もうとする。
これが「本気人(マジン)」というファンタジーな存在が
絡んでなければまだ飲み込めるかもしれないが、
「本気人(マジン)」という存在のせいで飲み込みにくい。
中途半端に「アラビアン」な要素があるのも理由がわからず、
1話での「本気人」の説明が日本の戦国時代のものなのに、
そんな本気人な「本気人(マジン)」は日本人ではなく、
アラビアンな時代の住人だ。あまりにも世界観がチグハグすぎる。
主人公に宿る「本気人(マジン)」と幼馴染に宿る「本気人(マジン)」は
因縁の相手であり、それぞれ霊のような状態だが、
宿った人物の体を借りて因縁を晴らそうとしている。
そういう展開自体はわかるものの
終盤になっても、結局「本気人(ホンキビト)」が
なんなのかよくわからないのも、話についていけない要因だ。
幼馴染が強さを追い求めて色々なヤンキーとバトルをしても
特に何の感情も揺れ動かされず、
そもそもヤンキーのチーム抗争で強さを求めているだけなので、
戦う理由にも感情移入することもない。
猫カフェ
主人公の担任はひたすら怪しげな店に通っているが、
その正体はただの猫カフェだ、そんな猫カフェにはお気に入りの子がおり、
最終話で担任は勝手に店から連れ出してしまう。
本当に意味不明な展開だ、この担任の猫カフェパートが
メインストーリーに絡むこともなく、
別にギャグとして面白いわけでもない上に、
最終的には「不快感」へと変わる。
担任の先生は勝手に猫カフェの猫を連れ去り、更には逃げられてしまう。
あまりにも意味不明すぎる。
メインストーリー自体も「本気人(マジン)」二人の因縁は
心底どうでもよく、彼らの存在自体がよくわからないのに、
彼らの因縁と、主人公と幼馴染の因縁を絡み合わせたかったのはわかるが、
最初から最後までちぐはぐな感じだ。
「本気人(マジン)」同士の決着、幼馴染同士の決着が終わり、
物語の幕は閉じるものの、一体何だったんだこの作品はという
印象で終わってしまう作品だった。
総評:クズとバカとアホしかいない
全体的に見て作画、アニメーション部分だけを見るならば
さすがMAPPAといいたくなるようなキビキビとした
外連味あふれるアクションが多く、ヤンキーアニメだからこその
殴り合いによる戦闘シーンは切れ味たっぷりに描かれている。
しかし、この作品はそんな作画の良さを殺している。
序盤から中盤までは戦いから逃げた主人公が、
幽霊のような存在に取り憑かれることで力を手に入れ、
その結果、強者に目をつけられてしまいヤンキー同士の
どうでもいいバカみたいな抗争に巻き込まれて戦っている。
作中では「本気人(ホンキビト)」と呼ばれるものを目指しているものも
多くいるものの、それが具体的になんなのかがふわっとしており、
子供時代の主人公や幼馴染が目指していた!というだけで
よくわからなくなってしまっている。
そこに「本気人(マジン)」というファンタジー要素もあるからこそ
余計に厄介だ。アラビアンな世界から来た彼らの存在も
幽霊なのかなんなのかよくわからず、
すべてがふわっとしている。
中盤になると、ヤンキー同士の抗争もどうでもよくなり、
要らないキャラクターも増えてしまう。
そもそもヤンキー同士の闘いも特になにか理由があるわけでもなく、
縄張り争いや因縁のつけあいだけでバカっぽさが凄い。
主人公もろくに修行するわけでもなく、
取り憑かれた存在の力を借りてるだけで、
ひたすら「童貞を捨てるために」戦っているだけで
バカっぽさが凄まじく、クズな感じもある。
そんな主人公惚れるヒロインも性格が悪く、特に好感がもてるわけでもない。
令和の時代にヤンキーアニメを描くという試みは面白いのだが、
そこにアラビアンなファンタジー要素を混ぜるのは水と油でしかなく、
ストーリーも浅い。
同じようなシーンを繰り返すのも引き出しのなさを感じさせる。
主人公が土壇場でお腹が痛くなるシーンや、前の話で見たような
シーンを何度も繰り返したり、
主人公の担任がひたすら猫カフェに通う様子も見せられるが、
特にそれも意味がない。
とにかく色々な要素を詰め込んでごちゃごちゃしつつ、
勢いでごまかそうとしているのはわかるものの、
ごまかしきれていない作品だった
個人的な感想:内海紘子
監督を務めている内海紘子さんといえば、
Free!やBANANA FISH、SK∞ エスケーエイトと
個人的に大好きな作品の監督を務めており、ハズレがないという印象だった。
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