評価 ★☆☆☆☆(20点) 全103分
あらすじ 長崎県出身の都留たまきが青凪大学に入学するところから話が始まる。引用- Wikipedia
脚本墜落
原作は漫画な本作品。原作は全5巻で完結している。
監督は橘正紀、制作はテレコム・アニメーションフィルム。
脚本にはあの「高橋ナツコ氏」が参加している。
なおネタバレを含むレビューです
上京
序盤の展開は非常に丁寧だ。
長崎で生まれ育った主人公は東京に憧れ、東京の大学を受験し上京する。
少女漫画的なキャラクターデザインはやや癖はあるものの、
方言丸出しでドジっ子な主人公は愛らしささえ感じさせてくれる。
そんな彼女が入学しサークルを探しをしている最中に
航空部の「グライダー」をきずつけてしまったところから物語が動き出す。
映画としてはやや淡々かつ地味な始まり方だ。
なにか印象的なシーンがあるわけでもなく、TVアニメの1話のように
淡々と、物語を進めている感じが強い。
言い換えれば丁寧なストーリー運びとも言える。
「グライダー」という身近なものではない存在、
そんな「グライダー」というものについて何も知らなかった主人公を通して
見ている側にも「グライダー」という乗り物がどういうもので
どういう風にとばし、エンジンも積んでおらずプロペラさえないモノが
どういう風に上昇しているのかなどを非常に丁寧に描いている。
だからこそ主人公に感情移入できる。
彼女が初めて味わう「上昇」、上昇気流に乗り舞い上がる感覚が
彼女を見ていて伝わってくるような感覚だ。
独特の浮遊感、人によっては吐いてしまうほどの「ふわっ」とした
胃が浮かび上がるほどの感覚をアニメーションという媒体で感じさせてくれる。
背景
ただ、そう感じたのは序盤だけだ。
以降の殆どのシーンが使いまわしのような空の背景、
コックピット内の描写が多く、練習試合をやろうが、
大会をやろうが、場所が海外に映ろうが大した「変化」が見られない。
最近のアニメ映画は「背景美術」にこだわって描かれることが多いが、
この作品の場合は一定以上のクォリティはあるものの、
この作品だからこその「空」の描写をかんじることもなく、
あまり代わり映えのないグライダーの描写が多く、
序盤のインパクトはあるものの、
それ以降のグライダーのシーンに何も面白みを感じない。
同じ部員が主人公の試合を見て「優勢ですね」などとコメントして
初めて見ている側が「優勢」であることがわかるほど、
グライダーの大会での優劣の差や順位、速さなどが
見ていてかなりわかりにくい。
アニメーションという媒体で見て説明するのではなく、
キャラクターの台詞という言葉で表現してしまっている部分が多く、
途中の練習試合の最中に「コースを外れて4時間もフライトをしていた」と言われても、
その4時間のフライトの凄さや長さというのを見ていて感じない。
キャラの台詞として言われて初めて「4時間もフライトしてたんだ」と感じてしまう。
似たような空、似たようなコクピット内の描写が多く見ていて飽きる。
つっかかる
周りのキャラクターたちもやたら主人公に突っかかってくる。
先輩である「空知」は主人公への「倉持先輩」の態度が気に食わず、
彼女の才能や待遇に嫉妬し、やたらつっかかってくる。
そうかと思えば彼女に恋愛感情を抱く、情緒不安定だ。
他の部員もモブみたいなキャラクターが多く、
ろくに自己紹介もほりさげもしないようなキャラクターばかりで、
サブキャラっぽいキャラでさえ
名前すら出てこないようなキャラも居る。
主人公が名前を呼ばないキャラが多すぎるため見ている側が
キャラノ名前を知る手段が殆どない。覚える覚えない以前の問題だ。
そんな航空部の部員もつっかかってくる。
例えば先輩が主人公に「ドライバー」を預けしまっておいてくれと伝える。
主人公はケツポケットにしまい、すっかり忘れていたところ紛失してしまう。
紛失してしまった彼女ももちろん悪くはあるのだが、大激怒だ。
「ドライバー一本だって重要なんだぞ!?もしグライダーの中で
なくしたりすれば大事故につながる!」
言いたいことはわかる、しかし、そんな大事な一本のドライバーを
託したのは「先輩」だ。
そんなになくしたらいけないものならば入ったばかりの新人に託すほうが悪い。
そんなドライバー一本を夜中に大捜索だ(苦笑)
あまりにもくだらないストーリー展開すぎてちょっと笑えてしまう。
「グライダー」の中で落としたならともかく、
彼女はドライバーを託された後にグライダーには乗っておらず、
道に落としてしまったことはわかっている。
それなのに普通のプラスドライバーみたいなものを深夜に大捜索だ。
翌日でもよくないだろうか。
こういったどうでもいいエピソードが非常に多い。
物語中盤からは主人公の腹違いの姉が出てくるのだが、
子供の頃の彼女への思いから、姉も無駄につっかかってくる。
主人公の対戦相手も突っかかってくる。
田舎のヤンキーのごとくつっかかってくることでしか
物語を進められないのか?と思うほど、
主人公に対しての態度が最初から悪いキャラクターが多すぎる。
主人公の姉もあんだけつっけんどんな態度をしていたのに
あっさり和解したり、ライバルキャラも主人公が気さくな態度で
接したらあっさりと態度を変える。
雑なキャラクター描写が多く、見ていてイラッとしてしまう展開が多い。
空知
謎なのは空知だ。
彼は部の中でも1番技術がある「倉持先輩」にある種の憧れが在り、
彼といつかグライダーに乗りたいという思いがあった。
それなのに新人な主人公があっさりと倉持先輩とグライダーに乗り、
才能を見せ始めると嫉妬してしまう。
そこまではわかる。
彼があっさりと彼女への態度を改めるのも疑問だが、
そこからさらに恋愛感情までいだき始めたかと思ったら、
勝手に彼女の思いは倉持先輩に行っていると勘違いし
唐突に「退部届」を出す。情緒不安定の極みだ
新人の大会が終わったら退部する。
そう宣言してたはずなのに秋になってもやめず、
冬になって「パイロットになるための学業専念」のために部を退部したかと思えば、
全国大会には参加している。退部したのではなかったのだろうか(苦笑)
ストーリーが全体的にダイジェスト気味であり、
そのせいでキャラクターの心理描写や展開がかなり唐突なものになっており、
話が進めば進むほど、キャラクターが出てくれば出てくるほど
どんどんと脚本がズタボロになっていく。
倉持先輩
最大の意味不明なキャラクターは「倉持先輩」だ。
彼はグライダーの才能があり、優秀で、それゆえに「スポンサー」までついている。
このスポンサーは謎の怪我をしており、自分の夢を託せる人物として
「倉持先輩」を指名し、彼を応援していたようだが、
なぜ怪我をしていたのが、彼の夢がなんなのかはまるで描かれない。
序盤から中盤まで割とまともなキャラクターだったものの、
終盤ではいきなり「ドイツ」に飛ばされる(苦笑)
彼には病気の母親がいることがいきなり明らかになり、
恐らくはスポンサーがその治療費も負担してあげているんだろうということは
想像できるものの、あくまで「想像」にすぎない。
制作側の頭の中では「理解」していることを
完全にアウトプットしておらず、そのせいで見ている側が
「察する」ことがあまりにも多い。
恐らくはこういうことなんだろう、恐らくはこういう過去があるんだろうと
脳内補完しながらなんとか話についていける。
しかし、終盤でそれすらも不可能になる。
倉持先輩はドイツに飛ばされ、ドイツで何かをしていたらしいのだが、
彼の乘っていたグライダーが墜落して発見されてしまう。
彼の「死体」は発見されないものの、グライダーの墜落は普通なら
「死亡」しててもおかしくはなく、よくて大怪我だろう。
そんな先輩の事故を「全国大会」の途中で知り、
主人公は動揺しながらも先輩のためにも、自分のためにも、部のためにも
優勝を果たすという流れ自体は悪くない。
しかし、ここからのラスト10分が問題だ。
いきなりドイツへ行く(笑)
あまりにも唐突すぎて展開についていけず、
「え?」と思ってるうちにあっさりとドイツに着いたかと思えば、
ドイツの空を飛んでおり先輩と同じルートを主人公が飛んでいる。
その主人公が乘っているグライダーを「見つめている」人物がいる。
倉持先輩である。
このレビューを見て、映画をまだ見ていない皆さんは理解できるだろうか?
私は映画を見たはずなのにまるで理解できない。
なぜか倉持先輩は無傷で生きており、超高速で飛行場へ趣き、
主人公と無線で会話をし映画は終わる。
どういうことだろうか(笑)
倉持先輩はグライダーが墜落して行方不明になったはずなのだが、
なぜか無傷でピンピンしている。
彼が墜落した後にどうしたのかというのが一切語られず、察することしかできない。
墜落の前に倉持先輩的には「ショッキング」な出来事をが起こっており、
そのせいで自暴自棄になり全てが嫌になって逃げ出したのかもしれないが、
それだとすると「事故」を偽装してまで疾走したことになる。
ちょっと理解が追いつかず、意味不明なラストの展開は
大爆笑することしかできなかった。
総評:打ち切り漫画をアニメ映画にした結果…
全体的に見てひどい作品だった。
グライダーの競技の描写はアニメーションとしての迫力にかけ、
キャラクターの説明台詞でなんとか成り立っている部分が大きく、
序盤以外に見所と言えるものが少ない。
ダイジェスト的なストーリー展開は唐突な展開が多すぎてついていけず、
キャラクターの心理描写が足りない上に、キャラ描写も足りないせいで
名前すら知らないキャラクターがあまりにも多い。
103分という尺でキャラクターを描ききれておらず使い余している。
特に終盤の展開はひどく、結局どうなったのかまるでわからない。
映画を見た後に調べたところ、この作品は全5巻ではあるものの
最終巻で第一部巻となっており、実質的に打ち切りみたいな作品だ。
原作の最終巻もダイジェストみたいな感じになっており、
倉持先輩は死んだような雰囲気になっている、
それをアニメでは「実は生きてました」という展開に変えて
無理やり感動的なラストに仕上げた結果、意味不明なものになっているようだ。
さすがは高橋ナツコ氏である(笑)
原作からの問題点もあるのかもしれないが、
色々とひどい作品だった。
個人的な感想:最初はね…
序盤は非常に丁寧なストーリー運びで
「お、今回は高橋ナツコ先生の悪い癖が出てない作品なのか?」
と期待してみていたら中盤以降どんどんと脚本がひどくなっていき、
最後は墜落してしまったような作品だ。
制作側の、彼女の頭の中では理解できている内容を
視聴者に理解できるようにアウトプットできておらず、
そのせいで全5巻の原作を105分という尺にする上での切り貼りができていない。
切るべき部分を切らず、切ってはいけない部分を切り、
更にそこに原作にはないシーンを入れ込むことでわけのわからない作品に仕上げる。
いつもの高橋ナツコ先生の脚本だ。
「さよなら私のクラマー」以来、約1年ぶりに味わう高橋ナツコ脚本だったが
相変わらずのクォリティで妙な安心感さえ覚えてしまった(笑)
この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください
臨場感があり、とても 素晴らしい作品だと思いました。
キャノピーを閉める瞬間の緊張感が伝わってきて、グライダーを体験していなくても、飛んだ気にさせてくれます
やっぱ、空はいいですね
悪くはないと思う。
ただ、話も画も単調で、総評で惜しい作品となってしまう。Aに一歩届かない「B+」評価。
倉持先輩も、序盤中盤は素敵なキャラなのに、ラストシーンの登場で、観客的には「偽装事故を起こして逃げ出したんだ…」としか想像できず、好印象を抱くことが難しいキャラになってしまって残念だった。
青春群像劇としての爽やかな空気感は好印象だった。
原作読んでから来ました。映画は未視聴
出てくるキャラが寄ってたかってたまきに突っかかるとか勝敗のわかりにくさとかドライバーのくだりは言われりゃ確かにと苦笑してしまう所だがその後の退部届に関しては原作読んでりゃ少なくともどうして辞めずに残ったのか解るだろと。劇場版でどこまで原作再現出来てるのか知らんけど主はかなり置いてけぼりにされてる印象
原作も後半酷かったけど打ち切り漫画を題材にしたのが悪いのではなく映画製作陣が原作を基に多少改変してでもより良き作品へ昇華出来なかったのが原因でしょうね。