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知名度0の隠れた名作「bloody escape -地獄の逃走劇-」レビュー

3.0
BLOODY ESCAPE 地獄の逃走劇 映画
BLOODY ESCAPE 地獄の逃走劇
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評価 ★★★☆☆(59点) 全97分

あらすじ 遠い未来。人体実験で改造人間にされたキサラギは、分断された東京の制覇をもくろむ不死身の吸血鬼集団「不滅騎士団」に追われていた引用- Wikipedia

知名度0の隠れた名作

本作品はエスタブライフのメディアミックス作品の1つとして
映画化された作品。
なおメディアミックス企画ではあったものの、
ゲームは開発中止とあいなり、メディアミックスは
本作品とTVアニメのエスタブライフ グレイトエスケープのみとなる。

タイトル

そもそもタイトルの時点で意味不明だ。
エスタブライフというタイトルでメディアミックスを行う、
だからこそ、TVアニメはエスタブライフグレイトエスケープであり、
出るはずだったゲームもエスタブライフユニティメモリーズという
タイトルだった。

しかし、この作品は「BLOODY ESCAPE」である(苦笑)
TVアニメ自体もFOD独占配信だったため多くの視聴者を失い、
殆ど話題にならない空気アニメだったが、
そんなTVアニメを見ていた数少ない視聴者でさえ、
エスタブライフの映画だということに、このタイトルでは気付けない。

そもそもは「エスタブライフ リベンジャーズロード」という
タイトルの予定だったようだが、なぜか変更になっている。
本当に企画自体がグダグダだ。

クラスタ

この作品の世界観自体がTVアニメの時点からわかりにくく、
そのわかりにくい設定を映画冒頭では文字でさらっと描かれる。
映画は「谷口悟朗」監督に変更されている影響もあるのだろう
TVアニメとは違う雰囲気で描かれる世界観は悪くなく、
比較的明るいノリだったTVアニメとは違いダークな雰囲気全開だ。

多様性のはてに生まれた人類とは違う人種。
吸血鬼や獣人、ロボット、なんでもありなのがこの作品の世界観だ。
人類はクラスタという街ごとに別れて住んでおり、
そのクラスタごとに特徴が違う、
このあたりの設定はTVアニメと同じではあるものの見せ方が違う。

TVアニメがシンプルなSFアニメならば、
映画はポストアポカリプスだ。
きちんと街の外がどうなっているのかを見せるだけで、
この世界の文明、人類といえるものが衰退していることを感じさせる。

クラスタから逃げ出すもの、はみだしもの、
そんなものを許さないクラスタも存在する。
街のルールからはみだしたもの、そんなものを逃がす存在も居る。
TVアニメと見せ方が違うだけで雰囲気もまるで違い、
TVアニメよりも引っかかりが生まれている。

ヴァンパイアから逃げようとする一人の男、
そんな男を「逃がす」おなじみのキャラもきちんと存在する。
TVアニメとあまりにも雰囲気が違うことには驚かされるものの、
きちんと外連味を感じさせるアクションと演出がたまらず、
冒頭10分ほどでしっかりとこの作品の世界観に飲み込まれる。

ヴァンパイアの集団相手に「改造された」肉体を
フルに使いながらも、ヴァンパイアの血を飲まなければ生きていけない
男「キサラギ」、それが本作の主人公だ。
そんな彼が「新宿」クラスタへと逃れるところから
物語が始まる。

キサラギ

キサラギはかつて新宿クラスタにいた男だ。
かつての友と、その妹と再会し、彼は「外の世界」と妹に教える。
この世界において職業の自由というものは限定的だ。
新宿クラスタの男の多くはやくざになり、女は水商売だ。

管理社会、ポストアポカリプスな世界において
ある程度「ルール」を基づかなければ人類は生きていけない。
そのルールから抜けるためにはクラスタから逃げるしか無い。
クラスタから逃げるもの、クラスタを管理するものに対して
反乱を起こすものも現れる。

この退廃した世界で、管理された社会で、
一人ひとりが生きようとしている。
それぞれに正義があり、その正義を貫きために行動をしている。
個人の欲望より集団の利益、そんな社会の中で個人の欲望を貫こうとする。

ヤクザにおわれ、ヴァンパイアに追われながらも、
友のために、友の欲望をキサラギという男は叶えようとする。
世界観自体の分かりづらさはあるものの、
TVアニメにはなかった映像の見応え、キャラの掘り下げがきちんとあり、
映画としての面白さがきちんと生まれている。

特に戦闘シーンの見ごたえは凄まじい。
改造人間なキサラギの肉体を活かした戦闘シーンは
フルCG作品だからこそのヌルヌルとした動きになっており、
ヴァンパイアの自身の肉体の損壊を無視した動きや、
「ヤクザ」の泥臭い戦闘方法とあわさることで
この作品でしか味わえないような戦闘シーンになっている。

横浜

彼らが目指すのは「横浜」だ。
本当にあるかどうかもわからない、だが、今よりはいい。
そんな理想郷を求めるものの、ヤクザやヴァンパイアが追いかけてくる。
彼らは己のクラスタをルールを正義を守りたいだけだ。
そういう世界で生きて、そういう生き方をしてきた。

退廃した世界で己の生き方を貫くために、
キサラギも、逃がし屋も、ヴァンパイアも、ヤクザもそこは変わらない。
そこには友情もある、だが、それ以上に義理人情、
友情では収めることのできないなにかのために彼は戦うしか無い。

キサラギは個を求めている、だが、そんなキサラギの敵となる存在は
ヴァンパイアとしての「集団」を大切にしている。
集団のために個人としての感情「友情」や「愛情」を切り離し、
キサラギと戦う敵の存在は谷口悟朗らしさ全開だ。

その戦いの果に今生きる場所から逃げた先に理想郷があるとは限らない、
少女がたどり着いた「横浜」も本当に理想郷なのか。
すでに世界は終わりかけている、だからこその管理社会だ。

ハッピーエンドではあるものの、ハッピーエンドとは
完全に言い切れない、映画が終わったあとの独特の視聴感は
谷口悟朗監督らしさを感じるものだった。

総評:この面白さを味わう為には高いハードルを超えなければならない

全体的に見て予想外に面白かった作品だ。
エスタブライフのアニメ自体はやりたいことはわかるものの、
色々と見せ方も悪く、やりたいことを面白さに変えきれていなかった感があった。
しかし、本作品では同じ設定を使いつつも、まるで違うものに仕上げている。
世界観は同じだ、基盤となる設定も同じだ、しかし、きちんと面白い。

TVアニメから監督が変わっており「谷口悟朗」監督が
監督も脚本も手掛けたからこそ、1本の映画として
「谷口悟朗」という監督らしいストーリーに仕上がっており、
アニメーション部分でもTVアニメのときにはなかった面白さが
きちんと生まれている。

惜しむべきはTVアニメを見ていないと映画を100%味わいきれないことだ。
TVアニメのメインキャラたちも引き続き登場しており、
世界観や設定などもTVアニメを見ていればわかりやすいが、
いきなりこの映画を見ても分かりづらい部分が多く、
実際、感想サイトなどを見てみると「わけがわからない」という
人も多く居た。

タイトルを変えてしまっているがゆえに
続編的な立ち位置の作品だということも分かりづらいうえに、
主人公もTVアニメと映画では違う。
言うなればスピンオフ的な作品ではあるものの、
この作品の主人公であるキサラギ自体はTVアニメにはでていないため
スピンオフとも言い切れない。

なんとも評価に困る作品だ。
あの微妙なTVアニメを配信はFOD独占という環境で
1クール見たうえでこの映画を見た人のみが
この作品の面白さを最大限に楽しめる。

かなりハードルが高いが、そのハードルを超える価値はある。
他人に勧めにくい作品ではあるものの、
ぜひハードルを乗り越えて見てもらいたい作品だ。

個人的な感想:谷口悟朗

谷口悟朗という監督が好きな人にもぜひ味わってほしい作品だ、
谷口悟朗イズムともいうべき作品の雰囲気と
見終わったあとの感覚がある。

現在はエスダブライフも多くの配信サイトで配信されており、
本作自体もhuluなどでも配信されているため、
ハードルを乗り越えやすくなっている部分もあるため、
気軽な気持ちで観てほしい作品だ。

ただ、メディアミックス企画としては失敗だろう。
TVアニメも話題にならず、ゲームも中止になり、
映画の興行収入も10日間で1300万円ほど、
おそらく最終的には3000万円にも届いていないだろう。

2024年1月5日から公開というタイミングも悪く、
お正月休みにふさわしい映画というわけでもなく、
能登の地震などもあり、世間はそれどころではなかった。
ただ、そのタイミングが違っても興行収入は変わらなかったかもしれない。

色々と不遇な作品だが、メディアミックスのやり方自体が
色々と間違っていた企画だったのかもしれない。

「「bloody escape -地獄の逃走劇-」に似てるアニメレビュー

監督:谷口悟朗, Writer:谷口悟朗, 出演:小野友樹, 出演:上田麗奈, 出演:斉藤壮馬, 出演:内田雄馬

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