評価 ★★★★★(82点) 全12話
あらすじ 実家が雛人形屋で、幼い頃から雛人形職人を目指す高校1年生・五条新菜は、男子ながら雛人形が好きという趣味のためか、小学校からずっと友達がおらず、ひたすら雛人形と向き合う毎日だった。引用- Wikipedia
至高のラブコメ
原作はヤングガンガンで連載中の漫画作品。
監督は篠原啓輔、制作はCloverWorks
男の子なのに…
この作品の主人公の祖父は「雛人形職人」だ。
そんな祖父の仕事に憧れ、雛人形の魅力にとりつかれた彼は
高校生になってもその憧れを止めることが出来ていない。
例え子供の頃に幼なじみに自らの趣味を否定されようと、
彼は朝起きたらまず「雛人形」に挨拶をするような少年だ(笑)
オタク特有の独特な気持ち悪い笑み、
わずか1分半ほどの1話冒頭のシーンでこの作品の主人公が
どういう主人公かというのを見ている側に印象付けてくれる。
彼はいわゆる「ジェンダーバイアス」の被害者だ。
お人形は女の子のもの、仮面ライダーやウルトラマンは男の子のもの。
青は男の子、ピンクは女の子。
そんないわゆる男らしさ、女らしさというのを誰もが
子供の頃から親や周囲の影響で印象付けられていく。
主人公も、そんなジェンダーバイアスがあるがゆえに自分の趣味に自身が持てない。
堂々と世間に公表することも、誰かに言うことも出来ず、それゆえに友達がいない。
時分が好きなものは本当は「男」が好きになってはいけないものだという
一種の思い込みが有る。
最近ではそんなジェンダーバイアスの理解が進み、
男の子だから、女の子だからというような考えが減ってきてはいるものの、
高校生の彼にとってはそんなジェンダーバイアスの被害者の当事者でもある。
子供の頃の経験と自分の好きなものが「女の子」のほうが本来は好きだからという自身の思い込み、
世間の反応や彼自身の思い込みが彼を卑屈にさせている。
「俺と好きなものとみんなの好きなものは違って、
だから俺が居たらみんなの輪を見出して嫌な気持ちにさせるって決まってる
俺が居ないほうが…」
オタク特有の卑屈さが彼には有る。
今どきの高校生は別にアニメが好きだろうが漫画を好きだろうが、
それをクラスの中で話していても後ろ指をさされることはない。
しかし、10年前や20年前は違った。
この作品の主人公は私達、アラサー以上のオタクが
学生時代に感じていた「窮屈さ」や「劣等感」を同じように感じている。
雛人形というやや特殊な趣味を持つ彼だからこそ、
私達以上に孤独で、孤高で、悲壮感に満ちている。
自分の気持ちを彼は外に出せない。
嬉しいことも、悲しいことも、感情を出すことを彼は恐怖している。
そんな彼の前に現れるのが「ギャル」だ(笑)
オタクに理解のあるギャル
卑屈なオタクの主人公に対し、ヒロインである「喜多川 海夢」は
堂々としている。
主人公に対しても何の偏見もなく接し、彼の卑屈さを指摘し、
自分の好きなものを堂々と、周囲にも好きだとアピールできるほど
「自信」に満ち溢れた少女だ。
そんな彼女にはもう1つの趣味が有る、それが「コスプレ」だ。
アニメや漫画が大好きないわゆるオタクである彼女、
好きであるがゆえにコスプレもしたい、そんな「願望」はある。
だが、自身の不器用さ故に「衣装」を作ることは出来ない。
自分の好きなものを好きと言えない男子と、
自分の好きなものを好きと言える女子、
手先が器用な少年と手先が不器用な少女。
そんな2人の「男」と「女」が互いのことをちょっとしたことを
きっかけに知ることで物語が動き出す。
彼女は偏見というものがない。
アダルトなゲームも平然とやる、
そういうゲームは世間的には「男性」がやるものと認識されている。
主人公にとっての雛人形と同じものだ。
しかし、主人公と彼女の価値観は違う。
「好きなものに男とか女とかって、関係なくない?」
そんな言葉に彼はやられてしまう。
あっけらかんと当たり前のように好きなものを好きという彼女の
何気ない言葉に彼は、この瞬間に、恋をしてしまったのかもしれない。
採寸
この作品はシンプルに言えばものすごく、大変、凄まじくエロい(笑)
ヒロインである「喜多川 海夢」はやや価値観がずれている、
普通の高校生の女性なら持ち得ているであろう「恥じらい」が
異様なまでに薄い。
まるで何人もの男性、もしくは女性と関係を持ち、
裸を見られる恥ずかしさなど忘れてしまったかのように、
主人公の前で平然と脱ぎ、平然と水着姿を見せつける。
恥じらっているのは主人公くらいだ(笑)
しかし、男性経験の有無が問題ではない。
彼女にとってはコスプレ衣装を作るための採寸などは
コスプレをするために必要なことだ。
好きなキャラの衣装を着たい、好きなキャラになりきりたい。
そんな「好き」のためならば彼女は他のことはどうでもよくなってしまうのだろう。
故に主人公が恥じらうことでセクシーシーンが成立している。
肉感的なナイスボディなヒロインの描写はフェチズムに溢れており、
水着や下着の食い込み、胸の揺れ、水を弾くような肌の質感、
ギャルゆえの「派手な下着や水着」がそんな肉体を包み込み、
それを余すことなく見せつけてくる。
コスプレ衣装のためとはいえ、完全に構図は
童貞男子をからかう痴女ギャルである(笑)。
からかい上手の高木さんの高木さんをよりエロく、ギャルにしたような
ヒロイン像のインパクトが素晴らしい。
そんなセクシーなギャルに対し、主人公である「五条くん」の
反応も素晴らしく、陰キャ童貞男子らしい反応と
「健全な男の子」らしい身体の反応や「行動」がギャグになっており、
序盤の段階で2人しかわからない2人だけの世界観が構築されている。
そんな余裕があり、恥じらいがない彼女が見せる
「恥じらい」がそれゆえに強烈だ。
恥じらいが0なわけではない、あくまでコスプレという目的のために
彼女はその恥じらいが薄れているだけだ。
その隠していた恥じらいが見える瞬間がたまらない。
綺麗
主人公である「五条」くんにとって「綺麗」という言葉は特別だ。
幼い頃に見た雛人形の美しさに魅入られた彼、それはある種の呪いだ。
そんな呪いを彼はずっと抱えてきた。
それが今の彼自身を構成しているものでああり、彼そのものだ。
卑屈さや自分への自信のなさはあってもそこだけは曲げない。
自分が好きなものを好きという気持ちだけは彼は曲げなかった。
そんな彼の理解者になってくれる「喜多川 海夢」の存在が
徐々に大きくなっていく。その彼の変化が緩やかに自然に描かれていく。
1話ではヒロインと出会い、2話ではヒロインの採寸をし、
3話では一緒に買物に出かけただけだ。
1話1話のストーリー自体は大したことはしていないものの、
そんな彼らの「コスプレ衣装づくり」の日常の中での
キャラクター描写と関係性の変化が自然だ。
初めての理解者、初めての友達の気持ちを裏切りたくない。
初めて誰かに「頼りにされた」という経験は彼にとって失いたくないものだ。
それゆえに必要以上に頑張ってしまい空回りしてしまう。
彼はまだ高校生だ、雛人形を作る頭師としても、一人の男としても
まだまだ未熟だ。
そんな彼の気持ちが痛いほどに伝わる。
ハサミを探す時間すらも彼にとっては惜しい。
一瞬一瞬の時間さえ、彼にとっては惜しいものだ。
彼女の気持ちに答えたい、彼女に嫌われたくはない。
男として、職人として、今できることを彼が精一杯にやる姿が
「五条 新菜」という主人公の魅力を作り上げている。
そんな主人公だからこそ「喜多川 海夢」が恋する気持ちもわかってしまう。
自分の衣装を本気で作ってくれて、自分の好きなものを一緒にやってくれて、
自分の好きなものが本当に好きな男の子。
そんな男の子を前にして恋しないほうが難しい。
それだけではない。
彼の口から溢れる「綺麗」という言葉。
その言葉の重みを大切さを彼自身から聞いたからこそ、
「喜多川 海夢」という少女は自身に向けられた「綺麗」という言葉に
ときめいてしまう。
ラブコメだ。
清々しいほどのラブコメがどストレートに描かれており、
序盤から中盤までほぼメインキャラは「2人」だけだ。
余計な要素がなくまっすぐなラブコメが心地いい。
ただでさえ可愛いヒロインが恋をする。
それはもう破壊的な可愛さを生み出す。
すきぴ
恋を自覚した「喜多川 海夢」の可愛さは破壊的だ。
彼女な素直だ、多くのラブコメヒロインのように恋を自覚して
悩んだり主人公に対し逆にツンツンな態度を取ったりすることなどはしない。
「しゅき」である(笑)
ふとした瞬間の横顔や言葉に、一緒にいるだけでもうだめだ。
好きだと口にはしないものの、もうはたから見れば
早く付き合っちまえと言いたくなる2人の関係性と、
「喜多川 海夢」のどストレートな感情表現がかわいくて仕方ない。
彼女が彼を見る目はもう恋する女子の目だ。
明らかに人から見れば似合っていないクソダサい服を
着ていても、こんな台詞を早口で一気にまくし立てる
「ヤバっ…どうすんのこれ、全部大しゅきすぎりゅ
か待って。は?は?全部カッコいいんだけど!一つに選べなくない?
こんな何でも似合う人存在すんの?いや目の前にいるんですけど」
オタク特有の早口とギャルの言葉がこれほど相性が良いのかと
気付かされるほどの素晴らしい台詞回しになっており、
演じている「直田姫奈」さんのギャル演技も相まって、
彼女の早口台詞が出るだけで笑ってしまう。
2人が自宅や、衣装作り、渋谷で遊んでいる。
ただ、それだけだ。何か大きなイベントが起きるわけではない。
それなのに、この2人の恋模様とキャラ描写がギャグになり、
キャラの魅力に繋がり、作品の面白さにつながっている。
1話1話もしっかりと「オチ」がつき、
起承転結スッキリとした物語がテンポ良く描かれている。
この作品の良いところは余計なキャラが居ないところだ。
「五条 新菜」と「喜多川 海夢」、この2人だけで完結している世界であり、
二人の恋路を邪魔するものも居ない。
中盤になるとキャラクターは追加されるものの、あくまでサブキャラでしか無い。
そんなサブキャラたちも可愛らしく、
メインである2人にとっての刺激、物語の良いスパイスになっている。
コスプレ
この作品はコスプレというものも深く掘り下げている。
衣装作りも丁寧に描いており、1つ1つの衣装が出来上がる過程、
コスプレをする上での特殊とも言える「メイク」のやり方、
お金のかかり方まで丁寧に描いている。丁
寧に描くからこそ、そのコスプレをすることへの大変さも伝わる。
そんな大変な過程をへてまで人はなぜコスプレをするのか。
好きなキャラとおなじになりたい、同じ様になりたいという「憧れ」、
誰しもが子供の頃に憧れた魔法少女やヒーローへの憧れのようなものだ。
大人になれば現実に魔法少女も変身ヒーローも存在しないことは分かっている、
だが、憧れは捨てられない。
現実をわかった上で夢を叶える1つの手段だ。
好きなキャラへの好きという思いと憧れ、そして「夢」を
一人ひとりのキャラが体現している。
憧れのキャラに、衣装を着込んだ彼女たちの嬉しそうな姿は
見ているコチラ側も嬉しくなってしまう。
本気で楽しんで、本布嬉しそうにコスプレをするヒロインや
サブキャラクターたちの表情や動き、台詞、演技に至るまで
「コスプレをする人」の嬉しさや楽しさが全開に
アニメと言う媒体で描かれている。
特に9話のコスプレはちょっと感動すらしてしまう。
コスプレする姉に憧れ、好きなキャラに憧れた内気な少女が
初めてコスプレをする姿。
そんなコスプレを見た人たちの反応と本人の反応が素晴らしく、
本気で楽しそうだ。
コスプレをする彼女たちが、キャラクターたちが生きている。
生きているからこそキャラクターの中に芽生えてしまう
恋心に思わず叫び声すらあげそうになってしまう(笑)
まじやばい
同時に描かれている「エロス」も本当に素晴らしい。
いわゆるラッキースケベ的な物も多いのだが、
そんなベタベタなラブコメにおけるエロスの描写へのこだわり、
生々しい女体の描写を生々しいエロスから
「女体賛美」とまで言いたくなる表現に昇華している。
特に11話での一瞬のシーンだ。
「五条新菜」が「喜多川 海夢」の腰を思わずつかむシーンが有る。
その1瞬の「お腹の肉」の描写に目と心を奪われてしまう。
特に何気ないシーンでのキャラクターの動きもえぐい。
まるで「ロトスコープ」を使っているかのような
ぬるぬるっとした動きを本当に何気なくさり気ないシーンでみせることで
よりキャラクターが生々しくリアルになっている。
終盤のラブコメ模様は凄まじい。
今はこの関係性が心地良い、だからこそあえて寝ているときに、
聞いていないと、聞こえていないとわかっているからこその
「告白」はこの作品のヒロインらしい告白だ。
1話から最後までニヤニヤさせられる作品だった。
総評:オタクに天使が舞い降りた
全体的にみて素晴らしいラブコメだ。
卑屈なオタクの主人公、そんな主人公に対しまっすぐに好きなものを
好きと言えるギャルなヒロイン。
正反対とも言える2人の出会い、コスプレ衣装づくりの日常を通して
少しずつ違い互いに惹かれ合い、中盤にはもう相思相愛だ。
「喜多川 海夢」との日常が「五条新菜」を変えていき、
「五条新菜」との日常が「喜多川 海夢」に恋を芽生えさせる。
好感の持てる主人公と可愛すぎるヒロインだからこそ、
特に何か大きなイベントが起きるわけでもない日常をいつまでもみていたくなる。
そんな日常に華を添えるのが作画だ。
ギャルなヒロインの恥じらいを見せない、余裕のある大胆な行動を
主人公の目を通して見せる。
思春期の男子らしい彼の反応や行動は共感を呼び、
「行動」にも男子ならば共感してしまうだろう(笑)
まるでロトスコープを使ったかのような
ふとした瞬間のぬるぬるとした動き、
食い込みや肉付き、ちょっとした筋肉にまでこだわった女体描写は
さすがはCloverWorksであり、制作側の強い女体へのこだわりを感じさせてくれる。
それがあるからこそ日常ラブコメが華やかなものになり、
シリアスな要素は殆どなくちょっとした台詞回しの中での
ギャグにクスクスとしながらあっという間に1クール終わってしまう作品だ。
久しぶりに素直にストレートに
「これはいいラブコメだ」といえてしまう作品だった。
個人的な感想:ギャル
ギャルなヒロインは色々なアニメの中で出てくるものの、
この作品ほどリアル感の有る、わざとらしさのない今どきギャルでありながら
オタクという属性を持つヒロインは居なかった。
毎話のように変わるネイル、下着(笑)、今どきなギャルな言葉遣いなど
「ギャル」感満載だ。
ギャル感満載でありながらオタク。
そんなヒロインの魅力が全開にこの作品には現れており、
そんなヒロインにふさわしい主人公がきちんと描かれている。
だからこそ、特に大きな出来事がおこらない日常ストーリーなのに
面白いと感じられる作品だった。
今のところ2期の情報はないものの、
この2人の恋がどうなるのかはシンプルに気になるところだ。
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もはや五条君がヒロイン
ガチオタでありながらガチでギャルという、二次元にしかいないと思われていた存在を、素で体現した直田姫奈という新人声優がミラクルすぎる。
キモオタの妄想にしかいないと散々ネタにされて来た「オタクに優しいギャル」を演じる為に生まれてきたような存在w
オタクとしては超ガチ勢で見た目は普通なのに、性格と話し方は完全にギャル。
そんなんずるいわー、だって本物なんだもんw
ラブコメにありがちな
主人公への不快感がほとんど無く
スッキリと見ることができた。
ただ、お色気要素はどうしても
人を選ぶので、万人受けは
しないだろうな〜って作品だった。