映画

「劇場版 BEM BECOME HUMAN」レビュー

3.0
映画
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評価 ★★★☆☆(57点) 全90分

あらすじ 2年後、ベムの行方を探し続けるソニアは、目撃情報からドラコ・ケミカルという製薬会社にたどり着き、そこでベムに瓜二つの人間ベルム・アイズバーグと出会う。引用- Wikipedia

俺たち妖怪人間

本作品は「妖怪人間ベム」をリメイクした作品である
「BEM」の映画作品。
TVアニメだったBEMの続編となっている。
監督は博史池畠に変更になっている。

2年後


画像引用元:映画『劇場版 BEM ~BECOME HUMAN~』予告
(C)ADK EM/BEM製作委員会

TVアニメにおける最終話から2年の月日が経っている。
序盤はその2年という月日の中で起きた変化を描いている。
その変化には驚きを隠せない。

なにせ「ベム」には家族がいる。
人間の姿で妻がおり、2人の子供が居る。
かつて彼が望んだ「人間としての暮らし」の理想そのもの。

まるでベムが妖怪人間であることが夢であったかのように
幸せそうな暮らしをしている。
TVアニメを見ていた人ならば「ベム」が
どうしてこんな理想的な幸せ家族を築いているのかがきになる。

幸せそうなベムの周囲に渦巻く怪しげな人物たち、
ベラとベロはどこへ行ったのか?
幸せそうな空気感と同時に怪しげな空気感を醸し出すことで、
自然と気になる展開になっている。
物語の始まりとしての「引き」が素晴らしい。

じわりじわりとベムの日常を蝕むように闇が這い寄ってくる。

闇に隠れて生きる


画像引用元:映画『劇場版 BEM ~BECOME HUMAN~』予告
(C)ADK EM/BEM製作委員会

TVアニメのBEMは50年前の作品である「妖怪人間ベム」を
アメコミ的なダークヒーローものにしようとしていた作品だった。
しかし、「でんぷんくん」などのふざけた敵の名前や
妖怪のデザインがその雰囲気を邪魔をしていた。

今作ではその「ダークヒーロー」の部分を突き詰めている。
序盤からシリアスかつダークな雰囲気を漂わせており、
敵も「ベムのような妖怪の姿に変わる人間たち」だ。

ハードルボイルドでニヒルな曲、闇に潜みながら暗躍するベラとベロ、
夜という暗い雰囲気の中で映えるベロの火を使った戦闘シーンなど
きちんとアメコミ的なダークヒーローものとして
作品が作られているのを感じる。

TVシリーズの序盤にあったどこかふざけた雰囲気がなくなり、
徹底した雰囲気作りに飲まれる空気感だ。
幸せそうなベムを見たからこそベロは一人で戦うことを選び、
ベラもまた人間社会の中で生きようとしている。

「人間になりたい」という願望を妖怪としての記憶を無くすことで
叶えたベム、そんなベムを見たからこそベラも人間になろうとしている。
ベロはそんな二人を受け入れず、妖怪としてた戦う日々だ。

2年間の中での変化を描き、そんな変化を
彼らを追ってきた刑事「ソニア」に辿らせながら見せる。
バラバラになってしまった3人、暗躍する製薬会社。
徐々に蘇る「ベム」の記憶。

起承転結の流れをじっくりと見せることでじわりじわりと
面白さが湧き上がってくる。

俺たち妖怪人間


画像引用元:映画『劇場版 BEM ~BECOME HUMAN~』予告
(C)ADK EM/BEM製作委員会

TVアニメではベム、ベラ、ベロの3人が主人公だったが、
この作品の主人公はあくまで「ベム」だ。
主人公を一人にしたからこそTVアニメのような作品のブレがなく、
一本筋が通ったような感覚になっている。

薬で押さえつけられていた記憶が蘇り、
ベムは「妖怪人間」としての自分を自覚する。
偽りの作られた家族という存在、人間として過ごした日々、
偽りではあったものの「人間になりたい」という欲望を叶えられた。
だが、記憶が戻ることでそれが崩れていく。

偽りの家族を自らの手で葬らなければならない苦痛、
人間として暮らしていた街が壊れていく苦しみ、
そんな苦痛と苦しみはより黒幕への恨みへと変わっていく。

彼らを作り上げた「伯爵」という存在、
劇場版で描かれるエピソードはTVアニメで描かれなかった部分、
描いてほしかった部分を描いている。

それが描かれたからこそ、ベムの決意にもつながる。
誰かを犠牲にすれば人間になることはできる、
だが「ベム」という主人公はそれを望まない。

「俺は妖怪人間だ、妖怪人間として生きていく」

自分のそばにいてくれる存在がいるからこそ、
自分を認めてくれる存在がいるからこそ、
自分自身を受け入れることができる。

たとえ人間にはなれなくても、妖怪人間としての自分を受け入れてくれる。
存在理由、アイデンティティの確立だ。
自分自身の生まれをしり、人間としての暮らしを1度味わったからこそ、
「妖怪人間」としての自分を認められる。

ある意味で彼の夢も叶う、自分が妖怪人間だからこそ助けられた命で
形は違えど人間になることが出来た。
そんな自分を認めた彼だからこそともいえるラストは儚いものだ。

総評:完結編


画像引用元:映画『劇場版 BEM ~BECOME HUMAN~』予告
(C)ADK EM/BEM製作委員会

画像引用元:映画『劇場版 BEM ~BECOME HUMAN~』予告
(C)ADK EM/BEM製作委員会

全体的に見てTVアニメのときからコレが見たかったと感じる作品だ。
TVアニメはどこかふざけた部分があり、3人の主人公の視点があるからこそ
掘り下げきれなかった部分もあった。
だが、劇場版では「ベム」一人を主人公に据えることで
彼をしっかりと掘り下げ、彼の物語を描ききっている。

ビターなエンディングと未来を感じさせるラストは
儚くも希望に満ちており、この作品があって
初めてBEMという作品が完結したと言えるような作品だ。

はっきりいえばTVアニメの余計な話をはぶいて、
4話分の尺で劇場アニメまでの内容をTVアニメで描ききっていれば、
BEMという作品の印象も違ったものになったかもしれないだけに、
色々ともったいなさも感じてしまう。

続編をやれそうな雰囲気もあり、ベロとベラの物語はまだ終わっていない。
だがこの作品はあくまで「BEM」だ。
そんなBEMの物語を描ききったことは評価したい。

個人的な感想:意外に


画像引用元:映画『劇場版 BEM ~BECOME HUMAN~』予告
(C)ADK EM/BEM製作委員会

TYアニメのときは微妙な印象でしか無かった作品だが、
劇場版では監督の変更も合ってかクォリティがあがっており
本来、この作品がやりたかった方向性で作品が作られており、
この作品を見てBEMという作品の面白さをしっかりと
感じられる印象だ。

2期や映画の続編が作られるかどうかはわからないが、
このクォリティで作られるなら期待したいところだ

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