評価 ★★☆☆☆(30点) 全13話
あらすじ 幼少期の事故により、片足と母親を失った少年・斑鳩夏生は祖母が住んでいた海辺の田舎町へと移り住む。だが祖母が亡くなり、身寄りを失った彼には祖母が持っていた潜水艦と借金が残されることになる。引用- Wikipedia
平成ギャルゲ原作アニメ詰め合わせセット
原作はANIPLEX.EXEより発売されたノベルゲーム。
監督は加藤誠、制作はTROYCA
難しいアニメ化
原作はいわゆるギャルゲーな作品だ。
90年代に大ブームを巻き起こし、アニメ化も何度もされたものの、
最近ではアニメ化されることのほうが珍しい。
ギャルゲーに限らず、ゲーム原作のアニメは「尺」の問題がつきまとう。
ゲームは作品のジャンルにもよるが、
ノベル系のゲームの場合は何十時間というプレイ時間があり、
それを1クールのアニメに収めることは困難だ。
面白い作品もあるものの、基本的には微妙な作品が多い。
それがギャルゲーのアニメ化作品だ。
1話冒頭はギャルゲーっぽさが強い。
いかにもなセクシーなお姉さんや幼馴染の女の子、
わかりやすい配役のキャラが1話から出てくる。
そんな女の子たちに囲まれているのが主人公だ。
地球全体の「海面が上昇」した世界で、地表の多くが沈み、
今もなお、それが続いている世界だ。
そんな世界で主人公は祖母の潜水艦で祖母の遺産を探している。
潜水艦で沈んだ街の中を探索すると、そこには
「ヒューマノイド」が居たというところから話が始まる。
人間と区別がつかない、精巧に作られたヒューマノイド。
古今東西、アンドロイドとの恋愛というのは
もはやこすり倒された設定と内容だ。
海面が上昇した近未来、人間と見分けがつかないアンドロイド、
1話の時点で設定や世界観を説明されるものの、
新鮮味というのはまるでない。
亡くなった祖母が残したヒューマノイド、
プログラムされた存在に「心」は宿るのか。
作品自体でやりたいことや描きたいことが1話でわかるというのは
良いものの、あまりにこすり倒された設定を
今更見せられている感がすごい。
売れば高額の値がつくヒューマノイド「ATRI」で、
主人公自体も自分の義足を買い直すお金もないほどお金に困っている、
だが、「ATRI」は祖母との約束を果たす前に
売らないでほしいと懇願する。
しかし、肝心の「約束」を彼女は忘れてしまっている。
日常
序盤はそんなヒューマノイドとの日常がメインとなる。
片足が不自由な主人公のためにアトリは彼の足になろうとするものの、
彼女自身もポンコツなため役に立とうとしても役に立たない。
いわゆる日常ドタバタコメディを繰り返している。
「高性能ですから!」といいつつも、役に立たない彼女を、
主人公がポンコツといい、
彼女はポンコツといわれたことに怒る。
このお決まりのネタをひたすら繰り返しており、
序盤の段階で飽きてくる。
彼女を作り上げた祖母が彼女と交わした約束はなんなのか。
海面上昇について研究し、ATRIという高性能なヒューマノイドも
作り上げた祖母には謎も多い。
ただ序盤の時点で「あー…泣き展開になるんだろうな」という
先の展開が見え透いてしまう部分も多く、
この日常パートがそのお膳立てにしか見えない。
売ればお金になる彼女、新しい義足がほしい主人公ではあるものの、
祖母の遺産であり、「心」があるように見える彼女を
売ることが彼には出来ない。彼女に対して「好意」を抱いてしまい、
そんな好意をヒューマノイドであるATRIは理解できない。
ベタな流れをベタに描いている。
20年くらい前の深夜アニメを見ているかのような気分だ。
「萌えキャラ」の独特なあざとさとウザさは
20年くらい前によく見たキャラクター描写ではあるものの、
久しぶりに味わうと古臭ささえ感じてしまう。
世界観
界面が上昇し、多くの地表が飲み込まれている。
そんな世紀末的な世界観なのに、
未だに食料が残っていたりする違和感や、
そもそもATRIの動力源はなんなんだ?といった違和感も強い。
電気や水道などもろくに機能しておらず、本土に避難している人も多い。
それなのに離島に住み続けている人達もいる。
本土に行っても物資が不足しており、生活が楽になるとは限らない。
だからこそ故郷に住み続ける人たちもいる。
そんな離島の暮らしを少しでも良くしようと主人公たちは動き出す。
ようやくドラマが3話くらいから動き出す印象ではあり、
「ロボット三原則」を無視するようなアトリの存在の秘密など
気になる部分も増えてくる。
最初は売られることもキにしていなかったATRIも、
主人公とともに過ごすことで人間のような感情が生まれてくる。
主人公と一緒に居たい、そんな思いを彼女は抱え、
同時に主人公も彼女への思いが強まってくる。
そんな中で彼女を狙う存在も現れたり、
彼女が主人公の「初恋の相手」であることも発覚したりする。
中盤からようやくストーリーが盛り上がってくる一方で、
SFな世界観、平成のギャルゲー的なストーリーやキャラ、
それなのにOPとEDを「アイドル」が歌っているのは謎だ。
作品と曲が明らかにあっていない。
そのあたりのもったいなさはあるものの、
ストレートにアンドロイドとの恋、
アンドロイドには感情はあるのかというテーマを描いている印象だ。
愛
ただ主人公の彼女に対する恋愛感情が急に現れたように見える。
中盤で彼女が初恋の相手だと発覚してからは急展開に
恋愛要素を強めている感じが強く、
あくまで妹的な存在として接していたようにも見えていたのに、
急にキスするまで恋愛感情が高まる展開にはややついていけない。
このあたりは1クールゆえの掘り下げの甘さなどもあるのだろうが、
終盤からはシリアスな展開になっていく。
心があるとおもっていたアトリ、そう信じていた主人公、
しかし、彼女はそう「演じて」いただけだ。
マスターである主人公が心があると喜ぶから、
それこそがヒューマノイドとしての本懐だ。
マスターに仕え、マスターが喜ぶことをする、
そう「プログラミング」されている。
相手に心がある、そう自覚しているだけで
眼の前の相手は心など無いのかもしれない。
そもそも「心」とは「感情」とはなんなのか。
終盤のシリアス展開でようやくこの作品が盛り上がってくる。
超高性能なAIを搭載しているATRIは人間らしく
人間の前で振る舞い、人間が求める人間であり続けようとする。
だが、そんなAIとしてのプログラミングと、
彼女の中に生まれた心が常に戦っていることに主人公が気づく。
そんな彼女の心に気づき、主人公も成長し変化している。
この終盤寸前のストーリーは悪くないと感じるものの
終盤があまりにも急だ。
急展開
ただ、そこからの展開がかなり急だ。
急にアトリの暗い過去が明らかになったかと思えば、
エネルギー問題が発生する、
その問題もあっさりと解決したかと思えば、
急にエデンというものが出てくる。
竜の巣のような渦巻きを乗り越えた先にあるエデン、
主人公の祖母が作り出した人口島だ。
このエデンに関しては原作ではもう少し早めに
でてきて、エデンなどに触れているようだが、
アニメだと伏線などはありつつも、かなり急な展開だ。
人類を救うためにはエデンを管理する存在が必要ではあり、
そんな存在は「アトリ」だ。
この先、どんどんと海面も上昇する、エデンがなくては
人類も滅んでしまうかもしれない。
しかも急にアトリの寿命という設定も出てくる。
色々と急だ、急に物語が「セカイ系」になっていく。
ヒロインの寿命はあと3日しかない、
そんな3日をともに過ごすか、システムに組み込まれるか。
あまりにも急展開すぎてついていけない。
その展開の急展開さについていけず、
ラストで泣かせたいという感じのシーンを描写しているものの
なくに泣けず、そこからさらに一気に「70年」も
時間が経過してしまうのは困惑でしかなかった。
総評:だからギャルゲーはアニメに向かない
全体的にみて2000年代に数多くのギャルゲ、エロゲ作品の
アニメ化が通ってきたような失敗を繰り返している印象だ。
そもそも要素としても過去作品の二番煎じ感がつよく、
新鮮味のない要素ばかりではあるものの、
逆にいえば「王道」のKey系作品的なストーリー自体は悪くない。
アンドロイドに心はあるのか、
そんなテーマを描きながら、主人公が彼女と向き合いつつ、
島を少しずつ復興させつつ、自分がなすべきこと、歩き道を
見出していくという流れ自体は面白く、
恋愛描写などの唐突さはありつつも楽しめる部分だ。
終盤に入る前のアトリの真実、人間らしく振る舞ってた彼女に
主人公が向き合うことで彼女の中の心を見つける展開は
素直に良かったと思う部分ではあるものの、
問題はそこからだ。
急に出てきたバッテリー問題や、急にエデンという理想郷がでてきて、
唐突にヒロインの寿命問題とセカイを救うかどうかのような
セカイ系なストーリーに一気に飛躍してしまい、
その唐突さについていけないまま70年も時が流れて
呆気に取られている中で終わってしまった。
原作からの改変もかなり多いようで、
どうしても1クール全13話という尺に原作の
膨大なストーリーを収めるための改変は必要だったのはわかるものの、
その改変されたのが原作をプレイしていなくとも伝わるほど、
終盤の展開はかなり唐突かつ詰め込みすぎだ。
サブキャラクターも唐突に現れたりする展開が多く、
あまり活かしきれていないキャラクターも多い。
原作はもっと面白いんだろうなと感じる部分はあるものの、
それを1クールで収めた結果という印象が残る作品だ。
作画のクォリティ自体は安定しており、
アトリというヒロインを気に入れば楽しめる部分はあるものの、
原作にはあるんだろうなという掘り下げや伏線が
アニメではさらっと流されていたり、そもそもなかったりと、
ギャルゲー、エロゲー、ノベルゲーのアニメ化にありがちな感じで
終わってしまっている作品だった。
個人的な感想:泣きゲー
この手のいわゆる泣きゲーといわれるジャンル自体が
私個人としてはすごく苦手な類で、
その苦手なジャンルの王道を行くような展開を
ぼちぼちと楽しみつつ、終盤はいろいろな意味で
度肝を抜かれてしまった。
アトリというヒロインにもあまり魅力を感じなかったことも
大きかったかもしれない。
久しぶりにいわゆる「萌え」なデザインと「萌え」な
声を浴びて、懐かしさを感じると同時に、
もうそこに魅力よりもふるさを感じてしまった。
とくに「ポンコツ」というワードが代表的だ。
かつてのギャルゲーでポンコツヒロインという属性があったものの、
それも20年くらい前、2000年から2010年くらいまでの
ブームというか要素の1つだ。
それを連呼しているせいもあって古さを終始感じてしまう。
ある意味懐古主義的なギャルゲーのアニメなのはわかる、
原作をプレイしていればまた印象が変わる部分があるかもしれないが、
そうなると改変部分が気になってしまうかもしれない。
ゲーム、とくにノベルゲーのアニメ化は難しい。
2クールあれば違ったかもしれないが、
そうなるとダレたりするかもしれないだけに難しいところだ。
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