ラブコメ

これがエモいってやつですか? 「アストロノオト」レビュー

3.0
アストロノオト ラブコメ
画像引用元:©アストロノオト
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評価 ★★★☆☆(50点) 全12話

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あらすじ 料理人の宮坂拓己は、新しい仕事先として木造アパート「あすトろ荘」の面接に訪れる引用- Wikipedia

これがエモいってやつですか?

本作品はTVアニメオリジナル作品。
総監督は高松信司、制作はテレコム・アニメーションフィルム

1話から、かなり癖の強い作品だ。
それを1番に感じるのは「キャラクターデザイン」だろう。
男性キャラも女性キャラも、明らかに現代的なデザインをしておらず、
女性キャラの場合は強調された唇や色彩もあいまって、癖全開だ。

そんな癖全開なキャラデザのキャラクターで描くのは
「ベタすぎる」ラブコメだ。
主人公は仕事の面接でとある寮に訪れる、すると、屋根の上から
「大家さん」が降ってきて下敷きになる。

昭和のラブコメのようなベタな始まり、ベタなシーン、
どこか懐かしく、どこかで見たことさえあるような気にさえなってくる。
この作品の下地にあるのは「めぞん一刻」だろう。

昭和のラブコメの代表格たる作品であり、
未亡人とのラブコメが描かれている作品だった。
そんな作品を彷彿とさせるようなキャラクターも多く、
ある種のパロディとして作品の下地においている。

キャラクターデザインの癖も、どこか昭和の時代を意識しているのだろう。
BGMや、演出なども最近のアニメというよりは
昔のアニメを彷彿とさせるものだ。

どこか懐かしい、だが、デジタルな作画で描かれる美麗な作画は、
今のアニメであることを感じさせる。
特に「料理人」でもある主人公が作る料理は
リアルかつ美味しそうな作画で描かれている。

あえて令和の時代に昭和のラブコメアニメを描く。
昭和レトロをアニメでやろうとしているかのような作品だ。
なんだかんだあって主人公は大家のヒロイン「豪徳寺ミラ」に
惚れこみ、「あすトろ荘」で住み込みの料理人になるところから
物語が始まる。

そんなベタなラブコメに見える作品だが、
この作品はシンプルにラブコメとは言い切れない部分もある。
なにせ1話冒頭では「宇宙」での戦闘シーンから始まる(苦笑)

ミボー人

ヒロインであるミラはなぜか地球の知識の乏しい。
スマートフォンもしらず、梅酒すら知らない。
大家になったのも3ヶ月前だ。
そんな大家の部屋での会話を主人公は聞いてしまう。

「なんでだめなの?!私が未亡人だから!?」

これまた「めぞん一刻」のパロディでもあるのだが、
未亡人は未亡人でも「ミボー人」だ。
彼女は「宇宙人」であり、「あすトろ荘」のどこかにある
鍵を探している、しかも、ミボー星の王女様だ。

1話でそんな衝撃的な要素を見せることで、
ただのラブコメではないことを感じさせてくれる。
OPの曲、歌詞を含めて昭和のアニメの雰囲気を感じさせつつ、
先の展開への期待感もばっちしだ。

癖は強いが、オリジナルアニメらしい先の読めない展開で
序盤はその期待感を感じさせながら、
ドタバタラブコメを繰り広げている。

ヒロインのことを未亡人であると勘違いしてる主人公と、
ミボー人という宇宙人であることを隠しているヒロイン、
そのすれ違いがラブコメというドラマを生んでおり、
キャラデザの癖や演出のふるさこそあれど、
それがこの作品らしい独特の味わいになっている。

住人

これで本当に昭和のラブコメなら、
4クールくらいかけて物語が展開していくが、
この作品はあくまで令和のアニメだ、展開は異様に早い。
1話でヒロインの正体がみている側には伝わり、
2話にはヒロインの自称フィアンセも現れる。

トントン拍子に展開が進みつつ、丁寧に「あすトろ荘」の
住人を掘り下げながら、彼らのちょっとしたトラブルを解決しつつ、
徐々に主人公とヒロインの距離が近くなっていく。
そんな中で以前の大家の秘密をさぐりつつ、鍵を探していく。

シンプルだがわかりやすいストーリーであり、
主人公にはヒロインの幼馴染という自称フィアンセが、
ヒロインには「あすトろ荘」の住人の一人という恋のライバルが
互いにいることでラブコメらしい恋愛模様を描いている。

中盤になると色々な真実が明らかになり、
主人公にもヒロインの秘密が明らかになってしまう。
ヒロインの出生など、描きようによってはかなり重くなりそうなのだが、
この作品はあくまでコメディタッチに明るくギャグとして描かれている。

「あすトろ荘」の住人はいろいろな事情を抱えている。
孤独な少女、無職な父と女の子の格好がしたい息子、
売れない地下アイドル、
そんな住人の事情を中盤からは掘り下げていることで
1話1話人情噺を描いている。

ただ、1クールでは掘り下げ不足のキャラクターもおり、
特に地下アイドルのエピソードに関しては、
同クールで奇しくも似たような話があったせいか、
いまいち面白みにつながっていない。

本来なら4クールくらいでがっつりと日常を描きつつ、
じっくりとキャラを掘り下げるような雰囲気の作品ではあるものの、
1クール故にそのあたりもさっくりとしている感じは否めない。

カオス

終盤、鍵があっさりと見つかる、驚くほどあっさり見つかる感じは
この作品らしいノリがあるものの、終盤はカオスの極みだ。
鍵が見つかり、母星に帰る事になったヒロイン、
別れを惜しむものの、主人公とヒロインは己の愛を伝え合う。
だが、鍵を狙っていたゴシュ星の脅威も迫っている。

そんな中で探していた鍵を「あすトろ荘」に差し込むと
「あすトろ荘」がロボットに変身する(笑)
何をいっているかわからないと思うが、
この通りなのだから仕方ない。

あまりにもメチャクチャでカオスな展開は笑うしか無い。
散々ラブコメをやっていたかとおもえば最後はロボットアニメになる。
このあたりは高松信司監督らしい展開とも言えるかもしれない。
勇者シリーズなどのロボットアニメを手掛け、
スクールランブルなどのラブコメを手掛け、
銀魂というギャグを手掛けた高松信司監督らしさが詰まっている。

ただ、色々と展開が唐突であり、
そんな唐突な展開を見せられたかと思えば、
最後はきれいすぎるくらいのハッピーエンドで終わる。

王道なのかカオスなの、古いのか新しいのか。
色々と評価に困る作品だった。

総評:未亡人?いいえ、ミボー人です

全体的に見て好みは分かれる作品だ。
「めぞん一刻」や「うる星やつら」など、
あの時代のラブコメ的な要素やテイストを居れつつも、
時代感はきちんと現代にアップデートされており、
ジェンダーや昆虫食など最近話題の要素も入っている。

それがきちんと掘り下げられるというわけでもなく、
基本的にはベタなドタバタラブコメをしつつ、
トントン拍子に話が進み、最後にはロボットアニメになり、
なんだかんだでハッピーエンドになる。

話がジェットコースターのように急展開しつつ、
ぐるんぐるんと目まぐるしくいろいろな要素が入っているものの、
1つ1つの要素自体は深く掘り下げるわけでもなく軽い感じだ。

先鋭的なようで古く、面白いようで面白みが薄い。
王道のようでカオスでありと、なにか1つ貫いたものがあれば
もっと面白い作品になりそうな気配だけはあるものの、
1クールだと難しいのか、無難というかあまり深い印象は
残らずに終わってしまう作品だった。

あえて令和の時代に昭和ラブコメをしようとおもった
制作側の心意気は評価したいところであり、
序盤から中盤までは悪くないと感じていたものの、
風呂敷をたたむ終盤の展開がカオスなように見えて、
雑にも見えてしまう部分もあり、色々ともったいない作品だった

個人的な感想:覇権を取りたかった…?

公式Twitter(X)で制作側が半分冗談なのかどうかわからないが
「覇権を取りたかった…」とつぶやいており、
その原因はこれは宣伝チームの力不足とつぶやいてもいたのだが、
根本的な原因は違うように思える。

この作品はあえてレトロなことをやりつつも、
どこかカオスさを匂わせつつ王道なストーリーを展開している。
この内容でバズるのは非常に難しい。

前期の勇気爆発バーンブレイバーンのように、
もっとカオスにギャグに割り振っていれば違ったかもしれないが、
どこか変に真面目さを感じさせる部分がある。

昭和ラブコメパロディという趣向自体は面白かったものの、
それが面白かったのも中盤までで、
中盤からは色々と雑な部分も目立ってしまっていた。

個人的に「ショーイン・ジンジャー」の裏切りも
唐突感があり、なんだかなーというような印象で終わってしまった。
中盤くらいまで嫌いじゃないキャラクターだっただけに、
終盤で印象が変わってしまうのはちょっと残念だった。

もう少し色々とはっちゃけてくれれば面白い作品になったかもしれないが、
1クールでまとめるという制限のせいか、
はっちゃけきれずに終わってしまった、そんな印象の残る作品だった。

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