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「アルスの巨獣」レビュー

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評価 ☆☆☆☆☆(5点) 全12話

TVアニメ『アルスの巨獣』第1弾PV│2023年1月6日(金)放送開始!

あらすじ 世界には様々な種族に分かれた人類と、人類を遥かに上回る巨体と力を持つ巨獣が蔓延っていた。引用- Wikipedia

ヤケクソ完結

本作品は、DMM.comおよび旭プロダクション企画による
TVアニメオリジナル作品。
監督はオグロアキラ、制作は旭プロダクション

既視感

1話から非常に既視感が強い作品だ。
タイトル通り、この作品には「巨獣」という存在がいて、
人類の敵として定期的に襲ってくる。

そんな「巨獣」に立ち向かうのは「ナギモリ」という存在だ
不思議な力で男女一組のパートーナーとなり、戦っている
ただ、1話冒頭の「つかみ」の時点ですでに弱い。

色々な作品を彷彿とさせつつ「ふわっ」とした世界観を示しており、
特にナギモリや巨獣に関して説明もなく、
いきなり30年もの月日が立つ。
そうかとおもえば少女がどこからか脱走を試みている。

そんなシーンですら既視感が有る。「ジブリ」だ。
監督のTwitterによると「意識的」にジブリや平成アニメ的な
雰囲気を取り入れているようだが、
ナウシカやラピュタっぽい服装や機械のデザインの数々をしており、
ジェネリックジブリ感あふれる作品だ。

どことなく「かつてのGONZO」アニメのような雰囲気すらある。
あの頃の深夜アニメ、あの頃の質アニメに
ジブリ的なテイストを入れ込んでいる。

「男勝りのクウミ」

謎なのがこの世界における二つ名だ。
二つ名はその人物を指し示すものだったりするが、
何かしらの偉業や人々が恐れおののくことをなしたからこそつくものだ。
しかし、この作品のキャラクターは普通の一般人ですら
二つ名がついている。

ヒロインの少女が出会ったおばさんですら
「男勝りのクウミ」という二つ名をもっており、
それをまるで自らの名字のごとく呼称している。
ちょっとこのあたりの飲み込みにくさが1話から生まれている。

1話からキャラクター数も多い。
世界観もよくわかっておらず、主人公やヒロインの立ち位置や
置かれてる現状もよくわからないままに、
色々な立ち位置のキャラクターがドバドバでてきて、
支店も頻繁に切り替わってしまう。

そんな世界で主人公は「死に損ないのジイロ」を自称している。
自堕落でどこかやる気がなく無精ひげをはやした彼は
「巨獣狩り」を生業としている。
まるで「モンスターハンター」のように巨大な獣に
前時代的な武器で挑む傭兵たち。

そんな巨獣は人類の平和を脅かす存在では有るものの、
同時にそんな巨獣の素材で街は生きている。
これもまたどこかモンスターハンターっぽい世界観だ。

そんな中でヒロインは帝国の兵士におわれている。
なぜか「弓矢」がささっても血の一滴も出ない。
そのかわりになぜか黒い「スス」のようなものがでてきて、
襲ってきた兵士を同じ黒いススに変えてしまう。

そんなヒロインを見た主人公は「死滅の呪いか」とつぶやき、
彼女の額に口づけをし、なんらかの契約を交わす。
ここまでが1話だ。
色々な要素やキャラクターを1話からドバッとみせすぎており、
そのせいで掴みどころのない作品になってしまっている。

合体!

カンナギであるヒロインとナギモリである主人公が合体すると
超サイヤ人のごとく変化し、単独で巨獣に挑めるほどの力を手にすることができる。
ただ、この戦っている姿も絶妙にダサく、
戦闘シーンのクォリティも目に見張るほどのものはない。

昨今は進撃の巨人や呪術廻戦など素晴らしい戦闘シーンを描く
TVアニメも多いだけに、この作品の戦闘シーンはかなり見劣りしてしまう。
戦闘シーンが多いのに戦闘シーンが盛り上がらない。
作画や演出、構図やカメラワークなど、どれをとっていまいちな感じが強く、
淡々とした戦闘シーンに見えてしまう。

2話では追ってくる敵の戦艦を沈めるために
二人で戦艦に大穴を開けるという展開になる。
そんな大穴を開けるという盛り上がりそうなシーンですら、
一切盛り上がらない。
わざとかと思うほど、盛り上げ方が下手な作品だ。

主人公は以前、パートナーであるカンナギを失っており、
そのせいでやる気を失っている。
そんな彼の再生の物語でも有ることはわかるのだが、
3話からは帝国になぜか追われているヒロインとともに逃げるために、
ロードームービーが始まってしまう。

ぐだぐだ

そんなロードームービーが始まるとテンポが悪くなる。
雨で一箇所にとどまったりしながら、
各キャラ同士の仲を深めつつ旅の仲間も増えていくような感じだが、
メインストーリーが進まずにどうでもいい話が描かれている印象だ。

少しずつ1話ではった伏線や謎、過去などを描いてはいるものの、
だらーっとしたテンポで話が進んでしまい、
メリハリのないストーリーと盛り上がらない戦闘シーンのお陰で、
3話になっても4話になっても面白みが生まれない。

主人公たちの追手である帝国も迫ってきており、
そんな追手はかつての主人公の仲間だ。
なぜ彼が記憶喪失になって帝国についているのか。
帝国は何の実験をしていくのか
赤い目の巨獣はいったいなんなのか。

ヒロインにそっくりな少女も現れ、物語は混沌としていくものの、
1話からずっと面白くなりそうでならない、
盛り上がりそうで盛り上がらない展開がひたすら続く。

真実

終盤に差し掛かる直前で色々な謎が明かされる。
帝国は実験と称してヒロインやヒロインのコピーを大量に生み出し、
人造の「カンナギ」を量産しており、
そんな実験に主人公のかつての仲間も利用されている。
一人の兵士によってヒロインは抜け出すことができた。

こういう真実がわかっても盛り上がらないのがこの作品だ。
主人公の過去も、ヒロインの過去も、
序盤から中盤までで「こんな感じの過去があるんだろうなー」と
匂わせており、ほぼ予想通り物語が進んでしまう。

主人公とヒロイン以外のキャラクターも持て余してる感じが強い。
ロードームービーの中で出会った少年や、医者のお姉さんなどがいるものの、
別に物語において必要性を感じなキャラクターだ。

「ミャア」という獣人の少女も居るのだが、
各地に彼女そっくりな獣人がおり、
彼女たちも何かを企ててるようだが、よくわからない感じだ。

帝国側に居る女性将軍も主人公と過去に何らかの
関わりがあったようなのだが、終盤まで主人公と会話すらないのに、
ちょこちょこと意味深に視点が切り替わる。

終盤になるとヒロインの同胞を救う物語になる。

えぇ…

終盤のごちゃごちゃ感は凄まじい。
人類以外の種族は人類のしもべだったらしく、
ヒロインたちを生み出した実験者がそんな出来事を語ったかと思えば、
巨獣になり、主人公たちがピンチになったかと思えば、
ヒロインが覚醒し大きな人形の巨獣を操り、敵は食われる。

唐突に「審判の時」が近いという話になる。
更にヒロインは実験から生まれた存在であるゆえに
「寿命が残り1年以内」であることがいきなり発覚する。
話の方向が二転三転してしまい、もう意味不明だ。

この作品は1クール全12話の作品だ。
それなのに終盤になっても新しい要素や展開が描かれてしまっており、
みている側としては「話をまとめられるのか?」という
疑問が浮かんできてしまう。
まるで2クールのアニメのようなストーリー構成だ。

最終話に新キャラ

最終話、もう色々な展開が巻き起こる。
様々な巨獣が現れて世界は混乱に帰す。
そこに現れるのは「男勝りのクウミ」だ(苦笑)

序盤しかでてこないモブキャラのようなおばさん、
そんなおばさんは実はナギモリであり異様に強い。
この展開自体は面白い部分があるものの、
おばさんの活躍など描いてる暇はない。

ヒロインの寿命問題、大量に現れる巨獣、
審判の時というざっくりとした問題、かつての主人公の洗脳された仲間、
ヒロインが手に入れた謎の指輪、謎の行動をする猫耳少女など
色々な問題が最終話の段階で大量に残っている。

そんなことよりも「クウミおばさん」大活躍である(苦笑)
フリーザのごとく気功弾をときはなち、
ばかでかい巨獣を一撃でやっつけたかとおもえば気絶する。
もう意味不明な状況だ。

最終話なのにどこの誰だか知らない「新キャラ」もいきなり登場する。
登場させた意味はあるのか?と感じるほど、
出番も殆どない新キャラが一瞬だけ登場する。
これでメディアミックス作品でソーシャルゲームがでるなら、
ゲームのキャラの顔見せと理解できるが、別にそうではない。

戦闘要員ではない医者のお姉さんもメインキャラではあるものの、
別に居なくても居てもどうでもいい存在なのに、
彼女の活躍を描くために救護班の模様を描いたり、
同じように居ても居なくてもどうでもいい仲間の少年の活躍も描く。
どうでもいいシーンのせいで最終話の尺がどんどんと削られていく。

ぶん投げ

最終話なのに戦闘シーンも面白みがない。
基本的に赤い目の巨獣はその赤い目が弱点のようで、
全員が全員、同じように目を突き刺す。
アニメーションとしてのクォリティも1話で頭打ちだ。

唐突に大人になった「ミャア」が約束の指輪について説明しだす。
その正当な主とやらが「ヒロイン」らしく、
指輪の謎の力でヒロインが主人公を吸収し、謎の力で無双する。
誰かこの状況を説明してほしいが、誰も説明はしてくれない。

巨獣がすべて片付いたと思ったら「審判の時」が始まる(苦笑)
状況を理解するために脳みそがフル回転してる中で、
画面には「完」の文字が映し出される。

意味不明だ。
ここまでぶん投げた作品は「サクガン」以来だ。
あまりのぶん投げ具合に乾いた笑いしか出ない作品だった。

総評:今年1番の問題作

全体的にみてひどすぎる作品だ。
序盤こそ色々な作品が浮かんでしまうパッチワーク感を強く感じつつも、
かつての平成初期の深夜アニメやどことなく漂うGONZO臭に
まだ期待感があったが、ろくに進まないメインストーリーはグダグダで、
居ても居なくてもいいキャラクターばかりが増え続ける。

そんなグダグダなストーリーをやってたかとおもえば終盤は急展開だ。
ヒロインたちを実験道具にしてた敵は本当にあっさりとやられてしまい、
それが終わったかと思えばヒロインの寿命問題が浮上し、
同時に「審判の時」という意味不明なものの襲来に備える流れになる。

これで審判の時を乗り越えました、ヒロインは指輪の力で
寿命もなんとかなりましたというような感じで
話がまとまっていればここまで低い評価にならなかったかもしれないが、
この作品はすべてぶん投げてる。

唐突に現れる「男勝りのクウミ」の活躍を無駄に描いたり、
唐突に「ミャア」がおとなになったかと思えば、
ヒロインが覚醒し、巨獣をなんとかしたかと思えば、
審判の時がやってきて終わる。

ヒロインの寿命問題は未解決、主人公のかつての仲間の問題も未解決、
そもそも審判の時とはなんなのか?ミャアとはなんなのか?
最終話に出てきた新キャラは誰なのか?
なにもわからない状況でヤケクソのように「完」の文字を出している。

もしかしたら当初は2クール予定だったものが
1クールになったのかもしれない。
そうじゃなければここまでぶん投げたエンドにはしないだろう。
だからこそ、最後に完の文字を出したのかもしれない。

序盤から中盤までろくに盛り上がりもなく、
キャラクターの魅力もない作品だったが、
せめて1クールで物語を完結していれば
ここまで酷い評価にはならなかっただろう。

なんでここまで夜逃げするかのように物語を畳んでしまったのか…
色々と大人の事情を感じてしまう作品だった。

個人的な感想:サクガンの悪夢再び

個人的にはサクガンを思い出してしまった。
あの作品も1話の段階は面白かったものの、
2話以降でどんどんと右肩下がりに面白さがなくなっていき、
最後は見事にぶん投げてくれた。
そんなぶん投げ感をサクガン以来久しぶりに味わった感覚だ。

本当に制作側にどうしてこうなったかを聞いてみたい。
2クール予定だったものが1クールになってしまったのか、
それとも、最初から1クールでこうなったのか。
2期を想定しているなら「完」の文字は流石に出さないはずだ。

そのあたりの大人の事情がどうなってるかのほうが、
この作品よりも面白そうだ。

「サクガン」レビュー
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「アルスの巨獣」は面白い?つまらない?

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