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「アンゴルモア 元寇合戦記」レビュー

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評価 ★★☆☆☆(30点) 全12話

あらすじ 1274年(文永11年)秋。元御家人・朽井迅三郎らは鎌倉幕府によって対馬に流刑される引用- Wikipedia

1クールで大河は描けない

原作はサムライエースで連載中の漫画作品。
監督は栗山貴行、制作はNAZ。

癖のある作画


引用元:©2018 たかぎ七彦/KADOKAWA/アンゴルモア元寇合戦記製作委員会

見出して感じるのは斜がかかった独特の作画だ。
舞台が鎌倉時代の日本だからこそ和風な雰囲気を醸し出し、
まるで「NHK大河」でも見てるかのような感覚にしてくれる。
やや癖はありつつも、独特な作画は印象に残る。

しかし見づらい。
監督が演出家畑の人だから仕方なくはあるのだが、
別に斜をかけなくても、序盤の作画のクォリティなら十分雰囲気は出せており、
きちんとしたキャラクターデザインや鎌倉時代の背景の描写が、
演出のせいで見づらくなってしまっているのは本当に残念だ。

演出家が監督をやると、こういった余計な
自己満足だけの演出を取り入れるのはもはや十八番だ。

ファンタジー0


引用元:©2018 たかぎ七彦/KADOKAWA/アンゴルモア元寇合戦記製作委員会

最近の作品にしては珍しく、この作品にはファンタジーな要素はない。
タイトルにもある通り「元寇」の戦いを史実の流れ通り描いている。
「元寇」については歴史の授業で習ってる人も多いと思うが、
簡単に言えばモンゴルが日本に襲来し戦ったという感じのものだ。

最初の戦いが「対馬」であり、この作品の舞台も対馬となっている。
主人公はそこに「流刑」してきた侍であり、
戦におもむくことになるという感じのストーリーだ。

史実通りならば対馬での戦いは大敗だ。
敵は数万、島民は数百という数で物を言う時代の戦いならば負けは見えている。
そんな史実をファンタジーな力0でどう描くかがこの作品のキモにもなっている。

演出が軽い


引用元:©2018 たかぎ七彦/KADOKAWA/アンゴルモア元寇合戦記製作委員会

演出家が監督をやっており、画面に汚したようなフィルターを掛けてるのに、
戦闘シーンでの演出が異様に軽い。
鎌倉時代なため、もちろん刀を用いた戦闘シーンが多いが、
刀同士がぶつかる音の軽さや「人体破損」の際のあっさりとした描写は、
本来は迫力があるはずなのにいまいち惹き込まれない。

作画の質も1話こそ素晴らしいのだが、2話以降明らかに劣化する。
すると余計に演出の軽さも際立ってしまい、
激しい戦いのはずなのに何処か軽い。
せっかく死地へと赴くキャラクターたちの戦闘シーンの迫力が欠けてしまい、
見所のあるシーンなのにいまいち印象に残らない。

作画が劣化していくことで余計に画面の汚しの演出が見づらさを強めており、
更に夜戦など夜のシーンも多いために本当に見づらい。
かなりのシーンを「止め絵」でごまかしてるのもかなり気になる所であり、
戦闘シーンが多いのに戦闘シーンの見所がないというのは残念でならない。

わかりやすいストーリー展開


引用元:©2018 たかぎ七彦/KADOKAWA/アンゴルモア元寇合戦記製作委員会

こういった歴史ものだと「分かりづらい」という先入観のある人も多いだろう。
しかし、この作品の場合、ものすごくわかりやすい。
モンゴルの大群が責めてくる予定で対馬で主人公が圧倒的不利で迎え撃ち、
7日後に援軍が来る予定。
この状況説明がきちんと序盤でされ、キャラクターの立ち位置もはっきりしてる。

キャラクター数も敵味方あわせてかなりの数がいるが、
このわかりやすいストーリー展開とわかりやすいキャラクター描写で、
キャラ数は多いがキャラの掘り下げはキチンと行っている。
主人公とヒロインの立場としての姫を中心に行われる戦は、
圧倒的なピンチだからこそストーリー展開が純粋に気になる。

ただ、淡々としている感じは否めない。
キャラの掘り下げや主人公の過去の回想などもあるが盛り上がり所が薄く、
せっかく掘り下げたキャラクターも驚くほどあっさり死んでしまう。
場所も対馬だけなため同じような状況を繰り返している感じも否めない。

死にすぎる


引用元:©2018 たかぎ七彦/KADOKAWA/アンゴルモア元寇合戦記製作委員会

この作品は史実に基づいており、それは決して曲げない。
だからこそ対馬での戦いは大敗だ。
それ故に終盤はほとんどのキャラクターが死んでしまう。
せっかく掘り下げたキャラもどんどん死んでいってしまう。

原作では約10巻かけてここまで描いているようだが、
省かれたエピソードなども多いのだろう。
終盤のサクサク死んでいくキャラクターたちの「死」があまりにも
かるすぎてしまい、個性的なキャラが多いのにポンポンと死んでいくさまは
どうにも呆気なさのほうが強まってしまった。

結局はバッドエンドだ。
原作ではこの続きが描かれているようなのだが、
アニメの1クールでは歯切れの悪い所で終わってしまい、
ほとんどのキャラクターが死んだ中で
「俺たちの戦いはこれからだ」をやられても後味の悪さだけが残ってしまった

総評:アニメ化が早かった


引用元:©2018 たかぎ七彦/KADOKAWA/アンゴルモア元寇合戦記製作委員会

全体的に見て早すぎたアニメ化という印象が最後の最後でついてしまった作品だ。
1クールという尺では対馬での戦いしか描けず必然的にバッドエンドだ。
原作も現在10巻まで出ているようだが、アニメはほぼ10巻までの
内容を描いており、ストックはまるで無い。
この作品の2期をやるにしても4~5年後になってしまう。

この作品の魅力をきちんと最大限に描写するならば、
原作が終わってから2クールないし、4クールでガッツリアニメ化すべきだっただろう。物語全体の起承転結で起の部分しか描かれずに終わってしまった感覚だ。
仲間をほぼ全て失い、ここから主人公がどう戦うのかがこの作品の肝であり、
ここから面白くなりそうなのにここで終わってしまう。

早すぎたアニメ化だ。
1クールと言う尺、明らかに予算とスケジュールの足りてない作画と、
きちんとアニメで時代劇、NHKの「大河」のような作品を作るという
試み自体は面白いのだが、尺も予算も原作もまるで足りてない。

話自体は面白く主人公も魅力的なのに、
それを最大限に活かしきれないもどかしさが残ってしまう作品だった。
本当に残念だ。

個人的な感想:NAZ


引用元:©2018 たかぎ七彦/KADOKAWA/アンゴルモア元寇合戦記製作委員会

制作会社のNAZは2018年秋アニメの「いもいも」という作品で、
かなりの作画崩壊をおこしており、アニメーターへの未払い情報などもある。
この作品の2期があったとしても、そのときにNAZが残っているかどうか。

Netflixなどの尺や予算に縛られにくい媒体で
アニメ化されたほうがこの作品の良さを活かせたかもしれない。
1クール、もしくは2クールぐらいの尺しか取れない最近のアニメ事情では、
この作品は色々と厳しすぎた。

原作ではもう少し残虐な描写やセクシーな描写が多めのようで、
その当たりも抑え気味になってしまってるのも残念だ。
演出家が監督をやると、どうして逆に演出面での問題が多く出てしまうのだろうか。
長年の謎だ(苦笑)

こういった時代劇者はアニメでは少ないため、
もう少し気合と予算をしっかり入れてつくてほしかった作品だ。
いつか原作が完結した後にきちんとアニメ化されることを期待したい。

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  1. ぽん より:

    原作でも割とキャラの処理は雑ですよ

  2. ななし より:

    フィクションの人間が多く,結末が分かっているからこそそこに至るまでの人間模様を描いて創作してもらいたいところであったが,なんせ美術がね…