評価 ★★★☆☆(57点) 全12話
あらすじ 人間の脳を模した中枢機構に搭載されたヒト指向型人工知能、ヒューマノイド。彼らは生身の人間と同じく成長し、苦悩し、ときには間違いも犯すなど、身体の作りが異なること以外は人間と同等である。引用- Wikipedia
見る哲学
原作は週刊少年チャンピオンで連載されていた漫画作品。
監督は佐藤雄三、制作はマッドハウス
キャラクターデザイン
1話から感じるのはキャラクターデザインの癖だ。
いわゆる深夜アニメ的なデザインでもなく、
萌えやかっこいい感じとは全く違った印象を受ける。
はっきりといえば古臭い感じのあるデザインだ。
昭和の大人向けに出てくる漫画のようなデザインであり、
現代的なアニメの萌えキャラクターデザインとはまるで違う、
ある意味で新鮮では有るのだが、
このキャラクターデザインのふるさは人によって
かなり好みが分かれそうなところだ。
そんなデザインのふるさとは裏腹に
この作品は「未来」を描いている。
ヒューマノイド
この世界の人類の1割は「ヒューマノイド」と呼ばれる存在だ。
人間とほぼ見た目が変わらず、人間と同様の知能を持つAIを持っている存在だ。
食事もとり、老化もする、見た目だけでは一切、
人間とヒューマノイドの区別もつかず、目が少し違うくらいだ。
そんな存在が人間と同じ権利を持ち、暮らしている。
ヒューマノイドが当たり前のように暮らしている世界では、
ヒューマノイドの特有の病気、問題も発生している。
ヒューマノイドは人間と同じように暮らしているが、
同時にヒューマノイドだからこそ「記憶や人格のコピー」が禁止され、
電脳で構成された脳はウィルスに侵されることも有る。
主人公はそんな世界で「医者」をしている。
人間ではなく、ヒューマノイド専門の医者だ。
そんな彼を中心としてヒューマノイドが抱えている問題や病気、
人間との関わり合い、未来の社会を描いている作品だ。
バックアップは違法では有るものの、バックアップすることはできる。
だが、そんなバックアップから復旧した「記憶と人格」は、
バックアップ前のデータと同一の存在と言えるのだろうか?
そういった哲学的テーマを描きつつ物語を描いている。
基本的に1話完結で様々なヒューマノイドと、
ヒューマノイドの問題が描かれており、
1話1話じっくりと考えさせられるものだ。
主人公は人間では有るものの、養子として育てられている。
彼の母は「ヒューマノイド」であり、己の記憶をコピーしたために服役している。
彼の目的はそんなコピーを探すことだ。
存在意義
ただ、そもそものヒューマノイドの存在意義がよくわからない。
なぜ世界の1割がヒューマノイドになってしまったのか、
そのあたりのバックボーンが描かれておらず、
人間もヒューマノイドも当たり前のように同じ世界で暮らしている。
そこに表面的な差別もない。
ヒューマノイドは人間と同じ知能を持っているものの、
人間以上の知能をもっているわけでもなく、
身体能力もボディの仕様で決まっている。
ヒューマノイドだからこその職業についているわけでもなく、
街のラーメン屋のおじさんでさえヒューマノイドなくらい
一般的な存在でしか無い。倫理観や感情も人と同じであり、
彼らがなぜ人間社会でここまで広がったのだろうかと考えてしまう。
人間とほぼ変わらない見た目と知能と倫理観だからこそ、
1話1話の物語が昔どこかでみたことのある
人情物語のようになってしまっている。
ヒューマノイドだからこそこれ以上、結果が伸びない。
そう思っている陸上をやっているヒューマノイドが、
友達が怪我をしたことで改めて自分を見つめ直し、
結果が伸びるようになる。
以前は男性の体だったが、
現在は女性の体になったヒューマノイドのもいる。
ヒューマノイドだからこそ、人間よりも性別を自由に変更でき、
自認することができるといった話が描かれているものの、
描きたい内容はわかるが、いまいち面白さがピンとこない感じだ。
3話になるとヒューマノイドとはまた違う「産業用AI」が存在する。
見た目はヒューマノイドと変わらないが、AIの部分は
人間にとって都合の良い存在であり、家事などをこなし
レンタル彼氏のような産業用AIまで。
このヒューマノイドと産業用AIがなぜ別れたのか。
そういった世界観になる過程が描かれていないため、
余計にごちゃごちゃしてしまう。
産業用AIとヒューマノイドの違い、そして人間との違い。
「心」とはなにか、「魂」とはなにか。
そういったものを描きたいことは理解できるのだが、
その基盤がしっかりと描かれていないがゆえに気になってしまう。
可能性
そんな未来の話が基本的に1話完結で描かれている。
それゆえに、若干話しの当たり外れは有るものの、
話によっては興味深いものもある。
特に4話の4つのケース。
未来だからこそ、ヒューマノイドというものが
当たり前に存在する世界だからこそ起こり得る恋愛のいざこざ。
「もしもこんな世界だったら」という前提のもとに描かれる
男女の物語は興味深いものが有る。
男性も女性も関係ない。
ヒューマノイドならば「性欲」でさえコントロールできる。
だが、だからといって問題が起きないわけでもない。
人間もヒューマノイドも「魂」という名の心があるからこそ、
技術は進歩しても男女のトラブルは発生する。
恋愛だけじゃない、性格や依存、トラウマ、
人間と変わらないヒューマノイドだからこそ、
人間のような問題も発生する。
それはある種の「個性」だ。
ヒューマノイドは人間と違って、それを治すのは簡単だ。
過去の記憶を消したり、改ざんしたりもできてしまう、
だが、それは本当に正しい治療行為なのか?
選ぶのは本人だ。
1話1話、様々なシチュエーションで描かれる物語は、
落ちのない物語も多く、
それが哲学的であり、答えのないテーマをしっかりと描いている。
未来における創作も描いている話があり、
色々と興味深いテーマが各話描かれている印象だ。
性的志向、恋愛、死、魂、教育、創作、正義とはなにか。
未来という舞台で、高度なAIが発展した世界で、
人間と言う名の哲学を描いている。
選択
これだけ技術が発展しても、
紙のお金も存在し、宗教も存在する。それはなぜか。
「超高度AI」である「MICHI」が日本という国を管理している。
ヒューマノイドにおける死ですら彼が設定したものだ。
そんな「MICHI」が大規模自己改修のために
なぜか主人公を求めている。
その代償にMICHIは主人公の母のコピーの情報を提供してくれる。
彼は過去に縛られている、ヒューマノイドならば
記憶を消して、そんなしがらみを立つことができたかもしれない。
だが、人間はそんな事はできない。
人間はいつまでも過去に縛られ、そんな過去があるからこそ。
多くの人と関わるからこそ、人間は人間といえるのかもしれない。
それはヒューマノイドも変わらない。
記憶のコピーや消去はできても、過去があり、関わりがある。
なぜMICHIが主人公を求めていたのか、
主人公の母親の電脳のコピーは危険なロビジアに本当に有るのか。
1クールではそのあたりが明かされておらず、
ややもやもやするところで終わってしまっていることは残念では有るものの、
作品が内包するテーマはしっかりと感じることのできる作品だった。
総評:これは可能性の物語
全体的に見てSFとしての面白さを感じられる作品だった。
メインキャラ以外のキャラクターデザインの古さを感じる部分があり、
なぜ人間とほぼ変わらないヒューマノイドが存在しているのか?
などの前提条件が描かれていないことの違和感を感じる部分はある。
しかし、序盤をすぎるとこの作品らしい面白さが出てくる。
舞台は未来であり、高度に色々な技術が発展し、
人間と変わらない知性、魂のようなものを持っていると言えるような
ヒューマノイドが居たらどんな世界になっているのか。
その前提条件をもとに1話1話がしっかりと考えられており、
この作品ではなく、私達の生きる現実世界で
今抱えて言える社会問題も未来では残っており、
その社会問題や哲学を近未来という舞台で描いている作品だ
もし、人間と変わらない知性をもつ存在が居て、
そんな存在が自由に記憶をコピーし、削除できるとしたら、
それは人間と言えるのか?人間の定義とは?
魂とは何なのか。
そんなことを考えさせられるような話や、
恋愛や性別、創作、正義、社会、様々なことを
1話1話でテーマにしながら描いている。
作品としての地味さは否めず、
物語も完結してるとは言えない部分が残念ではあるものの、
こういった雰囲気の作品は昨今は珍しく、
一周回って新鮮に感じるほどの哲学的なアニメだ。
タイトルやキービジュアルから敬遠してる人もいるかも知れないが、
試しに4話くらいまで見ると、
この作品らしい面白さが出てくるかもしれないだけに、
序盤で切らずに中盤くらいまで様子を見てほしい作品だ。
個人的な感想:最初は…
序盤は「なぜこの世界にヒューマノイドがいるのか」という
部分が気になって作品を素直に味わえないところがあったが、
中盤くらいになると、その疑問よりも1話1話のストーリー、
描いているテーマの面白さが勝ってきて、
終盤には画面にしがみついてみてしまうような作品だった。
どっしりと腰を据えた作品だ。
最近流行りのわかりやすい面白さと、
ど派手なアニメーションがあるわけではない。
最近のアニメとは真逆を行くようないぶし銀のような作品だった
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20世紀のSFでよく取りあげられたロボット倫理問題の焼き直しのようなエピソードが多かった印象です。
もうすこしAIならではといったテーマのエピソードがあったら良かったと思いました。