秋の訪れを肌で感じつつある今日このごろ。
皆様いかがお過ごしでしょうか。どうも、笠希々です。
今回はアニメーション制作会社「AIC」についてのアニメコラムになります。
AICは過去に扱った制作会社のように倒産したわけでは有りません。
現在も存在してはいるものの、現在は自社の著作権管理の会社として
「AICライツ」を設立したりしているものの、
2016年に制作部門が解体しており、アニメ制作からは一歩引いています。
天地無用! 魎皇鬼を最後にアニメ制作事業はしておらず、
AICの象徴とも言えた作品で止まっています。
そんなAICの制作を振り返りつつ、AICとはどんな制作会社だったのか、
どこで凋落したのかというのを考えていきたいと思います。
いつも通り、長い記事になりますがお付き合いいただければと思います。
OVA
古くからAICという制作会社を知ってる人にとっては
AICといえば「OVA」のイメージが強いのではないでしょうか?
戦え!!イクサー1や破邪大星ダンガイオーやバブルガムクライシスといった
古くからのオタクには印象深い作品を多く作っています。
この時代はアニメのOVAが多く発売される時代でもありました。
きちんと完結されるものから中途半端な作品まで
この時代のOVAアニメは混沌としており、
OVAだからこそのセクシーな表現や尖った内容のものも多く、
今見ても面白い作品がたくさんあります。
そんな中でも冥王計画ゼオライマーは代表作の1つかもしれません。
知名度や人気の割にはリメイクなどされていない作品だったのですが、
AICが権利を長い間持っていたようで、もしかしたら、
ゼオライマーのリメイクが見れる日も近いかもしれません。
天地無用!
そんなOVA大量生産時代からTVアニメにシフトし始めたAICが
手掛けたのが「天地無用!」でした。
もともとはOVAとして制作、販売され、大ヒットしたことで
TVアニメ化にも繋がりました。
いわゆるハーレムラブコメなSF作品ですが、
ドタバタコメディと魅力的な女性キャラクターが合わさり、
そこに「SF」要素が加わることでこの作品ならではの魅力になり
多くのファンを獲得した作品でした。
AICといえば天地無用、天地無用といえばAIC.
そんなイメージすらあります。
人気作品だからこそ大量にOVAや外伝、映画、スピンオフ的な作品に至るまで
相当量作られており、個人的にはつくられすぎてついていけなくなった作品でした。
特に2014年に制作された愛・天地無用!は
20周年記念作品でありながら1話5分で全50話という謎の構成で、
蓋を開けてみればただただ話を5分ごとにぶつ切りにしただけという
意味不明な作品に仕上がってしまいました。
結果的に見ればこの天地無用のヒットがAICという会社を狂わせました。
出版部門の立ち上げ、ゲーム制作部門の立ち上げなど
手広く事業を広げていくものの、どれも今は残っていません。
ガン×ソード
2003年になるとAICは制作事業をICデジタル(本社)、A
ICスピリッツ、AIC A.S.T.A.と3つに分けました。
より事業を手広く拡大するための制作事業の分割です。
この時代になると他の制作会社と共同制作した作品も増え始めます。
あのGONZOと製作したSoltyReiやパンプキン・シザーズ、
オーエルエムと製作した「神魂合体ゴーダンナー!!」は
女性の強さや愛の強さを描きつつ熱血なロボットアニメで、
個人的に非常に印象に残っている作品です。
そしてこの時代のAICの代表作と言えるのが
「ガン×ソード」ではないでしょうか。
ああ女神様シリーズも手掛けてはいますが、
アニメオリジナル作品としてAICが手掛けたガン×ソードの
インパクトは凄まじいものがありました。
復讐にとりつかれる男ヴァンはぶれない主人公であり、
癖が強く個性全開なキャラクター達は印章に残るキャラしかおらず、
まさに「痛快娯楽復讐劇」というキャッチコピーにふさわしい作品でした。
AICはロボットアニメも多く手掛けており、OVA時代から培ったセクシーな描写など、
AICらしい要素がこの作品では生き生きと盛り込まれていました。
経営手腕
2006年には更にAIC PLUS+、AIC宝塚を増やし
5つの制作事業を同時に行っていました。
深夜アニメ自体の放送数も増えてきたこともあり、
AICも多くの作品を製作していました。
瀬戸の花嫁、明日のよいち、にゃんこい!、そらのおとしもの。
印象に残っている作品も多く、この時代特有のセクシーな
シーンの描写とAICの制作スタイルはあっており、
手堅くヒット作を生み出していた印象です。
ただ、この頃になると深夜アニメの躍進とは逆に
OVA自体が廃れていき、AICもほとんどOVAを手掛けていません。
かつてはAICといえばOVAでしたが、そんなOVA制作事業から、
深夜アニメに事業をうまくシフトしていました。
最盛期
2010年にはAIC Build、AIC Classicも追加され7つに別れました。
アマガミSSや、あそびにいくヨ!、そらのおとしものなど
AICらしい作品を手掛けつつ、かつて制作協力をしたGONZOがら
制作を引き継いで「ストライクウィッチーズ2」を手掛けるなど、
AICに余裕があり、様々な作品を手掛けていた時代でした。
そんな中でも「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」は
AICらしさ全開の作品の1つでもありました。
キャラクターの可愛さを中心に、ちょっとしたセクシー要素やシリアスもありつつ、
ドタバタラブコメ的なニュアンスを含んだ作品は
「天地無用」を手掛けたAICらしい作品に仕上がっていました。
その後も「僕は友達が少ない」や「デート・ア・ライブ」など
2010年代前半の深夜アニメのヒット作の多くを手掛けていたのだg
AICという制作会社でした。
今の凋落ぶりが嘘のような盛況っぷりです。
買収
しかし「株式会社」という形式をとってる以上、
「買収」というものが存在します。
AICは2度買収されており、最初は2009年にパチンコメーカーのオーイズミに、二度目は2011年にアプリックスというゲーム制作会社に買収されました。
結果的にこれが現状につながる原因となってしまいました。
アプレット自体はスマホ向けのゲームと一緒にスマホで見れるアニメを
AICに制作させるために買収したようですが、
しかし、2014年にはAIC自体の赤字が約6億6000万円まで膨れ上がりました。
アニメ制作会社は自転車操業で赤字の会社も多いのですが、
AICもそんな「自転車操業」状態だったようです。
更に有能な社員ほど独立し自社設立しており、
プロダクションアイムズ、TROYCA、BLADEなど
AICから独立した結果、有名になった制作会社も多く存在します。
2013年に制作元請けを1年間に10本も製作し、
2014年には赤字を埋めようとしたのか、
1年に13作品もの制作協力を行っており、
1つのアニメ制作会社が引き受けるには過剰とも言える量の制作を行っています。
二度の買収、社員の独立、自転車操業、製作数の増加。
いろいろな要因が相まって赤字を抱え、結果的には親会社が
「8000円」で売却。ほぼ無料でAICは売却された形になります。
現在はAICのプロでシューサーである三浦亨氏が代表取締役になっており、
分割会社であるAICライツにライセンスを譲渡しています。
2016年には制作部門が解体されており、
現在のAICはアニメの制作に関わっていない状態です。
子会社のAICライツはライセンス事業で
「バトルアスリーテス大運動会 ReSTART!」が制作されるものの、
目も当てられないほど酷い作品でした。
AICライツ自体が東映エージエンシーと業務提携を結んでおり、
今後、天地無用シリーズが復活することもある可能性もありますが、
かつてのような制作事業が再開することになる可能性は
かなり低そうなのが現状です。
価値が7億円から8千円になったアニメ制作会社AIC
AICという会社はアニメオタクにとっては有名かつ老舗の制作会社の1つであり、
OVA時代から深夜アニメ時代まで幅広く作品を手掛けており、
作画の不安もあまりない、良い意味で手堅い制作会社の1つでした。
しかしながら多くの作品を手掛け制作事業をどんどんと拡大していた裏で、
2度も買収され、主要なスタッフは独立していき、
赤字を埋めようと製作数が増加し、自転車操業状態になり、
現在は開店休業中というのが現状です。
10年前にはAICがこうなることなど想像することもできず、
盛者必衰とはまさにAICのことだと言わんばかりの、
栄枯盛衰ぶりはアニメ産業を表すような制作会社だったのかもしれません。
AICの自社IPを使った作品は今後もでてくると思いますが、
「バトルアスリーテス大運動会 ReSTART!」のような
自社IPを無駄にするような作品ではなく、きちんと、
かつてのAIC作品を愛した人たちも楽しめる作品が作られれば、
もしかしたらまたAICがアニメ制作会社として復活する日もくるかもしれません。
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