評価 ☆☆☆☆☆(7点) 全12話
あらすじ 余人では到底敵わない別次元の知識や才能を有する「天才」たち。それは天性のものであり、努力して得られるものではないはずだった。引用- Wikipedia
これぞ中華クォリティ、イッツ・ア・荒唐無稽ワールド
原作は中国で連載中の漫画作品。
アニメの制作自体は日本の監督とスタジオディーンが行っている。
いわゆる「中華アニメ」に属する作品だ
謎の癖を持つ主人公
引用元:©騰訊動漫
開始早々OPが流れる。ヘヴィメタルバンドによる独特な曲と
中国アニメらしいヤボったさと古臭さを感じるキャラクターが
次々と映し出される。
そして主人公が出てくる。
この主人公は誰に向けるわけでもなく、見ている視聴者をバリバリに意識して
モノローグでこんな自己紹介をしてくれる
「私の名前はアイ!漫画やイケメンが大好きな普通の女の子!
いつでもどこでもうっかり180度前後開脚しちゃう癖があるの、
だって私はプロのバレエダンサーなんだもの」
どうだろうか(笑)
見事なまでの説明口調と意味不明な癖の紹介をされても、
見ているコチラとしてはどう受け止めていいかわからない。
しかも、この開脚癖は1話の冒頭くらいしか出てこない。癖のはずなのだが。
おそらく多くの視聴者が彼女のわざとらしい自己紹介で
見るのをやめたくなるほどだろう。
キャラクターデザインも主人公というよりは「モブ」であり、
何の特徴もデザイン性もない。
悪偶という設定
引用元:©騰訊動漫
作品のタイトルにもなっている「悪偶」。
この悪偶とは天才的な能力を持つ人間を拉致し封じ込めて人形にしたものだ。
この人形を何の才能も持たない人間に縫い付けることによって、
凡人も天才の才能を手に入れる事ができるというものだ。
この設定自体は非常に面白い。
ジャンプの読み切り漫画のアイデアならば新人賞を狙える可能性すらあり、
この設定が紐解かれていく1話と2話くらいは独特さと面白さを感じる。
主人公の友人はバレエダンサーとして天才的な才能を持っており、
主人公も彼女に憧れている。
しかし、そんな彼女の才能が「悪偶」によるものだったことが分かるところから、
ストーリーが始まる
悪偶?そんなの無視だ!
引用元:©騰訊動漫
しかし、話が進めば進むほど荒唐無稽になっていく。
「悪偶」の設定は素晴らしいのになぜか描かれるのはB級バトルだ。
主人公は一切戦わず、戦うのは謎の術を使う81才の老人とその孫、
敵も殺人鬼や格闘家の才能を取り入れて戦ったりすれば面白いのだが、
なぜか虫や動物の才能を取り入れて戦うため見た目が完璧にモンスターだ。
「悪偶」の設定を活かせばもっと面白いバトルが描けそうなのに、
それを一切無視して中国らしい「道法」という術による技と、
トカゲやら蛇やら糸伸ばして戦う敵とのバトルは正直ダサい。
特に「道法」のダサさは郡を抜いている。
単純に自己強化や火を出したりするだけならばいいのだが、
でかいひょうたんから「水溶き片栗粉」と「油」をだし、
最後には火を出して敵を唐揚げにするという技を使われたときには
この作品はシリアスなのかギャグがしたいのか悩んでしまうくらいだ。
The無能
引用元:©騰訊動漫
この作品の主人公は基本的に何もしない。
「悪偶」というものを知ってしまい、親友は闇落ちしてしまい、
81歳の老人に弟子入りするところまでは良いのだが、一切修行しない。
当然、修行しないため技は1つも使えない。
彼女が作中でやったこといえば親友を闇落ちさせ、
子供の家庭教師をしたかと思えば、冤罪の罪で留置場に入り、
留置場で出会った謎の人物とお食事をし、闇落ちした親友にむち打ちされた。
これだけだ。
物語の主人公とは思えないほどストーリーに絡んでこない。
敵との戦いは81歳の老人とその孫、更に中盤から出てくる天才少年頼りだ。
彼女は最初から最後まで徹底的に何もしない。
それだけならいいのだが、老人とその孫も問題だ。
老人は敵に勝つ描写が一回も描かれない上に中盤以降は敵に全くかなわない。
孫は性格に難があり、5話の段階で老人に力を封じられ再修行を命じられ、
その後は一切出てこないうえに話題にも出ない(笑)
まるで何かスキャンダルを起こした芸能人のごとく消え去ってしまう。
味方と呼べるのは後は天才少年くらいだが、
敵はかなりの数が居て、味方よりも圧倒的に強い。
肝心の物語の主人公は何の力もない。
作中のパワーバランスがおかしく、負け続けるさまを見せ続けられる。
実は○○でした!
引用元:©騰訊動漫
この作品は伏線の貼り方というものを知らない。
まったくもって重要そうには見えないキャラクターに実は裏があり、
更に隠していた事実があり、実は本当はこうでしたという展開を
馬鹿の1つ覚えのように使う。
物語中盤で息子の成績に悩んでいた母親が占い師に相談に来る、
その占い師が敵だと主人公側が疑うのだが実は占い師は操られていて、
実はアシスタントが敵で、実は母親も敵側で、実はアシスタントも傀儡で、
実は息子は馬鹿ではなく天才で神が宿っていて、
実はそんな神よりも強い神を敵が持っていて、実は母親は更に事実を隠していて、
実は老人は….
ともうこの繰り返しだ(苦笑)
匂わせる描写や伏線のようなものはほとんどなく、いきなり実は〇〇でした!と
明かされる展開は予想外の展開というよりは、
あっけにとられるような展開だ。
1キャラクターに設定を盛り込みすぎていて、
その設定が表に出てくるたびにごちゃつく。
これだけ「実は〇〇でした」という設定があるのに肝心の主人公にはなにもない。
中華アニメのお約束、俺たちの戦いはこれからだ
引用元:©騰訊動漫
結局ストーリーは驚くほど中途半端なところで終わる。
敵の目的が1024種類の「悪偶」を集めることなのはわかったものの、
それ以外はよくわからず仕舞いで終わってしまう。
そもそも敵側があまりにも強すぎて現状としては
主人公サイドに勝ち目が一切見えない。
仲間である少年はまるでサイヤ人のごとく覚醒したのだが、
覚醒しても敵側がそれをあっさり上回ってしまうため覚醒した意味がない。
しかも最後のバトルは暗算だ。
見ていない人にとっては何を言ってるかわからないと思うが、私もわからない。
なぜか超サイヤ人やフリーザーのように味方と敵が変身してるのに、
やってるのは糸でつながった状態での暗算勝負だ。
キャラクターが微動だにせずに凄い桁数の足し算を出し合ってるさまは
驚くほどにシュールであり、超サイヤ人のような姿になっても
結局は暗算という展開の地味さが逆に妙に癖になってくる作品だった。
総評:さすがは中国アニメ
引用元:©騰訊動漫
全体的に見て基本的な設定は素晴らしいのに、それを一切活かさない。
天才の才能を凡人が手に入れることができるという設定だけで、
もっと面白そうな作品ができそうなのに、それを一切せずに
B級能力バトルと無能なキャラクターたちの行動を見せられる。
特に主人公の存在は一体何なのだろうか。
闇落ちしてしまった友人との関係性自体は面白いものの、
彼女は感情に訴えかけることしかできず、彼女を救う手段を持ち合わせていない。
「実は○○でした」と散々やっておきながら、
徹底的に主人公には何の事実も裏もない。
物語の主人公が中盤以降、
ストーリーの蚊帳の外に居続けるというのはある意味斬新であり、
本来は主人公が物語を動かしたり、
動く原因になるはずなのに、重要性がまるで無い。
肝心の敵が主人公に一切興味がなく老人や少年やバスケ選手に夢中だ。
主人公なんかよりもいきなり出てきたバスケ選手のほうが
戦闘シーンで活躍するというのは、さすがは中華アニメと言えるかもしれない。
この圧倒的までにズレたセンスと、宝の持ち腐れ感は
なかなか日本のアニメではお目にかかれない内容だ。
見ていない方は物は試しと最終話の暗算バトルだけでもちらっと見てほしい。
「なんなんだこれは?」と100人中90人は感じてしまうような展開から
中国アニメらしさをひしひしと感じられるはずだ。
個人的な感想:一体何を見せられたのだろうか
引用元:©騰訊動漫
中国アニメは8割駄作だ。
日本のアニメや漫画の要素を堂々とパクったり、作画悪く、
ストーリーは大体中途半端に終わる。これがお約束だ。
この作品の場合、「悪偶」の設定自体には目新しさを感じただけに、
もったいない感じが強い。
当然作画も悪く中途半端に終わるお約束はあるものの、
中国アニメらしい雰囲気は感じられる作品だった。
今まで日本で放送された中国アニメはほとんど見てきたが、
この作品ほど「この作品は一体何だったんだ?」と感じてしまう作品はなかった。
ただ不思議とこの作品で不快感は感じなかった。
日本人の監督だからか中国アニメ特有の下品な下ネタや、
ご当地ネタのようなものも少なく、ストーリーやキャラクターの荒唐無稽さを
ひたすら「なんなんだこれはw」と思いつつ楽しめてしまう作品だった。
ニコニコ動画などで実況コメントあり気で見ればつっこみつつ笑える作品だろう
中国アニメは売上を無視して2期をやることも多いが、
この作品は2期をやるのだろうか?
無能なままの主人公が実は….という展開が2期で見れるならば
是非見てみたいところだ(笑)
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