評価 ★★☆☆☆(21点) 全12話
あらすじ 巨大学園都市群スライヴセントラル第7学区にある『私立天翔学園』引用- Wikipedia
令和初の迷作
原作は男性声優がVOCALOIDの曲を歌うというCDシリーズ。
監督はヤマサキオサム、制作はDrive。
なお、アニメ自体はアニメオリジナルのキャラをメインにストーリーが描かれる
謎
引用元:©EXIT TUNES/スライヴセントラル運営局
この作品は色々と謎だ。
そもそも「男性声優がVOCALOIDの曲を歌うというCD」を
アニメ化すると言われても意味不明でしか無い(苦笑)
最近はボカロで作られた曲や歌い手がアニメ化しているが、
過去最大に謎の媒体のアニメ化といえるかもしれない。
しかも主人公は既存のキャラクターではなく、
アニメオリジナルの新規キャラと言う謎だ。
3オクターブ
引用元:©EXIT TUNES/スライヴセントラル運営局
主人公は転校生として昔住んだ街に帰ってくるところから話が始まる。
この街は町の外を「白い壁」が囲っており、「白い人」と呼ばれる存在が
居るらしく、10年前に比べてその壁の範囲は広まっているらしい。
この「白い壁」や「白い人」という設定に
なにやら普通の作品ではない雰囲気を出している。
そんなよくわからない舞台設定を見せつつも、ストーリーは
学園アイドル系のような話を展開していく。
この学園には「歌唱部」が存在し、
そこで歌唱部の面々はボカロの曲を歌おうとしている
彼らが歌おうとしている曲は「3オクターブ」出せないと歌えない、
VOCALOIDだからこその曲を人間が歌う場合の難しさがあるものの、
主人公は「3オクターブ」だせる実力を持っている。
この「3オクターブ」が問題だ。
主人公は病気の姉を思いながら土手で、歌いだす。
だが、どこが「3オクターブ」なの?と思うほどの音域だ(苦笑)
主人公の凄さを見せつけるという大事な1話のシーンなのに
まるでインパクトがない。
散々「3オクターブ」と連呼しておいて拍子抜けするような歌唱シーンだ。
ボカロしか歌えないような難しい曲を人が歌うというインパクトを
出さないといけないのに、普通の音域の曲を歌われても
反応に困ってしまう。
主人公の特別感を見せるシーンで特別感が出ていない。
何がしたいのやら…
引用元:©EXIT TUNES/スライヴセントラル運営局
序盤のストーリーははっきり言って方向性がよくわからない。
主人公が歌唱部に入ってボカロPの歌をコンテンストで歌うか
歌わないかというストーリーと、主人公の姉が不治の病故にお願いすると
何でも治る「白い人」たちを求める主人公のストーリーという2つの主軸がある。
だが、そんなメインストーリーはさておいて2話では
主人公と他のキャラの「どっちのカレーが美味しいか」という話を描く。
多いキャラクターを掘り下げようとする日常エピソードなのは分かるが、
主人公が歌唱部に入るかどうかもあやふやな感じのまま、
「白い人」もよくわからないままにカレーバトルを描かれても微妙だ。
日常会をやるまえにメインストーリーをすすめるべきなのに、
メインストーリーを進めずにどうでもいい日常を描いている。
序盤で作品の要素が色々と見え隠れしてるのに、
別のことを描いてしまうため、そっちが気になって仕方ない。
「作品の方向性」が序盤の段階でいまいち見えないのも
多くの視聴者を失った部分だろう。
青春部活モノがしたいのか、なにやらSFめいたストーリーがしたいのか、
日常物がしたいのか、色々とちぐはぐだ。
何回も姉と主人公による全く同じ回想シーンを差し込むのも
ストーリー構成として悪手としかいいようがない。
挿入歌
引用元:©EXIT TUNES/スライヴセントラル運営局
毎話、主人公が絡んだ先輩や学校のキャラクターたちの挿入歌が流れる、
ただろくにほりさげもないキャラクターの曲が流れても、
特になんの印象も抱けない。
キャラクターたちはいろいろな部活に所属しており、
学校の「歌唱コンテスト」に参加しようとしている。
なぜか歌唱コンテストなのに部活に問わず優勝すると
「部活動ポイント」をもらうことができ、部費の大幅増加や
学食割引など様々な特典がある。
やや強引な設定ではあるものの、色々な部活に所属するキャラが
「ボカロ曲」を歌う理由にもなっている。
白い人
引用元:©EXIT TUNES/スライヴセントラル運営局
とにかく話が進まない。
話の流れ的に主人公が何らかの形で「歌唱コンテスト」に参加するか、
姉のために「白い人」とやらを探しに行くかしないといけないが、
3話になってもまだ、そのどちらも決定的にやることはない。
コレが2クールのアニメならまだしも1クールのアニメの
ストーリー展開としてはおそすぎる。
4話ようやく「白い人」探しを開始する。
見える人がいたり見えない人が居たり、現れたり現れなかったり、
あやふやな「白い人」は一体何なのかまるでわからないなかで、
「白い人」を見つけて姉についてお願いするものの、何かそれで
決定的な何かが起こるわけでもない。
もやもやーっとした何かを常に抱えつつストーリーが進み、
常に消化不良な感じが残る。
仮想空間?
引用元:©EXIT TUNES/スライヴセントラル運営局
中盤になると話が余計にややこしくなってくる。
作中のキャラクターが突然「オンラインゲーム」をやりだす。
だが、そのゲームは普通のゲームではなく、彼らが住む実際の世界を
「白い人」として動き回れるゲームだ。
1話から頻繁に登場していた「猫」もゲームのアバターの1つであり、
彼らの世界を覗くことができる。
ゲームを通じて彼らの世界を覗き、主人公たちのことも当然、覗いている。
プレイヤーたちは彼らがいつ歌うか楽しみにしてるくらいだ。
課金した「猫のアバター」なら彼らからも普通に見えるし、触れることもできる。
プレイヤーは「推し」を決めて、推しの観察をしており、
課金してない「白いアバター」だと彼らからは見えないし触れることも出来ない。
この作品の世界は「ゲーム」の世界で仮想空間なのか?
それならばキャラクターたちはゲームの中のデータとしての存在なのか?
青春要素や歌唱コンテストってなんだっけ?っと思うほどに
話の展開がめちゃめちゃ急だ。
もはや色々とぶっ飛びすぎて訳がわからない。
「白い人」の正体は中盤で理解できるものの、あまりにも
ぶっ飛びすぎた世界観は理解がまるで追いつかない。
そんな急展開を見せておきながら次の話では
普通に青春ストーリーを展開する。
そうかと思えば次の話ではキャラの意識が不明になり、
意識の中では別の世界で遊女として暮らすさまを見せられる。
ようやく主人公がユニットを組み、歌唱コンテストに向けて
色々動き出す傍らで、謎すぎる世界観設定の話も展開されて
ごちゃごちゃした感じが出てくる。
ゲーム終了の危機
引用元:©EXIT TUNES/スライヴセントラル運営局
終盤になると彼らの世界に危機が訪れる。
「ゲーム」の世界であるこの世界はユーザー離れが起きており、
彼らの世界をリセットしてリニューアルを目論んでいる。
だが彼らはそんなことは知らない。学校が政府により閉鎖され、
せっかくの歌唱コンテストも開催されないかもしれない。
そんな中で彼らを管理しているキャラクターが彼らに干渉する。
「歌唱コンテスト」を例年以上に素晴らしいものにして盛り上げれば
この現状をなんとかできると。
ソシャゲで言えばユーザー離れが深刻であり、
イベントを盛り上げることでユーザーを取り戻そうとしているようなものだ。
だが、彼らは自分たちがデジタルのデータの存在である事をも知らずに
なんとか歌唱コンテンストを開催しようと政府に抗う。
マトリックス
引用元:©EXIT TUNES/スライヴセントラル運営局
そんな中で現れるのが黒服だ(笑)
マトリックスのあの人を思い起こさせるような姿で
政府の人間として彼らの前に立ちふさがる。
弓道部やら柔道部やらサッカー部やらが彼らと戦うのだが、
彼らのそれぞれの「部活」の設定をバトルシーンで生かしてくる最終話の展開は
もはや爆笑するしかない、部活の設定をまさか戦闘力に置換するとは思わず、
そこから「歌唱コンテスト」大成功!という大団円にもっていかれても、
感情がついていけない。
結局、キャラクターたちは自分たちがゲームの世界の住人、
データであることも自覚しないまま、平和な日々を取り戻し、
主人公たちのCDデビューが決まって終わる。
これはハッピーエンドなのだろうか?と疑問に感じたまま物語が終わってしまう。
総評:設定過多
引用元:©EXIT TUNES/スライヴセントラル運営局
全体的に見てどう受け止めていいかわからない作品だ。
「男性声優がボカロの曲を歌う」というシリーズのアニメ化なのに、
そんなボカロの曲よりも、ぶっとんだ世界観と急展開なストーリーに
振り回されてしまっており、結局、曲の印象やキャラの印象は残りづらい。
この作品の世界が「ゲーム」であり、彼らは「データ」という
この作品の根幹の設定部分をキャラクターが自覚することがない。
マトリックスならネオが目覚めないまま終わるような感じだ。
彼らの日々はこれからも続いていく、だが、また人気がなくなれば
サービス終了になる可能性もある。1度はそうなりかけた世界であり、
たまたまイベントが盛り上がって過去のプレイヤーが帰ってきただけだ。
三ヶ月もすれば同じ状況になってもおかしくない。
運営のさじ加減次第で彼らはまた消える危機に瀕する。
ハッピーエンドで終わっているのになんともしっくりとこない。
こんなSFでメタ的な世界観設定は果たして必用だったのか?と思うほどに、
設定とストーリーやキャラクターの描写が釣り合っていない。
もう一歩なにかあれば名作になりそうな要素はあったが、
その要素だけを見せられたような、そんな作品で終わってしまった。
個人的な感想:どう受け止めてよいやら…
引用元:©EXIT TUNES/スライヴセントラル運営局
もっとシンプルに一人ひとりのキャラを掘り下げて、
「男性声優がボカロの曲を歌う」という主軸を盛り上げればよかったのでは?
と思うほどに、主軸よりも世界観の設定のほうが気になってしまう作品だった。
彼らが歌う曲や一人ひとりのキャラクターよりも
世界観の設定のほうが目立ってしまっている。
これで中盤くらいで彼ら自身が「自分たちがデータである」と
自覚するような展開になるなら面白かったかもしれないが、
最後まで自覚しないまま終わるというのがなんとも、消化不良だ。
どの程度、原作からの設定なのかは把握しきれていないが、
ちょっと色々とぶっ飛びすぎてる作品だった。
そもそも主人公は10年ぶりに街に帰ってきたという設定だったはずなのだが、
この作品の世界観を考えると、1話の前はどこにいたのだろうか…
サービス終了間際の新規追加キャラとかだったのだろうか…
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