評価 ★★☆☆☆(36点) 全12話
あらすじ 伊達 地図子は親の仕事の都合で転校を繰り返し、何事にも興味を持てなかったが、ほっこり街で悪の組織フォッサマグナと戦う魔法少女ベリーブロッサムを見て、彼女に夢中になる。引用- Wikipedia
謎の草津旅行アニメ
原作は「りぼん」で連載されていた漫画作品。
監督は小竹歩、制作はVoil
クセがつよい
1話冒頭からキャラクターデザインというより
瞳のデザインにかなりクセを感じる。
原作が少女漫画だからというわけではなさそうだが、
かなりクセの強い瞳の描き方はある意味でインパクトはある。
主人公は母の仕事の都合で転校ばかりであり、
久しぶりに祖父の家に1週間お世話になることになり、
そんな彼女の前に現れるのが「魔法少女」だ。
退屈なはずの田舎町、何事にも興味を持てずに居た少女が
田舎町で「魔法少女」というものに出逢うことで変わっていく。
刺激的な魔法少女と悪の組織の戦い、
そこにときめいた少女のときめきはもう止められない。
描きたいことはわかるものの、アニメーションとしての見せ方が甘く、
盛り上がりどころを盛り上がりどころとして作れておらず、
いまいちテンポも悪いせいか1話の時点からだらーっとしている。
悪
魔法少女にこがれた主人公は「悪の総帥」と出逢う。
悪の総帥戦いの中で魔法少女に好意を抱いている。
魔法少女に倒される、他の誰でもない悪の総帥だからこそできる
立場に彼は甘んじている。
同時に主人公もまた「苦戦する魔法少女」を求めている。
だが、魔法少女は強い。悪の総帥ももはや相手にならず、
もう魔法少女は苦戦しない。悪が滅びる日も近い。
しかし、それは同時に魔法少女が表に出てこないことを意味する。
もっと魔法少女が活躍する姿を見たい。
彼女は「悪の組織の参謀」にスカウトされるところから物語が動き出す。
魔法少女が大好きで、彼女を愛でたいだけなのに、
魔法少女の活躍が見たいがゆえに敵対組織へと加入する。
このあらすじを聞いて思い出すのは
「魔法少女にあこがれて」だろう。
奇しくも2024年アニメとして似たような設定のアニメが制作されており、
原作の連載時期を考えればこちらのほうが先なのだが、
アニメの放送自体はあとになっている。
けっしてパクリではないものの、
似たようなシチュエーションや設定のため
どうしても「魔法少女にあこがれて」と比較してしまう部分はあるものの、
こちらにはセクシーな要素はない。
優しい世界観で日常コメディを繰り広げており、
原作が「りぼん」で連載していたからこそ、
子供でも楽しめるような作品に全体として仕上げている印象だ。
世界観
この独特なゆるい世界観は、この作品の特徴でもある。
魔法による悪事は魔法少女が対応し、
魔法を使わない悪事相手に魔法は使えず警察に頼るしか無い。
魔力は契約によってスマホのデータ量のごとく
月ごとに決まった量しかない提供されない。
このゆるい舞台設定の中で、ゆるいボケが生まれ、
主人公が突っ込んでいくことで笑いに仕上げている。
悪の組織でありながら、ろくに悪いこともできない参謀だったりと
ゆるすぎる世界観での日常がギャグに形コメディになっているが、
裏を返せば大きな盛り上がりどころはほぼ無い。
中盤で主人公が悪の参謀に正式になったあとも
なる前も淡々と日常を描いている。
5話までは基本的に少ないメインキャラでひたすら
日常を繰り返しており、ややマンネリを感じてしまう部分もある。
新キャラ
そんなマンネリを感じると新キャラがでてくる。
それもまたギャグアニメあるあるだ。
いつまでたっても魔法少女を倒せない悪の総帥のかわりに
新しい悪の総帥がやってくる。
総帥という言葉の意味がよくわからなくなってくるが、
一応、悪の組織には裏にとある会社がおり、
本気で魔法少女を倒そうとする悪の総帥もでてくるものの、
かといってシリアスなストーリーになるわけでもない。
そんな新キャラがでてきたかと思えば悪の総帥や
魔法少女のマスコットの過去が回想で描かれたりと、
だらっとしたストーリーが続いてしまう。
いまいち話の広がりが生まれるわけでもなく、
新キャラがでてきてもあまり代わり映えがしない。
これが日曜朝や夕方で子供をターゲットにしたアニメならともかく、
深夜の大人向けアニメとしては色々と物足りなさが強い。
ギャグにしても、色々と練り込まれた世界観にしても、
それをずばっと見せてくれるような切れ味が足らず、
こじんまりとしてしまっている。
6話あたりから、ロリお嬢様だったり、お嬢様の執事だったり、
悪の総帥の裏にいる会社の社長だったり、主人公の父親だったり、
一気に色々なキャラがでてきて
深い掘り下げを行わずにサラッと流されてしまう。
つまらないと切り捨てるほどではないものの、
面白いとは言い切れない、そんな歯切れの忘れが常に付きまとう。
終盤
ラストで悪の組織の裏にいる会社の社長があらわれ、
魔法少女のマスコットキャラを回収してしまう。
今までの日常が壊れるかもしれない、
日常の「変化」を主人公は恐れるものの、
最後は呑気に草津旅行である(苦笑)
そもそも魔法とはなにかなど色々と匂わせてる部分はあるものの、
1クールで特にそれが掘り下げられるわけもなく、
最後は全キャラが勢揃いして草津で温泉に入り終わり、
いつもの日常が特に変化もなく続いていくラストで終わる。
結局なんだったのか?という要素が微妙に引っかかってしまい、
最後まで盛り上がりそうで盛り上がらずに終ってしまう作品だった。
総評:魔法少女に恋焦がれて
全体的に見て序盤こそ、このゆるい世界観でのギャグが
心地よさを感じる面白さを感じられたのだが、
中盤からはマンネリが続き、そのマンネリを打破するための
新キャラがうまく機能しておらず、色々設定の裏を匂わす部分はあるものの、
1クールではそれも明かされずに終っている。
作画に関しても1話から微妙なクォリティであり、
2話以降も作画崩壊などは起こしていないものの、
最近のアニメと比べるとなんともいえないクォリティで
特筆すべき部分がない。
原作は全5巻で完結しており、やりようによっては
1クールで完結できたはずだ。
1クールのストーリー構成自体もあまりいいとは言い切れず、
きちんと原作の完結まで1クールで描ききれたら
この作品の印象は随分変わったかもしれない。
原作は1話あたり8ページの短いエピソードの話らしく、
それをアニメで1話という形にするための
肉付けがテンポの悪さにつながっていたりするのだろう。
その極めつけがラストの草津旅行だ。
よくわからないまま草津旅行にいって終わる。
せっかくの設定や伏線を全部ほうりなげて終わるラストは
歯切れの悪さだけが残ってしまい、色々と勿体ないと
感じてしまう作品だった。
個人的な感想:りぼん
少し調べてみると「りぼん」としては14年ぶりとなる
アニメ作品になっている。
おはすた内でショートアニメなどは作られているものの、
きちんとしたアニメは本当に久しぶりだ。
この作品自体も連載が終ってからアニメ化が発表され、
その約2年後にアニメ化されるという異例の事態だ。
それなのに草津旅行で終っている。
かつてのりぼんのアニメといえば、
神風怪盗ジャンヌや赤ずきんチャチャなど
思い出深い作品も多いだけに、アニメ化に恵まれないのは
残念なところだ。