評価 ★★★☆☆(45点) 全12話
あらすじ パトリア大陸で勃発した北部パトリアユニオンと南部パトリア連合の10年にわたる内戦が、パトリアユニオンの異形の兵士擬神兵の活躍で和平に至ってから5年後の世界引用- Wikipedia
1クールじゃ…
原作は別冊少年マガジンで連載中の漫画作品。
監督は宍戸淳、制作はMAPPA
獣たち
引用元:©めいびい・講談社/かつ神製作委員会
1話始まってそうそう、ナレーションで世界観が説明される。
物語の中で自然と世界観がわかるのではなく、ナレーションでの説明だ。
横文字だらけの国名は頭に入るわけもなく、
「戦争してるんだな」くらいしか把握できない。
しかし、いざ戦争のシーンが始まると期待感が強まる。
白い装束をきた兵士たちが巨大な「ドラゴン」や「トカゲ」に変身して
敵の兵士を一掃する。
タイトル通りの「獣たち」が戦争で兵士として使われていた事がわかるが、
それもナレーションベースで解説されてしまうのは、ややもったいない。
獣に変身できる兵である「擬神兵」のデザインや
キャラクターデザインも妙に古いせいで、最近のアニメというよりは
2000年代前半くらいのアニメのような雰囲気を感じさせる、
GONZOあたりが手掛けた深夜アニメっぽい雰囲気といえばわかりやすいかもしれない
「擬神兵」たちは戦争の中で「戦争が終わったら」という言葉を連呼し、
あからさまな死亡フラグを建ててくれる。
そのフラグ通り彼らは「暴走」する危険性を秘めており、
戦場では神と崇められていた存在だったが、
獣になってしまう危険性を孕んだ存在だということが1話でわかる。
1話からものすごくわかりやすいストーリー展開をしている。
「擬神兵」たちは戦争終結とともに各地へ散ったものの、
理性を失い人を襲うようになるものが多く、
かつては神と呼ばれていた彼らだが厄介者扱いされており、
しかも主人公は裏切りにあい、かつての仲間を「狩る」ものになる。
物語の1話として非常にわかりやすく、主人公の目的や
敵とする相手の存在や設定が全て明かされた状態だ。複雑な要素が一切ない。
近年まれに見るわかりやすさかもしれない。
狩り
引用元:©めいびい・講談社/かつ神製作委員会
序盤は主人公がかつての部下であり仲間だった「擬神兵」たちを狩っていく。
彼らは戦争の後、故郷に戻ってはいるものの、その多くが暴走しており
欲望を抑えきれないものや、自我を失い人を襲って獣になっている。
そんな彼らの一人ひとりのバックボーンや物語を描きつつ、
彼らを狩る主人公と、そんな主人公に父を殺されたヒロインの旅を描く。
ただ、この序盤の話は1話のインパクトに比べて淡々としている。
基本的に1話完結で「擬神兵」の物語が描かれるものの、
1話完結だからこそ、キャラクターの使い捨て感が強く、
話によって当たり外れも大きい。
戦争は終わったのに終わったと思っていないもの、
戦争が終わって故郷に帰れたのに獣の本能が出てきてしまうもの、
理性を失うもの、自分がやってることを認識できないもの。
主人公のかつての部下たちはそれぞれ自分の故郷で苦しんでいる。
戦争後の「PTSD」に苦しむ帰還兵のようなものだ。
主人公はそんな彼らを楽にする。
自分もいずれ「獣」になる運命を背負いながらも狩りを続ける話は、
非常にエピソードとしては淡々としているものの、
描きたいことや、やりたいことは伝わる。
ただ、中盤までその繰り返しでやや話がワンパターンになっており
これが2クール作品なら気にならなかったかもしれないが、
1クールの作品だとややこの繰り返しのワンパターンな展開が
序盤としてはやや気になる部分だ。
戦闘シーン
引用元:©めいびい・講談社/かつ神製作委員会
話の展開としてはややワンパターンではあるものの、戦闘シーンは意外と面白い。
「擬神兵」たちは伝説上やファンタジー上の化け物の姿になっており、
ドラゴンやミノタウルス、ベヒモスといった様々な姿をしている。
「擬神兵」によっては巨大な姿の敵も存在する。
主人公もまた「狼」に変身して戦うのだが
惜しむべきは作画のクォリティが高くないことだ。
最近のアニメ作品のクォリティというよりはややふるさを感じる作画で、
もう少しクォリティの高い作画で描かれれば迫力のある
戦闘シーンに感じられたと思う部分も大きい。
主人公以外の戦闘シーンもややツッコミ所がある。
擬神兵は普通の銃弾では倒し事はできないうえに巨体だ。
そんな彼らに一般兵は「進撃の巨人の立体機動」のようなものを使って
戦うさまはなんともシュールだ。
確かに機動力は得られるのかもしれなが、もう少しなんとかならなかっただろうか。
「特別な弾丸」を用いれば彼らを殺すこともできるのだが、
なぜか一般兵の部隊長クラスでもその弾丸を持っていなかったり、
そうかと思えばヒロインにはその弾丸を預けてくれたりと、
ちょっと違和感のある設定だ。
変化
引用元:©めいびい・講談社/かつ神製作委員会
1話完結の物語を積み重ねながら、
自分の父親を殺されたヒロインが主人公たち「擬神兵」の事情を知り、
彼女の心情が徐々に変化していく。
「擬神兵」だからと父を殺され、主人公を恨んでいるヒロインが
一緒に旅をする中でどう答えを出し、同じ「擬神兵」でもある主人公がどうなるか。
戦争が終わった後も「戦争」というものから抜け出せない「擬神兵」たちの
悲しい最後を見ていく中で徐々にキャラクターにも変化が生まれていく。
ただ殺しているのではなく、彼らをある意味で救っている主人公と、
そんな主人公の考えや彼らを殺す理由にヒロインが気づく中で、
ヒロインの考えや「擬神兵」に対する気持ちも変化していく。
最初は彼らを「説得」できるはずだと豪語し、
主人公にさえ父を殺した仇だと銃を向けたヒロインが、
主人公と旅をする中で「擬神兵」に対する気持ちが変化したことで、
自らの意思で「擬神兵」に銃口を向け、銃弾を解き放つ。
理性を失った彼らにとって死こそが救いであり、それが旅をして分かったからこそ
彼女は自らの父親に引導を渡す。
1話から、この7話までのヒロインの「変化」が物語として効果的に作用しており
主人公が繰り返し「擬神兵」を殺すさまを見てきたからこその、行動だ。
物語の積み重ねから生まれるストーリーとキャラクターの心理描写が素晴らしく、
淡々とした序盤の展開が中盤で生きてくる。
この1クールの物語はある意味、ヒロインの物語でもある。
敵
引用元:©めいびい・講談社/かつ神製作委員会
主人公には憎むべき相手がいる、想い人を殺され、裏切られたかつての仲間だ。
彼は「擬神兵」をまとめ、「擬神兵」が
自由に生きていける世界を作ろうとしている。ものすごくわかりやすい「敵」だ。
しかし、そんな敵が強すぎる。
体を真っ二つにされようと、「擬神兵」にだけ効く特殊な弾丸をぶちこまれようとも
再生してしまう吸血鬼だ。吸血鬼らしく、吸血した相手を操る能力まで持っている。
主人公とも戦うのだが、まったくもって倒せる気がしない相手だ。
そもそも「擬神兵」が何人いるかが示されていない。
彼らを作る術は今のところ無く「増える」ことはなく、
戦争中も適正のあるものしか「擬神兵」にしかなれないらしく、
限定的な人数のはずだ。
だが、バックボーンすら語られずにあっさり殺される「擬神兵」も多く、
一体何人くらいるのだろうかと見てる最中に疑問に感じてしまう。
主人公が率いてる部隊の仲間という設定上、そこまで多くはないはずなのだが、
敵は「擬神兵」が率いる国まで作り上げてしまう。
話が進めば進むほど、どんどんと大きくなっていく。
ある程度「何人」と序盤の段階で人数を示したほうが良かったかもしれない。
話の都合でいくらでも「擬神兵」が出てきてしまう感じがしてしまう。
終盤
引用元:©めいびい・講談社/かつ神製作委員会
1クールの話のピークはヒロインの心情の変化と成長を描いた
7話だった感じが強い、ヒロインの心情の変化と主人公との関係性の変化で
ヒロインもまた「擬神兵」である主人公を殺す約束を交わす、
それは父の仇という恨みではなく、「擬神兵」たちに対する救いから来る言葉だ。
この関係性の変化と成長こそが1クールで描きたかったことが伝わる
ただ、結局、原作が続いてることもあり1クールで物語を締めることはできず、
俺たちの戦いはこれからだで終わってしまう。非常にもったいない。
この作品の原作が10年か20年前にあってアニメ化されてれば
2クールでしっかりとアニメ化された作品だっただろう。
1クールではいろいろと中途半端というよりは何も変わっていない。
「擬神兵」はまだまだ存在し、主人公の仇も生きている。
ヒロインの成長と変化は描ききれているののの、
色々と状況はひどくなって終わっている。
死んだはずの人物が実は生かされてることも分かった状態で終わっており、
色々と投げっぱなしだ。
1クールでは「序章」しか描ききれておらず、
ここから面白くなってきそうなところで終わってしまう「もどかしさ」が
強く残ってしまう作品だった。
総評:もったいない
引用元:©めいびい・講談社/かつ神製作委員会
全体的に見てストーリーは悪くない作品だ。
戦争で兵器として利用され、戦争が終わったら厄介者でしかない「擬神兵」、
そんな彼らの悲しい運命の結末を1話完結で描きつつ、
そんな中で最初は父の復讐を誓っていたヒロインの心情が変化し成長し、
最後には自らの手で父親に銃を撃ち放つまでになる。
この成長と変化の物語は序盤の淡々とした展開を
積み重ねてきたからこその山場であり、
この作品を全体で見た場合の序章の山場とも言える部分だろう。
だが、それを描ききった後は「俺たちの戦いはこれからだ」という結末しかなく、
1クールでは色々ともったいない作品だ。
倒すのが困難な「吸血鬼」という敵、「擬神兵」が率いる国家との戦争、
残された「擬神兵」たちの末路、そして「擬神兵」でもある主人公の最後、
実は生きていた主人公の想い人んまど、この先に面白そうな要素が
多く残っているものの、全てお預けを食らって終わってしまっている。
作画のクォリティもあまり高くなく、キャラデザもやや古い。
ただストーリーとキャラクター描写は悪くなく、
作品の方向性ややりたいことがわかるだけに、きちんと最後まで見たかった作品だ。
1クールではなく、2クール、または4クールというしっかりとした尺でこそ
本来はこの作品の魅力を100%出せたはずだ。
1クールが当たり前のここ数年のアニメ業界の流れに逆らえなかったがゆえに、
こじんまりとまとまってしまった作品だ。
きちんとした尺と予算で、ガッツリと描けば名作になったかもしれない。
そんな可能性を感じるだけに「もったいなさ」が強く残る作品だった。
個人的な感想:意外に楽しめた
引用元:©めいびい・講談社/かつ神製作委員会
正直、1話の時点ではあまり期待しておらず2話、3話でもそこまで
ピンとこなかったが、見続けてるうちに面白くなってきた作品だ。
特に7話の展開はヒロインが旅に出た目的と意味をしっかりと回収しており、
序盤の淡々としたストーリー展開が生きてきていた。
ただ終盤のストーリーは尻切れトンボ感が強く、
本当に2クールくらいあれば違っただろうなと感じてしまう。
面白い要素は多いだけに本当にもったいない。
原作の売り上げ次第では2期があるかもしれないが、
2期があれば見たいと感じさせるポテンシャルのある作品だ。
個人的には敵の吸血鬼を見たあとに「彼岸島」が浮かんでしまった(笑)
あの作品は今は敵の策略がうまくいきすぎてしまい、
結果的に日本列島が吸血鬼だらけになっているが、
この作品も「擬神兵」だらけにならないか心配だ(笑)
そうならないことを切に願いつつ、2期があることを期待したい。
この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください