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「明治東亰恋伽」レビュー

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評価 ★★★☆☆(53点) 全12話

あらすじ 主人公・綾月芽衣は現代を生きる女子高生。しかし、赤い満月の夜に謎の奇術師・チャーリーのマジックによって明治時代の”東亰”へタイムスリップしてしまう。引用- Wikipedia

ノーマルエンドが残念すぎる

原作はPSPで発売された女性向け恋愛ADVゲーム。
発売は2013年だが、以前にアニメ映画化されており、
今年になってテレビアニメ化、テレビドラマ化、
更には実写映画化まで決まっている。
監督は大地丙太郎、制作はTMS/V1Studio

まさかの


引用元:©LOVE&ART/めいこい製作委員会

この作品のヒロインは「妖」が見える女の子だ。
その能力がゆえに人間の友達がいない。
同じクラスの女子からは「陰口」を叩かれるほどだ。

この手の設定はよくあるものだ。
幽霊の見える女の子が実際に幽霊の主人公と出会ったり、
霊媒師の主人公に出会ったりと少年漫画ならベタな内容になりそうなほど
使い古された設定だ。

しかし、この作品は意外な展開だ。
タイトルにもある通り、妖の見える女の子が
明治時代にタイムスリップしてしまう。
タイムスリップした先で馬車に轢かれそうになってしまい、
その馬車に乗っている「森鴎外」と出会うことで物語が始まる(笑)

こうやって書いてても分かると思うが、ごちゃごちゃである。
タイムスリップ、実在の人物が登場、妖が見える、
更にヒロインは「記憶喪失」になっている。

自分がタイムスリップしたこともわからず、名前もわからず、
ただ「知識」だけはある。
これでもかというほどに色々な設定がてんこ盛りだ。

明治時代の人物


引用元:©LOVE&ART/めいこい製作委員会

この作品には様々な実在した明治時代の人物が出てくる。
だが、正直、知名度が低い人物画ばかりだ。
森鴎外はともかく、菱田春草、川上音二郎など微妙な人物も多い。
森鴎外以外だと泉鏡花や小泉八雲くらいは分かる人も多いと思うが、
絶妙な知名度の実在の人物が出てくるのは何とも言い難い。

これで彼らが出てくる意味があるなら分かる。
この手のタイムスリップものだと「歴史改変」が行われたり、
タイムスリップした人物が実は歴史上のとある人物だったみたいな
展開もある。

しかし、この作品の場合はその要素の使い方がやや薄い。
歴史を改変するほどの影響を与えるわけでもなく、
せいぜい登場人物が書いた絵の詳しい内容を知っていたりするくらいで、
「実在の人物」をわざわざ出した割にはその必要性が
この作品にはあまり感じられない。

これならば架空の人物でも良かったはずだ。

期限は一ヶ月


引用元:©LOVE&ART/めいこい製作委員会

ヒロインは「奇術師」によってタイムスリップさせられた。
しかし、奇術師は一ヶ月後には帰してくれるという。
つまりは「一ヶ月」だけの明治時代だ。
元の時代に戻るために奮闘するような要素や、
どこの誰に自分がタイムスリップさせられたのかを探るような要素はない。

ヒロインは明治時代を楽しみながら、
そこに住まう人達と関わっていく。
ときには妖が見える力を使ってメインキャラのお悩みを解決することもあるが、
色々と設定をてんこ盛りした割にはストーリーはシンプルだ。

実在の人物を引き合いに出さなくてもできるようなストーリーが多く、
猫を探してたかと思えば、妖の起こす問題を解決したかと思えば、
森鴎外にふさわしいフィアンセになろうとする。
かなり突拍子もないストーリー展開ばかりだ。

私、なにかやっちゃいました?


引用元:©LOVE&ART/めいこい製作委員会

ヒロインは記憶喪失なのだが現代の知識はある。それが時折、顔を出す。
例えば雑巾で掃除をしてるさまを見て
「モップ」を作って掃除を便利にしたりする
これだけなら何も問題ない。

物語の中盤になるとヒロインの前で「電気」の話がされる。
電気について疑いを持ってる明治時代の人達に対し、
「ipad」や「ルンバ」や「テレビ電話」や「シャワー」の話を
軽快なリズムに合わせて紹介する。
そのヒロインの未来の話を明治時代の人が「素晴らしい!」と称賛する。

彼女のどこに説得力があったのか、見てる側にはまるでわからない。
現代の、明治の人にとっては意味不明な技術の話を
軽快なリズムに合わせて歌っただけだ。
ちょっとストーリー展開に無理があるが、
その強引さがギャグにもなっており少し笑えてしまう。

キャラクター


引用元:©LOVE&ART/めいこい製作委員会

キャラクターは非常に魅力的だ。
ヒロインは天真爛漫で純粋に明治時代のキャラに触れていく。
彼女の真っ直ぐな気持ちは明治時代の人物に少なからず影響を与え、
「好意」を持たれてゆく。

この手の乙女ゲーにしては珍しく「いじわる」なキャラがほとんどいない。
変な嫌悪感を抱くようなキャラはこの作品にはおらず、
自然にヒロインに対して恋愛感情を抱いていく流れが丁寧に描かれている。
シリアスな内容や重い内容はほとんどく、
人情話などはありつつも基本的には「コメディ」であり、ギャグも多い。

福沢諭吉が無駄に「イケメン」だったりするような意外性が
面白さにつながってることもある。
知名度の薄い人物であるがゆえに味付けは自由自在なのかもしれないが、
「尾崎紅葉」がチャラ男なのはいいのだろうか(笑)

そんな明治時代の人物とヒロインが知り合い、
徐々に仲良くなっていく過程を視聴者も同じように味わうことができる。
それゆえにヒロインは悩む。
「一ヶ月後」には現代に帰してくれるが、帰りたくないと思いだしてしまう。

現代に戻れば妖が見えるヒロインは陰口を叩かれるだけだが、
明治時代の人は温かく彼女を受け入れている。
孤独な現代よりも明治時代に残るほうがと彼女は感じだす。

森鴎外ルート


引用元:©LOVE&ART/めいこい製作委員会

原作は恋愛アドベンチャーゲームという都合上、
色々なキャラクターとのルートとエンディングが存在する。
この手の恋愛アドベンチャーゲームのアニメ化だと
どのルートも選ばずに終わることが多い。
しかし、この作品は明らかに「森鴎外」ルートを突き進んでいる。

ヒロインが明治時代に来て初めて出会った人物であり、
彼女を自分の「婚約者」に据えている。
ストーリーが進む中で明らかに彼女に対して好奇心ではなく、
好意へ変化してるのが見て取れる。

そしてヒロインも森鴎外に夢中だ(笑)
ここまで周囲にも露骨に恋愛感情をむき出しにしてる様を
見せるヒロインはなかなかおらず、
他の男性キャラに抱きしめられても一切ぶれない。
ついには森鴎外のためにも「現代に帰りたくない」と言い出す。

しかも、それが許される。
彼女がそうしたいならば明治時代に続けることもできる、
帰ろうと思えば帰ることもできる。全ては彼女の「決断」しだいだ。
そして彼女は9話の段階で「ずっと明治時代にいる!」と
屈託のない笑みでまっすぐに告げてくる。

居場所のない現代より、明らかに明治時代のほうが良い。
視聴者も彼女と同じような思いだ。

なぜ、そのエンディング


引用元:©LOVE&ART/めいこい製作委員会

しかし、最後の最後で彼女はブレる。
「固定ルートEND」ではなく、いわゆる「ノーマルEND」だ。
どのキャラも選ばずに個別エンドに行かなかった結果のエンディングだ。
森鴎外に対する恋愛感情や他のキャラとの関係性を蹴ってまで、
現代に帰りたがるヒロインがいまいち納得できない。

現代で「同級生の誘いを断ってしまった」ことが心残りなのは分かるが、
それよりも明らかに彼女は明治時代のほうが幸せだろう。
そう思ってしまうほどこのエンディングはいまいち腑に落ちない。

物語としてはたしかにキレイにまとめ上げており、
他のルートが気になるなら原作で!という意味では、
原作の宣伝目的のアニメとしてはくやしいかな成功してるのだが、
このノーマルエンディングはやや消化しきれない感じが残ってしまった。

総評:原作のルートが見たい


引用元:©LOVE&ART/めいこい製作委員会

全体的に見て惜しい作品だ。
色々と設定てんこ盛りでつっこみところも多い作品だが、
魅力的なキャラクターとコミカルなストーリーのおかげで楽しめる作品だ。
特にヒロインは女性向け恋愛ADVのヒロインとは思えないほど、
まっすぐかつ純粋でブレない。見ていて心地の良いヒロインだ。

そんな彼女が9話の時点では明治時代に残ることを選んでいたのに、
結局は現代に帰ってしまう。
ストーリーの流れとしては納得できなくもない展開なのだが、
原作がゲームと知ってるがゆえに
「もっといいエンディングがあるのでは?」と思ってしまう。

個人的に調べた限りだが、個別ルートのエンディングは非常に面白い。
最後の最後で「現代に戻る」か「明治に残る」かの選択はあるようだが、
現代に戻るパターンでもヒロイン一人だけではなく森鴎外が
現代までついてきたり、明治に残ったら結婚したりと
その「エンディング」のほうが見たかったと感じてしまう内容だった。

アニメでは「無難」なノーマルエンディングになってしまったのが
残念でならない。色々とツッコミ所のある作品だけに、
現代に森鴎外と戻るエンディングを是非アニメでも見たかったところだ(笑)

ただ、1クールでストーリーをすっきりまとめており、
コメディテイストで魅力的なキャラとのストーリーは楽しめる作品であり、
女性向けADVであるがゆえに好みは分かれるかもしれないが、
1話だけ試しに見てみるのは悪くない作品だ。
この設定てんこ盛りな明治恋愛アニメの魅力にハマってしまうかもしれない。

個人的な感想:予想外


引用元:©LOVE&ART/めいこい製作委員会

序盤の段階では色々と設定の使い余してる部分が気になったのだが、
中盤以降はそんなつっこみ所よりもキャラクターの魅力に惹かれた作品だった。
やや掘り下げ不足なキャラや、1クールの割には多いキャラ数ではあるものの、
メインキャラをきっちり決めているせいでそこはあまり気にならなかった。

ヒロインがきちんと可愛くて魅力的だと、
それだけで作品全体が面白くなる。この作品はまさにそれだ。
魅力的なヒロインにふさわしい悩める明治男子は女性なら
きゅんと来る部分もあるだろう。
男性でもヒロインの可愛さにやられてしまうはずだ。

そういった意味でもバランスの良い作品だった。
ノーマルエンディングではなく、ぜひ森鴎外エンディングに
突き進んでほしかったという心残りはあるものの、
そのエンディングはゲームで楽しんでほしいというのが
制作側の意図なのだろう。

何気なく見始めた作品だったが、意外にあたりな作品だった(笑)

「」は面白い?つまらない?

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