考えていることが顔に出てしまい嘘や隠しごとができず、「穴のあいたザル」=アナザルと呼ばれる高校生の黒峰朝陽は、クラスメイトであるミステリアスでクールビューティーな白神葉子に恋をする。ある日、朝陽は偶然にも「実は私は吸血鬼」である葉子の秘密を知ってしまい、その秘密を守り抜くためになし崩しに「お友達」になる。
心地良いほどの王道ドタバタラブコメ、でも実は・・・
監督は山本靖貴、製作はトムス・エンタテインメント/3xCube
見だして感じるのは癖のあるキャラクターデザインだろう。
原作も癖のあるキャラクターデザインのようで、
アニメの方はやわらかくなっているようだ。
キャラクターの「目」の描写は独特で癖はあるものの、
この癖のあるキャラクターデザインが妙に記憶に残り、
そんなキャラだからこそ「ドタバタラブコメ」がありがちな感じにはならない。
特にこのキャラクターデザインだからこその「顔芸」ともいうべき、
顔の描写が面白い。
引きつったような表情や驚いた表情、文章では一言でしか表せないのだが
そのキャラの表情の数々が単純に「面白さ」に変わっている。
この作品の主人公は「隠し事ができない」「表情に出てしまう」という設定であり、
だからこそ隠せない「表情」の描写にこだわっていることがわかり、
そのこだわりがダイレクトに「ギャグ」になっており、面白い。
「ヒロインの秘密」を知ってしまった時の主人公とヒロイン。
他のラブコメなどでもありがちなシーンではあるものの、
その「知ってしまった瞬間」の表情と顔のおかげで、
よくあるシーンのはずなのに思わず笑ってしまう。
そして、その表情の描写は同時に「女性キャラの可愛さ」にもつながっている。
潤んだ瞳、照れた表情、恥ずかしがってる表情。
ラブコメならよく見かける女性キャラクターの表情ではあるが、
その表情をきちんとこだわって描くことで
ストレートに女性キャラの「可愛らしさ」が伝わってくる
更にそこに声優による「演技」
ヒロインが「大阪弁」という珍しい設定のおかげもあり、
大阪弁のセリフがいちいち可愛い(笑)
大阪弁キャラの場合、ツッコミ役やツンデレキャラの場合が多いが
この作品の場合は正統派のメインヒロインなのに大阪弁というギャップが効いており、
演じている芹澤優さんの演技と声質のおかげでより可愛さが際立っている
この作品はキャラクターの設定が面白い。
いわゆる「ありがち」に見えるキャラクターなのだが、
実は大阪弁、真面目な委員長タイプが「硬すぎる」など、
ありがちに見えるキャラクターが掘り下げられれば掘り下げられるほど
この作品特有の「独特なキャラクター」ということがわかり、
それと同時に魅力も深まっていく。
「実は私は」。
この作品のタイトル通り、最初はわからないキャラクターの魅力が
話が進めば進むほど「実は・・・」というキャラの意外性が出てきて、
それと同時にキャラクターの可愛さが極まる。
きちんと「タイトル通り」の内容になっており、
そこに作品の主軸がきっちりとあるからこそストレートに面白い。
この作品は同時に「人外モノ」でもある。
ヒロインは実は吸血鬼というのは作品の説明を見ていたり、
1話だけしか見ていない人は知っている事実だろう。
他のヒロインの中にも実は「○○」というキャラクターもおり、
それがあまりにも「予想外」すぎるのだ。
思わず、そう思わず。
ヒロインの秘密が明かされるたびに主人公と同じように
「えぇ!?!?」と叫んでしまいそうになるほど以外な「人外」であり、
その見せ方も強烈なインパクトを生んでいる要因の1つだ。
ヒロインのポニーテールの根本がパカッっと開いたり、
眼鏡が喋り出したり、角が外れたり、
予想外な展開が面白さにつながっている。
そのヒロインの秘密を知るたびにヒロインのリアクションと
主人公のリアクションが面白い。
「隠し事ができない」主人公だからこその素直なツッコミや
リアクションは笑いに繋がっており、
意外な秘密を持つヒロインたちが秘密が明らかになると
可愛さが強まっていく。
主人公が素直というのは「ラブコメ」では貴重だ(苦笑)
ヒロインが惚れるのも分かる、まっすぐで純粋な主人公だからこそ
ヒロインの可愛さが際だつ。
「変に誤魔化す」パターンができない主人公だからこそ、
ラブコメの中で魅力あふれるキャラになっている
だが、そんなヒロインたちの中に一人、癖が強いキャラが居る。
主人公の「幼馴染」というヒロインなのだが、
この作品における「幼馴染」は一切可愛げがない(苦笑)
主人公が隠し事ができないのに対し、
彼女はそんな隠し事を暴くことが大好きで仕方がない。
やりすぎなくらい主人公を追い詰める様子は
お世辞にも「可愛い」とはいえず、ギャグ的にも厳しい。
人によってはかなり「イライラ」っとくるキャラだ。
ただ初登場回を除けば、その極端ないじわる要素はない。
むしろ「幼馴染」ポジションを活かしたキャラクターになっており、
この初登場回を乗り越えればこの作品の欠点はない。
中盤以降はキャラクター同士の関係性が深まり、
「ギャグ」が増えることでラブコメのコメディ要素が深まっていく。
キャラ描写をきちんと前半でやったからこそ後半のギャグシーンが面白く、
ヒロインの「吸血鬼であることがバレないようにする」というベタなシーンでも
主人公のリアクションや行動の数々で単純に笑ってしまう。
終盤はきっちりと「ラブコメ」として恋愛展開になる。
きちんとした前半のキャラ描写、中盤のコメディ描写と積み重ねているからこそ
終盤のラブコメ展開でのヒロインの可愛さが極まっている
だが1クールでありがちな「続きは原作でね」的な感じに終わってしまっており
若干、消化不良な感じが残ってしまった。
全体的に見て非常によく出来たドタバタラブコメだ。
正統派で王道のドタバタラブコメストーリーであることは否めないが、
「実は私は」というタイトル通りにヒロインたちの秘密が明かされるたびに
キャラクターの魅力が深まり、ギャグやシュチエーションの幅が広がっていき、
根本にある部分は正統派ではあるもののこの作品らしい「面白さ」を作り上げていた。
キャラクターが増えれば増えるほど「ドタバタラブコメ」としての面白さが強まり、
そのヒロインたちにふさわしいまっすぐな主人公との関係性が面白く、
前半部分はキャラ描写に力を入れ、後半部分はギャグと切り替えており
1クール、ダレることなく「ドタバタラブコメ」を描いていた。
もったいないのは1クールしか無いことだろう。
前述した好き嫌いが別れるヒロインも、あと1クールあれば
好き嫌いが分かれるが魅力あふれるヒロインになったかもしれないだけに、
1クールという尺でこの作品が放映されてしまったのが残念でならない。
純粋にキャラクターが可愛らしく、純粋にドタバタ感が楽しい。
ヒロインのほとんどが人外娘ではあるものの、
「奇をてらった設定」は無く、わかりやすい設定とストーリーで
シンプルに面白い。
シンプルに面白いのに「ありがち」ではなく「王道」の面白さに仕上げている
この作品は地味にすごい作品だ。
本来ならばもう少し奇をてらった設定やもっと極端なキャラが居てもおかしくはない。
露骨なエロ描写やパロディネタなどに走ってもおかしくはない。
だが、この作品はそんなことはしない。
タイトル通り「実は私は」という設定を主軸に
正統派のドタバタラブコメを繰り広げており、
余計な要素のない素直に「面白い」といえる作品になっていた。
好き嫌いが別れるヒロインも初登場回を除けばそこまで酷くはない。
「ドタバタラブコメ」というジャンルが嫌いでなければ、
誰でも楽しめる数少ない作品の1つといえるだろう。
ただ売り上げ的には爆死。
いわゆる分かりやすく「売れる要素」がないため売上が厳しいのは分かるのだが
2巻以降はほぼ数字が出ていないというのは作品の出来栄えがいいだけに
残念な所だ。
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