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「ルパン三世 グッバイ・パートナー」レビュー

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評価 ☆☆☆☆☆(8点) 全120分

あらすじ ルパンを追っていた銭形警部がルパンとの共謀罪で逮捕されてしまった。さらに、ピアノが得意な少女・アリサが誘拐されてしまった。引用- Wikipedia

グッバイは前半のみって。

本作品は「ルパン三世」のTVスペシャルシリーズ。
TVSPとしては26作品目の作品となる。
前作が総集編を含んだ作品だったが、今作品は久しぶりの完全新作。
約6年ぶりの完全新作TVSPだ。
監督は川越淳、制作はトムス・エンタテインメント/トロワスタジオ

演出の弱さ

見出して感じるのは違和感だ。
「石川五エ門」による刀を使った銃弾の切断と敵の洋服の切って丸裸にする技、
これは過去の作品でも何度も見る「お決まりのシーン」なのだが、
切ってから丸裸にするまでの動作が長く、しかも敵が棒立ちだ。

その後に次元大介による遠距離射撃があるのだが、これも妙に間延びしている。
ルパンと銭形刑事の逃走劇というTVSPの冒頭ではお決まりのシーンなのだが、
そのお決まりのシーンの「ワクワク感」がない。
この冒頭の逃走劇はTVSPにおける掴みであり大切な部分だが、
なんのひねりもなく面白みもない。

演出面の弱さは作品全体で致命的なまでに響いており、
「次元がルパンを銃で撃つ」という本来なら前半の山場であり、
最も盛り上がるシーンですら演出が弱くがっかりだ。

次元大介

この作品は作品全体でシーンの中で引っかかる部分やテンポの悪さ、
間延びする部分など、違和感を感じる部分が非常に多く、
特にその違和感は「次元大介」そのものにある。

ルパン三世は数年前に一部の声優が変更されたが、
「次元大介」演じる小林清志さんは変更されなかった。今年、86歳である。
こういってしまうのは本当に申し訳無さすら感じるのだが、
はっきりといってしまおう。年齢による衰えを感じてしまう。

峰不二子も声優が変更される前は「おばあちゃんの声」と
言われてしまっていたこともあった。
もともと「おじいちゃん」みたいな声の次元大介ではあるものの、
滑舌の悪さや声のハリがなくなってしまっており、
シーンによってはセリフの聞き取りづらさすら感じる。

次元大介の裏切り

今作のタイトルにもなっている「グッバイパートナー」
これはルパンと次元大介の関係性を示唆しており中盤で次元がルパンを裏切る。
こういった「仲間の裏切り」の場合、
なぜ裏切ったのか?というのがポイントでもあるのだが、
「あ、もう描かなくても大丈夫です」と思うほどわかりやすい。

おそらく多くの視聴者が「先の展開」が読めてしまうシーンばかりだ。
明らかに裏切った次元大介に殺されていないルパンや、
裏切った直後に次元大輔が出会う監禁されている少女、
その少女の母親と思わしく人物と次元大介の過去を匂わせる描写。

おそらくこの4行だけで見ていなくても「あ、そういうことね」と
わかってしまう人も多いはずだ。驚くほどに浅い。
作中でまだ描かれていない部分ですら分かってしまい、
先が読めすぎてしまい、予想したとおりにストーリーが進んでしまう。
素人考えのままにストーリーが展開していくような感じだ。

裏切りまでの過程、裏切ってからの行動など、
あまりにも予想通りの展開すぎて本当に見ていて退屈だ。
本来なら盛り上がる所で全く盛り上がらない。
次元大介の裏切りという要素も30分位であり、後はいつもどおりの協力関係だ。
期待はずれにも程がある。

要素が多い

この作品は要素が多い。次元大介の裏切り、これだけで1本作れるのだが、
人工知能と量子コンピューター、それを動かすための特殊な宝石の存在、
量子コンピューターを利用する政治家や大統領、はてはアメリカ政府までと、
どんだけ話を広げるんだとツッコミたくなるほど要素が多い。

これで物語としてまとまっていて面白いなら良い。
だが、結局、どれもこれも中途半端でしか無い。
次元大介の裏切りは30分位で理由もこちらが予測できるレベルの浅さ、
しかも理由になった少女の存在価値を高めたかったせいか、
なぜか量子コンピューターの暴走を止めるためのパスワードが
ピアノ演奏というわけのわからないシーンにもつながってしまっている。

政治家関連のストーリーはほとんどとってつけたようなものでしかない。
結局何がしたかったの?と言いたくなるほど1つ1つの要素の掘り下げがあまく、
致命的なまでのストーリーの弱さを生み出してしまっている。

グダグダ

演出の悪さとストーリーの要素が多すぎるせいも相まってグダグダだ。
特に量子コンピューターの暴走止めるためにピアノを演奏するシーンが有るのだが、
どうでもいい演奏シーンを永遠と流す。
何回、ショパンのエチュードを聞かされれば良いのだろう。
しかも何故かピアノを弾く「指」だけが3DCGで描かれており違和感が凄い。

終盤はルパンや次元大介といった本来はメインで動くキャラクターが、
サブキャラ的立ち位置に押し込められてしまっており、
永遠とピアノ演奏シーンやAIとアメリカ政府との戦いを見せられても、
そこになんの面白みもない。
ルパン三世という作品のはずなのに
ルパン三世が出てこないシーンがあまりにも多い。

結局、「ルパン三世」をやりたいのか「SFアニメ映画」をやりたいのか、
どっちつかずでよくわからない作品になってしまっており、
「次元大介の裏切り」という要素をきちんと掘り下げるだけで
面白い作品になりそうなのに、それができずに余計な要素を追加したせいで
つまらない作品になっている。

最後の次元大介と敵との一騎打ちなど何がしたいんだろうか。
ボロボロの敵とドコモ怪我をしてない次元大介、
どちらが銃の撃ち合いで勝つのかなんてカニとじゃんけんするくらいに
結果がわかりきってるシーンをわざわざラストに描くセンスの無さが
作品全体に響いているのが分かる作品だ。

総評:6年ぶりの新作がこれか..

全体的に見て駄作だ。
作品全体で演出不足のせいでアニメーションとしての迫力がなく、
本来は盛り上がるはずのアクションシーンの緊迫感がまるで無い。
ストーリーも色々な要素を足したせいでグダグダの極みであり、掘り下げの甘い
次元大介の元彼女の娘などもう少しきちんと描写してほしかった所だ。

やりたいことを全て放り込みすぎて作品として崩壊した。
そんな印象を受ける作品だ。
次元大介の裏切りという要素だけで十分に1本のアニメが作れるのに、
裏切ってたのは120分の尺がありながら30分くらいだ。

CMに入るたびにテロップで「次元大介がルパンの敵に!?」と出ていたが、
もうとっくに敵ではない状況になっても出てくるテロップは滑稽でしかなかった。
「グッバイパートナー」だったのは作中では1時間にも満たないくらいであり、
あとはSF映画のようなAIとの戦いだ。
本当に何がしたかったのか?と思うほどにルパン三世としての
面白さのない作品だった。

個人的な感想:もう限界では?

ルパン三世のTVSPは駄作続きだ。
前作の空中都市はジブリがいっぱい、前前作は東方見聞録は盛り上がりが薄い、
前々前作の血の刻印はアクション映画の要素盛りだくさんでごちゃごちゃと、
ここ数年のルパンのTVSPは駄作続きだ。

間にあったコナンVSルパン三世のほうがよっぽど作品としての面白さがあり、
OVAや単独映画にもなっている「次元大介の墓標」や「血煙の石川五エ門」は
間違いなく面白い作品だ。
しかし、「ルパン三世」という魅力的なキャラクターがいるのに、
TVSPになると本当に毎回、脚本がひどい。
なんでこうなってしまうのだろうか(苦笑)

次回のTVSPというのがあるかどうかはわからないが、
次回作があるならばきちんとした脚本で
ルパン三世というキャラクターを存分に味わいたいものだ。

「」は面白い?つまらない?

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