評価 ★★☆☆☆(21点) 全109分
あらすじ 宝島を発見することをジャイアンたちに宣言したのび太は、ドラえもんのひみつ道具「宝探し地図」を使って、宝島を探すことになった引用- Wikipedia
まさかの人類破滅END
本作品はドラえもんの映画作品。
ドラえもんとしては38作目、声優が一新されてからは13作目となる。
監督は今井一暁。
今作は過去作のリメイクではなく新作となっている。
お約束な始まり方の安定感
この作品は「宝島」というタイトルの通り、
児童文学『宝島』をモチーフとした作品だ。
過去の映画でのび太が読んで憧れ「南海大冒険」につながったが、
今作は宝島自体をモチーフにしている。
冒頭から「あぁ、ドラえもんだな」という感じがビンビンだ。
のび太が宝島に憧れ、宝島を見つけるんだとみんなに宣言してしまう。
「もし見つからなかったら?」というジャイアンの問に、
のび太は「鼻からカルボナーラ」を食べると宣言し、
ドラえも~んという叫び声と共に映画が始まる。
いわゆるお約束であり、ベタだ。
だが38年経っても変わらない「ドラえもん」映画らしい始まり方は、
おそらく見に来た子供よりも親御さんのほうがニヤニヤしてしまう
お決まりな始まり方であり、不思議な安心感がある。
ダイジェスト冒険とガチな戦闘
宝島の位置は物語冒頭で分かっており、そこにいつものメンバーと船で旅をする。
色々な道具がなんの説明もなしにどんどんと出てきており、
いつの間にか「ミニドラ」が何匹か居たりと
ダイジェストにしすぎている部分が大きい。
更に今回の敵との戦いは割とガチである。
名刀電光丸や空気砲、ひらりマントと攻撃的な秘密道具がかなり出てくる。
だが、敵もかなり強い。
空気砲の「空気」を切断したのには流石にドン引きである(苦笑)
色々な道具をどんどんと出して繰り広げられる戦闘シーンは
子供が見るとワクワク感が強いものの、
逆に大人が見ると「ガチやんけ…」となってしまうシーンだ。
キャラが多すぎる
中盤になると色々なキャラクターが出てくる。
しずかちゃんにそっくりな女の子とその兄、未来の海賊たちと
ドバァーっとキャラが出てくるのだが、
キャラクターの多さの割にそのキャラクターを掘り下げきれていない。
いちいち「なぞなぞ」を出してくるオウムのロボットなど、
なんのために存在してるのかまるでわからない。
魅力的に見えるサブキャラも多いのに、そのサブキャラを活かしきれておらず、
居るだけになってしまってるキャラも多い。
ストーリーが複雑
ドラえもんは子供向けの作品だ。
だが、この作品のストーリーはかなり大人向けである。
ドラえもんが来た未来よりも先の未来を「見た」敵は地球のエネルギーを吸って
ノアの方舟で宇宙へ旅立つという壮大な目的のために行動をしている。
人類破滅の未来を避けるために行動してる未来人だ。
本当にこの作品はドラえもんなのか?と思うほどに敵の設定は重い。
正直、ドラえもんとのび太では手に負えない話だ。
そもそも未来の地球はどうして「破滅」してしまったかがわからないため、
その破滅を避けるためにドラえもんたちがなにかするわけでもない。
敵はのび太たちの時代の地球のエネルギーを限定的に吸い出すものの、
それが原因で破滅するのならば、それをしなければいいだけで、
別の理由があるならばきっちりと描写してくれないとモヤモヤしてしまう。
海賊である必要性は?
敵の親玉は地球破滅から逃げるために地球のエネルギーを使って
ノアの箱舟を作り逃げようとしている。これはまだ理解できる。
だが、海賊という設定がかなり謎だ。
金銀財宝を色々な時代で集めて溜め込んでいるのだが、
ノアの箱舟にのせた人類などと脱出して、その財宝はいつ使うのだろうか?
財宝を集める必要性も海賊である必要性もない。
敵の親玉一人だけで計画は全て遂行できており、
他の海賊は海賊として行動するが親玉の計画との関連性が薄い。
え?終わり?
終盤は未来の地球滅亡の話はさておいて、
現代の地球の問題を解決しつつ、敵の親玉と息子と娘の親子の話になる。
いわゆる「お涙頂戴」的なストーリーが描かれているのだが、
正直、それどころじゃない状況だ。
「地球がどうなってもいいの?自分たちが助かっても良いのか?」と
ドラえもんは問う。のび太もまた
「大人は絶対に間違えないのか?」と問う。
だが、現実問題として地球滅亡は未来にやってくる。
自分たちとか言ってる場合じゃなく「種の存続」に関わるレベルだ。
正直、敵の行動や言動が正しい部分が大きい。
結局、ドラえもんたちの行動によって敵の計画は中止されてしまう。
根本の「未来の地球の破滅」については具体的な解決策は
この作品の中で提示されない。
このままでは人類の破滅なまま映画が終わる(苦笑)
総評:これはバッドエンドなのでは?
全体的に見て、制作側のやりたいことを詰め込みすぎた作品だ。
宝島までの冒険譚、海賊、未来の滅亡、親子と
様々な設定を盛り込んでいるのは良いが、1つ1つの設定がバラバラで、
物語全体としての整合性が取れておらずちぐはぐだ。
要素が多いだけにキャラも多いが多いだけで使いこなせておらず、
結局、大人が見るとモヤモヤとしたものが残ってしまう。
アクションシーンは悪くない。
未来の道具を使いまくりな戦闘シーンやアクションは動きまくっており、
見応えたっぷりだ。子供が見ても十分楽しめるシーンが多い。
キャラクターの作画も過去の映画作品のようにあった違和感が少なく、
細かく動く回るさまはコミカルであり、
しずかちゃんなどのヒロインの可愛さもしっかりと描写している。
だがストーリーが問題だ。
「未来の地球の破滅」という、この設定だけで1つの作品ができるほど
重い設定を盛り込んでしまったことで、
「ドラえもん」という作品そのものと合わなくなってしまっており、
海賊やお宝という設定もまるで意味のないものになってしまっている。
本来、これほどの未来改変を行おうとしてるならば
タイムパトロールが黙ってないと思うのだが、今回は一切出てこない。
子供向けとしてはあまりにもストーリーが複雑であり、
大人が見てもモヤモヤっとしたものが残る作品だった
個人的な感想:お父さんは辛いよ
今回は父親という部分に重きをおいており、
のび太のパパが最初、のび太のことをママの手前、否定する。
だが最後には自分も子供の頃同じ気持ちだったことをのび太に告げ、
それをこっそり、のび太のママが見ており「ふん」といいつつ立ち去る。
この物語の始まりと終りの部分のシーンは良かった。
制作側のやりたいことは分かるのだが、
そのやりたいことが先行しすぎててストーリーが崩壊気味だ。
正直、序盤から中盤はすごく楽しんで見ていたのだが、
終盤の人類破滅に至るまでのストーリーがあまりにも唐突すぎだ(苦笑)
子供だましじゃないが、ストーリー屋や複雑な部分はあるもの、
動きまくるキャラと戦闘シーンは面白く、キャラ描写は悪くない。
かなり突っ込みどころのあるストーリーではあるが、
子供が見る分には楽しめるだろう。
正直、ドラえもん映画でここまでとんでもない
ストーリーの作品が生まれることは予想外だった。
来年から色々な意味で楽しだ(笑)
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