アニメコラム

プロダクションアイムズが倒産、手がけた作品を振り返ってみる。

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プロダクションアイムズという会社は何者だったのだろうか。
2013年に設立され鳴り物入りで、アニメ業界に舞い降りた制作会社だ。
そんなプロダクションアイムズが
「破産手続きを念頭に置いた法的整理を視野に入れて対応する」と
6月に関係者に通達があり、10月には正式に破産手続きが開始したようです。

プロダクションアイムズは
『そらのおとしもの』『僕は友達が少ない』
『デート・ア・ライブ』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を
プロデューサーした松嵜義之や黄樹弐悠が中心となって作られており、
AICから飛び出た優秀なはずのプロデューサーが居る制作会社だった。
確かにヒット作ばかりだが、それは彼らの力のおかげではなかったようだ。


最初に手がけた作品である「いなり、こんこん、恋いろは。」は
全10話という角川システムを取り入れているが、
作品自体の出来栄えは素晴らしかった。

90年台のラブコメを彷彿とさせるようなストレートかつ
分かりやすいストーリーと魅力的なキャラクター、
そして「京都」という舞台をきちんとアニメの中で描けていた。
売上自体は3000枚前後とやや振るわなかったものの、
「プロダクションアイムズ」という制作会社の名前も広く
アニメ業界に知れ渡った。


しかし、次に手がけた「デート・ア・ライブII」が問題だ。
デート・ア・ライブは人気作であり多くのファンが居る。
AICが手がけた1期は非常に人気で、プロデューサーが
プロダクションアイムズに移ると同時にこの作品もAICから
プロダクションアイムズ制作に変更された。

満を持して始まった2期の作画はひどかった。
1期と比較すると明らかに劣化した作画は多くのファンを絶望させ、
ストーリー構成もグダグダになり、「手抜き」を感じるシーンが多くなった。
せっかくの人気作品にとどめを刺したような形になってしい、
売上は1期から半減の5000枚前後。


そして、もはや伝説の「俺、ツインテールになります。」だ。
何も言うことはない、下のシーンを見てもらえばわかる。

作画崩壊、ヤシガニ、放送中に様々な言葉で評価され、
もはや内容よりも作画崩壊を楽しんでいた人も多く、
「プロダクションアイムズ」という会社の評価を地に落とした。
内容自体は出落ち感があり、バカバカしいのだが私は嫌いじゃなかった。
売上は2000枚前後と更に落ち込む。


次に手がけたのは新妹魔王の契約者。
いわゆるセクシーアニメであるが、俺ツイと同じく作画は不安定。
俺ツイよりもかなりましではあるものの、
セクシーシーンがセクシーに見えないほどの作画の悪さは致命的だ。

ただ売上に関しては悪くはなく、いわゆる「規制なし」バージョンが
BDで見れることも相まって7000枚も売れている。
もう少しきちんとした作画で作っていればもっと売れたかもしれない作品だ。


次に手がけたのは城下町のダンデライオン。
9人の兄弟姉妹たちが「次期国王」になるための日常が描かれた作品だが、
良くも悪くもこの作品は「地味」だった。

丁寧なキャラクター描写やストーリー展開、見やすく面白いのだが、
インパクトのある作品ではなくひたすらに地味。
結果的に売上は2000枚前後とかなりギリギリのラインになってきており、
このあたりからプロダクションアイムズは黄信号が灯りだしたのだろう。


そんな危機感から一発逆転を狙ったオリジナルアニメ作品。
「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-」
分割形式で2クールの長尺であり、気合の入れ方も半端なかった。
監督には谷口悟朗を起用し、警視庁生活安全部とのコラボも行われた。
ガチの勝負を仕掛けてきた作品と言えるだろう。

内容自体は未来の警察モノみたいなものだ。
パワードスーツで行われる犯罪を取り締まる日々を描いており、
がっつりちとしたアクションと硬派なストーリー。
イケメンな主人公と女性層も狙ってきた作品だ。

だが失敗。
1クール目と2クール目で印象が違うというのもあるが、
肝心の1クール目が面白くなりそうでなりきらず、
2クール目は詰め込みまくった感じに終わってしまっており、
今となっては「アクティヴレイド?ああ、そんな作品もあったね」くらいの
印象しか残っていない人も多いだろう。

売上はまさかの2000枚前後。
勝負を仕掛けた割にはかなり厳しい売上であり、
3期もできそうな内容で終わっていたが音沙汰はない。


そんな疲弊した中、手がけたハンドレッド。
この作品はインフィニット・ストラトスの劣化コピーでしかない。
アクションシーンにおける制作側のやる気の無さは顕著であり、
面白くしようという気合がまるで見られなかった作品だ。
1巻こそ1800枚売れたが、2巻以降は1000枚以下。いわゆる爆死だ。
プロダクションアイムズにいよよもって赤信号が灯りだす。


そんな疲弊した中で手がけたハイスクール・フリート。
ガールズアンドパンツァーが大ヒットし、艦これブームも相まって、
悪魔合体してできた作品がこれだ。

放送前のタイトルが「はいふり」というタイトルであり、
日常系に思わせておいて実はがっつりとしたストーリーを展開するという
仕掛けを盛り込んでいたのだが、思ったほど効果的に作用しておらず、
大量の登場人物とブレるストーリー展開は評価が別れ、
独特な荒唐無稽ぶりを作品に中に盛り込んでいた作品だ。

売上的には1巻は9000枚前後とかなり売れており、
この作品がきちんとした形でシリーズ化や劇場アニメなどで
展開していけば違ったのかもしれないが、
プロダクションアイムズにはもう、体力は残っていなかったのだろう。

そのあとも魔装学園H×Hというセクシーアニメを手がけたが、
5000枚以下と中途半端な売上に止まり、
最期は「たくのみ」という日常アニメを手がけて終わった。


プロダクションアイムズは作画のブレが非常に激しかった。
ハイフリなどで頑張っているときもあれば、
俺ツイのときのように破滅的な場合もある。
安定しない作画事情は会社としての不安定さを初期から感じていた。

また手がけた作品も制作の前から売れそうにない感じの作品も多く、
ハンドレッドやたくのみなど、なぜ引き受けたという感じも強い。
優秀なプロデューサーが居るはずなのに、
どうしてこうなったという感じだ。

時系列的にはやはりアクティヴレイドが厳しかったのだろう。
2016年夏にアクティヴレイド2ndを制作したあと、
2018年冬のたくのみまで制作元請けをしていない。
その間はOVAや制作協力で資金繰りを解消しようとしたのかもしれないが、
残念ながら経営破綻してしまった。

他のアニメ制作会社の現状も色々と厳しいようで、
この先もプロダクションアイムズ以外にも倒産する会社が出てくるだろう。
制作本数が年々増え、それに伴い制作会社も増えてきていたが、
そろそろ「淘汰」される時期になっているのかもしれない・・・

いなり、こんこん、恋いろは。 Blu-ray BOX
KADOKAWA / 角川書店 (2016-01-29)
売り上げランキング: 9,820

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  1. 農家の味方 より:

     いつもレビュー拝見しています。久々のコラムが興味深いので初コメ失礼します。
     アニメ業界の淘汰時代(連鎖倒産)という予測は正しいと思います。
     日本のアニメは10年で追い抜かれる、と発言した関係者がいましたがいよいよ正念場。たんなるやる気や技術よりも会社自体の体力やコンセプトが問われる局面になってきたのかもしれませんね……。特に体力は深刻です。今は製品サイクルで言うところの「衰退期」に入って少しのところでしょうか。

     アクブレやはいふりは自分も見てました。技術はあるはずなのにどうも軸足が定まらない、平たく言えば共感できる「ロマン」のない作品という印象でしたね。衰退前の成熟期終焉には、中身スカスカの焼き直しの品が見られやすいそうです。衰退期はイコール振り返りと観察の時期。日本のアニメなりの成功の鍵を見つけられればいいのですが……。