評価 ★★☆☆☆(30点) 全112分
あらすじ コナンと蘭、少年探偵団一行は、百人一首の団体「皐月会(さつきかい)」の会長である阿知波研介との対談を行う小五郎に同行し、皐月会が主催する大会「高校生皐月杯」が行われる日売テレビを訪れていた引用- Wikipedia
はい!私が犯人です!と言わんばかりの犯人
本作品は名探偵コナンの劇場アニメ作品。
名探偵コナンとしてが21作目の作品となる。
監督は静野孔文、制作は TMS / V1 Studio
お久しぶりの
名探偵コナン から紅の恋歌 予告編より
引用元:(C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
見出して感じるのは「あれ!?久しぶりに殺人事件だ!」という所だろう(笑)
最近のコナン映画はそもそも殺人が起こらなかったり、
コナンが推理する部分があまりにも少なかったり、
黒の組織が中心となることも多く、
従来のコナン映画のような殺人が起こって
そこからストーリーが発展していくと言うようなストーリー展開の
作品が少なくなっていた。
しかし、今作は冒頭からきっちりと殺人事件が起きている。
これだけでなぜか「あ、今回は面白いかもしれない」という期待感が生まれている。
本来ならミステリーというジャンルにおいて当たり前の要素が
出ているだけなのだが、その当たり前すら忘れているコナン映画が
従来通りのコナン映画らしいストーリー展開を見せてくれるのではないかと言う
期待を募らせてくれる。
いわゆる王道への回帰だ。
コナン映画は昨今、様々なキャラクターが大人気になってきており、
子供向けのアニメ映画から大人も見るアニメ映画へと
ターゲット層が拡大してきている。
だからこそ、コナン映画は迷走期といわれる磁器が生まれてしまっていた。
そんな中で今作の舞台は大阪&京都だ。
必然的に服部平次もメインとして登場する形になっており、
コナン映画ファンならば「迷宮の十字路」を思い出すような感じだ。
「迷宮の十字路」は好きな人も多い作品であり、
そんな作品を思い出させる作品は必然と期待感を大きくさせる。
アクション
名探偵コナン から紅の恋歌 予告編より
引用元:(C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
冒頭の殺人事件から、やや説明パートが続く。
なぜコナンたちが大阪に来ているのか、今作の映画オリジナルキャラが
どんな背景を持っている人物なのかというのをコナンや平次が
会話の中で説明しているが、あからさまな説明セリフになっているのは
やや退屈に感じやすい。
しかし、そこからど派手すぎるアクションに繋がることで
見ている側が冒頭から感じていた期待感に答えてくれるような感覚だ。
。コナン映画といえば第一作目からありとあらゆる建築物を
爆破してきた歴史がある。
もはや様式美といってもいいくらいの
「爆破アニメ映画」として、ダイハードばりの歴史すら感じさせる作品だ。
そんな爆破アニメ映画なコナンで序盤からTV局が爆破される、
ただ、今作ではテレビ局の爆破なのだが完全破壊ではなく、
ビル全体が倒壊するようなレベルでもない。
今までの作品の爆破に比べると火事レベルであり、
やや物足りず、爆破力が圧倒的に足りない。
しかし、安心してほしい。
コナンと平次のアクションはかなり豊富だ。
先に脱出していたコナンが平次が閉じ込められたTV局の
ビルに行くために、隣のビルから大ジャンプだ(笑)
サッカーボールで窓ガラスを割った後に、スケボーでビルとビルの間を渡り、
伸縮ベルトを使って着地する。
博士の道具は大活躍なアクションシーンには思わずワクワクしてしまうと同時に、
どこか懐かしい気持ちすら生まれる。そう「天国へのカウントダウン」だ。
あの作品の中でもコナンがまだ脱出していない少年探偵団のもとに
いくためにビルからビルへと大ジャンプしていたが、
この作品はある種の「天国へのカウントダウン」のオマージュな部分が
ちょこちょこと顔を出している。
スケボーアクションに関しては最近、なぜか出番が無かっただけに、
今作はそんなコナン映画のスケボーアクションファンの
期待に答えるかのようにやりすぎなくらいヤリまくっている。
今までも数多くのスケボーアクションを見せてくれた。
ときにはスノボーに乗り換えて「雪崩を起こす」という神のような御業を
披露したり、トンネル内をぐるんぐるんと回ったり、
アメコミのヒーローのような超絶アクションをスケボーで見せてくれるのが
コナン映画だ。
今作では久しぶりのスケボーアクションで制作側も気合が入ったのだろう。
今までにない「遠心力」を活かした技だ(笑)
伸縮ベルトを手で持ち、ベルトの反対側をビルの突起した部分に固定し、
スケボーで加速しながらグルングルン!と周り遠心力でビルから飛び出す(笑)
コナンの握力どうなってるんだ?とかいうツッコミはしてはいけない、
遠心力、スケボーによる速度、自らの体重、
相当なGが腕にかかり、子供の腕では明らかに支えきれない上に脱臼しそうだが、
コナンは無傷である(笑)
キック力増強シューズの力がなぜか腕にも伝わったのだろう。
突っ込んだり考察するのは野暮である。
冒頭の30分でコナン映画のある意味「お約束」的な部分が
ぎゅぅぅう!と詰め込まれており、この30分位でちょっとお腹いっぱいである。
本来ならコナン映画の終盤で描かれるようなアクションが
冒頭からあるのがこの作品だ。
その反面で序盤でスケボーが壊れてしまったのは残念でならない。
もっとも最近出番がなかった鬱憤を晴らしたようなスケボーアクションの
結果によるスケボーの壊れた姿は、どこかすっきりとした
スケボーの表情すら見えてしまう。
競技かるた
名探偵コナン から紅の恋歌 予告編より
引用元:(C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
ただ、30分を超えるとやや面白みが薄れていく。
今回TV局ではかるたの大会が行われようとしており、
そんな最中で爆破事件が起きている。
犯人はなぜ爆破事件を起こしたのか?冒頭の殺人事件の犯人は誰なのか?と
きちんとコナンらしいミステリーが描かれている。
ただ、その反面で今作は「和葉」の出番がやたら多い。
中止になるかと思いきや、大会は続行される中で、
やや強引に和葉が恋のライバルとかるたでの対決をするような展開になり、
かるたの特訓をしだしたりと、かなり淡々としたストーリー展開になる。
平次と和葉、そしてもうひとりの女性キャラの三角関係のような
形のラブコメ的ストーリーも描かれるのだが、
どこかTVSP的なストーリー展開になっており、
いまいち盛り上がりに欠けてしまう。
三角関係の描写も、どうせ和葉と平次がくっつくことは
目に見えており当て馬でしか無いライバルキャラだ。
ぽっと出で特に掘り下げのないキャラが恋のライバルとして出てきても、
平次と和葉の長年の中が崩れ去るほどの魅力は残念ながらない。
やたらいい声の秘書のほうが印象に残るくらいだ。
和葉が競技かるたに挑むというストーリーが中盤からはメインになってしまっており、
上映当時は「ちはやふる」が流行っており、明らかにそれに影響されている。
これで「競技かるた」の魅力や面白さをきちんと描くならまだしも、
特にそこはきちんと描かれていない。
和葉自身も怪我をしてしまった部員の代わりに大会に出場することになるのだが、
あくまでも彼女は「幽霊部員」であり、一夜漬けの特訓で
クイーンとまで言われる恋のライバルを相手に接戦する実力をつけてしまうのも
かなりご都合主義感が凄まじい。
競技かるたのルールなどの説明も省かれており、
試合シーンもダイジェストで描かれるような展開が多く、
どうにも話の腰を折られるような感覚になってしまう。
結局、「ちはやふる」の流行りに乗っかっただけで、
あえて「競技かるた」を取り入れた意味は感じない。
「しのぶれど」の札にこだわる点も、ちはやふると全く同じであり、
ここらへんはもう少しどうにかならなかったのか?と
感じてしまうポイントだ。
はい!私が犯人です!
名探偵コナン から紅の恋歌 予告編より
引用元:(C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
もう、多くの人は序盤で「犯人」が分かる。
爆破事件が起こった後の会話で明らかに不自然な会話をしており、
ややネタバレになるものの、こんな会話を繰り広げている。
犯人「これで長年続いた大会も中止しないとなー、
決勝戦で使われるはずだった伝統のかるたも爆破事件のせいで燃えちゃったし」
試合参加者「あ!そのかるたなら無事です!」
犯人「え?な、なんやて?そ、そらどういう!?え?持ち出した?
ほ、ほんまか!?ほんまにかるたは無事やったんか!?」
もう明らかにかるたをどうにかするために、犯人が爆破事件を起こしました。
と言わんばかりのセリフだ(苦笑)
ちなみにTV局から避難する際に大事なかるたは彼の目の前にあったのに、
自分はおろか、誰にも持ち出すように支持していない。
明らかにこいつが犯人ですと言わんばかりの行動とセリフだ。
コナンも平次もいらない、こいつが犯人だよと見てる側が
開始30分足らずで分かってしまうのは
ミステリーというジャンルにおいてはかなり物足りなさを感じてしまう。
消去法
名探偵コナン から紅の恋歌 予告編より
引用元:(C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
ミステリー要素自体も物語中盤で
「犯人は多分あの人」というふわっとした形で決めつけられ、
コナンと平次の推理もかなり強引で明確な証拠もないのに
「お前犯人だろ?」と揺さぶるさまはちょっと滑稽だ。
爆破も殺人もしている凶悪犯を揺さぶるのは危険でしかない。
しかも、真犯人は違う(苦笑)
コナンたちが犯人と思ってた人は実は犯人ではなく、
長年行方不明になっていた人が犯人か!と思っていたが、
実はそうではない。
探偵ならきちんとした証拠を用意して納得の行く推理をすべきなのだが、
いきあたりばったりの今作のコナンと平次は推理力が低すぎる。
真犯人も実行犯は別に居たり、
警察などに犯人と断定させるための存在を二人も用意してたりと、
かなり周到な計画をねっている犯人ともいえ、
その犯人の策があるからこそ、推理も消去法のようになってる部分がある。
ただ、消去法のような形で犯人をあぶり出すのは探偵として無様でしか無く、
バイクの走行中に慌ただしく推理する様子ははっきり言って微妙すぎる。
本当に推理小説家が脚本を手掛けてるのか?と疑いたくなるほどに、
ミステリーとしての面白さがない。
冒頭で感じた「久しぶりにきっちりとした推理が見れる」という期待は
見事に裏切られる。
推理やミステリーという部分はかなり強引なストーリーで面白さは薄く、
登場人物はやたら多いのだが掘り下げが甘いせいで印象に残らないキャラが多い。
脱出劇
名探偵コナン から紅の恋歌 予告編より
引用元:(C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
映画の序盤でも燃え盛るTV局からの脱出劇が描かれたが、
終盤も同じように脱出劇が描かれる。しかもこれまた焼き直しだ。
爆発物の爆破を利用して勢いをつけてバイクで飛び出す。
「天国のカウントダウン」でやったことを同じことを平次にやらせてるだけだ。
ある種のセルフオマージュとも言えなくはないのだが、
流石に同じ映画の中で2回も過去の映画と同じようなシーンが有るのは
微妙なところだ。
平次や和葉といった「キャラクター」のファンならば、
二人の会話にドキドキさせられる部分もあり、
ニヤッとした展開で終わるのだが、
天国へのカウントダウンのオマージュ要素の多さや、
「競技かるた」要素を全面に出しすぎた部分など、
微妙な印象で終わってしまう作品だった。
総評:競技かるたブームに乗っかった結果…
名探偵コナン から紅の恋歌 予告編より
引用元:(C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
全体的に見て冒頭の30分以降は盛り上がりに欠けてしまう。
服部平次と紅葉のラブコメ要素も見所なのかもしれないが、
迷宮の十字路のようなニヤニヤとした感じのラブコメストーリー展開ではなく、
結果のわかりきったぽっと出のライバルによる三角関係には特に面白みを感じない。
ミステリーとしての面白さは消去法で犯人をあぶり出すような微妙さで、
作品の中の探偵より見ている側が先に犯人に気づいてしまうのは
ミステリーとして致命的だ。
映画としては冒頭の30分とラストのアクションの派手さはあるため、
スクリーンで見る分には盛り上がったかもしれない。
だが、そのアクションも遠心力スケボー部分以外は
過去の作品の焼き直しな感じも強く、派手では有るが印象には残らない。
冒頭は古き良きコナンが戻ってきたように感じたが、
探偵より早く分かってしまう犯人、とってつけたようなかるた要素、
迷宮の十字路以下の平次と紅葉のラブコメ要素、焼き直しアクション、
グダグダなストーリー展開と中盤から終盤まで退屈な作品だ。
シンプルに脚本が悪い。
やりたいことはわかり、要素しては悪くないものの、
それがきちんと「ミステリー」としての体裁になっておらず、
とってつけたような「ちはやふる」要素も活かしきれていない。
平次と和葉の二人が好きならば楽しめる部分は多いものの、
キャラ映画にしかなっておらず、
そこに流行りの「競技かるた」要素をのっけましたというような作品だった。
個人的な感想:推理小説家?
名探偵コナン から紅の恋歌 予告編より
引用元:(C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
個人的には冒頭の30分は満足はできた。
コナン映画特有のとんでもスケボーアクションを久しぶりに楽しめ、
そのスケボーアクションがいかにぶっ飛んでるかどうかが、
個人的にはコナン映画で最重要項目であり、
今作は雪崩ほどではないにしろ、なかなかぶっ飛んでいた(笑)
ただストーリー自体はアクションシーンがなければTVSP止まりで、
「かるた」ごときで殺人が起こったりなんだかんだいざこざが生まれるのは
コナンらしいぶっとんだ要員では有るが、
もう少し「ミステリー」としての面白さはあって欲しい所だ。
爆破に関しても遊園地から高層ビルまでありとあらゆるものを
爆破してきたコナン映画としてはテレビ局(サイズは普通)という
ちょっとスケールが小さい。
今作の脚本家は紺青の拳の脚本も手掛けてたが、
あちらも脚本がひどかっただけに、同じ脚本家の名前を
見かけたら警戒してしまうかもしれない…
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