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「LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門 」レビュー

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評価 ★★★★☆(68点) 全54分

あらすじ 剣術の腕を買われた五ェ門は、伊豆半島を根城にするヤクザ・鉄竜会の用心棒として雇われる。引用- Wikipedia

肉を切らせて骨を断つ、石川五エ門、此処に有り

本作品はルパン三世の劇場アニメ作品。
峰不二子という女、次元大介の墓標に続くスピンオフシリーズであり、
今回はタイトル通り五右衛門が主人公の作品となっている。
監督は次元大介の墓標と同じ小池健、制作はテレコム・アニメーションフィルム


引用元:原作:モンキー・パンチ ©TMS

見出して感じるのは「和風」な雰囲気だろう。
五右衛門が主人公ということも有り舞台は日本、
しかも五右衛門が雇ったのは「ヤクザ」という組み合わせ。
前作同様、TVアニメシリーズやTVスペシャルでは醸し出せない「渋さ」を
冒頭からビンビンに感じる。

前作の次元大介の墓標も「渋い」作品だったが、
それと同時に「ハードボイルド」を感じる渋さのある作品だった。
それは次元大介が主人公だからこその渋さとハードボイルドさであり、
その雰囲気が次元大介という主人公のカッコよさをより引き立てていた。

しかし、今作は石川五右衛門が主人公だ。
渋さはあってもそこにハードボイルドは必要はない。
彼に必要なのは渋さだけでいい。
余計な言葉は発さず、紋付袴を着て佇んでるだけで絵になる男だ。

彼が「銃弾を切り裂く」といういつものシーンですらも、
この作品では一味、や二味は違う。
TVSPのようにただ刀を振り回し切り裂くのではない、
自ら銃弾の前に飛び出てさやを少しだけ抜き、そこに銃弾が通り過ぎる。
発射された拳銃もついでに切り裂き、刀を鞘に収める。

なんとかっこいいんだろうか(笑)
いつもの同じ、銃弾を切り裂くというシーンだがセンスによって
ここまで違いが出るのかと思うほどにしびれるようなかっこよさだ。

そんな五右衛門が用心棒を務めるヤクザの賭場に
ルパンたちが忍び込むという所から物語が始まる。

ホーク


引用元:原作:モンキー・パンチ ©TMS

今回はルパンたちの格好がいつもは違う。
「帽子をかぶってない次元」や「ボブな不二子ちゃん」など
いつもと違ったルパン一味の魅力も出ており、
ワンパターンな姿ではないというだけで思わず目を奪われる。

紋付袴の五右衛門もの「戦わないときは右手を隠している」姿などの
細かいこだわりも随所に感じられる。
TVSPではギャグ要員にされることの多い五右衛門だが、今作は違う。
今作の彼はどこか調子に乗ってる部分もあり、自分の技に酔いしれている。
彼はまだ未熟だ。

そんな彼の前に現れるのが今作の敵、ホークだ。
前作の敵は知能派だったが、今作はゴリゴリのパワータイプだ。
脳筋の極みのようなパワータイプであり、
余計な技や知的な戦略ではなく圧倒的な力でごり押すタイプだ。

かつて2000人の兵士を殺した伝説を持つ男だ。
お肉をたくさんたべたり、いきなりバイクで突っ込んできたりと、
敵でありながらどこか変な可愛さすらあるキャラだ(笑)

2つの斧を使い、迫ってくるさまは圧倒的なパワータイプだからこその迫力だ

義理


引用元:原作:モンキー・パンチ ©TMS

五右衛門はホークを逃し、しかも自分を雇ってくれた親分が死んでしまう。
「義」を果たすために彼はホークと戦う。
だが、ホークの力の前には彼の技は通じない。
彼の抜刀術をあっさりと受け止め、圧倒的な「力」で彼を倒す。
圧倒的な力の前に技が敗北する。そして落ち込む(笑)
武士として義理を通したい彼のプライドがズタズタに壊された所で前編が終わる。

ニヒルなセリフなどはいらない。あとは結果と行動で示すのみ。
武士道ともいわんべきシーンの描写の数々は、見ていてシンプルに面白く、
その雰囲気に誘われるようにうルパンたちもかっこいい(笑)
どうかっこいいのかと問われると非常に文章での表現に困るのだが、
台詞回しがシンプルで、そのシンプルなセリフを実力派の声優達が
きっちりと演じることでキャラクターの魅力がより深まっている。

修行


引用元:原作:モンキー・パンチ ©TMS

負けたらどうするか?修行である(笑)
中盤での「修行シーン」のインパクトは凄まじく、
ありとあらゆる方法で行われる修行は思わず笑ってしまうほどだ。
ホークの力を「サメ」に見立てたり、「炎」に見立て、「滝」に見立て
なんとかホークの力とホークにたいする恐怖を克服しようとする。

そこからの「覚醒シーン」の描写はジャンプ漫画かな?と思うほどの描写だ(笑)
「石川五ェ門」というキャラクターの魅力をここまできちんと掘り下げ描く、
TVSPのように便利なアイテムやギャグ要員ではなく、
「石川五ェ門」というキャラクターのかっこよさにあふれているシーンばかりだ。

笑ってしまいながらもそのかっこよさと、
その後の戦闘シーンの渋さに噛みしめるような面白さを感じることができる。
襲いかかるヤクザを流れるような動きで切り裂いていく。
容赦のない「人体破損」の描写と血を浴びる五右衛門、
まさに血煙の五右衛門のタイトルに相応しいシーンだ。

決着


引用元:原作:モンキー・パンチ ©TMS

「肉を切らせて骨を断つ」という言葉の通りの描写は、
一瞬見てるこっちがびっくりするようなグロい描写だ。
皮一枚で敵の攻撃を避けつつも、攻撃を仕掛ける五右衛門。
あえて「五感」を封じ、五感ではない脳の自覚を超える抜刀だ。
相手を見るわけでもない、修行の末にたどり着いた五右衛門の技。

自らが傷つ事も恐れない「仏の境地」へとたどり着いた五右衛門の技は
思わずゾクゾクと身震いしてしまうほどの技だ。
容赦など一切ない彼の剣技は切られていないのに切られたと
相手に錯覚させるほどの境地に至る。

もはや勝敗を実際に付ける必要すらない、ホークは自ら負けを認め去っていく。
起承転結が綺麗にまとまっている作品だ。

総評:これが石川五右衛門だ


引用元:原作:モンキー・パンチ ©TMS

全体的に見て素晴らしいスピンオフ作品だ。
前作の次元大介の墓標の完成度はかなり高かったが、
今作でもそのクォリティは落ちておらず、
「石川五右衛門」というキャラクターを活かしための雰囲気作りと、
余計な肉付けのないストーリーと迫力のある戦闘シーンが
最後までしっかりと楽しまさせてくれる。

最近のTVSPではここまで深く「石川五右衛門」が描かれない。
きちんと彼の本来の魅力を感じさせてくれる、
「石川五右衛門」というキャラのかっこよさをひしひしと感じられる作品だ。

ただ難点を言えばちょっとストーリーがわかりづらい。
なぜ敵がルパンたちを狙っていたのか?という部分が明かされておらず、
敵としての魅力はあったものの、石川五右衛門の相対する敵としては
やや「アメリカン」すぎる感じもある。

wikipediaによれば今後の伏線やネタバレになるようなシーンの描写を
あえてカットしていたようだ。つまり続編を狙っている。
おそらく今回の敵も死んでいたという過去があり、
「マモー」が絡んでいることはあきらかだ。

そういった意味では前作のほうが「マモー」が出たインパクトも有り、
物語としてもよくまとまっていたが、今回は匂わせる部分や
描写されてない部分が多くちょっとしっくりと来ない感じは残る。

ただ「ルパン三世」という作品が好きならば、
「石川五右衛門」というキャラクターが好きならば間違いなく楽しめる作品だ。
ぜひ「石川五右衛門」のキャラを隅から隅まで味わっていただきたい。

個人的な感想:安定のクォリティ


引用元:原作:モンキー・パンチ ©TMS

前作に引き続き安定したクォリティだ。
本当に同じ制作会社なのになぜここまで最近のTVSPの
出来が違いすぎるのか疑問でしか無い(苦笑)

TVではできないグロさのある表現はOVAだからこそではあるものの、
ストーリーにしろキャラ描写にしろ、敵の魅力にしろ、全てが上だ。
いくらTVでは「規制」があるといってもここまで差が出てしまうのが本当に謎だ。

LUPIN THE IIIRDシリーズは間違いなく面白い、
次回の「峰不二子の嘘」も今から見るのが楽しみだ。

「」は面白い?つまらない?

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  1. 匿名 より:

    笠希々さんのレビューではあざとい作品に対して、「この脚本家は女だということが分かる」「腐女子であれば好きになれる作品かもしれない」といった表現をよく使われますが
    (誤解されないように言っておくと、別にその表現が嫌なわけじゃありません)
    その笠希々さんと同じ表現を使って言うと「いかにもオッサンが書いた事が分かる脚本」だと思いました。
    極道、過激な戦闘描写、不二子(女)には理解できない男の美学、最後は肉を切らせて骨を切る精神…………「ほら?こういうの好きだろ?」と言わんばかりで視聴がツラかったです。
    また、アニメとして演出面の弱さも感じました。

    組長が二、三言セリフを喋ったらアッサリと退場する為、なぜ五右衛門が義理立てするのか?という部分がフワッとしている。
    ルパン一味全員が歯が立たなかった敵に対して、五右衛門だけが凄まじいショックを受けていて温度差が酷い。峰不二子とルパンは別に気にしないタイプなのは分かるとしても、次元はちょっと違うのでは?
    なんか一人芝居で壮絶に落ち込んで、勝手に自分の体をボロボロに追い込んで…………と非常にバタくさかったです。

    敵の強さに関して。パワーの描写は迫力の伝わる素晴らしい出来だった一方で「五右衛門の居合すら見切る反射速度」という部分はあまりに貧弱でした。
    次元が敵に対してファニングするシーンとか「事前に警告」「さらに警告を無視したことを警告」「棒立ちで撃つ次元」「棒立ちで銃弾を弾く敵」「もう一回、使いまわしのような絵で撃つ次元」
    スローモーションとか銃弾のアップとか演出が一切無く、棒立ちで撃つ⇒カンカンカン!⇒な、なにぃ!?あいつ銃弾を弾きやがった…………とかやり取りをしてるのはギャグかな?ここは笑わないといけないシーン?と悩んじゃいました。

    これが面白そうなら他のスピンオフも見ようかと考えてましたが、止めておきます。
    派手なシーンのツギハギで強引に作られた「お手軽ハードボイルド」は好きになれません。