あらすじ 2016年。日本の富山県には国連主導で造られた「国際連合黒部研究所」が置かれ、過去にその地で発掘された「アーティファクト」と呼ばれる遺物の研究や、人型機動兵器の「ジオフレーム」の実験が行われていた。引用 – Wikipedia
P.A.WORKSが作るロボットアニメは青春アニメだった
監督は岡村天斎、制作はP.A.WORKS。
P.A.WORKS 15周年記念アニメーション作品と位置づけられている。
個人的にだが、岡村天斎監督とは相性が悪い。
見出して感じるのは冗長さだろう。
1話冒頭で雪の中での謎のロボット同士の戦いが描かれた後に、
ヒロインの三者面談が描かれる。
このヒロインの三者面談がやけに冗長だ。
2クール、全24話というストーリー構成だからこそ、
1話1話で描くストーリーの密度が1クール作品より薄くても良いのだが、
キャラクターとキャラクター同士の会話に独特の「間」があり、
その間を面白いと捉えるか、冗長と捉えるか。
人によって大きく違うだろう。
しかし、戦闘シーンは素晴らしい。
「CG」を使って描かれているのだが、そのCGが違和感を感じさせない。
CGを使ったロボットアニメの場合は「CGだな~」というのが
伝わってしまう作品が多く、それをいかに演出で誤魔化すか、
もしくはCGの特徴を活かすかが強いられるが、
この作品の場合はその両方をうまくやっている。
この作品の世界観のロボットは「重力制御装置」がついている。
地球の戦闘シーンにおける「重力」=「重さ」の描写がCGの弱点でも有るのだが、
重力制御装置を搭載したロボットという設定にしていることで、
重さを出さなくても問題がなく、「着地」のシーンなどに
重力制御のフィールドを描くことでより自然な重さの描写ができている。
更に、その設定ばかりに頼るのではなく、きちんと
「重力制御装置」が効いていないシチュエーションでの衝撃や
重さの演出もきっちりと妥協なく描くことにより、
「CG感」はあるものの「CG」だからこその違和感を無くしている。
本来ならば違和感の生まれる早い動きが、
その重力制御装置という設定により可能になり、
CGロボットの戦闘シーンをより活かすことができる。
更に基本的にこの世界のロボットは「刀」で戦う。
宇宙から飛来する「鬼」と呼ばれるロボットを敵とする男が目覚め、
巨大ロボットに乗り、刀を振るう。
「ロボットによる剣劇」をビル群の中で激しく行う。
きちんと考えられた殺陣と、ただ早く動かすだけじゃない静と動の繰り返すによる
見応えがあり、迫力のある戦闘シーンをきちんと描写することで、
やや冗長気味のストーリーにいい刺激を与えている。
ただ、この冗長さが何とも言えない。
序盤は現代に蘇ったサムライが現代に
馴染んでいく日常をギャグとして描いているが、
この手の過去の人物が現代に・・の設定でよくある感じの話であり、
笑えないこともないのだが、テンポが悪い。
そのせいで本筋のストーリーがなかなか進まない。
話を追うごとに大量のキャラクターが出てくるのだが、
その1キャラ1キャラが結構癖がある。
癖のあるキャラが一人か二人ならまだいいのだが、
この作品はそういうキャラクターばかりだ。
そのキャラクターを使いこなせてるとは言い難い。
2クールという尺だからこそのキャラクター数なのは分かるが、
キャラクター数を減らせば1クールでも描けたのでは?と感じる部分もあり、
ストーリーを描く上で必要なキャラではなく、
2クールという尺だから登場させられたキャラが多い。
ただ、これは私が「ロボットアニメ」と
1話で決めつけてしまったからかもしれない。
ロボットアニメ&SFという以前にこのアニメを作っているのは
PA.WORKSであり、この製作会社が得意とするのは青春アニメだ。
P.A.WORKS 15周年記念の本作品が青春アニメでないわけがない。
キャラクター数の多さ、本筋のストーリーの進まなさは、
あくまでも「ロボットアニメ」として見るからであり、
このアニメを青春アニメとして捉えれば、
本筋は現代知識のない過去からやってきた男とヒロインの青春ものであり、
ロボットはおまけでしかない。
あくまでも、人間ドラマであり青春モノ。
そう割り切るとストーリーのテンポの悪さやキャラ数の多さが
不思議と気にならなくなり、盛り上がりどころは少ないものの、
なんだかんだで最終話まで見てしまう。
王道のボーイミーツガールを全26話でたっぷりと見せてくれた作品だ。
全体的に見てロボットアニメとしてみると肩透かしを食らう作品だ。
地球の危機はずなのに繰り広げる青春ストーリーのテンポの悪さ、
燃えるようで燃えられない戦闘シーン、
いわゆるロボットアニメに必要な「熱い展開」というのがなく、
ロボットアニメとして見るとどうにも平坦かつ淡々としてしまっている。
しかし、青春ものとして見れば1話から最終話できちんと
キャラクターが成長しており、1話などの伏線もキレイに回収し、
2クールでしっかりと日常と非日常を描いたからこそ、
序盤ではふわふわしていたキャラクターの目標ややりたい事が決まり、
最終話の終わり方につながる。
後腐れなくきちんと終わるというよりは「余韻を残す」2クールアニメらしい
終わり方に成っており、序盤から中盤まであまり面白さを感じなかった人でも、
最終話まで見てしまうと「なかなか面白かったな」と
感じるストーリーに仕上げている。
投げっぱなしの最終話ではなく、余韻を残す最終話は2クールだからこそだろう。
一言で言ってしまえば手堅い作品だ。
1つ1つの要素をきっちりとやっており、
よく言えば王道なのだが、悪く言えば遊び心がない。
安定した面白さは有るのだが、安定した面白さ以上の面白さにはならない。
ズヴィズダーや、DARKER THAN BLACKなどを手がけてきた岡村天斎監督の割には、
えらく真面目に作ったなと感じてしまう作品だ。
個人的には1話の期待感は物凄く高かったのだが、
そのハードルをなかなか超えてくれないまま、序盤と中盤が終わり、
終盤でやや盛り返した感じの印象だ。
ただ、ロボットアニメとしての面白さは結局あまり感じられなかった。
CGの違和感もなく高速戦闘も重力異常という設定があるから
自然に受け入れられたのだが、1つ1つの動きが
「ロボット」というよりは「人間」すぎて、
結局、ロボット同士の戦いというよりはロボットという鎧を来た人間同士の
戦いになってしまってた感じが強い。
ロボットアニメとしてみると微妙、青春モノとしてみると佳作、
そんな作品といえるだろう。
売上的には1700枚前後と物足りないが、
この作品が総集編ということで2時間位の映画になればテンポの問題が解決し、
すっきりと楽しめるかもしれない。
PA.WORKSはアニメ映画はあまり手がけないが、
少しだけ期待したいところだ。
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