評価 ★☆☆☆☆(14点) 全26分
あらすじ 離島にある中学校に通う東シュウイチは、子供の頃から続けていた野球を辞めたことで親友の西条ケンタと険悪な関係になり、文化祭前日にもケンカをしてしまう。引用- Wikipedia
ジブリの呪い
本作品はノイタミナ作品のアニメ映画。
ジブリでアニメーターとして参加していた
新井陽次郎氏が初監督を務める作品だ。
補完
冒頭、爽やかな作風の中で、主人公が教室に入ると、
「裸」になって着替えてる少女が居たというところから始まる。
作画の爽やかな雰囲気と全裸という状況描写が全く咬み合っておらず、
裸だった理由がきちんと描かれれば納得できたかもしれないが、
特に描写がないため余計に意味がわからない。
なぜ彼女が裸だったのか。
この作品はこういう大事な要素をあえて説明していない。
見る側に考察させ、考えさせることでストーリーを補完しているような印象だ。
確かに作画は綺麗だ。
主人公が通う学校は学園祭の準備をしており、
多種多様なキャラクターたちが所狭しと画面の中で描かれており、
1シーンの中で同時に多くの人物を動かすシーンなど
ジブリ出身という肩書に恥じない作画になっているが、
はっきりいって、この作品は「それだけ」ともいえる。
綺麗な作画、細かく動く作画、
それだけで面白い作品が作れるならどのアニメ会社もそうやっている。
その細かく動かす描写に「趣」やこだわりを感じず、
どこか空虚だ。
主人公
中学生である主人公はいきなり野球部をやめてしまっている。
友人は辞める主人公を引き留めようとするものの、
主人公は頑なに意思を変えずに、どこかやさぐれてしまっている。
そんな「やさぐれた少年」が出会うのが一人の少女だ。
台風の中で避雷針の上にたち、謎の力を使いながら、雷を受ける。
不思議なその少女「ノルダ」はなにもので何をなそうとしているのか。
いわゆるボーイミーツガールなプロットではあるものの、
30分ほどの短編アニメのせいもあって、深い掘り下げが一切行われない。
メインキャラを演ずる二人もいわゆる芸能人声優であり、
滑舌の悪さや演技の拙さもあって、
ただでさえ感情移入しづらいメインキャラに
余計に感情移入できづらくなってしまっている。
台風が襲う夜の学校、謎の少女と世界観と作画、
アニメーションは素晴らしいのだが、
それ以外がどうもいつまでたってもしっくりとこない。
ノルダ
台風が訪れる中でいきなり合われた少女が「ノルダ」だ。
彼女は人の姿をしているものの、おそらくは人ではない。
バナナすら知らず、何も知らない。
「この世界を再構築」するために訪れた宇宙人的な
なにかなのはわかるが、全部ふわっとしている。
ずーっとこのふわふわが続いている。
彼女はいわゆる「人柱」的な存在であり、
そんな少女になぜ主人公がそこまで肩入れをするのか?という
根本的な部分がいまいちしっくりと来ない。
ところどころのアニメーションは本当に素晴らしい。
ノルダを助けようと紛争し校舎を走り回る主人公、
この走り回るようなアニメーションだけがこの作品の面白さと言ってもいい。
うわぁあああ!
終盤、ノルダの首輪を二人の少年が壊そうとする。
喧嘩をしていた主人公と主人公の幼馴染が和解し、
二人で協力して何かをなす。
物語の流れ自体は理解できるが、中身が理解できない。
ずっとふわふわだ。
このラストシーンも本来は盛り上がるシーンのはずなのに、
演じている芸能人の間の抜けた「叫び」の演出は
まるで膝カックンを食らったかのごとく気合が入っておらず、
盛り上がりも生まれていない。
ノルダもあっさりとどこかへと過ぎ去ってしまい、
まるで台風のようなヒロインとでもいいたげな感じで終わるが、
見ている側としては何1つしっくりと来ないまま終わってしまう作品だった。
総評:ジブリの悪いところ煮詰めてみました
全体的に見て肩書だけの作品だった。
ジブリの悪いところ、欠点を煮詰めて30分に詰め込んだような、
作画の綺麗さだけで尺を意識しないストーリー構成と、
見ている側に理解させないストーリーは見終わった後に
強いモヤモヤ感が残ってしまう。
結局制作側がしたかったこと、描きたかったことが
制作側の中だけで終わってしまい、見ている側に一切伝わない。
とってつけたようなケンカととってつけたような仲直り、
とってつけたような友情描写、とってつけたような青春要素、
根本的な物語作りができておらず、
その物語を見ている側に伝えようともしていない。
なんとなくBL的匂いもする作品なだけに
いっそ「ノルダ」という存在いらなかったんじゃないかとすら感じてしまう。
未知の鉱石が台風を巻き起こしており、それを二人の男子が
喧嘩して仲直りした後に壊して解決みたいな感じのほうが
すっきりと楽しめたかもしれない。
素人考えでも30分という枠では到底消化しきれない内容になっており、
これが2時間位の尺だったらまだ違ったかもしれないが、
30分という尺の中での取捨選択が仕切れていない印象を覚える作品だった。
個人的な感想:宮崎駿の呪い
この作品も、メアリと魔女の花も、鹿の王も、
作画やアニメーションは元ジブリの名にふさわしいものだが、
内容がその作画やアニメーションのレベルにまるでついていっていない。
ジブリの呪いというべきか、宮崎駿の呪いというべきか。
この呪いはあまりにも深く暗く、重いものだ。
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