ある日、テレビのヒーローに憧れたのび太は、みんなでヒーロー映画を作ろうと言い出す。
ドラえもんは、ひみつ道具<バーガー監督>を出して、のび太たちが「銀河防衛隊」というヒーローになって宇宙の平和を守るという映画を撮影し始めた。
子供だまし以下
わさび版ドラえもんとしては第9作目にあたり、
ドラえもん映画作品35周年記念作と銘打たれている。
監督は大杉宜弘。
見だして感じるのは無難さだ。
いわゆる「いつものドラえもん映画」らしい始まり方であり、
大きな盛り上がりも、大きな刺激もない。
序盤の20分はみんなでドラえもんの道具を使って
映画を撮影するという内容だ。
未来の道具自体は小道具を本物のように見せる「スケールアップライト」や、
映画監督ロボなどアイデア自体は面白いのだが、
その道具を使うシーンのアニメーションのセンスが無い。
せっかく未来の道具の効果でスケールアップしたはずの
ヒーローの衣装や、怪獣の衣装の力を見せる演出が非常に弱く、
映画作品なはずなのにTVアニメを見ているようなこじんまりとした演出であり、
スクリーンを全く意識していない迫力のない絵作りは残念でならない。
更にはドラえもんのわがまま加減。
これは「新ドラえもん」の特徴でもあるので仕方ない部分はあるが、
のび太以上にわがままな態度や台詞が非常に多く、
本来はのび太が言いそうなセリフを
ドラえもんが言ってるような違和感や行動が多い。
そのシーンが面白ければいいのだが、
そのわがままのせいでストーリーが間延びしているせいで
余計にたちがわるい。
ストーリーがようやく本筋に入るまで始まってから40分近くある。
それまで盛り上がりらしい盛り上がりがなく、
ストーリーのテンポも遅すぎる。
尺としては101分の作品だがその3分の1が終わって
ようやくストーリーが盛り上がるというのはストーリー構成に疑問を感じる。
更に映画でののび太の活躍といえば「射撃」を思い浮かべる人も多いだろう、
だが、なぜか今作品では「あやとり」をピックアップしており、
射撃ではない。
戦闘シーンで一発ネタ的にあやとりを何度も披露するのだが、
ギャグにおける「間」というのがわかっておらず、
とことん滑ってしまっている。
もう1テンポ間をおけば笑いに変わるのに、
その間をあけずに次のシーンに行ってしまうため笑いに変わらない。
ドラえもん映画ならではの「冒険感」も薄い。
秘密基地や冒険先での食べ物など、
ドラえもんの映画と聞いて思い浮かべる要素も多いはずだ。
しかし、本作品はその要素こそあるもの「要素」だけであり、
それを作品の中での面白さや魅力に変えていない。
「ドラえもん映画といえばこの要素でしょ」という安易な考えが
安易なまま使われているような感覚だ
その割には映画でのお約束要素は忘れている、
例えばドラえもんの道具。
ドラえもんのポケットに何らかの異常が発生したり、
ドラえもん自体になにかが起こって未来の道具が使えなくなるパターンは多い。
しかし、今作品の場合そんなトラブルは一切ないため、使いたい放題だ。
更に「ヒーローになるためのスーツ」をドラえもんたちは身に着けているため、
スーツの力+未来の道具というチートレベルの強さを手に入れている。
タケコプターで空飛べて、透明マントで透明になれて、普通の人の50倍の力と
もはや敵が可哀想になるレベルだ。
宇宙英雄記というタイトル通りヒーローと言う要素を打ち出したいのならば、
未来の道具にはある程度制限をかけるべきだった。
負ける要素のない緊迫感に欠ける戦いとスクリーンを意識しない絵作りと
数は多いのに時間は短いアクションシーンのせいで、
戦闘シーンがまったくもって面白くない。
長いアクションシーンを考えることができないかもしれない。
全体的に見て子どもと一緒に見てる大人が
「この映画早く終わらないかな」と思ってしまうような子供だまし以下の作品だ。
常に盛り上がらないストーリー展開、退屈なアクションシーン、
間延びしたテンポの悪いストーリー構成と、
終始、退屈に感じてしまう作品だった。
本来はこの作品で描きたいはずの「ヒーロー」要素も
やりようはいくらでもあったはずだ、
最近ではアメコミ実写ヒーロー物が流行ってるだけに、
それをドラえもんという媒体で描きたかったのだろう。
しかし、この作品は見事に描きたいことが伝わらない。
ドラえもんのオリジナル映画作品は本当にハズレが多い。
当たり前の話なのだが「藤子・F・不二雄」の凄さを
改めて実感させられてしまう作品だ。
来年の映画は日本誕生のリメイクらしいが・・・
リメイクも当たり外れが多いだけにどうなることやら。
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