国際連合が崩壊した近未来。各地では『正統王国』『資本企業』『情報同盟』『信心組織』の四大勢力が争っていた。既存の兵器では歯が立たない超大型兵器『オブジェクト』の台頭によりクリーンな戦争が行われている中、『正統王国』の第37起動整備大隊に派遣されたのは手っ取り早く金儲けをするためにオブジェクトの設計士を目指す留学生・クウェンサー。彼は貴族であり、とある目的を持つ’ヘイヴィアと共に日々を過ごしていたが、オブジェクトのパイロット『エリート』として生きる少女・ミリンダに出会う。そしてある作戦以降、クウェンサーとヘイヴィアは各地を転戦する羽目になり生身でオブジェクトと戦うこととなる。
メタルギア・ガバッド
監督は渡部高志、制作はJ.C.STAFF
見だして感じるのはインパクトの強烈な無さだろう。
この作品の世界の中では「オブジェクト」と呼ばれる超巨大兵器が存在する、
簡単にいえば超でかくて、超固くて、超強い兵器だ。
普通のミサイルでは豆鉄砲くらいにしかならず、
各国がそれを所持している。
それがこの作品の軸にあり、この「オブジェクト」の存在こそが
この作品の根幹にある。
宇宙戦艦ヤマトでいえばヤマト、エヴァンゲリオンでいえばエヴァ、
タイトルにもなっている通りの作品の中で強い存在感を放っている。
しかし、圧倒的にインパクトがない。
兵器デザインとでもいえばいいのだろうか、
基本的に球体でツルットッした感じの装甲に砲台などがついている。それだけだ。
兵器として合理的なデザインを考えたからこそのデザインである事は分かるのだが、
娯楽作品としては、その合理的なデザインがつまらない。
例えば進撃の巨人の巨人だったり、
例えば新世紀エヴァンゲリオンの使徒だったり、
作品の根幹にあるものだからこそ「デザイン」のインパクトは重要だ。
しかし、この作品の根幹にあるオブジェクトのデザインは酷く地味で、
その兵器が最強であることを長々と1話冒頭から説明されるのだが、
最強感がうすすぎる。
原作ならば少ない挿絵の中で映るからこそ、
あとは読者の想像と文章による解説で「最強感」が出ているのかもしれない、
しかし、映像化してしまったがために、
本来はもっと圧倒的なインパクトがなければならないはずのオブジェクトが
チープになってしまっており、どうにも世界観に入り込めない。
見ていない人に分かりやすく言うなら機動戦士ガンダムのボールが
超巨大になってもらっているのを想像してもらえばわかりやすい。
そしてオブジェクトだけでなく、キャラクターデザインも地味だ。
そもそも主人公とヒロインが金髪頭で髪型も似ている、
その主人公の言動もかなり軽く、好感を持てない。
好感の持てない主人公が長々と色々な事を説明してくれるのだが、
いわゆる「説明セリフ」であり、物語の流れの中での自然な解説ではない。
説明はされるが頭には自然に一切入ってこない説明セリフは
1話だけならまだしも作品全体でかなり多い。
更に露骨なセクシー要素。
ラッキースケベ的なセクシーシーンならまだしも、
かなり強引なセクシー要素が目立つ。
例えば主人公の整備不良でオブジェクトの操縦席に載っている
ヒロインのベルトが窒息寸前にまで締まる、
肋骨の骨折、窒息などかなり危険的な状況であり主人公が原因なのに、
ベルトによって強調される胸が気になって仕方ない主人公など、
はっきりいって最悪だ。
おまけにモノローグによる「ヒロインのおっぱい」の解説までついており、
笑えない状況でギャグ的シーンのように描写されても、
セクシーにもギャグにもなっていない不自然なシーンになってしまっている。
これが1話だけならまだしも全体的にほぼ毎話、
不自然なほどにセクシーシーンをシリアスな状況でも
お約束的に入れてくる。
シーンとシーンのメリハリ、空気感、そういったものがゴチャゴチャで
見ている側は「緊迫感のあるシリアスなシーン」を楽しみたいのに、
不自然なセクシーシーンが挟まれるせいでその空気感を台無しにされる。
日常シーンでのセクシーシーンで素直にセクシーシーンを楽しもうと思っても、
ヒロインが危機的状況に陥っていては素直に楽しめるはずがない。
露骨過ぎるセクシーシーンは賛否が別れる所だろう。
ストーリー的には、インパクトの薄いオブジェクトと好感の持てない主人公たち、
主人公は「歩兵」であり、オブジェクトは操縦できない。
そんな主人公たちがいかに「オブジェクト」を倒すのか?が
この作品の主軸になっている。
進撃の巨人でいえば、それは「立体機動装置」というものと、
弱点が用意されているからこそ、戦闘シーンが盛り上がり、
また主人公も巨人に変身することでストーリーも盛り上がる。
しかし、この作品のオブジェクトを倒せるのはオブジェクトのみというのが
世界観の常識にある、そんな常識がある中でただの人間である主人公が
どうやってオブジェクトを破壊するのか。
文章にだけすると「ものすごく面白そう」に感じる人も多いだろう、
実際の所、ストーリーの中に期待感はものすごくある。
しかし、描かれる内容は実に拍子抜けするようなものが多い。
あっさりと基地に侵入し、あっさりと破壊工作を行う。
メタルギアソリッドを超EASYモードでプレイしているような感覚だ
序盤に出て来る敵オブジェクトは脚が弱点であり、
アメンボのような形をしている。舞台は雪原だ。
雪原をいかした工作で姿勢を崩してなどという方法ならば
アクション的にも見ていて面白かったかもしれないが・・・
「敵基地に侵入して、脚の替えパーツに爆破装置しかけました!
脚の異常を察知してオブジェクト、自爆しました!」
こんな膝かっくんを食らったかのような拍子抜けの方法は、
物語の中ではものすごく盛り上がっているのだが見ている側の感情は冷めている。
更に緊迫感のある状況でも主人公たちは
アメリカのB級映画ばりにスカしたセリフを吐きまくる。
敵に見つかり撃たれている最中に
「連中が本気なら俺たちは今頃グラムいくらのミンチだぜ」
みたいなことをギャグではなく本気で言う。
台詞のあとに思わず頭のなかで「HAHA!」と付けたくなるようなセリフばかりだ。
ストーリー的にも序盤から中盤は少ないキャラクターで
同じようなパターンを繰り返すためややワンパターンぎみだ。
基本的に5人前後のキャラで話を進めている感じが強く、
そのせいでワンパターンさが強調されてしまっている。
終盤にようやく大量のキャラクターが追加されるのだが、
かなりあっさりと物語から退場したり、掘り下げる前に裏切ったりと
名前も覚えていないようなキャラが物語をかき回す。
結局追加されたはずのキャラも大量に死亡してしまい、
もとの5人に2人くらいどうでも良いキャラが追加されるだけに終わり、
何がしたかったんだと感じてしまう。
オブジェクトも世界中に何機も存在し、戦争も続行中であり、
物語の終わりも見えてこない。
2クールでは俺たちの戦いはこれからだという感じで終わっており、
これで物語がもう少し区切り良く終わっていれば、
B級具合をもう少し高く評価ができたかもしれないが残念だ。
全体的に見てこの作品はまさにB級映画だ。
作品の突っ込みどころや緊張感のある中での歯の浮いたセリフの数々、
深夜にやっている吹き替えのついていない字幕のみの
昔のだれも知らないようなアメリカのアクションB級映画、
眠気があるからこそ、そのB級映画を見る時の気持ちに、
この作品の場合は切り替えなければならない。
決して重厚な練られたSF設定を期待してはいけない、
決して思わず心を踊るようなアクションシーンを期待してはいけない、
決してかっこいい主人公のかっこいい姿を見れると思ってはいけない、
決して作品に対して面白そうという期待感を寄せてはいけない。
決してまじめに見ようと思ってはいけない。
B級だからこそのガバガバな部分を「ギャグ」と受け止めて、
無名のかっこいいともかっこ悪いとも言えない俳優を
見るように好感の持てない主人公を見つつ、
頻繁に挟まれる無意味なセクシーシーンを眠気覚ましに、
いろいろな部分をB級、ギャグアニメと割り切ることで
なんとか楽しむことも出来る。
割り切れない方は決して引っかかった部分を気にしてはいけない、
引っかかった部分を笑うことでこの作品は成り立つ。
気にしてはいけない、決して詳しい説明を求めてネットで検索してもいけない、
素直に笑う、素直に受け止めることで初めてこの作品を楽しめる。
しかし、1クールだったならば勢いとノリで楽しみきれたかもしれないが、
流石に2クール構成だと厳しい部分はある。
8話くらいでこの作品のノリや世界観になれることができ、
楽しみ方も前述したとおりにわかってくるのだが、
2クールだとその割りきった気持ちが途切れてしまう感じは否めない。
1クールならば勢いに任せてB級映画ノリで楽しみきれたかもしれないが、
流石に2クールは厳しかった。
もう少し割りきったB級さや割りきった馬鹿っぽさと
ストーリー全体にに勢いがあれば面白いと感じるところもあったかもしれないが、
割り切れていない気取ったB級さと、テンポの悪さが
作品全体の足を引っ張ってしまっていた。
売り上げ的には1000枚前後といわゆる爆死、
2クールやっていてこの売り上げは流石に厳しく、
減作の売り上げが凄い伸びた!というような情報もない。
2期はかなり厳しいだろう。
終わった後に知ったのだが減作ストックの3巻までしか
アニメ化していないようだ。ちなみに現在11巻まで出ている。
それならばもう少しストーリーのテンポを上げて、
詰め込んだストーリー構成にしたほうが良かったのでは・・(苦笑)
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