最終学年の沙英とヒロは進路について悩み始める。そして、たくさんの思い出を胸にそれぞれの旅立ちを迎える。
泣ける準備はできていた、だけどそれ以上に二人の卒業は・・・
OVA発売後にテレビ放映もされた
「ひだまりスケッチ」という作品が放映されたのは今から6年も前のことだ。
この作品、最初はシャフト特有の演出のせいで非常に癖のある作品だった
実写による演出、時系列シャッフルに因る演出など好みが分かれる演出だ
だが、そんな癖のある演出は2期、3期と話を進めるごとに減っていき
4期では癖は一切なくなった。
だが、そのくせがなくなると「時系列シャッフル」から「作品の時間が進む」内容に変化した。
徐々に、徐々に訪れる3年生である「ヒロ」と「沙英」の卒業。
彼女たちは4期ではそれぞれの進路に迷い、自分の進路を決める。
それは「ヒロ」と「沙英」の別れを匂わせる描写だった。
そして時間は確実に流れた。
この作品は「卒業編」と題打たれたOVA作品だ
「ヒロ」と「沙英」、二人の素敵な、本当に素敵なキャラクターの
受験模様と、やまぶき高校から、ひだまり荘からいなくなってしまう卒業の日。
その2つを描いている。
この話をTVアニメの中の12話の中の2話ではなく、
OVAの2話としてピックアップされて、ひだまりスケッチ4期や5期ではなく
「卒業編」という1つの作品にしたことはスタッフのこの作品への愛情を感じた。
前半の「受験スケッチ」は二人の試験日から始まる。
いつものように「ゆの」の起床シーンから始まり、二人を送り出すひだまり荘の4人。
この瞬間から私は寂しさでいっぱいだった。
しかし、そんな寂しさを吹き飛ばしてくれる。
本来なら卒業編というだけで寂しさを感じるはずなのだが、
二人の受験日ならではの「日常描写」や「受験模様」が
いつもの楽しい「ひだまりスケッチ」を感じさせてくれる
ふわふわして、ほわほわして、可愛くて、笑ってしまう。
終わってしまう寂しさを抱えたまま見だしたのに、
そんな寂しさを、いつものひだまりスケッチの面白さが吹き飛ばしてくれる。
私は泣く準備もしていたのに思わず爆笑してしまったくらいだ(笑)
前半の受験編で見事二人は合格し、そして別れが訪れる
後半の「卒業スケッチ」は卒業式の前日から始まる。
後半も同じようにゆのの起床シーンから始まり、
制服を着ていない「沙英」に見送られて学校へ行く。
ゆのの表情は寂しさを浮かべており、その寂しさは見ているこちら側の寂しさも大きくしていく
そんな中で「ヒロ」と「沙英」の出会いが描かれる。
二人が出会った初めての日、まだ初対面で初々しい二人の反応は
今では考えられないほどよそよそしく、ぎこちない。
卒業式前日という状況に振り返るという状況が暖かく、
二人のまるで「恋人同士」のような描写は思わずニヤニヤっとしてしまう
非常に愛らしい、ひだまりスケッチらしいストーリー構成だ。
そして訪れる卒業式当日。
卒業式の模様が描かれる中、曲が流れる、流れる曲はmarbleの「さくらさくら咲く」だ。
校長のスピーチ、涙を浮かべるヒロと沙英、手をつなぐ「宮子」と「ゆの」、
「さくらさくら咲く」の曲が自然と涙を誘った
曲の後ろで聞こえる校長のスピーチも若干聞こえづらいのが残念だが、いい内容だ
そして夏目。
彼女は「沙英」の小説を読み、仲良くなりたいと思っていた同級生だ。
だが不器用な彼女はなかなか彼女と仲良くなりきれなかった
そんな彼女が泣きながら彼女に抱きつく様子は強く、強く涙をさそうシーンだ
彼女の不器用な「沙英」への接し方を見てきたからこそ、思わず涙が浮かんでくる。
福圓美里さんの「泣き」の演技もほんとうに素晴らしかった・・・
その後の展開は実にひだまりスケッチらしい展開だ。
いつもの吉野屋先生、下級生たちの3分間のわがまま、
悲しいはずの卒業式の日なのに笑わせてくれる、和ませてくれる、
泣かせに来るんじゃない、あくまでもひだまりスケッチらしい雰囲気の中で「卒業式」を描く。
見ている私は涙を浮かべながら笑っている、そんな不思議な見方をしてしまった。
だが、それはひだまりスケッチだからこそ出来る見方だ。
全体的に見て素晴らしい出来栄えだった。
私はもっと号泣すると思ってたのだが、それは、いい意味で裏切られてしまった。
ひだまりスケッチらしい日常描写を前編でワンクッションはさみ、
温かい雰囲気のいつもの「ひだまり荘」から後半で別れの卒業式を描く
決して泣かせるような狙ったシーンは少ない。
あくまでもいつものひだまりスケッチの中で自然に登場人物たちの涙が流れ、
寂しい表情を浮かべ、自然に見ている側の涙もこぼれる。
だけど、そんな涙を流してしまうようなシーンなのにひだまりスケッチらしい笑える描写もはさみ、
寂しいのに暖かい、泣いているのに笑ってしまう。
ひだまりスケッチという作品の優しい空気、作画、雰囲気、音、テンポ、
そういった「ひだまりスケッチ」の作品としての魅力がぎゅっと詰まった作品だったといえるだろう
見終わった後の虚脱感や喪失感は半端ない。
ああ、終わってしまった、ああ、卒業してしまった。
だけど、「ゆの」の明日はまた訪れる。
心地よい疲労感と後味を1時間という尺でしっかりと味わせてくれた。
見終わった後に作品を思い返す事の出来る作品を久しぶりに味わうことが出来た
1期~4期まで見てきてよかった、6年前から見てきてよかった
そんな実感を噛み締めつつ余韻に浸ることが出来る。
コレを見た後にもう1度1期から見直したくなる、そんな気さえ起こさせる内容だ
5期はあるのだろうか。
原作はこの卒業編の後の少しまでしか進んでいないようで明らかに原作ストックが無いため
早くても来年以降、大体2年に1回のペースでアニメ化されてることを考えると再来年になりそうだ。
この作品の主人公は「ゆの」であるため、彼女の卒業までこの作品は続くと思うが、
私はこの作品を最後まで、アニメ化されてもされなくても見守りたいと強く感じた。
最初は見た後の勢いで100点をつけていたのだが(笑)
やはり1期~4期を見ないと、このOVAの面白さは伝わらない
積み重ねがあるからこそ、この作品のおもろさが120%出ている。
だからこそ4期までの50話近い話を見なければ、その面白さが伝わらないという欠点がある。
はっきりいってしまえば、これほどファン向けのOVAに仕上がっている作品は珍しい
この作品を好きだからこそ、この作品を見てきたからこそ「面白かった」としみじみと言える作品だ。
ひだまりスケッチを見たことがない、1期で切った。
そういう人もいるだろうが、このOVAのために50話見てほしい(笑)
人におすすめしにくい話数だが、それほどの魅力のある作品だ
本当に個人的にこの作品は感慨深い作品だった。
見る前の緊張感、見た後の虚脱感、そしてしばらくしてからのこの作品への愛情、
たった「1時間」の作品で色々なことを感じた作品だった。
いつになるかわかりませんが、5期待ってます。
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