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「王立宇宙軍 オネアミスの翼」レビュー

3.5
映画
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評価 ★★★☆☆(58点) 全119分

あらすじ 「失敗ばかり」「なにもしない軍隊」と揶揄され、世間にオネアミス王国の落第軍隊として見下されている王立宇宙軍。引用- Wikipedia

これぞGAINAXの原点

本作品は1987年に作られた劇場アニメ作品。
本作品は「ガイナックス」が初めて手がけた作品であり、
エヴァで有名な貞本義行や庵野秀明も参加しており
スタッフの平均年齢も24歳という若々しさ溢れる作品だ。

森本レオ


画像引用元:王立宇宙軍 オネアミスの翼 予告より
(C)BANDAI VISUAL/GAINAX

物語は「森本レオ」によるナレーションから始まる。
彼は本作において主人公を演じており、彼の独白から始まる物語は
独特な味わい深い雰囲気が生まれている。

世間からは落ちこぼれと言われる「オネアミス王立宇宙軍」。
人類が宇宙に行くことは現実的ではない時代に宇宙軍が
存在すること自体がおかしく、そんな時代の、そんな宇宙軍に
落ちこぼれである主人公は所属し、
稼いだ金を歓楽街で使い、自堕落な生活を送っている。

日本とも海外とも違う、私達の世界とはどこか違うが似ている。
そんなファンタジックでありながら現実的な世界観、
その世界観を見せるための独特な衣装や小物や機械の数々が
牧歌的な雰囲気も漂わせている。

まだ庵野秀明さんがジブリでアニメーターをしていたことを
どこか感じさせる部分もあり、GAINAXの作品でありながら
ジブリの雰囲気をどこかに残している。

男って単純


画像引用元:王立宇宙軍 オネアミスの翼 予告より
(C)BANDAI VISUAL/GAINAX

主人公であるシロツグ・ラーダットは単純な人間だ。
歓楽街で宗教の教えを説く少女の家に「下心」を持って訪れ、
少女に自分の仕事を褒められる。

たったそれだけで自分の仕事にやる気を持ち、ノリノリになってしまう。
この作品は「男の単純さ」と「男のロマン」と「男の弱さ」を
描いてるといっても良い。
単純な主人公は女性に褒められることで仕事にやる気を出し、
あっさりと人類初の「宇宙飛行士」に志願する。

なんとも単純だ。何かもっと明確な理由があるわけでもない。
女に褒められてやる気を出しただけだ。男とはなんと単純なのだろうと
言いたくなるような単純さではあるものの、
主人公が本気になることで彼の周囲の宇宙軍も本気になっていく。

ロマン


画像引用元:王立宇宙軍 オネアミスの翼 予告より
(C)BANDAI VISUAL/GAINAX

宇宙軍に所属する博士たちは「ロマン」を追い求めている。
ロケットを作り続け、宇宙に行くというロマンを追い求め続けている。

「上げるんじゃない、地球の丸みにあわせて落っことすんだ」

彼ら以外誰も「宇宙軍」の存在自体を馬鹿にしている。
馬鹿にされていたはずの彼らが本当に些細なキッカケで本気になり、
夢の実現のために本気になっていく。
やや展開としては唐突ではあるものの、
その単純さ故に話の展開はわかりやすい。

起伏


画像引用元:王立宇宙軍 オネアミスの翼 予告より
(C)BANDAI VISUAL/GAINAX

ただ、2時間の間に大きな盛り上がりが少なく
ストーリーとしては淡々と描かれてしまっている感じは否めない。
主人公がやる気を出し、訓練をし、
彼のやる気のほだされて周りも本気になり宇宙への道が見えてくる。

途中で事故などが起こり重要そうなキャラクターの博士が死んだり、
主人公がヒロインにとんでもないことをしたりと、
淡々とした展開の中でいきなりとんでもないことが起ることがある。
ただ、とんでもない展開の割にはその盛り上がりも持続しない。

ロケットという「予算」のかかるものだからこそ、
お金の問題や国の事情、戦争の問題などいろいろな事情も描かれるが、
そういった事情も地味に見せてしまっている。
博士の死、予算や軍のいざこざに主人公はやる気をそがれていく。

なぜ彼は宇宙に行きたいのか。
そう問われても彼は素直に答えることが出来ず、悩んでしまう。
そんな中で間違いを起こしても彼が好きになった女は許してくれる。
それどころか自分から謝る始末だ。

男にとって都合の良すぎる展開だ(笑)
やや主人公の変化についていけない部分はあるものの、
終盤の展開は熱く、盛り上がる。

作画


画像引用元:王立宇宙軍 オネアミスの翼 予告より
(C)BANDAI VISUAL/GAINAX

この作品の作画は恐ろしいほどまでに描き込まれている。
特に背景と機械の描写は強いこだわりを感じさせるほどの描き込まれ、
手描きのセルアニメ時代にここまで書き込まれた背景、
機械、服、キャラクターの表情に素直に驚いてしまう。

流石に30年以上前の作品であるがゆえに古さは感じるものの、
それでも、その古さ以上に手書きで描きこまれた作画の圧を
1シーン1シーンからしっかりと感じることができる。
更には音楽は坂本龍一さんだ。

特にこの作品の作画の良さを感じるのは終盤だ。
戦争が始まり、戦争の真っ只中で彼らはロケットを上げる。
主人公以外が諦めようとする中で、主人公が彼らを発起させる。
ここまで作ったものを捨てたくない、みんなは立派だ、
たとえ死んでも俺は上がってみせる。俺はまだやるんだ。

主人公のそんな一言に彼らも立ち上がる。
戦闘機が飛び交い、銃弾が飛び交う中で、宇宙軍である彼らは
「ロケット」を上げる。戦争なんて彼らには関係ない。
ただただ男のロマンを貫き通す。

森本レオ演ずる主人公の語りから始まり、
森本レオ演ずる主人公の語りで終わる。
地上での語りから、宇宙からの語り。
どこか厳かに終わるラストはなんとも言えない後味を残してくれる。

総評:飛ばすんじゃない、地球の丸みに合わせて落っことすんだ


画像引用元:王立宇宙軍 オネアミスの翼 予告より
(C)BANDAI VISUAL/GAINAX

全体的に見て人を選ぶ作品であることは否めない。
淡々としたストーリー展開の中でストーリーの意味を見ている側が考え、
そのストーリーの中でも細かく描写される作画のレベルに酔い、
ストーリーと作画、そして音が織りなす「世界観」と「ロマン」に
浸るような作品だ。

アニメその物が好きな人ほど、この作品はすごく面白くわけでも無いのに
なぜか画面から目が離せず思わず魅入ってしまう。
ただ、作品としての魅力がある一方で起伏のないストーリーや
終盤以外の盛り上がりどころの薄さは否めない。

ストーリーも結局どうなったんだ?と悪い意味で
GAINAXらしさも出てしまっており、
良い意味でも悪い意味でもGAINAXらしい作品と言えるかもしれない。

個人的な感想:赤字


画像引用元:王立宇宙軍 オネアミスの翼 予告より
(C)BANDAI VISUAL/GAINAX

この作品は相当、お金がかかった作品らしく、
赤字を補うために「トップをねらえ!」が作られ、
「ナディア」が作られ「エヴァ」が作られる。
そういった意味でもGAINAXの原点と言える作品かもしれない。

劇場版エヴァンゲリオンが流行っている今だからこそ、
原点回帰にこの作品を見てみるのも面白いかもしれない。
素直に面白いと人に勧めにくい作品ではあるものの、
アニメーションにおける「味」を感じることの出来る作品だ。

「」は面白い?つまらない?

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