加納慎一は自宅警備員として生活していたが、およそ1年間に及ぶその生活は親によって強制的に終了させられた。そんな慎一が切羽詰まった挙句、就活で手にしたのはドラゴンが普通に空を飛ぶ異世界でオタク文化を紹介し、広める仕事だった。
オタク戦略、しましょうか!
基本的なストーリーはファンタジー。
幼なじみに「オタク」であることが原因で振られてしまった主人公、
ショックで1年間引き困ったあと就職することを決めた主人公は
200問のオタクテストが就職試験担っている会社に見事受かった。
しかし、その会社の仕事は異世界での仕事だった・・・
というところからストーリーが始まる。
見だして感じるのは主人公のテンションの高さだろう(笑)
異世界にいきなり連れて来られたという状況の中で驚きまくり、
2次元脳全開の考えで女性キャラクターに対し、ストレートに容姿の感想を述べる。
自分についたメイドが「エルフ」であることがわかると、「その耳でご飯三杯はイケる」とまで言い放つ始末。
どちらかというと目の前の女の子を「2次元キャラ」としてみているような感覚を持っている主人公だ
そんなオタク全開の主人公が「異世界」に「オタク文化」を輸出する仕事につく
この設定自体は非常に面白い。
いわゆる日本が現在やっている「クールジャパン」による海外への日本のアニメや漫画などの文化の輸出を
海外ではなくファンタジーの異世界に置き換えている。
ただ序盤から主人公にあまり共感しにくい、というよりも違和感がある。
彼は引きこもりのオタクだったはずで就職の面接の時まではその雰囲気や空気感を醸し出していたのだが
ファンタジー世界に来た途端にやたらテンションが高くなり、
見境なく女性キャラにセクハラ的発言をしまくる。
異世界の住人だから2次元的にしか見れていないような、
主人公の目から女性キャラはテレビの中の2次元キャラを見ているよう対応をいちいちするため、
普通なら「画面」というフィルターをみて女性キャラクターを見るが、
このアニメの場合更に主人公の画面という2枚越しのフィルターがあるような感覚だ。
更に、異世界の皇帝と会う状況で失礼のないようにと散々言われているのに
皇帝が幼い少女であることがわかると「幼女キター!」とまで叫び、
殴られる寸前に「全く幼女は最高だぜ!」とパロディのおまけ付き。
「オタク」で「引きこもり」という設定や、異世界にいきなり連れて来られた主人公という状況に対して
主人公の行動や言動があまりにも短絡的だ。
唐突にテンションが上ったり下がったりついていきづらい。
態度や行動がいちいち別キャラクターのような描写なのだ。
テロリストが主人公たちを監禁し殺そうとするようなシーンも有るのだが、
テロリストたちが自分たちの文化や行動理由を主人公に言い聞かせ、
主人公がそれを堂々と反論する。ここまではいい。
だが、そんな堂々と反論した直後に怯えるような描写が入る。行動理由や言動に一貫性がない。
ただ序盤のストーリー自体は悪くない。
異世界は基本的に「言葉」が通じない、特殊な指輪をつけることでテレパシー的に会話はできるが、
DVDの音声や漫画の文字などは異世界の住人に通じない。
だからこそ、主人公は「読み聞かせ」したりしながら徐々に徐々にオタク文化を伝えていく。
しかしファンタジーの世界における「種族」の差別や「身分」の差別が大きい。
学者や王族でなければ文字の読み書きはできず、種族によっては兵士くらいしか職業がない。
更に異文化を持ち込もうとする主人公たちに反乱するものも現れる。
すでに1つの「世界」としての「文化」や「常識」が出来た異世界で
オタクという異文化を持ち込もうとする主人公は「侵略者」だ。
1話の段階から中盤のシリアスなストーリー展開になることは想像しがたく、
明るい描写が多かったからこそ以外にもシリアスに「文化」というものによる
異世界との交流が面白いと感じられる。
そして「オタク文化」は確実に異世界を侵略する。
最初は否定的だった騎士はりっぱな同性愛者に、皇帝はツンデレを模倣し、
主人公の生徒たちはありとあらゆるオタク文化対立が起こるようになる(笑)
ただ生徒たちに急激にオタク文化が浸透した感じはあり、
主人公の授業でどうやってオタク文化がここまで浸透できたのかがいまいち分かりづらい。
本来ならそこが見たいのだ。
異世界の住人たちがどんなきっかけで、主人公のどのような授業やセリフで
アニメやゲームに興味を持ち、それを面白いと感じるまでに至ったか。
そういった描写がなく、主人公が「ギャルゲー」の歴史を軽く紹介したり
パロディでギャルゲーのヒロインやゲームを紹介したりしてるだけで
そこにオタク文化にハマるキッカケが描写されておらず、
オタクがオタクの知識を一般人にしゃべるような授業しかしていない
時間経過やあっさりとした描写で解決されてしまう点はしっくりこない。
ただオタク文化を理解しだしたからこそパロディネタにも磨きがかかってくる。
分かりやすいパロディで上手いことギャグになっているものや、
アニメやゲームのパロディネタは面白いのだが
その反面で内容がマニアックだったり、わかりづらかったり、ネタがそのまますぎたりして
ネタの当たり外れが大きい。
ゲームからアニメまで色々なネタを知らないと分かりづらいものもあり、
笑える人は笑える、笑えない人は笑えないネタになってしまってるのは残念だ。
特にCM前と後のいわゆる「アイキャッチ」でキャラクターの紹介がてらに
そのキャラが好きなアニメと好きなキャラが一緒に描かれているのだが、
非常に細かいタイトルから大きいタイトルまで扱っており
それがパロディネタになっているため分かる人だと面白いが、分かりにくいものも結構ある。
ネタ元の「ギャグ」や「ネタ」をそのまま使っている場合もあり、笑いにくいネタも多い
簡単にいえばパロディネタに「捻り」がなく、堂々と使ってしまっている感じだ
ストーリー的にも引っかかる部分がある。
例えば皇帝は物語前半では主人公の家に頻繁に行き、漫画を読み聞かせしてもらっていたのだが
中盤の話で「休暇も取れないほど忙しい」という話になる。
それほど忙しいなら日が暮れるまで漫画を読み聞かせしていた時は暇じゃなかったのだろうか?
「ガリウス」という皇帝の騎士が皇帝の従兄弟という設定も物語序盤に主人公の耳には入っていたはずなのに、
8話で主人公が初めて聞いたような反応をする。
物語の中でちょこちょこと「矛盾」を感じるポイントが有るのは残念だ
全体的に見て根本の設定や主人公以外のキャラクターはいい。
だが、物語序盤の主人公の破天荒な行動や言動の数々は嫌悪感を抱きやすく、
ストーリー的にも最初に感じた設定の面白さを維持できていなく、
設定の面白さを味わえるようなストーリーでもない。
簡単に言ってしまえば設定は面白そうなのにストーリーが期待はずれなのだ
キャラクターが可愛いからこそ見ていられるが、期待はずれで肩透かしを食らってしまったストーリーは
見れば見るほど微妙な印象が強くなっていき、物語の矛盾も見られる
ファンタジー世界の住人が「オタクになる切っ掛け」や「オタク文化を受け入れる」シーンが見たいのに
そんなシーンがないのは残念でならない。
この設定ならば描かなければなない、必須のシーンのはずなのだが・・・
例えるなら変身ヒーローものなのに変身シーンがないような印象だ。
特に終盤のシリアス展開は異世界の住人たちに急にオタク文化が浸透している感じが強く、
それまで主人公の周辺と主人公が作った学校の生徒達くらいのようにしか感じない描写しかなかっただけに
「日本の萌え文化を浸透させて、異世界の住人たちにもっとオタク文化を求めるようにする文化侵略」
という日本政府の本来の目的が陳腐に見えてしまう。
どれほどオタク文化が広まっているのかがいまいち掴みづらい
そんなシリアスな展開ではなく普通に異世界にオタク文化を持ち込んだらどうなるか?
というだけで十分に話が作れそうなのに、そこに日本政府の陰謀が入って面白みにかけてしまう
異世界の資源や技術がほしいというなら普通にオタク文化の輸出に対する対価としての
資材や技術の輸入でいいはずだ。
物語終盤ではオタク文化も浸透しているだけに十分にその取引はできるはず。
日本政府があまりにもレベルの低い戦略や作戦を進行をしている点は残念でもあるが
ある意味で主人公のレベルに合わせているとも言える・・・(苦笑)
ストーリーの中のギャグも当たり外れが大きい上に好みを選ぶものになっており、
見所としては「キャラクターが可愛い」という点だろう。
特に主人公のメイドである「ミュセル」の献身的な可愛さはかなりの破壊力があり、
主人公のために日本語を学び、主人公とともにありたいという純粋な可愛さは、
むしろこんな魅力的なヒロインに対して主人公がふさわしくないほど、
微妙なストーリーを「ミュセル」がいるからこそ見れるものに仕上がっている。
ストーリー展開など監督や制作会社が違えばもっと良い作品になりそうなだけに感じはある。
Wikipediaの情報でしか無いが、原作のストーリーの時系列や展開を色々いじっているようだ。
だからこそ物語の違和感やもどかしさが強く残ってしまったのかもしれない。
売り上げ的に1500枚前後と厳しいだけに2期はなさそうだ。
キャラクターの魅力があるだけに続きが見たいと感じる部分はあるのだが・・・
この「ストーリー」の続きを見たいかと言われると厳しい物がある(苦笑)
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