ロボット

熱風海陸ブシロード

ロボット
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☆☆☆☆☆(9点)

熱風海陸ブシロード 評価

90分
監督/迫井政行
声優/潘めぐみ,KENN,石塚運昇,森嶋秀太,鳥海浩輔ほか

あらすじ
小惑星の衝突により、地球の主要な大地は全て「シノビ」という名の猛毒に侵されていた。人々は唯一汚染を免れた「海陸」に逃れるが、シノビの生み出した異形のクリーチャーに怯え、世界は絶望の淵に立たされていた。 この危機を救える唯一の存在である「機神将(ギガロード)」を復活させるため、亡国イセの姫巫女・アメと、シノビと戦う力を持つ人間兵器「ヤギュウ」の血を引く少年スオウの二人が立ち上がる。

10年越しのアニメ化、しかし10年越しの魅力は感じない。

本作品は2013年の大晦日に放映されたオリジナルアニメ作品。
制作まで色々あり、本来は2003年に短いPVが公開され2005年には映画化が予定されていたが、
メインの作家の急逝、予定していたメインの声優の1人が活動停止という状況で
2007年には先行して連載していたコミックでの連載も中止になるなど
もはや製作中止になっていた作品だ。
その作品を「ブシロード」が再始動させ、90分アニメとして放映された

基本的なストーリーは、ジャンルとしてはロボットアニメだろうか
小惑星の衝突により「シノビ」という謎の毒が生む生物が現れていた
無作為に人を襲う「シノビ」によって国を滅ぼされた「アメ」は
シノビを滅ぶすため「機神将ギガロード」を目覚めさせようとしていた
というところからストーリーが始まる

序盤の戦闘シーンは微妙だ。
確かにロボットデザインは無骨な感じで最近の「流線型」な細いロボットと近い
太く重そうなデザインはロボットアニメ好きの心を鷲掴みにされるデザインなのだが、
そのロボットの肝心な動きが甘い。

演出が甘いせいもあるのだろうが、太く重そうなロボットが重そうに動き
敵を普通にただ撃ったり、ただ斬ったりとロボットの戦闘シーンの見せ方が甘く
せっかくのロボットデザインを生かしきれていない。
3DCGで描かれていることによる「重さ」の演出のカバーがなされておらず
ロボットよりも操縦者の「キャラの顔のアップ」でごまかしているシーンも多い

更にもう一人の主人公である「スオウ」、彼は人間の姿でありながらシノビと戦える。
巨大な生物に人間の姿で挑むというシーンとしては面白いシーンのはずなのに、
ロボットに因る戦闘シーンと同等に動きのおもしろみがない
動いている感じはある、決めのシーンも有る。
だが、簡単に言ってしまえば「圧」を感じない作画ばかりだ

ストーリー的にも90分という尺は厳しかった。
本来なら1クール、もしくは前後編の映画や2時間半でやるような話だ
それを「90分」という尺に入れ込んでしまったせいで明らかにつめ込まれた感じが強い。

前半はアメとスオウの出会いと戦闘シーン、簡単な設定の説明で構成されているが
設定の説明は明らかに説明口調で簡単な説明のみで「ふわっ」っとした世界観しかわからず、
アメとスオウの出会いやキャラクターの魅力などは「王道」かつ「無難」で新鮮さはない
90分という尺のせいで「キャラクター描写」にかける時間もほとんどなく、
ストーリーもどんどん進んでいくため置いてけぼり感が強い。

中盤からは詰め込みすぎてよくわからなくなる。
特に中盤から出る「カズサ=シン」、このキャラクターは国の王子で
主人公たちが復活させようとしている「ギガロード」の復活に否定する。
シノビという未知の脅威に対向するために必要なロボットをなぜ否定するのか、
それによってキャラクターの魅力やストーリーの深みなどが出てくるのだが・・・

「ギガロードってシノビ滅ぼせるほど強力なんでしょ?そんなんだったら人間も滅ぼせるし
 人間同士の戦いの新しい火種になるじゃん」

という国を簡単に滅ぼすようなシノビの脅威よりも、人間同士の戦いの新たな火種になることが嫌らしい。
ちなみにこの王子様は普通に天下統一のため人間同士で戦っている。
これがもっと長い尺の中で「ギガロード」に否定的な立場がしっかりと描かれたり、
人間同士の戦いの酷さがきちんと描かれるなら納得できるのかもしれないが、
尺の短い中での世界観の描写の甘さのせいでこのキャラの主張が伝わらない

人間同士の戦い、設定的には「戦国時代」的な天下統一のストーリーと
未知のシノビの恐怖から世界を救うというストーリーが見事に絡み合っていない(苦笑)
これが1クールや2クールで描かれるなら2つのストーリーをきちんと描けるのかもしれないが
90分という尺では戦国時代的なストーリーが邪魔でしか無く、
メインのアメとスオウが「天下統一」とは関係無いため、中盤から余計な要素が増えた印象だ

そんな余計な要素のお陰で終盤が詰め込みまくりで勢い任せだ。
いきなり現れて「黒幕」になった敵キャラは小物感満載で意外性の欠片もない(苦笑)
ピンチになって主人公が真の力に目覚めたりするのだが、戦闘シーンの尺は恐ろしく短い
真の力に目覚めた姿がかっこよかったのに見せ場がほぼ無いのは残念だ。

シノビの肝心の設定も「黒幕」がべらべらべらべらベラしゃべる、
物語の中で解き明かされる謎ならば面白かったのかもしれないが、
B級感の満載の詰め込みすぎな説明ばかりのストーリー展開は面白いとはいえない。
小物な的敵ふさわしく、あっさりと倒されてしまうのもなんだかんと思ってしまう点だ

最後に「ギガロード」が復活し、ギガロードの戦闘シーンもあるのだが
このシーンもごまかすような演出が非常に多く「ロボットアニメ」としての
戦闘シーンの見せ方が出来ておらず、アップの作画と派手な演出でごまかし
戦闘シーンの魅力を全然感じられない。
ロボットアニメとして最終決戦が面白く無いというのは残念だ

全体的に見て10年ごしの待望のアニメ化だったのかもしれないが、
期待はずれだったとしか言いようがない。
見せ方が悪い戦闘シーン、余計な要素のせいで詰め込みまくりな終盤のストーリー展開と
90分という尺の中で描くべき部分と描かないでいい部分をきちんとしていないため
どの要素も微妙な印象しか残らない。

根本のストーリーは王道でわかりやすくはあるのだが、王道でありきたりな展開は意外性や新鮮味を感じず
そんな王道のストーリーも「天下統一」という別にいらないストーリーのせいで素直に楽しみづらくしており、
余計な要素を入れたせいで尺が足りなくなってしまい、黒幕に因る説明でなんとか物語を締めている
見所であるはずの主人公の覚醒シーンはほぼカット、
終盤のギガロードの戦闘シーンもごまかしてばかりで魅力がない。

結局、何がやりたかったんだという感じが強い。
ロボットアニメとしても中途半端、ファンタジー戦国モノとしても中途半端、
キャラの魅力は特に無し、王道ロボットストーリーとしても中途半端、敵も中途半端と
どれもこれも中途半端だ。

前半の20分くらいは王道でそこそこな作品だったのだが、話が進めば進むほど散らかってしまい
最終的に強引に片付けてしまった感じだ。
一応、今度発売されるDVDには「エピローグ」が追加されるのだが
今更この中途半端な作品にエピローグを追加されても評価が変わるとは思えない

株式会社ブシロードがいつか必ず再開しアニメ化にこぎつけるというという思いで
この作品の名前である「ブシロード」と会社名に使った心意気は買いたい、
そしてちゃんとアニメ化にこぎつけた意気込みは評価したいが、
「アニメ化させる」という目標と気持ちだけが先行してしまい、
肝心のアニメの出来栄えがいまいちになってしまったのは残念な所だ。

個人的にはロボットデザインや一瞬の主人公の真の力の姿など
デザイン面でのかっこよさはところどころ感じられたのだが、
そのデザインが生かされなかったのが残念だ。
あえて例えるなら「パッケージ」だけは凄く面白そうなPS2のゲームをやった後の用な感覚だったw

「」は面白い?つまらない?

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