無表情で長身な魔女っ娘はいかがですか?
監督はガールズ&パンツァーなどで有名な水島努氏。
見だして感じるのは「あ、また量産型ラノベ系っぽいアニメか」ということだろう。
主人公は自分を紹介する際にはもちろん「どこにでもいる普通の高校生」と言い放ち
学園に人気の美少女が居て・・・と最初の5分ほどの世界観やキャラクターの説明には
一瞬うんざりしたものを感じる。
しかしながら、その5分を過ぎるとこの作品から独特な「雰囲気」を感じる
それはどこか「西洋的」なBGMが日常描写の中で流れているシーンだったり、
姿の表さないキャラクターのシルエットに「耳」があったり、
じわりじわりと普通の高校生の主人公の周りを「不思議」な世界観で埋め尽くしていく。
そして主人公はうさぎのぬいぐるみをゴミ箱から拾う
そのうさぎのぬいぐるみにはメッセージが貼り付けてある
「晴れ、時々校舎が降るでしょう」
この1文の後に「量産型ラノベアニメ」の雰囲気を一気に打ち壊し、
一気に「魔女」で「ファンタジー」な世界観を見ている側も主人公も包み込む。
1話の物語の導入が素晴らしく、1話から一気にこの作品の世界観に入り込む。
日常描写から一気に人気な美少女は実は「魔女」で火の魔法を使いまくり、
いきなり襲ってきた「うさぎ」に立ち向かう。
この日常描写とファンタジー描写のバランスが素晴らしく、
「平和で普通な日常」から「魔女でファンタジーな日常」への切り替わりや
男女の役割が逆とも言える立場やセリフの数々など非常に面白い。
ストーリーが一気に動いたかと思えば急停止し、急停止したかと思えば一気に動く。
テンポのアクセルとブレーキの掛け方ががまるで「坂道を責める走り屋」のごとくピーキーだ
激しい魔女とうさぎの戦闘を描いたかと思えば、あっさりと日常描写になり、
のほほんと日常描写を描いたかと思ったら、激しい戦闘シーンになる。
1話1話の中でのシーンの「抑揚」の付け方が激しく、激しいからこそ面白い。
本来はシリアスな戦闘シーンのはずなのに敵が「うさぎ」だったり、
本来はグロいシーンのはずなのに危機的状況ではなかったり、
戦闘中なのに主人公はヒロインにお姫様抱っこでネクタイがチョウチョ結びだったりと
シリアスや激しい戦闘シーンの中でもちょこちょこと「ギャグ」を入れてくる。
言葉としては悪いが「振り回される」アニメだ
ここまで「展開」が予想できないアニメも珍しい。
設定やストーリー自体は非常にオーソドックスな作品だ
実は「ある力」を持っていた主人公と主人公を守る魔女が実はクラスメイトで、
魔女に襲われながらストーリー進めていく。
90年代や2000年代のアニメやラノベで見かけたような設定だ。
しかし展開が全然予想できない。
普通に主人公が登校したと思えばヒロインが魔女を拷問してたり、
いきなり現れたキャラクターに襲われたかと思えばあっさりと勝ってしまったり、
強敵が現れ倒したかと思ったら普通に学校の保健室に居たりと
ヒロインが唐突に「姉」になったりと予想するほうが難しい展開をギャグとして盛り込んでいる。
展開自体も早いが、こちらがその先の展開をある程度予想する前に展開が変わり
その展開の数々がどれも予想外だ。
テンポの早さと展開の切り替わりの早さが「予想外」のストーリーを産んでおり、
その予想外の中にギャグをどんどん入れてくるため、
ファンタジーアニメなのに、ギャグアニメを見ているような感覚にもなる。
ギャグアニメを見ている感覚になるのは原因がある。
1つはヒロインが最強すぎることだ(苦笑)
3人相手だろうが4人相手だろうが基本的に「圧勝」してしまい、
ピンチになっている主人公は、お約束のごとく「お姫様抱っこ」されて気絶して終わる(笑)
お馴染みの敵が毎話のように襲ってきて、毎話のようにヒロインにけちょんけちょんにされる。
アンパンマンとバイキンマンの関係よりもシンプルな展開だ(笑)
激しい戦闘シーンなのにあっさりとヒロインが勝ってしまうため、
もはやギャグにしかなっていない。
更にキャラクター設定。
もっとも分かりやすいのは「ヒロイン」と「主人公」が並んだ時だろう。
実際に見てもらえば分かるが、ヒロインよりも主人公の身長が低い。
長身なヒロインと普通の身長の主人公という設定だけで「目線」が普通のアニメと違う。
二人で並んで歩いて話しているだけなのに、主人公はヒロインを見上げながら話すというのは
非常に珍しい設定でシーンといえるだろう。
この身長差で本来は「ラブコメアニメ」が1本作られたりするくらいだが、
身長差に関する説明やセリフはない。
身長に関しては作品の中で一切触れないのにきちんと設定を活かしたシーン作りになっており、
「目線」をきっちりといかした描写になっている。
だからこそ自然に二人の「身長差」を味わうことが出来る
ある意味で狙っているのだろう
本来の作品とは「男女逆転」の要素がこの作品の特徴でもあり、面白さでもある。
顔を近づけられて顔を赤らめるのは「ヒロイン」ではなく「主人公」、
少女漫画でヒロインがやられるようなシーンをこの作品では主人公が味わっている(笑)
その他にも「ヤンデレな妹」や「BL?な教師」、「腹話術で喋るキャラ」など
ちょっと詰め込みすぎだろ!と感じてしまうと多様性のあるキャラクターが
話が進めば進むほど出てくる、もはやネタを作るために新キャラを出すギャグアニメのようだ
このギャグアニメのような展開の切り替わりの早さやキャラクターの多さ、
「男女逆転」な日常描写が根幹にあるからこそ、
王道でオーソドックスな「ファンタジーストーリー」が際立つ。
ギャグをやりつつも、男女逆転をやりつつも魅せるところではしっかり魅せてくれるストーリーは
要所要所でしっかりとした「盛り上がり所」を作り、
徐々に主人公とヒロインの秘密を明かしながら登場人物を増やすことでストーリーを盛り上げていく
そして作画の良さ。
魔法を使うシーンでは「3DCG」が用いられているが、これがイイ意味で魔法の雰囲気を欲出しており
戦闘シーンでの炎の魔法による戦闘描写や大量のうさぎの召喚魔法など
キャラクターの作画と魔法の作画をきっちりと分けていることで雰囲気が出ており、
激しい戦闘シーンを描写している。
更に戦闘シーン以外でも魔法の描写が面白い。
特に序盤の主人公の「魔法修行」シーンでの箒で飛ぶ疾走感や
初めて主人公が箒で飛ぶ瞬間の描写など、
3DCGの欠点でもある「軽さ」を上手く活かした描写になっており、
しっかりした戦闘シーンとコロコロ切り替わるストーリー展開とテンポの良さが
王道でオーソドックスなファンタジーストーリーを盛り上げる。
そのオーソドックスなファンタジーも面白い。
最初の頃は展開の切り替えの早さとギャグ要素のお陰で本筋のストーリーが見えてこないのだが、
話が進めば進むほど「じわりじわり」と王道ファンタジーの面白さを実感させる
男女逆転なヒロインと主人公、だが決して主人公がナヨナヨしているわけではない
命を顧みず自分を守ってくれるヒロインも主人公は主人公なりに力はなくても
「決意」や「覚悟」で敵に立ち向かう。
男女逆転の要素はあるものの主人公らしく行動する彼は好感の持てる主人公だ
しかしながら終盤のストーリーが、原作がまだ終わっていない作品なだけに未完だ。
物語中に明かされなかった・・・というより明かすのを引き伸ばされた感じになっており、
主人公やヒロインの重大な設定の肝心な部分が全然明かされておらず、
更に「1クールを締める」ためのストーリーを終盤に展開してしまったことで
この作品の「ギャグとシリアスとファンタジー」のバランスが崩れてしまい
少し退屈に感じてしまったのは残念な所だ。
全体的に見てギャグとファンタジーとシリアスのバランスが面白い作品だった。
コロコロと変わる展開と予想外のストーリー展開は本筋のファンタジーストーリーを徐々に盛り上げ、
シリアスな展開なのにギャグ、ギャグをやっているのにファンタジーと
この作品らしい雰囲気と特徴を全話にわたって明るく激しくストーリーを展開していた。
キャラクターもメインヒロインは常に「無表情」で一切表情を崩さないヒロインだが
主人公への強い愛情をところどころ感じる部分は独特な可愛らしさを生んでいた
しかしながら欠点も多い。まずは詰め込みすぎという点だ。
展開やテンポが早い分、キャラクターもどんどん出てきてストーリーもどんどん進むので
1話1話が濃く、濃い中でネタもふんだんに入れてくるため
1話1話が濃い上に「クドい」作品だ。
このクドさはひとによっては「悪ふざけしすぎ」と感じてしまう部分もあれば、
「ついていけない」と感じてしまう要因にもなっており、
クドさが面白くもあるのだが、クドすぎると感じてしまう人もいるだろう。
展開がコロコロ変わり、予想外のストーリー展開になるのは確かに面白い。
だが同時に見れば見るほど「疲労感」が溜まっていく作品でもある。
レビューの前半でも「振り回される」作品だと書いたが、
本当にいい意味でも悪い意味でも振り回されている感じが強く、
主人公も基本的には「状況に振り回されている立場」ではあるので、
毎話のように気絶してしまう気持ちもわかる(笑)
ただ、視聴者はさすがに気絶するわけにはいかず、いい意味でも悪い意味でも落ち着かない作品だ
1話1話のAパートからCパートまでアクセル全開な作品といえるのだが、
もう少し閑話休題的な少し休まるストーリーが間に1話くらい欲しかったと感じてしまう。
更に言えばキャラクターの多さ。
1クールの作品なのに2クールや4クールばりのキャラクター数だ。
正直言って見終わった直後でも名前を覚えているキャラクターがかなり少ない。
出て活躍したシーンが1シーンほどで後は空気なキャラクターも多く、
もう少しキャラクターを絞ってほしいと感じる部分は大きい。
いらないと感じるキャラクターが多すぎる。
1話から中盤まで徐々に面白くなっていき、この作品の独特な面白さを味わっていられるのだが
終盤はストーリーを締めるためのストーリーのせいで独特な面白さが薄れてしまい
そのせいで淡々とストーリーを進めている印象が最後の最後でついてしまい、
俺たちの戦いはこれからだで終わってしまっている点は残念な部分だ。
見終わった後にこの作品のクドさゆえの「疲労感」と
回収されていない説明されていない重大な設定のため消化不良気味な感じが残ってしまった。
一言で言ってしまえば「面白いのに疲れる」作品だ。
2期があれば回収されていない設定も回収され、すっきりするのかもしれないのだが
原作のストックはほぼ使い切ってるらしく、更に言えば原作は「月刊誌」だ・・・(苦笑)
確かに面白い作品なのだが、もう少しストックが溜まってから
2クールでアニメ化しても良かったのでは?と感じる部分も多い。
超個人的には川澄綾子さん演ずる主人公の母親がかわいすぎて・・・もう(笑)
2期があるならば期待したい作品だ。
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