評価 ★★☆☆☆(29点) 全13話
あらすじ 砂漠に堕ちた男には、記憶がない。大介と名付けられた男は自分を拾ってくれた兜甲児と意気投合する。引用- Wikipedia
暴走逆NTR全裸説教王子
本作品は1975年に放送されたUFOロボ グレンダイザーのリメイク作品。
監督は福田己津央、制作はGAINA。
オイルマネー?
グレンダイザーはなぜか日本よりも海外で人気の作品であり、
フランスでは視聴率100%になる回もあったほどの話題作だった。
アラブ諸国でも大人気だ。
そんな人気な作品をサウジアラビア王国実質トップの
ムハンマド・ビン・サルマーン王太子殿下の会社が出資し、
リメイクが制作されることになった。
つまりはオイルマネーで制作されているアニメである(苦笑)
制作陣もかなり豪華で監督はガンダムSEEDでおなじみの
福田己津央、シリーズ構成脚本はコードギアスなどでおなじみの
大河内一楼、キャラクターデザインはエヴァでおなじみの貞本義行、
制作は元GAINAXから枝分かれしたGAINA、OPはGLAYが手掛けている、
相当気合を入れて作られている、そう感じる布陣ではあるものの、
当サイトをよく御覧頂いている人ならこの時点で
「あ…」となるはずだ。
船頭多くして船山に登る、そんなアニメを何作も見てきた。
1話の冒頭から一切期待感がわかない。
主人公であるデューク・フリードが宇宙からやってきて、
それをマジンガーZなどでおなじみの弓さやかが発見し連れ帰る。
だが、Drヘルの一味である機械獣が襲ってきて、
そこにマジンガーZが現れる。
わかりやすい1話冒頭なのだが、
その冒頭から一切ワクワクしない、作画のクォリティがとにかく低く、
かといってかつてのグレンダイザーのような
昭和の雰囲気をあえて残しているわけでもない。
シンプルに作画のクォリティが低いことを1話から感じさせてくれる。
なにげない日常シーンでさえ作画の悪さを感じ、
キャラクターデザインである貞本さんのらしさすら消えている
記憶喪失
グレンダイザーはもともとマジンガーZと世界観を同じくしている。
兜甲児や弓さやかなどのおなじみのキャラクターはもちろん、
マジンガーZも出てくるアニメでありグレートマジンガーの
続編として制作された作品だ。
そんなマジンガーZの世界に突如UFOにのって
記憶喪失の男が現れるところから物語が始まる。
このあたりはリメイク前と同じような流れだ。
ただ、リメイク前の作品は全74話に対して、
本作品は1クール全13話しかない。
必然的に端折る部分や変更しなければならない部分も多い。
UFOロボ グレンダイザーがTVアニメとして制作される前に
パイロットフィルム的に「宇宙円盤大戦争」というのも制作されており、
そのあたりから設定も拝借しつつ、1クールに収めているようなのだが、
残念ながら私はグレンダイザーをみたことはあったものの、
あまり本編の記憶は残っておらず、スパロボくらいの知識しかないうえで
この作品をみてるうえでのレビューであることをご承知いただきたい。
記憶喪失だったデューク・フリードは記憶を取り戻し、
マジンガーZでも叶わないベガ星連合相手に
「グレンダイザー」に乗り込み戦いに挑む。
わかりやすい展開ではあるものの、せっかくの戦闘シーンが
かなりあっさりしており見ごたえが薄い。
暴走
そんなデューク・フリードではあるものの、2話であっさり暴走する。
どこのエヴァンゲリオンかな?と思うような唐突な暴走展開は
よくわからず、昭和アニメのリメイクのはずなのに、
エヴァ以降のセカイ系ロボットアニメをみているかのような気分になる。
デューク・フリード自身も母星を守るために戦ったものの、
感情の「暴走」により大切な人を傷つけ、自らの婚約者を殺し、
自らの母星そのものを破壊してしまったというとんでもない過去がある(苦笑)
ちなみにリメイク前にはそんな設定や過去はない。
1クールにまとめるための改変設定だ。
敵との戦闘の後にデューク・フリードと兜甲児がたどり着いた島には
なぜか遠い惑星であるデューク・フリードの母星の守護神である
グレンダイザーが描かれた石碑があり、
男神と女神が結ばれると道が開くという伝説が残っている。
色々と謎はあるものの、その謎が1クールで明らかになることはない。
暴走の危険性ははらみつつも、第二の故郷である地球を守るため、
かたきを取るためにもデューク・フリードは立ち上がる。
1話より3話の方は戦闘シーンのクォリティも高く、
暴走の危険性をはらみながら戦うという葛藤も素晴らしいものがある。
ド派手な爆発などの派手な演出の数々は
昭和アニメらしさを残しつつ、
敵らしい敵の魅力も1周回って新鮮にすら感じる。
ドラマ
そんな序盤がすぎるとドラマ部分が際立ってくる。
デューク・フリードの幼なじみとの再会、そんな
幼なじみの弟がグレンダイザーに踏み潰され、
そんな心のすきをついて敵に「洗脳」され暗殺者にされているかと思えば、
洗脳から開放され爆散する(笑)
ドロドロとした人間ドラマはガンダムSEEDの福田監督らしさを
どことなく感じる部分はあるものの、
良い意味でも悪い意味でも展開が早いため唐突な展開が続く印象だ。
実は婚約者であるルビーナも行きていることが発覚し、
ドラマ部分が大盛り上がりする。
リメイク前で言えばナビーダのエピソードは25話目で描かれた
エピソードであり、リメイクでは4話で描かれている。
デューク・フリードの妹まで現れ、
トントン拍子で話が進んでいく印象だ。
現代的なリメイクといえるかもしれないストーリー構成にはなっているものの、
本来はあるはずの積み重ねが足りずにリメイク前のエピソードを
やっているせいでドラマに重みが足りず、
1話1話が内容がスカスカしている印象だ。
メロドラマ
序盤はデューク・フリードと兜甲児のBL的なテイストすら感じ、
それが終わったかと思えば中盤からはメロドラマになっていく。
生きていた婚約者、そして、そんな婚約者の姉と戦わなければならないという
ドロドロとしたドラマはロボット要素そっちのけだ。
濡れ衣と自身の犯した罪、傷つけたくない相手との戦い、
婚約者の姉もデューク・フリードに恋心をいだいており、
もうぐちゃぐちゃだ(苦笑)
ドラマ的な盛り上がりはあるものの、
ロボットアニメ的な面白みがどんどん薄くなっていく。
リメイク前でもそういったエピソードはあったようだが、
あくまで全74話の作品の中の数エピソードだ。
そこを抜き出して1クールのアニメに取り込んでいるせいで、
積み重ねが足りずに安っぽくなってしまっている。
今作オリジナルキャラである「カサド」や、
リメイク前とはキャラがまるで違う「ヒカル」など
掘り下げ不足な感じも否めない。
特にヒカルに関してはグレンダイザーの巫女らしく
不思議な力を使うのだがそれ以上は何もわからず終わる。
もともとが全74話の作品を1クールに収めるうえでの
改変やオリジナルキャラや設定の追加のせいで、
逆に1つ1つの要素が薄味になってしまっている印象だ。
リメイク前にはでてこなかったでてこなかったマジンガーZも
1話ででてきて破壊され、中盤にはグレンダイザーの
技術を取り込み改造までしてマジンガーXとなってでてくる始末だ。
確かに燃える展開ではあるものの、リメイク前にはない要素が
1クールのアニメにですぎだ。そのせいでごちゃついている。
密会
終盤になるとメロドラマが過激化してくる。
デューク・フリードと婚約者が密かに浅草で密会したり、
その現場には婚約者の姉も現れ…とドロドロだ(笑)
そんなドロドロの中でカサドがグレンダイザーの巫女とやらのヒカルに
よくわからない力で消されてしまう。
このあたりの掘り下げがきちんとあればいいが、無いだけに厄介だ。
1クールでは必要性のないキャラを出し、あっさりと消してしまう。
なにがしたいんだ?と思うような展開だ。
婚約者と婚約者の姉の誤解もとけるものの、
婚約者と婚約者の姉がデューク・フリードを巡ってドロドロしだす。
一体何を見せられているんだろうか(笑)
グレンダイザーやマジンガーXで戦ってるシーンよりも、
メロドラマのほうが記憶に残ってしまう。
婚約者がデューク・フリードに密会の手紙を送り、
「契」を結ぶ約束をとりつけたことでとんでもないことになる。
ある意味、物凄い面白い展開だ。
敵は地球を攻撃し始め、代わりにデューク・フリードを差し出せと要求してくる
そんな悲しみの連鎖や憎しみの連鎖を止めるためにも、
襲ってきている敵の国の王女とデューク・フリードが結ばれればいい。
とんでもない展開だ(笑)
逆NTR
11話でデューク・フリードは婚約者と結ばれる。
文学的な比喩ではなく肉体的にも結ばれる、
だが、結ばれた相手は実は婚約者の姉が妹のふりをして
変装をしていたことが明らかになる。
「お前と結ばれたのはルビーナではない!この私だ!
デューク・フリードをお前はルビーナを愛してるといいながら
その姉とちぎったのだ!」
ちなみにデューク・フリードさんは全裸である。
全裸で正座されて好きな人の姉と行為をして
説教される主人公など前代未聞だ(笑)
逆NTR、全裸説教(CFNM)とマニアックな要素が詰め込まれている。
「甲児、僕はどうしたらいい?」
と情けなくデューク・フリードには大爆笑してしまう。
さすがにマジンガーZに乗る兜甲児といえど、
好きな人の姉を好きな人と間違えてパコってしまったことを
告白されても答えようがないだろう(笑)
ラスト
ロボットによるアクションシーンよりも
もうドロドロの愛憎劇の方に夢中になってしまう。
ただ終盤のほうが序盤に比べて作画のクォリティが上がっており、
登場人物の作画なども急に終盤安定しだす。
その一方でデューク・フリードは
お前の姉と寝た!と堂々と婚約者に宣言し、
婚約者はそんなデューク・フリードにまっすぐな愛を告げる。
もうキャラの心理描写についていけないが、
起こっている出来事自体は非常に面白い。いとおかしだ。
実はデューク・フリードはパコった相手が
婚約者の姉だと気づいていたが、
悲しそうなのでパコったという真実も明らかになり、
そうかとおもえば婚約者が死ぬ(笑)
あまりにもめちゃくちゃな展開に笑うことしかできない。
デューク・フリードさんが大暴走状態で
敵の四天王的存在を片付けていくのも本当に雑でしか無く、
アニメーションのクォリティは高いのに展開はあまりにも雑だ。
最終的にマジンガーZと兜甲児によって暴走を収める展開は
ある意味BLエンドといっても過言ではなく、
極めつけは最後の最後でとある要素を見せて
2期を匂わせて終っている。
1期の段階で色々とゴチャ付いてるのに2期があっても
とうていまとめられるとは思えず、
そもそも、2期があるのかどうかすら不明だ。
本当に色々とひどい作品だった
総評:石油王のオイルが漏れまくってる
全体的に見てゴチャゴチャになってしまった作品だ。
昭和のロボットアニメを石油王のオイルマネーでリブートする、
そういった趣旨だったはずなのにロボット要素よりもメロドラマばかりが
目立つ展開の数々、戦闘シーンそっちのけで全裸で説教される主人公、
最後は投げっぱなしな展開も含めてめちゃくちゃだ。
本来は全72話のストーリーを1クールにする、
そのうえでの要素が1クールから溢れ出ており、
雑に描かれるキャラや掘り下げのないキャラなどが多く、
描くことが多すぎてグレンダイザーというロボット要素すらも
薄くなってしまっていた。
作画のクォリティも序盤から中盤はかなり厳しく、
終盤は一気に良くなったものの、
オイルマネーはどこへいったのやらという感じだ。
終盤のNTR展開からのBLエンドというのは
面白くはあるのだが、果たしてそれが
グレンダイザーという作品の求められていたのか?と
考えると相当に謎だ。
内部スタッフが何人か制作現場に関してつぶやいており、
「前任者の訳わからん状態からの復旧を監督と
2人して何とか見れる物に立ち上げた」という情報があり、
相当現場が揉めていたのだろう。
制作のガイナもそこまで制作能力がない中で
請け負った結果なのかもしれないが、
せっかくガチオイルマネーで作られた作品なのに、
こんな結果になってしまったのが残念だ。
個人的な感想:グレンダイザー
スタッフが発表された時点で嫌な予感がしていたが
そんな嫌な予感が的中してしまった作品だ。
作画の悪さもそうだが、色々な要素を薄味なまま
1クールの中で取り入れてしまい、結果的に
NTR要素だけが際立ってしまった。
2期があるかどうかはわからないものの、
あるならば汚名返上、名誉挽回になることを期待したい