評価 ★★★★☆(65点) 全12話
あらすじ これはスライムのぷにると中学生のコタローがともだちじゃなくなるまでの物語……引用- Wikipedia
子供騙し?いいや大人騙しだ
原作は週間コロコロコミックで連載中の漫画作品。
監督は伊部勇志、制作はTOHO animation STUDIO
キャラデザ
原作は皆さんおなじみのコロコロコミックという媒体で連載している。
あの頃のように月刊雑誌ではなく、今はWebで週刊コロコロコミックという
媒体があり、そこで様々な作品を連載している。
この作品の原作もその中の1つだ、当然、対象年齢は小学生だ。
それを表すかのようにキャラデザはかなりシンプルだ。
小学生が感情移入しやすいように男の子が主人公であり、
深夜アニメっぽくない主人公のキャラデザは
どこか懐かしい夕方アニメのノリを感じる。
だが、時代は変わっている。
令和という時代になりコロコロコミックも変わった。
主人公が「スライム」をつくった所、
そのスライムになぜか自我が宿り女の子の姿になる。
とんでもない展開だ(笑)
思春期
スライムという小学生男子なら1度は触れたことのあるものに
自我が宿るどころか女の子の姿になる。
最初はペンギンのような姿だったのに、いつのころからか
幼い少女のような姿になったことで主人公である
コタローは戸惑っている。
彼は思春期だ。
スライムである「ぷにる」を創ったときは小学生であり、
異性というものを意識していなかったものの、
中学生になり、ぷにるの姿も可愛らしい女の子に変わったせいで
あの頃のように一緒に寝たり、遊ぶことに躊躇してしまう。
あくまでも彼女はスライムだ。人間ですらない。
だが、見た目が女の子だからこそ意識してしまう。
コタローにも片思いの相手はいるものの、
そんな相手がいるからこそ、余計に「ぷにる」を意識してしまう。
コロコロらしいハイスピードなノリとギャグは
コロコロらしさを感じるものではあるものの、そんな子供向けの内容と
同時に「異性」への意識という大人向けの要素が混在している。
絶え間ないコロコロギャグの合間に、
思春期の男子の第二次性徴における心理の変化がさりげなく描かれる。
「ぷにる」はスライムだ、それゆえに変幻自在である。
普段は女の子なのだが、セクシーな女性にも、
人気なアイドルのような見た目にも変身できる。
これほど男性にとって都合の良いヒロインはいないだろう(笑)
毎話のように様々なものを自分に取り込んで
あらゆるものに変身する姿は、
どこか懐かしい魔法少女的なニュアンスも含んでおり、
キャラ萌えとしても優秀だ。
可愛くて優秀、そんな自覚があるからこそ、
コタローにも可愛いと認められたい。
コタローのためにありとあらゆる可愛い姿に変身するさまは
可愛らしい。
子供の頃は友達だった二人、
そんな二人が「友達ではなくなるまで」の話が
この作品では描かれている。
やべーやつ…
コロコロコミックのギャグ漫画原作だからこそ、
かなりピーキーなキャラの味付けをしている。
特に主人公が片思いをしている「雲母 麻美」は
最初は清楚でナイスバディな優しい先輩という感じだ。
しかし、彼女はぷにるを見るなり
「母性」を大爆発させて暴走する(笑)
その極端さがギャグに繋がり、同時にキャラの強烈な印象につながる。
久しぶりに味わうコロコロテイストが「少年心」のようなものを
刺激してくれる感じだ。
実はいいやつなナンパなイケメンキャラや、
スライム研究者など、様々なキャラが絡むことで
日常の中のギャグが生まれ、それをハイテンポかつ
おバカにどんどんと詰め込まれるからこそ笑いにつながっている。
おとこの子なのに
今どきらしい要素もある。
主人公であるコタローは男の子だ、だが、彼は「男」だ。
世間一般として男の子はかわいいものをめでず、
人形遊びなどをせず、サッカーや野球にいそしむものだ。
だが、コタローは違う。
本当はかわいいものが大好きだ、それは中学生になっても変わらない。
しかし、それを他人にも、誰かにも言えずにいる。
子供の頃に馬鹿にされた経験がトラウマにすらなっている。
いわゆるジェンダーバイアスだ。
男の子でもかわいいものが好きでいい、かわいいものを愛でてもいい。
コタローという少年は「ぷにる」のことをかわいいと思いながらも、
口では真逆なことばかり口にしている。
そんなジェンダーバイアスを、世間からの目を、
コタローは乗り越えることができるのか。
コロコロコミック原作の子供向けのギャグアニメの皮をかぶりながらも、
この作品はそんなジェンダーバイアスすら描いている。
見た目に騙されがちだが、見れば見るほどかなり深みを感じる。
コタローと同級生の南波遊助はコタローとは真逆だ。
いわゆるイケメンで軟派なキャラなのだが、
彼の中にはコロコロ魂が眠っている。
コタローと同じ年齢でありながら小学生男子が
好きそうなものが大好きな遊び人だ。
それを彼は堂々とコタローにも周囲にも公言している。
その違いは大きい。
しかし、コタローは大人になりつつある。
だからこそ「ぷにる」という子供のころの遊び相手を
子供のころ同じように見ることができず、
自身の中に眠るジェンダーバイアスによるコンプレックスゆえに、
「ぷにる」という存在に対する扱いに迷いが生じている。
南波遊助のように子供のままであれば、
ぷにると今でも同じように遊んでいられたかもしれない。
南波遊助のように大人になりつつあっても
好きなものを好きと堂々と言えれば
ぷにるとの関係も違うかもしれない。
少しずつ、徐々にコタローが成長していく物語でもある。
ルンルーン
中盤になるとお嬢様キャラがぷにるを羨ましがってくる。
自分の愛したもの、おもちゃや人形に自我が宿る、
それは子供ならば誰しも願うものだ。
しかし、ぷにるは例外であり、売らましがっても仕方のないことだ。
自分の好きなものを他者のものと比べたり、
うらやましがったりするのでもなく、
自分が好きでいれば自分が認めていればいいじゃないか。
そんなメッセージを感じるストーリーが描かれるものの、
このエピソードが3話にわたって描かれるのはややダレが生まれている。
ラブコメでありギャグであるがゆえに
エピソードごとの当たり外れや、ギャグ自体の好みは
ジャンルとして生まれやすいが、この中盤の3話消費エピソードは
やや1クール全体のダレを生んでしまっていた。
告白
長期エピソードよりも1話完結か
いくつものエピソードを詰め込んでいる回のほうが
ギャグにも勢いと切れ味がある印象だ。
アニメーションに関しても、子供向けのアニメ的な構図や
演出なども多く、それを深夜アニメでやるというのが一周回って新鮮だ。
コロコロと変わる「ぷにる」の姿はシンプルに可愛らしく、
ギャグアニメらしいパワフルなアニメーションを
シンプルに楽しめる。
終盤になると序盤の勢いを取り戻し、夏休みや文化祭やクリスマスといった
定番のイベントを描きつつ、その状況に応じて様々な姿になる
「ぷにる」がシンプルに可愛らしく、あるときは巨大化し、
あるときはドラゴンになり、あるときはギャルになる。
そんな様々な姿になる中で
「コタロー」の胸がときめいてしまう瞬間もある。
だが、彼には片思いの相手がいる、ふとした瞬間に告白するものの、
あっさりと振られてしまう(笑)
そうかと思えば「ぷにる」に頼み、
ぷにるに理想な自分に変身してもらい、改めて告白してもらう。
この荒唐無稽な勢い任せなギャグこそが「コロコロ」だ。
1クールの中で徐々にコタローという主人公は変わりつつある。
子供の頃のコンプレックスはなかなか覆せるものではない、
だが、口では否定しつつも、彼の心のなかでは確実に
「ぷにる」への思いを自覚しつつある。
本来スライムである「ぷにる」には性別というものはない、
しかし、恋愛対象としてコタローは意識してしまっている。
それがギャグの中でさり気なく描かれていく過程が素晴らしく、
1クールを通して子供の心を思いださせてくれる作品だった。
総評:これが令和のコロコロアニメだ
全体的に見て素晴らしい作品だった。
コロコロコミック原作らしいバカバカしいとも言えるギャグを
全開で大人が見る深夜帯でやることで一周回って新鮮すら感じる部分もあり、
怒涛の勢いとテンポで見せる「くだらない」ギャグが気持ちいい。
そんなコロコロらしいギャグに現代的なものを足している。
ジェンダーバイアス、男の子は可愛いものを好きになってはいけない、
現代的な要素を真っ向から描きつつもギャグは忘れず、
1クールの中で一歩一歩コタローという主人公が
思春期を迎える中で自分の心を整理していく話でもある。
ヒロインである「ぷにる」の可愛らしさは唯一無二のものであり、
いわゆるメスガキ系ヒロインではあるものの、
スライムだからこそ多種多様な姿に変身するのは
男としては理想とも言えるヒロインかもしれない(笑)
好きなものを好きと言い続ける。簡単なようで難しいことだ。
子供から大人になったり、世間の目があったり、
様々な理由で「かつて」好きだったものがいつの間にか
好きでなくなったり、好きではいるけど堂々と言えないこともある。
そんな悩みを抱える主人公がどこか
かつての自分を重ね合わせる人も多いかもしれない。
1クールで主人公はまだ自分の心の整理をつけきれていない、
2期も決定しており、2期でコタローがぷにるへの思いを
どう自分の中に収めていくのか、期待したいところだ。
個人的な感想:子供だましならぬ大人だまし
コロコロ原作だし、どうせ子供だましなギャグアニメなんでしょ。
そういう穿った味方をする大人を騙すような作品だ。
あの頃読んでいたコロコロ、そんなコロコロは今も変わらず
元気に子どものための漫画を多く掲載している。
そのなかで令和という時代に適した要素を取り入れ、
「らしさ」を残しつつも時代に合わせた作品に仕上がってる印象だ。
2期がいつからかはわからないものの、
2期を心待ちにしたい。