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無免魔法少女「魔法少女マジルミエ」レビュー

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株式会社マジルミエ ファンタジー
画像引用元:©岩田雪花・青木裕/集英社・マジルミエ製作委員会
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評価 ★★☆☆☆(34点) 全12話

#新卒で魔法少女になりました 『株式会社マジルミエ』 |プライムビデオ

あらすじ 突如発生する自然災害「怪異」が存在し、怪異を退治することを主たる業務とする魔法少女が職業として認識された世界。引用- Wikipedia

無免魔法少女

原作はジャンプ+で連載中の漫画作品。
監督は平岡正浩、制作は萌、J.C.STAFF

魔法少女

1話冒頭からとんでもない魔法少女によるバトルを見せられる。
箒を失った少女がじゅもんを唱え魔法を放ち、
戦っていた「怪異」をUSBのようなものに閉じ込める。
ちょっと男気勝る魔法少女の戦闘シーンで一気に世界観に魅入られ、
この作品の世界観をさらっと説明するシーンへと移り変わる。

この作品の世界では「怪異」と呼ばれるものが唐突に現れる。
悪の組織がいるわけでもなく、あくまでも怪異は自然現象だ。
そんな怪異に対しての対抗手段が一般化しており、
「魔法少女」が「仕事」として「怪異」を片付けている。

魔法少女の多くはなにか戦う理由があったりするものだが、
この作品の場合はそういった明確な理由ではなく、あくまでも仕事だ。
「魔法少女」というものが日本社会に仕事として根付いていたら、
そんなif、お仕事ものとしての側面もある作品だ。

そんな世界観で主人公は就活生だ。
なにか目的ややりたいことがあるわけでもない、
だからこそ就活もうまくいかない。
唯一特異なことは「圧倒的な記憶力」だけだ。

そんな彼女の前に「怪異」が現れ、魔法少女も現れる。
ねっとりともいえるような「変身」バンクもきちんと描いており、
魔法少女らしさ、魔法少女要素を丁寧に描いている作品だ。

一人で倒せない怪異、そんな相手に「主人公」は協力を申し出る。
人の役に立ちたい、そんな漠然とした思いがあるからこそ、
彼女は一歩踏み出す。
記憶力だけがいい彼女が人の役に立った、そんな実感が
彼女を「魔法少女」の世界へと踏み入らせる。

設定

そんな1話の展開自体はいいものの、
2話以降になってくると設定のあらが気になってくる。
例えば怪異という存在自体は「火事」等と同じく自然災害として
この作品の世界では扱われているが、それならば、
「魔法少女」という職業自体も国が請け負う公務員のほうが自然だ。

しかし、この作品の世界では主人公が入った会社のように
小さなベンチャー企業から大企業まで「民間」が請け負っている。
本来なら民営化されないような仕事であり、職業だ。
しかも「資格」すらいらない。

これが街中ではなく山などの人里離れたところに怪異が現れて、
すぐに危険はないが放置しておくと人里に降りてきてやばい
というような状況ならば猟師のような感覚で受け入れられるのだが、
普通に町中に唐突に現れて危険があるのが怪異だ。

一応かつては国営として魔法少女をやっていたようなのだが、
そのあたりの説明がアニメではなく、
なぜ民間でこんなことをやっているのだろうかという
シンプルな疑問が作品を素直に楽しまさせてくれない。

ファンタジーな世界観、創作物の嘘を「説得」させるだけの設定が
描かれないがゆえに気になってしまう。
世界観的には「僕のヒーローアカデミア」が近いものがあるが、
ヒロアカの世界観は納得できる設定がきちんとあるのだが、
この作品にはそういう設定がない。

ヒロアカがきちんとヴィランというものに対するヒーローの社会的存在、
そんなヒーローの資格を手に入れるための機関が存在することで
世界観に説得力を持たせているのだが、
この作品はそういった教育機関も資格もない。

しかも、魔法少女は怪異が現れて困ってる人からの
「依頼」で動くというのも気になるところだ。
魔法少女たちの装備、箒や使う魔法なども、
使い方によってはかなり危険なものであり、そのあたりも気になる。

作品の世界観を説得させるための設定が
少なくともアニメではねられていないせいで、
話が進めば進むほど引っかかりが生まれてしまう。

仕事

どちらかといえば「仕事」というものを描きたいのはわかる。
主人公が努めた会社はベンチャーであり、
大手の企業ではやらないような型破りな仕事をすることが多い。

怪異への対処を即座に行う、その結果、建物に被害が生まれても
保険を使えば良いというのが大手の会社のスタンスだが、
主人公が勤めるベンチャーは人に寄り添う仕事をするのがスタンスだ。
どちらが正しいとも言えない、それぞれの仕事の流儀がある。

社会人になった主人公はそれを学びながら、
自分にできることを、やれることをしっかりやり、
立派な社会人になっていく。そういう過程を描きたいのはわかるが、
そういうストーリーをやろうとすればするほど、
設定のガバガバさも気になってしまううえに、テンポも悪い。

3話と4話は連続した話になっているのだが、
2話かけてまで描く意味はあったのか?と思うほど話の密度が薄い。
美学やベンチャーという言葉を多用し、
それで乗り切ろうとしているのはわかるが、
その言葉では説得力が生まれず誤魔化しきれていない部分も多い。

1話の冒頭などかなり気合が入った作画で描かれていたのだが、
序盤をすぎるとパワーダウンしてしまうのも気になるところだ。

他社

中盤になると他社との仕事も主人公は請け負うことになる。
この他社が出てくると、他社のほうが「魔法少女らしい」格好と
変身バンクになっており、主人公たちの存在感が霞む。

他社の魔法少女は他社の流儀に従い、
それぞれの魔法少女の仕事の流儀がきちんとある。
美を体現しつつも、汚れても仕事はこなす魔法少女、
結果がすべて、効率的に目的という仕事をこなす魔法少女、
顧客の依頼をどうこなすのか、魔法少女によって違う。

そんな仕事の流儀をみながら、主人公自身が自分の流儀を見定めていく。
そういうことをやりたいのはわかるものの、
根本的な設定のガバガバさのせいもあって、
結果や効率や美学と言う前に国はなにをしてるんだという
思いが出てきてしまう。

魔法がプログラムのようになっていたり、面白そうな部分も多いのだが、
そのあたりの設定の掘り下げをしてくれないモヤモヤ感も募る。
ストーリーのテンポも中盤以降はガクッとおち、
1話でできる話を2話でやっているような印象だ。

そのストーリー自体も「こうなるんだろうな」という
予測しやすい展開が多く、盛り上がりに欠けてしまう。

過去になにか大きな事件が起こっていたり、
怪異の変異が起きていたりと、ここから盛り上がる展開や
伏線の回収なども起こりそうだが、1クールでは
そこに辿り着く前に終わってしまう。

終盤

終盤は他社から主人公たちの会社に魔法少女の一人が研修に訪れる。
ベンチャーだからこそ他社がやっていないような方法で
怪異を退治している彼らの特殊なやり方を学ぶための研修だ。

そんな研修を通して1話では魔法少女ですら無かった主人公が
自らの仕事を教える立場になる。
1クールでの成長と変化をきちんと描けてはいるものの、
盛り上がるかける感じで1クールが終わってしまう。

2期も決定しており、色々と明かされる事実もあるのかもしれないが、
魔法少女という職業でお仕事物を描くという
コンセンプト自体は理解できるが、それがうまくいっているとは
言い切れない感じの作品だった。

総評:創作物という嘘を納得させてくれない

全体的に見て、1話の期待感は素晴らしかったものの、
2話以降で世界観が紐解かれていくにつれて、
色々と詰めの甘さが気になってしまうところが多い作品だ。

魔法少女が仕事の1つとして認識されている社会、
怪異という自然災害がある世界、そんな世界と社会を
リアルに描いているはずなのに、リアルに感じられない部分が多く、
ファンタジーという嘘を説得させるだけの力がこの作品にはない。

あくまで1期の時点、アニメでの話であり、
2期以降や原作ではこのあたりの設定のガバガバさが
カバーされている部分があるかもしれないが、
1期の時点ではそういうものがなく、気になってしまう。

そこを置いておくとしてもストーリー的な盛り上がりの無さや、
すぐにベンチャーや美学という言葉で誤魔化している部分もあり、
「お仕事もの」としてみても物足りない部分が多い。
やりたいことはわかる、コンセンプトもわかるものの、
それを作品として形にするうえでもう1歩足りないような作品だ。

作画に関しても1話と最終話は見ごたえのあるシーンが有るのだが、
それ以外はパワーダウンしているシーンも多々あり、
2期でこの辺りがもう少し改善され、
ストーリー的にも盛り上がりが生まれることを期待したい。

個人的な感想:出オチ

設定的には地球防衛企業ダイ・ガードを彷彿とさせるものがあり、
ダイ・ガードの魔法少女版として楽しめるかなと期待したが、
出オチで終わってしまっている作品だ。

2期でこの出オチ感をうまいこと覆していることを
期待したい

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