評価 ★★★☆☆(59点) 全13話
あらすじ 新たな舞台の幕が開く── 人気マンガ『東京ブレイド』の舞台稽古が始まった。劇団ララライの役者達に囲まれ、大きく飛躍するかな。かなの才能を認めながら、ライバル心を激しく燃やすあかね。引用- Wikipedia
これぞ狂愛
本作品は「推しの子」の2期。
1期から監督や制作に変更はない。
東京ブレイド
2期はいわゆる「2.5次元編」から始まる。
アニメや漫画を舞台化する、実写の俳優が舞台で演ずることを
2.5次元舞台と称しており、ドラマや実写映画とはまた違う表現が舞台にはある。
そんな舞台を2期の1話の冒頭では見せている。
まるで最後列の客席に座っているような視点で、
巨大なスクリーンで舞台「東京ブレイド」のあらすじと
主要な俳優が紹介される映像が流れて、舞台の幕が上がる。
この表現と導入は素晴らしく、自然と2.5次元舞台編に入り込める感覚だ。
その一方で2期のOPのインパクトは弱い。
1期のOPはYOASOBIが歌うアイドルがバズり
推しの子という作品と曲の印象をつけたが、
2期のOPは特に印象に残るものではない。
1期のEDもOPの印象に負けていたが、2期のEDは余計にそれ以下だ。
そのあたりにやや不安を覚える部分はあるものの、
自然な導入と1期と2期の間の幕間物語を回想で振り返っている、
1期のストーリーをルビー目線で振り返りつつ、
母が立てなかったドームを目指して新生B小町での活動を続けている。
一方でアクアは自らの父であり、復讐相手を探すためにも
芸能界を探りながら、自分自身も「役者」としての壁にぶつかりつつある。
あくまでも彼の演技は復讐のためのものであり、
復讐相手を探すための手段でしか無い。
だが、彼の周りには本物がいる。
天才役者である「黒川あかね」や元天才子役である「有馬かな」。
ララライという劇団の役者たち。特に「姫川」は天才だ。
彼と有馬かなの掛け合いは見るものを「2.5次元」の世界に迷い込ませ、
それをアニメーションとしての表現に落とし込んでいる。
そんな導入と同時に作画のクォリティの上昇を感じる。
1期では決定的なシーン、いわゆる見せ場のシーンの印象が強かったが、
今作ではそれ以外のシーンでの作画のクォリティもやたらとあがっている。
一本一本の髪の描写もそうだが、演出面、エフェクトなども
かなり気合が入っており、役者同士の演技の掛け合い、
それを見たキャラクターの心理描写まで、
きちんと「アニメーション」による演技が考えられている。
それに声優たちも負けていない。
キャラクターたちが演技指導を受け、演技が変わる。
その結果をきちんと感じられる声優の演技に酔いしれることができる。
原作改変
この作品は同時に「芸能界の闇」というものも描いている。
2.5次元舞台、そこにあるのは原作改変だ。
1期でもやったドラマと同じく「原作」をどう違うメディアに
変換するのか、漫画なら1コマで表現できるものも
舞台では役者の動きが伴うがゆえに原作改変が伴う。
だが、それに原作者が納得するかどうかは別だ。
1期では原作改変され、それを原作者が許可したドラマだったが、
2期では原作改変を許さない原作者が登場することで
物語の方向が少し変わってくる。
本番まで20日、そんなギリギリの中で原作者である
「アビ子」が舞台の脚本を許せない。
展開を変えるのはいい、だがキャラを変えるのは許せない。
何回も脚本の修正を送るものの、その間には
「多くの大人」が関わり、原作者と脚本家の連携が取れず、
原作改変された、原作者が許せない実写化が生まれる。
奇しくも去年、日テレのドラマが問題になり、
原作者がなくなるということも話題になった。
そこに踏み込むような原作改変問題だ。
それ自体は非常に興味深い部分であり、1期と同様の面白さがあるものの、
1期と同様にこの作品の「キャラ立て」の甘さが足を引っ張っている。
東京ブレイドの原作者であるアビ子、そして脚本家、
この二人がメインで描かれており、完全に二人の物語になっている。
主人公、アクアの存在が「蚊帳の外」だ。
1期では原作改変されたドラマに一矢報いり、
恋愛リアリティショーでは黒川あかねとの出会いや
彼女に星野アイとの関係性があり、
終盤は有馬かなとの関係性の描写があった。
物語のテンポ感自体も1期は良かった印象だが、
2期はかなり冗長に感じる部分が多い。
東京ブレイド編は9話にわたって描かれている。
その中で本来のメインである「復讐劇」に関しても止まってしまい、
有馬かなが舞台に出ているせいもあってB小町の出番もほぼない。
原作改変問題もアクア自身が口を出してはいるものの、
問題の解決は漫画家同士の口論であり、
クリエイター同士の討論の結果だ。
キャラ立てがうまいからこそサブキャラたちのドラマを楽しめるのだが、
そのせいでメインキャラの陰が薄くなってしまっている。
PTSD
そんな原作改変問題から最高の脚本が出来上がる。
それは「役者」の演技次第で名作にも駄作にもなるような脚本だ。
そこで求められるのは「感情」だ。
舞台だからこそ、ドラマや映画以上に大胆な演技が必要になる。
主人公であるアクアにとって1番難しい問題だ。
「復讐」に囚われ、前世の記憶を持ち、救えなかったという思いが
彼の中には根強く残っている。
医者として救えなかった命、転生して救えなかった母であり推しの命、
眼の前で多くの命を失った経験のある彼は
自らの感情に蓋をし、復讐に囚われることで自我を保っている。
その感情の蓋を演技で外そうとすればPTSDに襲われる。
つらい過去を、押しつぶされそうな感情を彼は常に抱えながら
吹き出しそうになるものに蓋をし、復讐に命をかけている。
それを「黒川あかね」に察さられてしまう。
他者には言えない、誰にも言えない
「伝説のアイドル」の子供である事実を
黒川あかねという少女は察してしまう。
彼にために彼女は「共犯者」になろうとしている。
他の誰にも言えない、他の誰ともわかりあえない彼の
「理解者」になることで彼女は優位にたとうとしている。
狂信的なまでの彼への愛、他者を殺すことも厭わない
「黒川あかね」という少女の魅力を感じられるシーンだ。
そんな彼女にも役者としてのプライドがある。
かつて憧れた有馬かなと同じ舞台に立ち、同じ役者として負けたくない。
なによる「有馬かな」への思いがある。彼女の愛は狂信的で歪んでいる。
アクアに対しても、有馬かなに対しても、
「黒川あかね」という少女は深く重く歪んだ愛をぶつけている。
メルト
17話では東京ブレイドの本番が描かれる。
アクア、黒川あかね、有馬かな。
3人の役者としての本髄、役者としての意地をかけた舞台だ。
2.5次元舞台のように背景をスクリーンで見せ、舞台装置を見せ、
ダイジェストではあるものの、舞台を見ているような気分にさせられる。
本来はアクア、黒川あかね、有馬かなのドラマが主体のはずなのだが、
そんな3人を食うのが「メルト」だ。
彼は1期ではひどい実写化ドラマで主人公を演じ、
ひどい演技を世間に披露した。
アクアが絡んだことで最終話だけは評価されたが、
彼自身が評価されたわけではなく、むしろ逆だ。
大根役者という汚名、顔だけの自分、
自分自身の価値に迷いが生じている。
そんな彼がこの名役者だらけの舞台に放り込まれている。
あのドラマはもっといい作品にできたはずだ、
自分の演技がもっときちんとしていれば、
そんな後悔が彼を襲い、努力を積み重ねている。
だが、付け焼き刃の演技では叶うはずもない。
それでも彼は牙を剥く、ヘタなりに、評価されないなりに爪痕を残す。
たった一瞬の演技に、たった一瞬のアクションに全身全霊を注ぎ込む。
彼の成長と変化が、この2期の最大の魅力かもしれない。
一ヶ月の練習を一分の演技のために。
メインキャラよりもサブキャラのほうが立ってしまっている。
主役すら「食う」存在感を本来なら使い捨てになりかねない立ち位置の
「メルト」というキャラが魅せている。
アニメーションももはや芸術的ですらある。
華々しい人生、順風満帆だったイケメン役者が本物の演技を知り、
輝きを求め、追い求め、自らの血を役に注ぎ込む。
そんな彼の心理描写をこれでもかと見せているのが17話だ。
その後もメインキャラたちの演技に掛ける思いを感じる舞台が
描かれるものの、流石に冗長に感じてしまう。
なまじキャラ立てがうまいからこそ、メルトや
アビ子などのキャラクターの物語も描く必要性が生まれ、
そこに尺が取られてしまい、メインのストーリーが進まない。
復讐劇
そんなメインであるはずの復讐劇が進むのは20話だ。
2.5次元舞台に関わる人の中に星野アイの恋人、
アクアとルビーの父親がいるかも知れない。
それを突き止めた主人公は「DNA検査」をおこない、事実を知る。
「姫川」という役者と父親が同じであることをつきとめたアクアは、
そんな父親はすでに心中で死んでいることを知る。
復讐する相手がいない、彼は生きる意味を見失う。
このまま復讐をやめ、幸せになってもいいのか。
長年、復讐に生きていたからこそ、自分の生きる意味を彼は再度見つめ直す。
そんな中で際立つのはヒロインたちの可愛さだ。
有馬かなの気合の入れっぷりとデートにドギマギする様は
素直なヒロインとしての可愛さが生まれている。
これぞ「ラブコメ」だといわんばかりの日常回は、
シリアスな展開が続いたからこその閑話休題っぷりだ。
「復讐」にとらわれなくなったからこそ、主人公の視線も彼女たちに向く。
黒川あかねと別れ、有馬かなとの関係性を進める。
それが彼の選択だ。
だが、そんな「黒川あかね」がアクアをも知らない可能性に気づいてしまう。
「ルビー」もまた真実にたどり着いてしまう。
自分の好きだった人が死んでいた事実、
自分の好きだった人が母を殺したストーカーと同一人物だった事実、
そんな事実を知り、なかったことには出来ない。
復讐を諦めた兄にかわり、妹が復讐者となる。
この2期の終盤の展開は見事だ。
「黒幕」たる人物も姿を見せ、物語はより混迷する。
3期でどうなるのかいろいろな意味で気になる作品だ。
総評:狂信的な愛の物語
全体的に見て2期ではそれぞれのキャラクターの
「狂信的な愛」が浮き彫りになったような感覚だ。
アクアという主人公が抱える母と推しへの思いは
その強さゆえにPTSDになるほどだ。
そんなアクアに好意を寄せる有馬かな、
そして黒川あかねの「愛」は重い。
その愛ゆえに愛するものの全てを許容し、
彼の共犯者になろうとしている。
ここまで存在が薄かった「ルビー」もまた、
推しと初恋の人を殺した犯人が同一人物だったことをしったことで
狂信的な愛が暴走し、復讐者になっている。
そんな終盤の物語はそそられるものがあるのだが、
2期はほとんど「2.5次元舞台」の話がメインになってしまい、
B小町の存在感は非常に薄く、序盤は原作改変された原作者や
舞台の脚本家などのほうがキャラが目立ってしまっている。
キャラ立ちがうまいのがこの作品の特徴ではあるが、
それが良くも悪くも2期では顕著になっている。
2期の終盤で本筋に話が戻ったものの、
そんな本筋をそれるような話も多く、
それゆえにテンポの悪さも感じてしまった。
作画のクォリティや声優さんの演技など、
1期よりもパワーアップしている部分はあるものの、
ストーリー面ではややインパクトに欠ける部分があり、
あれだけバズった1期のOPと違って2期のOPはバズらなかったりと、
1期と比べるとインパクト不足な面は否めない。
決定している3期でどうなるのか。そこが気になるところだ。
個人的な感想:ここからが
原作もここまでは問題点はありつつも先の展開が気になる部分だった。
問題はここからだ、原作通りになるのか、
それとも原作とは別の展開になるのか。
3期でどうなるかが非常に気になる作品だ。
実写ドラマのほうは意外と評判が高いようで、
そちらも気になるところだ。
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アクアの前世が殺されていたことをルビーが知るシーンは展開としては良かった。
けどどう考えても死体見つかるのが遅すぎるので、
そこは前世知識があるからこそ見つけられたみたいな描写は欲しかった。
あと上記のシーン以外があまりにも盛り上がりに欠けるのはマイナスポイント。
物語に緩急が必要なのはわかるけど、
1期1話にあんだけ衝撃シーン詰め込んだんだからもっとイケるでしょ?って思っちゃう。